資   料

○安 全 保 障 関 係

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約

日本国及びアメリカ合衆国は、

両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、

また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、

国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、

両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、

両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、

相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、

よつて、次のとおり協定する。

第一条

締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。

締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。

第二条

締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。

第三条

締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。

第四条

締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。

第五条

各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宜言する。

前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために心要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

第六条

日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

第七条

この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。

第八条

この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。

第九条

千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。

第十条

この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。

もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。

以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。

千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために

岸  信介

藤山愛一郎

石井光次郎

足立  正

朝海浩一郎

アメリカ合衆国のために

クリスチャン・A・ハーター

ダグラス・マックアーサー二世

J・グレイアム・パースンズ

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条約第六条の実施に関する交換公文

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及し、次のことが同条約第六条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。

合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行われる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。

本大臣は、閣下が、前記のことがアメリカ合衆国の了解でもあることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日にワシントンで

岸   信 介

アメリカ合衆国国務長官 クリスチャン・A・ハーター閣下

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及し、次のことが同条約第六条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。

合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。

本大臣は、閣下が、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

本長官は、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。

本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日

アメリカ合衆国国務長官

クリスチャン・A・ハーター

日本国総理大臣 岸信介閣下

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吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約、同日日本国内閣総理大臣吉田茂とアメリカ合衆国国務長官ディーン・アチソンとの間に行なわれた交換公文、千九百五十四年二月十九日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定及び本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約に言及する光栄を有します。次のことが、本国政府の了解であります。

1 前記の交換公文は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。

2 前記の協定第五条2にいう「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いてアメリカ合衆国の使用に供せられている施設及び区域」とは、相互協力及び安全保障条約に基づいてアメリカ合衆国が使用を許される施設及び区域を意味するものと了解される。

3 千九百五十年七月七日の安全保障理事会決議に従つて設置された国際連合統一司令部の下にある合衆国軍隊による施設及び区域の使用並びに同軍隊の日本国における地位は、相互協力及び安全保障条約に従つて行なわれる取極により規律される。

本長官は、閣下が、前各号に述べられた本国政府の了解が貴国政府の了解でもあること及びこの了解が千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された相互協力及び安全保障条約の効力の発生の日から実施されるものであることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日

アメリカ合衆国国務長官

クリスチャン・A・ハーター

日本国総理大臣 岸信介閣下

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約、同日日本国内閣総理大臣吉田茂とアメリカ合衆国国務長官ディーン・アチソンとの間に行なわれた交換公文、千九百五十四年二月十九日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定及び本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約に言及する光栄を有します。次のことが、本国政府の了解であります。

1 前記の交換公文は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。

2 前記の協定第五条2にいう「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いてアメリカ合衆国の使用に供せられている施設及び区域」とは、相互協力及び安全保障条約に基づいてアメリカ合衆国が使用を許される施設及び区

域を意味するものと了解される。

3 千九百五十年七月七日の安全保障理事会決議に従つて設置された国際連合統一司令部の下にある合衆国軍隊による施設及び区域の使用並びに同軍隊の日本国における地位は、相互協力及び安全保障条約に従つて行なわれる取極により規律される。

本長官は、閣下が、前各号に述べられた本国政府の了解が貴国政府の了解でもあること及びこの了解が千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された相互協力及び安全保障条約の効力の発生の日から実施されるものであることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

本大臣は、前記のことが日本国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日にワシントンで

岸   信 介

アメリカ合衆国国務長官 クリスチャン・A・ハーター閣下

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相互防衛援助協定に関する交換公文

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約に言及する光栄を有します。千九百五十四年三月八日に東京で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互防衛援助協定において千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約及びアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に言及しているときは、相互協力及び安心保障条約及びアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に該当する規定があれば、これに言及しているものとみなすことがアメリカ合衆国政府の了解であります。

本長官は、閣下が、前記のことが日本国政府の了解でもあること及びこの了解が相互協力及び安全保障条約の効力発生の日から実施されるものであることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日

アメリカ合衆国国務長官

クリスチャン・A・ハーター

日本国総理大臣 岸信介閣下

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約に言及する光栄を有します。千九百五十四年三月八日に東京で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互防衛援助協定において千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約及びアメリカ合衆国と日本国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に言及しているときは、相互協力及び安全保障条約及びアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に該当する規定があれば、これに言及しているものとみなすことがアメリカ合衆国政府の了解であります。

本長官は、閣下が、前記のことが日本国政府の了解でもあること及びこの了解が相互協力及び安全保障条約の効力発生の日から実施されるものであることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

本大臣は、前記のことが日本国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日にワシントンで

岸   信 介

アメリカ合衆国国務長官 クリスチャン・A・ハーター閣下

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相互協力及び安全保障条約についての合意された議事録

日本国全権委員

日本国との平和条約第三条の規定に基づいて合衆国が施政を行なつている諸島の地位の問題は、条約交渉の過程において討議の対象とされなかつたが、本全権委員は、日本国がこれらの諸島に対する潜在的主権を有しているので、これらの諸島民の安全に対し日本国の政府及び国民の有する強い関心を強調したいと思う。もしこれらの諸島に対し武力攻撃が発生し、又は武力攻撃の脅威がある場合には、両国は、もちろん相互協力及び安全保障条約第四条の規定に基づいて緊密に協議を行なう。武力攻撃が発生した場合には、日本国政府は、同政府が島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する。

合衆国全権委員

これらの諸島に対する武力攻撃が発生した場合には、合衆国政府は、日本国政府と直ちに協議し、また、これらの諸島の防衛のため必要な措置を執り、かつ、島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。

千九百六十年一月十九日にワシントンで

N・K

C・A・H

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安全保障協議委員会の設置に関する往復書簡

拝 啓

本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及したいと思います。両政府は、同条約第四条の規定に基づいて、条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の政府の要請により協議することになつています。条約第六条の規定に基づく交換公文は、日本国政府との事前の協議の主題として一定の事項を掲げています。

このような協議は、両政府が適当な諸経路を通じて行なうことになります。しかしながら、同時に、本大臣は、両政府間のこれらの協議のために時宜により使用することができる特別の委員会を設置することが非常に有益であろうと思います。この委員会は、いずれか一方の要請があるときはいつでも会合するものとし、両政府間の理解を促進することに役だち、及び安全保障の分野における両国間の協力関係の強化に貢献するような問題で安全保障問題の基盤をなし、かつ、これに関連するものを検討することもできるでありましよう。

この提案によれば、千九百五十七年八月六日に日本国及び合衆国政府が設置した「日米安全保障委員会」は、この新しい委員会によつて代わられることになりますが、この委員会は、「安全保障協議委員会」と呼称することとしてはどうかと思います。本大臣は、また、この新しい委員会の構成を「日米安全保障委員会」の構成と同じにすること、すなわち、日本側においては、日本側を主宰する外務大臣のほか防衛庁長官とし、合衆国側においては、合衆国側の議長たる日本国駐在合衆国大使のほか軍事上及び防衛上の問題に関する同大使の首席顧問たる大平洋軍司令官とすることを勧告いたします。在日米軍司令官は、大平洋軍司令官の代理となることができます。

本大臣は、この問題に関する貴長官の見解を通報されれば幸いであります。

敬具

千九百六十年一月十九日にワシントンで

岸   信 介

アメリカ合衆国国務長官 クリスチャン・A・ハーター閣下

(訳 文)

拝 啓

本長官は、「安全保障協議委員会」の設置を提案された本日付けの貴大臣の書簡を受領したことを確認いたします。本長官は、貴大臣の提案に完全に同意し、また、このような委員会が安全保障の分野における両国間の協力関係の強化に貢献するであろうとの貴大臣の見解に賛同するものであります。本長官は、また、この委員会の構成に関する貴大臣の提案に同意いたします。

敬具

千九百六十年一月十九日

クリスチャン・A・ハーター

日本国総理大臣 岸信介閣下

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日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定

日本国及びアメリカ合衆国は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条の規定に従い、次に掲げる条項によりこの協定を締結した。

