ラテン・アメリカ関係 |
メキシコはラテン・アメリカにおいて政治・経済の最も安定している大国の一つとして、つとにわが国とは経済および文化等の面において緊密なる関係を保ってきたが、昨年五月ラウール・サリナス商工相を首班とする通商使節団二十名が来日、関東、関西の産業施設を見学、また業界の代表者と懇談するなど、日墨両国の親善およびメキシコの対日認識を深める上に大いに益するところがあった。また昨年九月十六日にはメキシコ・シティーにおいて、同国の独立一五〇周年記念式典が挙行されたので、わが国は特派大使として衆議院議員川島正次郎氏を派遣し、式典に参列せしめた。なお防衛庁は昭和三十六年度遠洋航海においてメキシコを訪問する計画を決定し、今夏実行する予定である。
その他の中米諸国とわが国との関係も逐年緊密の度を加えており、まだわが公使館の実館を開設していないグァテマラおよびニカラグアからはわが公館を設置するよう強い希望があり、またパナマは、相互に現在の公使館を大使館に昇格するよう要請越している。
エル・サルヴァドルの内政は、最近安定を欠き、昨年十月と本年一月の二回革命が行なわれたが、現政権は、自由民主々義の線にそって政治の安定と民衆の福祉のため努力しており、わが国は、本年二月十七日これを承認した。
キューバ、ドミニカ共和国、ヴェネズエラ、コロンビアおよびハイティ等の諸国とわが国との関係は通商ないし移住の面において今後とも発展の可能性を有するところ、キューバをめぐるカリブ海の情勢は、東西冷戦の場として昨年来悪化の一路をたどっているが、わが国は、キューバとの経済関係を安定した基礎に置くべく、昨年四月二十二日、両国間通商協定に署名した。またドミニカ共和国は、昨年八月、コスタ・リカにおいて開催された第六回米州機構外相会議により、米国および爾余のラテン・アメリカ諸国から外交関係断絶の措置を受けたが、右事態に関連し、わが国は、ドミニカ共和国におけるチリおよびハイティ両国の利益代表業務およびチリ国におけるドミニカ共和国の利益代表業務の引受方をそれぞれの国より要請されたので、これを受諾した。
ブラジルには、現在四十五万余の日系人が在住しており、また三十余社に上る日本企業が進出している。この事実は、ラテン・アメリカ諸国中においても最も注目すべきものであり、また移住・通商・経済協力、さらには文化交流の面においても日伯両国の関係はラテン・アメリカ諸国中最も緊密である。昨年十一月十四日に日伯移植民協定が、また本年一月二十三日には日伯文化協定がそれぞれ調印され、わが国とブラジルとの親善協力関係は将来ますます発展することが期待される。本年一月三十一日挙行されたブラジル国新大統領ジャニオ・クワドロス氏の就任式には在ブラジル安東大使が特派大使として参列した。
アルゼンティンは、フロンディシ政権四年目を迎えてその困難を極めた経済情勢もようやく安定から強化発展への段階に入り、本年二月わが国に着任したオルフィーラ大使は両国の経済関係のより一層の緊密化を希望する大統領の積極的意向を伝えている。昨年五月には同国独立一五〇周年の記念祝典が盛大に挙行せられたが(本書第四号一〇一頁参照)、わが国は、衆議院議員星島二郎氏を特派大使としてこれに派遣列席せしめた。
ウルグァイおよびパラグァイの両国もわが国とは伝統的に友好関係にあり、とくにパラグァイは、移住および経済協力の面において、わが国にとって著しくその重要性を増した。これら両国とわが国との友好協力関係をさらに一層増進するため、わが国は、昭和三十六年度中に、相互主義の原則の下にそれぞれの国にある公使館を大使館に昇格させる予定である。
ペルーには約五万の日系人が在住しており、南米中ブラジルの四十五万に次ぐものであるので、これらの日系人の地位向上はわが国にとっても重大な関心事であるが、日本・ペルー両国間の友好関係は、逐年強化せられつつあり、とくに本年五月プラード大統領のわが国賓としての来日は、中南米諸国より、戦前、戦後を通じ、初めての現職大統領の訪日であり、今後の両国間関係は、政治的にも経済的にも今後一層緊密化するものと期待されている。
チリとわが国とは、戦前戦後を通じて変らざる友好関係にあり、経済関係も逐年緊密化しているが、昨年五月のチリ震災に際しては、天皇陛下、総理大臣および外務大臣からチリ大統領および外務大臣に対しそれぞれ見舞電が発せられ、また相当額の慰問金および救助品がわが朝野から贈られるとともに、政府は急遽わが国の地理学専門学者を派遣し、災害対策に協力せしめた。このことは、チリ側の深く感謝するところとなった。
ボリヴィアはわが移住者の受入地として有望な国の一つであり、一九五六年八月二日同国との間にわが国として初めての移住協定が締結された(本書第一号六十二頁参照)が、同協定に基づく移住の期間は本年八月一日を以って満了するので、本年二月十一日この期間をさらに一年間延長する趣旨の書簡を両国間で交換した。両国間の緊密なる友好関係に鑑み、昭和三十六年度には相互に公使館を大使館昇格させる予定である。
エクアドルはわが移住者の受入れや中小企業の導入を歓迎し、また両国貿易関係の拡大を希望しており、本年二月在本邦同国公使館を大使館に昇格したが、わが方も昭和三十六年度中に在エクアドル公使館を大使館に昇格する予定である。