第一条

この協定において、

(a) 「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。

(b) 「軍属」とは、合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に居住する者及び第十四条1に掲げる者を除く。)をいう。この協定のみの適用上、合衆国及び日本国の二重国籍者で合衆国が日本国に入れたものは、合衆国国民とみなす。

(c) 「家族」とは、次のものをいう。

(1) 配偶者及び二十一才未満の子

(2) 父、母及び二十一才以上の子で、その生計費の半額以上を合衆国軍隊の構成員又は軍属に依存するもの

第二条

1(a) 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。

(b) 合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従つて合意した施設及び区域とみなす。

2 日本国政府は、いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再検討しなければならず、また、前記の施設及び区域を日本国に返還すべきこと又は新たに施設及び区域を提供することを合意することができる。

3 合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。

4(a) 合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる。ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとつて有害でないことが合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る。

(b) 合衆国軍隊が一定の期間を限つて使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。

   第三条

1 合衆国は、施設及び区域において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。

2 合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域から又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によつては執らないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の措置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本国政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。

3 合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払つて行なわなければならない。

第四条

1 合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。

2 日本国は、この協定の終了の際又はその前における施設及び区域の返還の際、当該施設及び区域に加えられている改良又はそこに残される建物若しくはその他の工作物について、合衆国にいかなる補償をする義務も負わない。

3 前記の規定は、合衆国政府が日本国政府との特別取極に基づいて行なう建設には適用しない。

第五条

1 合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によつて、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。この協定による免除を与えられない貨物又は旅客がそれらの船舶又は航空機で運送されるときは、日本国の当局にその旨の通告を与えなければならず、その貨物又は旅客の日本国への入国及び同国からの出国は、日本国の法令による。

2 1に掲げる船舶及び航空機、合衆国政府所有の車両(機甲車両を含む。)並びに合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、合衆国軍隊が使用している施設及び区域に出入し、これらのものの間を移動し、及びこれらのものと日本国の港又は飛行場との間を移動することができる。合衆国の軍用車両の施設及び区域への出入並びにこれらのものの間の移動には、道路使用料その他の課徴金を課さない。

3 1に掲げる船舶が日本国の港に入る場合には、通常の状態においては、日本国の当局に適当な通告をしなければならない。その船舶は、強制水先を免除される。もつとも、水先人を使用したときは、応当する料率で水先料を払わなければならない。

第六条

1 すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、かつ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を図るため必要な手続及びそれに対するその後の変更は、両政府の当局間の取極によつて定める。

2 合衆国軍隊が使用している施設及び区域並びにそれらに隣接し又はそれらの近傍の領水に置かれ、又は設置される燈火その他の航行補助施設及び航空保安施設は、日本国で使用されている様式に合致しなければならない。これらの施設を設置した日本国及び合衆国の当局は、その位置及び特徴を相互に通告しなければならず、かつ、それらの施設を変更し、又は新たに設置する前に予告をしなければならない。

第七条

合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする。

第八条

日本国政府は、両政府の当局間の取極に従い、次の気象業務を合衆国軍隊に提供することを約束する。

(a) 地上及び海上からの気象観測(気象観測船からの観測を含む。)

(b) 気象資料(気象庁の定期的概報及び過去の資料を含む。)

(c) 航空機の安全かつ正確な運航のため必要な気象情報を報ずる電気通信業務

(d) 地震観測の資料(地震から生ずる津波の予想される程度及びその津波の影響を受ける区域の予報を含む。)

第九条

1 この条の規定に従うことを条件として、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国に入れることができる。

2 合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。ただし、日本国の領域における永久的な居所又は住所を要求する権利を取得するものとみなされない。

3 合衆国軍隊の構成員は、日本国への入国又は日本国からの出国に当たつて、次の文書を携帯しなければならない。

(a) 氏名、生年月日、階級及び番号、軍の区分並びに写真を掲げる身分証明書

(b) その個人又は集団が合衆国軍隊の構成員として有する地位及び命令された旅行の証明となる個別的又は集団的旅行の命令書

合衆国軍隊の構成員は、日本国にある間の身分証明のため、前記の身分証明書を携帯していなければならない。身分証明書は、要請があるときは日本国の当局に提示しなければならない。

4 軍属、その家族及び合衆国軍隊の構成員の家族は、合衆国の当局が発給した適当な文書を携帯し、日本国への入国若しくは日本国からの出国に当たつて又は日本国にある間のその身分を日本国の当局が確認することができるようにしなければならない。

5 1の規定に基づいて日本国に入国した者の身分に変更があつてその者がそのような入国の資格を有しなくなつた場合には、合衆国の当局は、日本国の当局にその旨を通告するもののとし、また、その者が日本国から退去することを日本国の当局によつて要求されたときは、日本国政府の負担によらないで相当の期間内に日本国から輸送することを確保しなければならない。

6 日本国政府が合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の日本国の領域からの送出を要請し、又は合衆国軍隊の旧構成員若しくは旧軍属に対し若しくは合衆国軍隊の構成員、軍属、旧構成員若しくは旧軍属の家族に対し退去命令を出したときは、合衆国の当局は、それらの者を自国の領域内に受け入れ、その他日本国外に送出することにつき責任を負う。この項の規定は、日本国民でない者で合衆国軍隊の構成員若しくは軍属として又は合衆国軍隊の構成員若しくは軍属となるために日本国に入国したもの及びそれらの者の家族に対してのみ適用する。

第十条

1 日本国は、合衆国が合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対して発給した運転許可証若しくは運転免許証又は軍の運転許可証を、運転者試験又は手数料を課さないで、有効なものとして承認する。

2 合衆国軍隊及び軍属用の公用車両は、それを容易に識別させる明確な番号標又は個別の記号を付けていなければならない。

3 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私有車両は、日本国民に適用される条件と同一の条件で取得する日本国の登録番号標を付けていなければならない。

第十一条

1 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、この協定中に規定がある場合を除くほか、日本国の税関当局が執行する法令に服さなければならない。

2 合衆国軍隊、合衆国軍隊の公認調達機関又は第十五条に定める諸機関が合衆国軍隊の公用のため又は合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の使用のため輸入するすべての資材、需品及び備品並びに合衆国軍隊が専用すべき資材、需品及び備品又は合衆国軍隊が使用する物品若しくは施設に最終的には合体されるべき資材、需品及び備品は、日本国に入れることを許される。この輸入には、関税その他の課徴金を課さない。前記の資材、需品及び備品は、合衆国軍隊、合衆国軍隊の公認調達機関又は第十五条に定める諸機関が輸入するものである旨の適当な証明書(合衆国軍隊が専用すべき資材、需品及び備品又は合衆国軍隊が使用する物品若しくは施設に最終的には合体されるべき資材、需品及び備品にあつては、合衆国軍隊が前記の目的のために受領すべき旨の適当な証明書)を必要とする。

3 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に仕向けられ、かつ、これらの者の私用に供される財産には、関税その他の課徴金を課する。ただし、次のものについては、関税その他の課徴金を課さない。

(a) 合衆国軍隊の構成員若しくは軍属が日本国で勤務するため最初に到着した時に輸入し、又はそれらの家族が当該合衆国軍隊の構成員若しくは軍属と同居するため最初に到着した時に輸入するこれらの者の私用のための家庭用品並びにこれらの者が入国の際持ち込む私用のための身回品

(b) 合衆国軍隊の構成員又は軍属が自己又はその家族の私用のため輸入する車両及び部品

(c) 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私用のため合衆国において通常日常用として購入される種類の合理的な数量の衣類及び家庭用品で、合衆国軍事郵便局を通じて日本国に郵送されるもの

4 2及び3で与える免除は、物の輸入の場合のみに適用するものとし、関税及び内国消費税がすでに徴収された物を購入する場合に、当該物の輸入の際関税当局が徴収したその関税及び内国消費税を払いもどすものと解してはならない。

5 税関検査は、次のものの場合には行なわないものとする。

(a) 命令により日本国に入国し、又は日本国から出国する合衆国軍隊の部隊

(b) 公用の封印がある公文書及び合衆国軍事郵便路線上にある公用郵便物

(c) 合衆国政府の船荷証券により船積みされる軍事貨物

6 関税の免除を受けて日本国に輸入された物は、日本国及び合衆国の当局が相互間で合意する条件に従つて処分を認める場合を除くほか、関税の免除を受けて当該物を輸入する権利を有しない者に対して日本国内で処分してはならない。

7 2及び3の規定に基づき関税その他の課徴金の免除を受けて日本国に輸入された物は、関税その他の課徴金の免除を受けて再輸出することができる。

8 合衆国軍隊は、日本国の当局と協力して、この条の規定に従つて合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に与えられる特権の濫用を防止するため必要な措置を執らなければならない。

9 (a) 日本国の当局及び合衆国軍隊は、日本国政府の税関当局が執行する法令に違反する行為を防止するため、調査の実施及び証拠の収集について相互に援助しなければならない。

(b) 合衆国軍隊は、日本国政府の税関当局によつて又はこれに代わつて行なわれる差押えを受けるべき物件がその税関当局に引き渡されることを確保するため、可能なすべての援助を与えなければならない。

(c) 合衆国軍隊は、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族が納付すべき関税、租税及び罰金の納付を確保するため、可能なすべての援助を与えなければならない。

(d) 合衆国軍隊に属する車両及び物件で、日本国政府の関税又は財務に関する法令に違反する行為に関連して日本国政府の税関当局が差し押えたものは、関係部隊の当局に引き渡さなければならない。

第十二条

1 合衆国は、この協定の目的のため又はこの協定で認められることにより日本国で供給されるべき需品又は行なわれるべき工事のため、供給者又は工事を行なう者の選択に関して制限を受けないで契約することができる。そのような需品又は工事は、また、両政府の当局間で合意されるときは、日本国政府を通じて調達することができる。

2 現地で供給される合衆国軍隊の維持のため必要な資材、需品、備品、及び役務でその調達が日本国の経済に不利な影響を及ぼすおそれがあるものは、日本国の権限のある当局との調整の下に、また、望ましいときは日本国の権限のある当局を通じて又はその援助を得て、調達しなければならない。

3 合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が適当な証明書を附して日本国で公用のため調達する資材、需品、備品及び役務は、日本の次の租税を免除される。

(a) 物 品 税

(b) 通 行 税

(c) 揮発油税

(d) 電気ガス税

最終的には合衆国軍隊が使用するため調達される資材、需品、備品及び役務は、合衆国軍隊の適当な証明書があれば、物品税及び揮発油税を免除される。両政府は、この条に明示していない日本の現在の又は将来の租税で、合衆国軍隊によつて調達され、又は最終的には合衆国軍隊が使用するため調達きれる資材、需品、備品及び役務の購入価格の重要なかつ容易に判別することができる部分をなすと認められるものに関しては、この条の目的に合致する免税又は税の軽減を認めるための手続について合意するものとする。

4 現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。

5 所得税、地方住民税及び社会保障のための納付金を源泉徴収して納付するための義務並びに、相互間で別段の合意をする場合を除くほか、賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。

6 合衆国軍隊又は、適当な場合には、第十五条に定める機関により労働者が解職され、かつ、雇用契約が終了していない旨の日本国の裁判所又は労働委員会の決定が最終的のものとなつた場合には、次の手続が適用される。

(a) 日本国政府は、合衆国軍隊又は前記の機関に対し、裁判所又は労働委員会の決定を通報する。

(b) 合衆国軍隊又は前記の機関が当該労働者を就労させることを希望しないときは合衆国軍隊又は前記の機関は、日本国政府から裁判所又は労働委員会の決定について通報を受けた後七日以内に、その旨を日本国政府に通告しなければならず、暫定的にその労働者を就労させないことができる。

(c) 前記の通告が行なわれたときは、日本国政府及び合衆国軍隊又は前記の機関は、事件の実際的な解決方法を見出すため遅滞なく協議しなければならない。

(d) (c)の規定に基づく協議の開始の日から三十日の期間内にそのような解決に到達しなかつたときは、当該労働者は、就労することができない。このような場合には合衆国政府は、日本国政府に対し、両政府間で合意される期間の当該労働者の雇用の費用に等しい額を支払わなければならない。

7 軍属は、雇用の条件に関して日本国の法令に服さない。

8 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、日本国における物品及び役務の個人的購入について日本国の法令に基づいて課される租税又は類似の公課の免除をこの条の規定を理由として享有することはない。

9 3に掲げる租税の免除を受けて日本国で購入した物は、日本国及び合衆国の当局が相互間で合意する条件に従つて処分を認める場合を除くほか、当該租税の免除を受けて当該物を購入する権利を有しない者に対して日本国内で処分してはならない。

第十三条

1 合衆国軍隊は、合衆国軍隊が日本国において保有し、使用し、又は移転する財産について租税又は類似の公課を課されない。

2 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、これらの者が合衆国軍隊に勤務し、又は合衆国軍隊若しくは第十五条に定める諸機関に雇用された結果受ける所得について、日本国政府又は日本国にあるその他の課税権者に日本の租税を納付する義務を負わない。この条の規定は、これらの者に対し、日本国の源泉から生ずる所得について日本の租税の納付を免除するものではなく、また、合衆国の所得税のために日本国に居所を有することを申し立てる合衆国市民に対し、所得についての日本の租税の納付を免除するものではない。これらの者が合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族であるという理由のみによつて日本国にある期間は、日本の租税の賦課上、日本国に居所又は住所を有する期間とは認めない。

3 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、これらの者が一時的に日本国にあることのみに基づいて日本国に所在する有体又は無体の動産の保有、使用、これらの者相互間の移転又は死亡による移転についての日本国における租税を免除される。ただし、この免除は、投資若しくは事業を行なうため日本国において保有される財産又は日本国において登録された無体財産権には適用しない。この条の規定は、私有車両による道路の使用について納付すべき租税の免除を与える義務を定めるものではない。

第十四条

1 通常合衆国に居住する人(合衆国の法律に基づいて組織された法人を含む。)及びその被用者で、合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行のみを目的として日本国にあり、かつ、合衆国政府が2の規定に従い指定するものは、この条に規定がある場合を除くほか、日本国の法令に服さなければならない。

2 1にいう指定は、日本国政府との協議の上で行なわれるものとし、かつ、安全上の考慮、関係業者の技術上の適格要件、合衆国の標準に合致する資材若しくは役務の欠如又は合衆国の法令上の制限のため競争入札を実施することができない場合に限り行なわれるものとする。

前記の指定は、次のいずれかの場合には、合衆国政府が取り消すものとする。

(a) 合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行が終わつたとき。

(b) それらの者が日本国において合衆国軍隊関係の事業活動以外の事業活動に従事していることが立証されたとき。

(c) それらの者が日本国で違法とされる活動を行なつているとき。

3 前記の人及びその被用者は、その身分に関する合衆国の当局の証明があるときは、この協定による次の利益を与えられる。

(a) 第五条2に定める出入及び移動の権利

(b) 第九条の規定による日本国への入国

(c) 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族について第十一条3に定める関税その他の課徴金の免除

(d)合衆国政府により認められたときは、第十五条に定める諸機関の役務を利用する権利

(e) 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族について第十九条2に定めるもの

(f) 合衆国政府により認められたときは、第二十条に定めるところにより軍票を使用する権利

(g) 第二十一条に定める郵便施設の利用

(h) 雇用の条件に関する日本国の法令の適用からの除外

4 前記の人及びその被用者は、その身分の者であることが旅券に記載されていなければならず、その到着、出発及び日本国にある間の居所は、合衆国軍隊が日本国の当局に随時に通告しなければならない。

5 前記の人及びその被用者が1に掲げる契約の履行のためにのみ保有し、使用し、又は移転する減価償却資産(家屋を除く。)については、合衆国軍隊の権限のある官憲の証明があるときは、日本の租税又は類似の公課を課されない。

6 前記の人及びその被用者は、合衆国軍隊の権限のある官憲の証明があるときは、これらの者が一時的に日本国にあることのみに基づいて日本国に所在する有体又は無体の動産の保有、使用、死亡による移転又はこの協定に基づいて租税の免除を受ける権利を有する人若しくは機関への移転についての日本国における租税を免除される。ただし、この免除は、投資のため若しくは他の事業を行なうため日本国において保有される財産又は日本国において登録された無体財産権には適用しない。この条の規定は、私有車両による道路の使用について納付すべき租税の免除を与える義務を定めるものではない。

7 1に掲げる人及びその被用者は、この協定に定めるいずれかの施設又は区域の建設、維持又は運営に関して合衆国政府と合衆国において結んだ契約に基づいて発生する所得について、日本国政府又は日本国にあるその他の課税権者に所得税又は法人税を納付する義務を負わない。この項の規定は、これらの者に対し、日本国の源泉から生ずる所得についての所得税又は法人税の納付を免除するものではなく、また、合衆国の所得税のために日本国に居所を有することを申し立てる前記の人及びその被用者に対し、所得についての日本の租税の納付を免除するものではない。これらの者が合衆国政府との契約の履行に関してのみ日本国にある期間は、前記の租税の賦課上、日本国に居所又は住所を有する期間とは認めない。

8 日本国の当局は、1に掲げる人及びその被用者に対し、日本国において犯す罪で日本国の法令によつて罰することができるものについて裁判権を行使する第一次の権利を有する。日本国の当局が前記の裁判権を行使しないことに決定した場合には、日本国の当局は、できる限りすみやかに合衆国の軍当局にその旨を通告しなければならない。この通告があつたときは、合衆国の軍当局は、これらの者に対し、合衆国の法令により与えられた裁判権を行使する権利を有する。

第十五条

1(a) 合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する海軍販売所、ピー・エックス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞その他の歳出外資金による諸機関は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の利用に供するため、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内に設置することができる。これらの諸機関は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、日本の規制、免許、手数料、租税又は類似の管理に服さない。

(b) 合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する新聞が一般の公衆に販売されるときは、当該新聞は、その頒布に関する限り、日本の規制、免許、手数料、租税又は類似の管理に服する。

2 これらの諸機関による商品及び役務の販売には、1(b)に定める場合を除くほか、日本の租税を課さず、これらの諸機関による商品及び需品の日本国内における購入には、日本の租税を課する。

3 これらの諸機関が販売する物品は、日本国及び合衆国の当局が相互間で合意する条件に従つて処分を認める場合を除くほか、これらの諸機関から購入することを認められない者に対して日本国内で処分してはならない。

4 この条に掲げる諸機関は、日本国の当局に対し、日本国の税法が要求するところにより資料を提供するものとする。

第十六条

日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。

第十七条

1 この条の規定に従うことを条件として、

(a) 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。

(b) 日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によつて罰することができるものについて、裁判権を有する。

2(a) 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服する者に対し、合衆国の法令によつて罰することができる罪で日本国の法令によつては罰することができないもの(合衆国の安全に関する罪を含む。)について、専属的裁判権を行使する権利を有する。

(b) 日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の法令によつて罰することができる罪で合衆国の法令によつては罰することができないもの(日本国の安全に関する罪を含む。)について、専属的裁判権を行使する権利を有する。

(c) 2及び3の規定の適用上、国の安全に関する罪は、次のものを含む。

(i) 当該国に対する反逆

(ii) 妨害行為(サボタージュ)諜報行為又は当該国の公務上若しくは国防上の秘密に関する法令の違反

3 裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。

(a) 合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。

(i) もつぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもつぱら合衆国軍隊の他の構成員若しく軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若しくは、財産のみに対する罪

(ii) 公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪

(b) その他の罪について、日本国の当局が、裁判権を行使する第一次の権利を有する。

(c) 第一次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、できる限りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。第一次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があつたときは、その要請に好意的考慮を払わなければならない。

4 前諸項の規定は、合衆国の軍当局が日本国民又は日本国に通常居住する者に対し裁判権を行使する権利を有することを意味するものではない。ただし、それらの者が合衆国軍隊の構成員であるときは、この限りでない。

5(a) 日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕及び前諸項の規定に従つて裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。

(b) 日本国の当局は、合衆国の軍当局に対し、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕についてすみやかに通告しなければならない。

(c) 日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。

6(a) 日本国の当局及び合衆国の軍当局は、犯罪についてのすべての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出(犯罪に関連する物件の押収及び相当な場合にはその引渡しを含む。)について、相互に援助しなければならない。ただし、それらの物件の引渡しは、引渡しを行なう当局が定める期間内に還付されることを条件として行なうことができる。

(b) 日本国の当局及び合衆国の軍当局は、裁判権を行使する権判が競合するすべての事件の処理について、相互に通告しなければならない。

7(a) 死刑の判決は、日本国の法制が同様の場合に死刑を規定していない場合には、合衆国の軍当局が日本国内で執行してはならない。

(b) 日本国の当局は、合衆国の軍当局がこの条の規定に基づいて日本国の領域内で言い渡した自由刑の執行について合衆国の軍当局から援助の要請があつたときは、その要請に好意的考慮を払わなければならない。

8 被告人がこの条の規定に従つて日本国の当局又は合衆国の軍当局のいずれかにより裁判を受けた場合において、無罪の判決を受けたとき、又は有罪の判決を受けて服役しているとき、服役したとき、若しくは赦免されたときは、他方の国の当局は、日本国の領域内において同一の犯罪について重ねてその者を裁判してはならない。ただし、この項の規定は、合衆国の軍当局が合衆国軍隊の構成員を、その者が日本国の当局により裁判を受けた犯罪を構成した作為又は不作為から生ずる軍紀違反について、裁判することを妨げるものではない。

9 合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族は、日本国の裁判権に基づいて公訴を提起された場合には、いつでも、次の権利を有する。

(a) 遅滞なく迅速な裁判を受ける権利

(b) 公判前に自己に対する具体的な訴因の通知を受ける権利

(c) 自己に不利な証人と対決する権利

(d) 証人が日本国の管轄内にあるときは、自己のために強制的手続により証人を求める権利

(e) 自己の弁護のため自己の選択する弁護人をもつ権利又は日本国でその当時通常行なわれている条件に基づき費用を要しないで若しくは費用の補助を受けて弁護人をもつ権利

(f) 必要と認めたときは、有能な通訳を用いる権利

(g) 合衆国の政府の代表者と連絡する権利及び自己の裁判にその代表者を立ち会わせる権利

10(a) 合衆国軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は、第二条の規定に基づき使用する施設及び区域において警察権を行なう権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。

(b) 前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。

11 相互協力及び安全保障条約第五条の規定が適用される敵対行為が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府のいずれの一方も、他方の政府に対し六十日前に予告を与えることによつて、この条のいずれの規定の適用も停止させる権利を有する。この権利が行使されたときは、日本国政府は、適用を停止される規定に代わるべき適当な規定を合意する目的をもつて直ちに協議しなければならない。

12 この条の規定は、この協定の効力発生前に犯したいかなる罪にも適用しない。それらの事件に対しては、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条の当該時に存在した規定を適用する。

第十八条

1 各当事国は、自国が所有し、かつ、自国の陸上、海上又は航空の防衛隊が使用する財産に対する損害については、次の場合には、他方の当事国に対するすべての請求権を放棄する。

(a) 損害が他方の当事国の防衛隊の構成員又は被用者によりその者の公務の執行中に生じた場合

(b) 損害が他方の当事国が所有する車両、船舶又は航空機でその防空機でその防衛隊が使用するものの使用から生じた場合。ただし、損害を与えた車両、船舶若しくは航空機が公用のため使用されていたとき、又は損害が公用のためされている財産に生じたときに限る。

海難救助についての一方の当事国の他方の当事国に対する請求権は、放棄する。ただし、救助された船舶又は積荷が、一方の当事国が所有し、かつ、その防術隊が公用のため使用しているものであつた場合に限る。

2(a) いずれか一方の当事国が所有するその他の財産で日本国内にあるものに対して1に掲げるようにして損害が生じた場合には、両政府が別段の合意をしない限り、(b)の規定に従つて選定される一人の仲裁人が、他方の当事国の責任の問題を決定し、及び損害の額を査定する。仲裁人は、また、同一の事件から生ずる反対の請求を裁定する。

(b) (a)に掲げる仲裁人は、両政府間の合意によつて、司法関係の上級の地位を現に有し、又は有したことがある日本国民の中から選定する。

(c) 仲裁人が行なつた裁定は、両当事国に対して拘束力を有する最終的のものとする。

(d) 仲裁人が裁定した賠償の額は、5(e)(i)、(ii)及び(iii)の規定に従つて分担される。

(e) 仲裁人の報酬は、両政府間の合意によつて定め、両政府が、仲裁人の任務の遂行に伴う必要な費用とともに、均等の割合で支払う。

(f) もつとも、各当事国は、いかなる場合においても千四百合衆国ドル又は五十万四千円までの額については、その請求権を放棄する。これらの通貨の間の為替相場に著しい変動があつた場合には、両政府は、前記の額の適当な調整について合意するものとする。

3 1及び2の規定の適用上、船舶について「当事国が所有する」というときは、その当事国が裸用船した船舶、裸の条件で徴発した船舶又は拿捕した船舶を含む。ただし、損失の危険又は責任が当該当事国以外の者によつて負担される範囲については、この限りでない。

4 各当事国は、自国の防衛隊の構成員がその公務の執行に従事している間に放つた負傷又は死亡については、他方の当事国に対するすべての請求権を放棄する。

5 公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しくは被用者の作為若しくは不作為又は合衆国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で、日本国において日本国政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権(契約による請求権及び6又は7の規定の適用を受ける請求権を除く。)は、日本国が次の規定に従つて処理する。

(a) 請求は、日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従つて、提起し、審査し、かつ、解決し、又は裁判する。

(b) 日本国は、前記のいかなる請求をも解決することができるものとし、合意され、又は裁判により決定された額の支払を日本円で行なう。

(c) 前記の支払(合意による解決に従つてされたものであると日本国の権限のある裁判所による裁判に従つてされたものであるとを問わない。)又は支払を認めない旨の日本国の権限のある裁判所による確定した裁判は、両当事国に対し拘束力を有する最終的のものとする。

(d) 日本国が支払をした各請求は、その明細並びに(e)(i)及び(ii)の規定による分担案とともに、合衆国の当局に通知しなければならない。二箇月以内に回答がなかつたときは、その分担案は、受諾されたものとみなす。

(e) (a)から(d)まで及び2の規定に従い請求を満たすために要した費用は、両当事国が次のとおり分担する。

(i) 合衆国のみが責任を有する場合には、裁定され、合意され、又は裁判により決定された額は、その二十五パーセントを日本国がその七十五パーセントを合衆国が分担する。

(ii) 日本国及び合衆国が損害について責任を有する場合には、裁定され、合意され、又は裁判により決定された額は、両当事国が均等に分担する。損害が日本国又は合衆国の防衛隊によつて生じ、かつ、その損害をこれらの防衛隊のいずれか一方又は双方の責任として特定することができない場合には、裁定され、合意され、又は裁判により決定された額は、日本国及び合衆国が均等に分担する。

(iii) 比率に基づく分担案が受諾された各事件について日本国が六箇月の期間内に支払つた額の明細書は、支払要請書とともに、六箇月ごとに合衆国の当局に送付する。その支払は、できる限りすみやかに日本円で行なわなければならない。

(f) 合衆国軍隊の構成員又は被用者(日本の国籍のみを有する被用者を除く。)は、その公務の執行から生ずる事項については、日本国においてその者に対して与えられた判決の執行手続に服さない。

(g) この項の規定は、(e)の規定が2に定める請求権に適用される範囲を除くほか、船舶の航行若しくは運用又は貨物の船積み、運送若しくは陸揚げから生じ、又はそれらに関連して生ずる請求権には適用しない。ただし、4の規定の適用を受けない死亡又は負傷に対する請求権については、この限りでない。

6 日本国内における不法の作為又は不作為で公務執行中に行なわれたものでないものから生ずる合衆国軍隊の構成員又は被用者(日本国民である被用者又は通常日本国に居住する被用者を除く。)に対する請求権は、次の方法で処理する。

(a) 日本国の当局は、当該事件に関するすべての事情(損害を受けた者の行動を含む。)を考慮して、公平かつ公正に請求を審査し、及び請求人に対する補償金を査定し、並びにその事件に関する報告書を作成する。

(b) その報告書は、合衆国の当局に交付するものとし、合衆国の当局は、遅滞なく、慰謝料の支払を申し出るかどうかを決定し、かつ、申し出る場合には、その額を決定する。

(c) 慰謝料の支払の申出があつた場合において、請求人がその請求を完全に満たすものとしてこれを受諾したときは、合衆国の当局は、みずから支払をしなければならず、かつ、その決定及び支払つた額を日本国の当局に通知する。

(d) この項の規定は、支払が請求を完全に満たすものとして行なわれたものでない限り、合衆国軍隊の構成員又は被用者に対する訴えを受理する日本国の裁判所の裁判権に影響を及ぼすものではない。

7 合衆国軍隊の車両の許容されていない使用から生ずる請求権は、合衆国軍隊が法律上責任を有する場合を除くほか、6の規定に従つて処理する。

8 合衆国軍隊の構成員又は被用者の不法の作為又は不作為が公務執行中にされたものであるかどうか、また、合衆国軍隊の車両の使用が許容されていたものであるかどうかについて紛争が生じたときは、その問題は、2(b)の規定に従つて選任された仲裁人に付託するものとし、この点に関する仲裁人の裁定は、最終的のものとする。

9(a) 合衆国は、日本国の裁判所の民事裁判権に関しては、5(f)に定める範囲を除くほか、合衆国軍隊の構成員又は被用者に対する日本国の裁判所の裁判権からの免除を請求してはならない。

(b) 合衆国軍隊が使用している施設及び区域内に日本国の法律に基づき強制執行を行なうべき私有の動産(合衆国軍隊が使用している動産を除く。)があるときは、合衆国の当局は、日本国の裁判所の要請に基づき、その財産を差し押えて日本国の当局に引き渡さなければならない。

(c) 日本国及び合衆国の当局は、この条の規定に基づく請求の公平な審理及び処理のための証拠の入手について協力するものとする。

10 合衆国軍隊による又は合衆国軍隊のための資材、需品、備品、役務及び労務の調達に関する契約から生ずる紛争でその契約の当事者によつて解決されないものは、調停のため合同委員会に付託することができる。ただし、この項の規定は、契約の当事者が有することのある民事の訴えを提起する権利を害するものではない。

11 この条にいう「防衛隊」とは、日本国についてはその自衛隊をいい、合衆国についてはその軍隊をいうものと了解される。

12 2及び5の規定は、非戦闘行為に伴つて生じた請求権についてのみ適用する。

13 この条の規定は、この協定の効力発生前に生じた請求権には適用しない。それらの請求権は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十八条の規定によつて処理する。

第十九条

1 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、日本国政府の外国為替管理に服さなければならない。

2 1の規定は、合衆国ドル若しくはドル証券で、合衆国の公金であるもの、合衆国軍隊の構成員及び軍属がこの協定に関連して勤務し、若しくは雇用された結果取得したもの又はこれらの者及びそれらの家族が日本国外の源泉から取得したものの日本国内又は日本国外への移転を妨げるものと解してはならない。

3 合衆国の当局は、2に定める特権の濫用又は日本国の外国為替管理の回避を防止するため適当な措置を執らなければならない。

第二十条

1(a) ドルをもつて表示される合衆国軍票は、合衆国によつて認可された者が、合衆国軍隊の使用している施設及び区域内における相互間の取引のため使用することができる。合衆国政府は、合衆国の規則が許す場合を除くほか、認可された者が軍票を用いる取引に従事することを禁止するよう適当な措置を執るものとする。日本国政府は、認可されない者が軍票を用いる取引に従事することを禁止するため必要な措置を執るものとし、また、合衆国の当局の援助を得て、軍票の偽造又は偽造軍票の使用に関与する者で日本国の当局の裁判権に服すべきものを逮捕し、及び処罰するものとする。

(b) 合衆国の当局が、認可されない者に対し軍票を行使する合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族を逮捕し、及び処罰すること並びに、日本国における軍票の許されない使用の結果として、合衆国又はその機関が、その認可されない者又は日本国政府若しくはその機関に対していかなる義務をも負うことはないことが合意される。

2 軍票の管理を行なうため、合衆国は、その監督の下に、合衆国が軍票の使用を認可した者の用に供する施設を維推し、及び運営する一定のアメリカの金融機関を指定することができる。軍用銀行施設を維持することを認められた金融機関は、その施設を当該機関の日本国における商業金融業務から場所的に分離して設置し、及び維持するものとし、これに、この施設を維持し、かつ、運営することを唯一の任務とする職員を置く。この施設は、合衆国通貨による銀行勘定を維持し、かつ、この勘定に関するすべての金融取引(第十九条2に定める範囲内における資金の受領及び送付を含む。)を行なうことを許される。

第二十一条

合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族が利用する合衆国軍事郵便局を、日本国にある合衆国軍事郵便局間及びこれらの軍事郵便局と他の合衆国郵便局との間における郵便物の送達のため、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内に設置し、及び運営することができる。

第二十二条

合衆国は、日本国に在留する適格の合衆国市民で合衆国軍隊の予備役団体への編入の申請を行なうものを同団体に編入し、及び訓練することができる。

第二十三条

日本国及び合衆国は、合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族並びにこれらのものの財産の安全を確保するため随時に必要となるべき措置を執ることについて協力するものとする。日本国政府は、その領域において合衆国の設備、備品、財産、記録及び公務上の情報の十分な安全及び保護を確保するため、並びに適用されるべき日本国の法令に基づいて犯人を罰するため、必要な立法を求め、及び必要なその他の措置を執ることに同意する。

第二十四条

1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。

2 日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。

3 この協定に基づいて生ずる資金上の取引に適用すべき経理のため、日本国政府と合衆国政府との間に取極を行なうことが合意される。

第二十五条

1 この協定の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政府と合衆国政府との間の協議機関として、合同委員会を設置する。合同委員会は、特に、合衆国が相互協力及び安全保障条約の目的の遂行に当つて使用するため必要とされる日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう。

2 合同委員会は、日本国政府の代表者一人及び合衆国政府の代表者一人で組織し、各代表者は、一人又は二人以上の代理及び職員団を有するものとする。合同委員会は、その手続規則を定め、並びに必要な補助機関及び事務機関を設ける。合同委員会は、日本国政府又は合衆国政府のいずれか一方の代表者の要請があるときはいつでも直ちに会合することができるように組織する。

3 合同委員会は、問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府にさらに考慮されるように移すものとする。

第二十六条

1 この協定は、日本国及び合衆国によりそれぞれの国内法上の手続に従つて承認されなければならず、その承認を通知する公文が交換されるものとする。

2 この協定は、1に定める手続が完了した後、相互協力及び安全保障条約の効力発生の日に効力を生じ、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)は、その時に終了する。

3 この協定の各当事国の政府は、この協定の規定中その実施のため予算上及び立法上の措置を必要とするものについて、必要なその措置を立法機関に求めることを約束する。

第二十七条

いずれの政府も、この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請することができる。その場合には、両政府は、適当な経路を通じて交渉するものとする。

第二十八条

この協定及びその合意された改正は、相互協力及び安全保障条約が有効である間、有効とする。ただし、それ以前に両政府間の合意によつて終了させたときは、この限りでない。

以上の証拠として、下名の全権委員は、この協定に署名した。

千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

日本国のために

岸  信介

藤山愛一郎

石井光次郎

足立  正

朝海浩一郎

アメリカ合衆国のために

クリスチャン・A・ハーター

ダグラス・マックアーサー二世

J・グレイアム・パースンズ

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施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第十二条6(d)に関する交換公文

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第十二条6(d)の規定に言及する光栄を有します。同条6(d)の第二文は「このような場合には、合衆国政府は、日本国政府に対し、両政府間で合意される期間の当該労働者の雇用の費用に等しい額を支払わなけれはばならない。」と規定しています。

本長官は、前記の期間は前記の協定第十二条6(b)に定める通告の後一年をこえないものとし、双方が同意しうる基準に基づいて第十二条6(c)にいう協議の際決定されうることを合衆国政府に代わつて提案したいと思います。

日本国政府が前記の提案を受諾されるときは、この書簡及び受諾を表明される閣下の返簡は、両政府間の合意を構成するものと認めます。

本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日

アメリカ合衆国国務長官

クリスチャン・A・ハーター

日本国総理大臣 岸信介閣下

(訳 文)

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第十二条6(d)の規定に言及する光栄を有します。同条6(d)の第二文は、「このような場合には、合衆国政府は、日本国政府に対し、両政府間で合意される期間の当該労働者の雇用に等しい額を支払わなければならない」と規定しています。

本長官は、前記の期間は前記の協定第十二条6(b)に定める通告の後一年をこえないものとし、双方が同意しうる基準に基づいて第十二条6(c)にいう協議の際決定されうることを合衆国政府に代わつて提案したいと思います。

日本国政府が前記の提案を受諾されるときは、この書簡及び受諾を表明される閣下の返簡は、両政府間の合意を構成するものと認めます。

本大臣は、日本国政府が合衆国政府の前記の提案を受諾することを閣下に通報し、かつ、閣下の書簡及びこの返簡が両政府間の合意を構成するものと認められることを確認する光栄を有します。

本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十年一月十九日ワシントンで

岸   信 介

アメリカ合衆国国務長官 クリスチャン・A・ハーター閣下

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日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定についての合意された議事録

日本国全権委員及びアメリカ合衆国全権委員は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の交渉において到達した次の了解を記録する。

第三条

第三条1の規定に基づいて合衆国が執ることのできる措置は、この協定の目的を遂行するのに必要な限度において、特に、次のことを含む。

1 施設及び区域を構築(浚渫及び埋立てを含む。)し、運営し、維持し、利用し、占有し、警備し、及び管理すること

2 建物又はその他の工作物を移動し、それらに対し変更を加え、定着物を附加し、又は附加物を建てること及び補助施設とともに附加的な建物又はその他の工作物を構築すること

3 港湾、水路、港門及び投錨地を改善し、及び深くすること並びにこれらの施設及び区域に出入するために必要な道路及び橋を構築し、又は維持すること

4 施設及び区域の能率的な運営及び安全のため軍事上必要とされる限度で、その施設及び区域を含む又はその近傍の水上、空間又は地上において船舶及び舟艇、航空機並びにその他の車両の投錨、係留、着陸、離陸及び操作を管理すること(禁止する措置を含む。)

5 合衆国が使用する路線に軍事上の目的で必要とされる有線及び無線の通信施設を構築すること。前記には、海底電線及び地中電線、導管並びに鉄道からの引込線を含む。

6 施設又は区域において、いずれの型態のものであるかを問わず、必要とされる又は適当な地上若しくは地下、空中又は水上若しくは水中の設備、兵器、物資、装置、船舶又は車両を構築し、設備し、維持し、及び使用すること。前記には、気象観測の体系、空中及び水上航行用の燈火、無線電話及び電波探知の装置並びに無線装置を含む。

第五条

1 「合衆国及び合衆国以外の国の船舶ヽヽヽヽヽで、合衆国によつて、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるもの」とは、合衆国公有船舶及び合衆国被用船舶(裸用船、航海用船及び期間用船契約によるもの)をいう。一部用船契約によるものは、含まれない。商業貨物及び私人たる旅客がこれらの船舶に積載されるのは、例外的な場合のみに限る。

2 この条の日本国の港とは、通常「開港」をいう。

3 「適当な通告」をする義務を免除されるのは、合衆国軍隊の安全のため又は類似の理由のため必要とされる例外的な場合に限られる。

4 この条に特に定めのある場合を除くほか、日本国の法令が適用される。

第七条

合衆国軍隊に適用される電気通信料金の問題は、特に、千九百五十二年二月二十八日に署名された行政協定の協議のための第十回合同会議の公式議事録に記録されている第七条に関する陳述に照らして、引き続き検討されることとし、前記の陳述は、これに言及したことによりこの議事録に組み入れられたものとする。

第九条

日本国政府は、両政府間で合意される手続に従つて、入国者の数及び種別につき定期的に通報を受ける。

第十一条

1 第十五条に定める諸機関が合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の使用のため第十一条2の規定に基づいて輸入する物品の量は、そのような使用のため必要とされる合理的な限度に限られる。

2 第十一条3(a)は、貨物の船積みが所有者の旅行と同時であることを必要とするものでなく、また、積込み又は船積みが一回であることを要求するものでない。

3 第十一条5(c)にいう「軍事貨物」とは、武器及び備品に限定されるものでなく、合衆国政府の船荷証券により合衆国軍隊に向けて船積みされるすべての貨物をいう。この「軍事貨物」という用語は、合衆国軍隊に向けて船積みされる貨物を合衆国政府の他の機関に向けて船積みされる貨物と区別するために用いられている。

4 合衆国軍隊は、日本国への搬入が日本国の関税に関する法令に違反するような物品が合衆国軍隊の構成員若しくは軍属若しくはそれらの家族によつて、又はそれらの者のために輸入されないことを確保するために実行可能なすべての措置を執る。合衆国軍隊は、そのような物品の搬入が発見されたときは、いつでも、すみやかにその旨を日本国の税関当局に通知する。

5 日本国の税関当局は、第十一条の規定に基づく物品の搬入に関連する濫用又は違反があつたと認めるときは、合衆国軍隊の当局に対してその問題を提起することができる。

6 第十一条9(b)及び(c)にいう「合衆国軍隊は、ヽヽヽヽヽ可能なすべての援助を与えなければならない」とは、合衆国軍隊による合理的なかつ実際的な措置をいう。

第十二条

1 合衆国軍隊は、日本国におけるその調達計画の予期される主要な変更についての関係情報を可能な限り事前に日本国の当局に提供する。

2 合同委員会その他の適当な者は、日本国及び合衆国の経済関係の法令及び商慣習の相違から生ずる調達契約に関する紛議の満足すべき解決につき研究する。

3 最終的には合衆国軍隊が使用する物資の購入に関する課税免除を確保する手続は、次のとおりとする。

a 合衆国軍隊に向けて託送され、又は仕向けられた資材、需品及び備品が、合衆国軍隊の監督の下に、もつぱら第二条に掲げる施設及び区域の構築、維持若しくは管理のための契約若しくは施設及び区域内にある軍隊の維持のための契約を履行するため使用され、又はその全部若しくは一部が消費されることとなつているか、あるいは、当該軍隊が使用する物品若しくは施設に最終的には合体させられるものである旨の適当な証明を合衆国軍隊がした場合には、合衆国軍隊の権限のある代表者が、生産者から直接に当該資材、需品及び備品の引渡しを受けるものとする。この場合、物品税及び揮発油税の徴収手続は、進めないものとする。

b 施設及び区域における前記の資材、需品及び備品の受領は、合衆国軍隊の権限のある官憲から日本国の当局に対して行なわれる。

c 物品税及び揮発油税の徴収手続は、次に定めるいずれかの時期まで進めないものとする。

(1) 合衆国軍隊が、前記の資材、需品及び備品の消費の量又は程度を確認して証明する時

(2) 合衆国軍隊が使用する物品又は施設に合体させられた前記の資材、需品及び備品の量を確認して証明する時

d c(1)又は(2)の規定に従つて証明された資材、需品及び備品は、その経費が合衆国政府予算から支払われ、又は日本国政府が合衆国の支出にあてる経費から支払われる限り、物品税及び揮発油税を免除される。

4 合衆国政府は、第十五条に定める諸機関に提供される労働者の雇用に関連して日本国政府の当局と前記の諸機関との間の該当する契約に基づき要する費用が日本国政府に返済されることを確保するものとする。

5 第十二条5にいう「日本国の法令」とは、第十二条6の規定に従うことを条件として、日本国の裁判所及び労働委員会の決定を含むことが了解される。

6 第十二条6の規定は、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内の軍紀の維持の攪乱を含む安全上の理由による解雇の場合にのみ適用されることが了解される。

7 第十五条に定める諸機関は、当局間の相互の合意に基づき第十二条6の手続に従うことが了解される。

第十三条

第十三条2及び第十四条7に関して、合衆国軍隊における勤務又は合衆国軍隊若しくは第十五条に定める諸機関による雇用の結果として、あるいは合衆国政府と合衆国において結んだ契約に基づいて日本国で受ける所得は、日本国の源泉から生ずる所得として取り扱われず、また、認められない。

第十五条

通常海外で同様の特権を与えられている合衆国政府のその他の官吏及び職員は、第十五条1に掲げる施設を利用することができる。

第十七条

1(a)及び2(a)に関し、

合衆国の軍法に服する者の範囲は、合衆国政府が合同委員会を通じて日本国政府に通知しなければならない。

2(c)に関し

両政府は、2(c)に掲げる安全に対するすべての罪に関する詳細及びそれぞれ自国の現行法規定でそれらの罪を定めるものを相互に通報しなければならない。

3(a)(ii)に関し、

合衆国軍隊の構成員又は軍属が起訴された場合において、その起訴された罪がもし被告人により犯されたとするならば、その罪が公務執行中の作為又は不作為から生じたものである旨を記載した証明書でその指揮官又は指揮官に代わるべき者が発行したものは、反証のない限り、刑事手続のいかなる段階においてもその事実の十分な証拠資料となる。

前項の陳述は、いかなる意味においても、日本国の刑事訴訟法第三百十八条を害するものと解釈してはならない。

3(c)に関し、

1 裁判権を行使する第一次の権利の放棄に関する相互の手続は、合同委員会が決定するものとする。

2 日本国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を放棄した事件の裁判及び(a)(ii)に定める罪で日本国又は日本国民に対して犯されたものに係る事件の裁判は、別段の取極が相互に合意されない限り、日本国において、犯罪が行なわれたと認められる場所から適当な距離内で、直ちに行なわなければならない。日本国の当局の代表者は、その裁判に立ち会うことができる。

4に関し、

日本国及び合衆国の二重国籍者で、合衆国の軍法に服しており、かつ、合衆国が日本国に入れたものは、4の適用上、日本国民とみなさず、合衆国国民とみなす。

5に関し、

1 日本国の当局は、日本国が裁判権を行使する第一次の権利を有する事件について、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で合衆国の軍法に服するものを犯人として逮捕したときは、その犯人を拘束する正当な理由及び必要があると思料する場合を除くほか、当該犯人を釈放し、合衆国の軍当局による拘禁にゆだねるものとする。ただし、日本国の当局がその犯人を取り調べることができることをその釈放の条件とした場合には、日本国の当局の要請があれば、日本国の当局がその犯人をいつでも取り調べることができるようにしなければならない。合衆国の当局は、日本国の当局の要請があれば、日本国の当局がその犯人を起訴した時にその犯人の身柄を日本国の当局に引き渡さなければならない。

2 合衆国の軍当局は、日本国が裁判権を行使する第一次の権利を有するすべての事件について、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕を直ちに日本国の当局に通告するものとする。

9に関し、

1 この項の(a)から(e)までに掲げる権利は、日本国憲法の規定により、日本国の裁判所において裁判を受けるすべての者に対して保障されている。これらの権利のほか、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国の裁判権の下に起訴されたものは、日本国の裁判所において裁判を受けるすべての者に対して日本国の法律が保障するその他の権利を有する。前記のその他の権利は、日本国憲法により保障されている次の権利を含む。

(a) その者は、自己に対する被疑事実を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。また、その者は、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

(b) その者は、公平な裁判所の公開裁判を受ける権利を有する。

(c) その者は、自己に不利益な供述を強要されない。

(d) その者は、すべての証人を審問する機会を十分に与えられる。

(e) その者は、残虐な刑罰を科せられることはない。

2 合衆国の当局は、要請すれば、いつでも、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国の権限の下に拘禁されているものに接見する権利を有する。

3 合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族で日本国の裁判権に基づいて起訴されたものの裁判に合衆国政府の代表者が立ち会うことに関する9(g)のいかなる規定も、裁判の公開に関する日本国憲法の規定を害するものと解釈してはならない。

10(a)及び10(b)に関し、

1 合衆国の軍当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設及び区域内ですべての逮捕を行なうものとする。このことは、合衆国軍隊の権限のある当局が同意する場合又は重大な罪を犯した現行犯人を追跡している場合において日本国の当局が前記の施設又は区域内において逮捕を行なうことを妨げるものではない。

日本国の当局が逮捕することを希望する者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものが、合衆国軍隊により使用されている施設又は区域内にある場合には、合衆国の軍当局は、日本国の当局の要請によりその者を逮捕することを約束する。合衆国の軍当局により逮捕された者で合衆国軍隊の裁判権に服さないすべてのものは、直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。

合衆国の軍当局は、施設又は区域の近傍において、当該施設又は当該区域の安全に対する罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続に従つて逮捕することができる。これらの者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものは、すべて、直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。

2 日本国の当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について、又は所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない。ただし、合衆国軍隊の権限のある当局が、日本国の当局によるこれらの捜索、差押え又は検証に同意した場合は、この限りでない。

合衆国軍隊が使用している施設若しくは区域内にある者、若しくは財産又は日本国にある合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なうことを日本国の当局が希望するときは、合衆国の軍当局は、要請により、その捜索、差押え又は検証を行なうことを約束する。これらの財産で合衆国政府又はその附属機関が所有し又は利用する財産以外のものについて、裁判が行なわれたときは、合衆国は、それらの財産を裁判に従つて処理するため日本国の当局に引き渡すものとする。

第十九条

合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族並びに第十四条に掲げる者以外の者に対する、合衆国軍隊及び第十五条に規定する諸機関の日本国における支払は、日本国の外国為替の法令に従つて行なわれ、この支払においては、基準為替相場が用いられるものとする。

第二十一条

通常海外で同様の特権を与えられている合衆国政府のその他の官吏及び職員は、合衆国軍事郵便局を利用することができる。

第二十四条

この協定のいかなる規定も、合衆国がこの協定に基づいて負担すべき経費の支出のため、合衆国が合法的に取得したドル又は円資金を利用することを妨げないものと了解される。

千九百六十年一月十九日にワシントンで

N・K

C・A・H

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千九百六十年一月十九日に発表された岸日本国総理大臣とアイゼンハウァー合衆国大統領との共同コミュニケ

日本国総理大臣と合衆国大統領とは、本日日本国と合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の正式署名を行なう前にホワイト・ハウスにおいて会談した。会談においては、主として現在の国際動向を広範かつ包括的に検討し、かつ、日米関係の討議を行なつた。日本国の藤山外務大臣と合衆国のハーター国務長官も、このホワイト・ハウスにおける会談に参加した。総理大臣及びその一行は、大統領との会談の後両国が関心をもつ事項についてハーター長官と会談を行なつた。

一 総理大臣及び大統領は、まず国際情勢を検討した。その際、大統領は、最近の南アジア、近東、アフリカ及び欧州への旅行中これらの諸地域を通じ、国際連合の目標の達成、世界平和、人権の尊重及びよりよい生活に対する強烈な意欲のあることに深い感銘を受けた旨を述べた。大統領は、きたるべき巨頭会談において、緊張緩和への有意義な進歩を達成するためにあらゆる努力を払う決意を表明した。総理大臣は、大統領のこの決意に対し全く同感であり、これを支持する旨を述べた。

総理大臣及び大統領は、軍縮について、査察と確証という重要な保証を伴う軍縮があらゆる国家にとつて緊急かつ最も重要な問題であり、かつ、この問題の解決が軍備の重荷と戦争の危険を減少するのに著しく貢献するものであるという点で見解を一にした。両者は、さらに、核兵器実験中止のため適当な保証を伴う計画に関し、早期に協定が締結できることの希望を表明した。

両者は、世界は重要な機会をもたらしうる時期に入つており、これらの機会を単なる約束のみでなく、実証された行為をもととして真剣に探究すべきであるとの結論に達した。両者は、正義と自由に基礎を置く世界平和の達成のため人類のすべてのえい知と創造力を傾けるべきであることを確認し、この間を通じ、なかんずく、あらゆる国民が誠実に国連の目的と原則を遵守し、武力の行使を放棄するようになる時までは、自由諸国にとつて必要なことはあらゆる手段によつて自らの決意、団結及び力を保持することであるとの確信を表明した。

二 総理大臣及び大統領は、現在の国際情勢に対する両者の認識をもととして日米両国間の安全保障関係を検討し、この緊密な関係が正義と自由に基づく平和の達成に不可欠であることを強く表明した。両者は、日米両国間における提携と協力は、現在の両国関係を特色づけている主権平等及び相互協力の原則に基づいて作られた新条約によつて強化されることを確信し、また、両者は、この条約が批准され、本年日本国最初の遣米使節派遣百年祭が行なわれることは日米友好関係の強さと継続性を一層宣明することになるであろうと期待した。

総理大臣及び大統領は、千九百五十七年六月の会見以来の日本国及び合衆国の関係を回顧し、当時共通の利益、相互の信頼及び協力の原則に基づく両国関係の新しい時代をひらくことの希望を表明したが、今やこの希望が達成されたことを特に喜びとする旨を述べた。

総理大臣及び大統領は、新しい相互協力及び安全保障条約のわく内において今後両国が緊密な協力を持続して行くことを期待した。両者は、同条約が極東における平和と安全を大いに強化し、全世界における平和と自由を増進するものであるとの確信を表明した。両者は、また、同条約が相互の信頼関係を助長するものであるとの確信を表明した。これに関し、総理大臣は、大統領と新条約の下における事前協議の問題を討議した。大統領は、総理大臣に対し、同条約の下における事前協議にかかる事項については米国政府は日本国政府の意思に反して行動する意図のないことを保証した。

総理大臣及び大統領は、また、アジアの情勢を討議した。両者は、この地域における将来の発展に関し密接な連絡と協議を維持すべきであるという信念を再確認し、アジアの問題の国際的討議に対する日本の参与が増進されることが自由世界の利益であることに意見が一致した。

三 総理大臣及び大統領は、自由諸国家間の貿易の拡大増進並びに低開発諸国の経済発展及び生活水準の向上が最も緊要であり、このことが世界平和の達成のためには欠くことのできない安定と進歩に貢献するであろうということに意見が一致した。

総理大臣及び大統領は、欧州経済貿易共同体及び工業化の進んだ自由世界の諸国が低開発地域の経済的発展のために果たし得る役割について意見を交換した。両者は、世界の低開発地域の民衆が、自由を維持するためには欠くことのできない経済的発達を緊急に要望していることについて特別の関心を払つた。両者は、自由世界の工業先進諸国が低開発地域の発達を援助するためにさらに一段とその役割を増加して行かなければならないことを強調した。大統領は、特に日本国民が自由アジアの経済的発達にますます大きな役割を果たしつつあることに言及した。

日米間の経済関係を検討した結果、総理大臣及び大統領は、米国は日本の輸出品の最大の顧客であり、日本は米国産品の第二の買手であることからみても、両国民の間の貿易は双方にとつて大きな利益をもたらすものであることを確認した。両者は、日米相互に利益となる両国間の貿易の成長を喜ぶ旨を述べた。さらに、かつてきままなかつ不必要な貿易上の新たな制限を限止することにより、また、現存する障害を除去するため積極的措置を執ることにより、世界貿易を継続的に、かつ、秩序だつて発展させることは両国の福祉と発展に不可欠であるとの信念を再確認した。

 総理大臣は、日米両国が相互に関心を有する経済問題に関し継続的に協議することの重要性を強調し、大統領も、全く同感である旨を述べた。

四 大統領は、日米関係が極めて重要であるこの時期に総理大臣がワシントンを訪問したことに特別の喜びを表明した。総理大臣は、大統領に再会する機会を得たことに謝意を表明した。

総理大臣及び大統領は、両者の会談が日米両国の提携を引き続き強化することに貢献するであろうということに意見が一致した。

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