六 国際文化の交流
国家間の文化の交流は、諸国民の心と心との結び付きをつちかいこれを強めるものであつて、政治や経済面の国際的協力の基礎となるものである。
最近におけるわが国との文化交流は、民間の強い発意によつて、また政府と民間との密接な協力によつて活発に行なわれ、その件数と種類とは極めて多数かつ多岐にわたつているが、昨年中に行なわれたものの中で主なものをあげれば次のとおりである。
美術関係
一 月 松方コレクション、フランス政府より寄贈
八 月 オーストラリア、ニュー・ジーランド巡回日本現代美術展ニュー・ジーランドで開催(オーストラリアは昨年開催)
九 月 第五回サンパウロ国際美術ビエンナーレ展参加
九 月 シドニー大学美術ポスター展参加
十 月 パリ青年美術ビエンナーレ展参加
十 月 フランスのアニエール市国際児童画展参加
十二月 シャンカー誌国際児童画展参加
映画関係
二 月 イタリアの第十五回コルティーナ・ダンペッツオ国際スポーツ映画コンクール参加
三 月 アルゼンティンのマル・デル・プラタ第一回国際映画祭参加
三 月 ミュンヘンにおいて日本映画見本市開催
四 月 シンガポール芸術祭参加
四 月 第十二回カンヌ国際映画祭参加
五 月 第一回濠州映画祭参加
五 月 第六回アジア映画祭参加
六 月 第九回ベルリン国際映画祭参加
七 月 ヴェニス国際記録および短編映画祭参加
七 月 サンセバスチアン・スペイン第七回国際映画祭参加
七 月 チェッコ第十回国際映画祭参加
八 月 ヴァンクーヴァー国際映画祭参加
八 月 ストラトフォード国際映画祭参加
八 月 第二十回ヴェニス・ビエンナーレ国際芸術映画祭参加
八 月 モスクワ国際映画祭参加
八 月 第十三回エディンバラ国際映画祭参加
九 月 第四回カンヌ外科医学国際映画祭参加
九 月 第四回コーク国際映画祭参加
九 月 ユーゴースラヴィアの交通安全に関する国際映画祭参加
九 月 第十三回国際科学映画協会総会参加
十 月 第八回トレント国際山岳探険映画祭参加
十 月 第三回対外紹介映画コンクール開催
十 月 パトヴァ大学第四回国際科学教育映画コンクール参加
十 月 第六回国際短編映画祭開催
十一月 メキシコ第二回国際映画祭参加
十一月 第三回サンフランシスコ国際映画祭参加
十一月 スウェーデン人形劇映画祭参加
音楽関係
一 月 ピアニスト、ラディスラフ・ヤーセック(チェッコ)来日
二 月 イタリア歌劇団来日
二 月 ピアニスト・ジョエルローゼン(米)来日
二 月 ペギー葉山、トルコ派遣
二 月 バレリーナ、マーゴツト・フォンティンおよびマイケルサムズ(英)来日
三 月 クイーン少年合唱団(墺)来日
三 月 シャンソン歌手、シャルルトレネ(仏)来日
四 月 ニューヨーク・リトル・オーケストラ(米)来日
四 月 ウイーン国立歌劇場団員(墺)来日
四 月 ピアニスト、アンドル・フォルデス(米)来日
四 月 ピアニスト、ミルカ・ポコルナー(チェッコ)来日
四 月 ピアニスト、マリサ・レグレース(アルゼンティン)来日
四 月 ヴァイオリニスト、ヴァレリイ・クリモフ(ソ)来日
四 月 ギタリスト、アンドレ・セゴヴィア(西)来日
四 月 指揮者フェルナンド・プレビタリ(伊)来日
四 月 アルマ・トリオ(米)来日
四 月 ヴァイオリニスト辻久子訪ソ
五 月 指揮者朝比奈隆、NHK音楽部長、大阪国際フェスティバル事務局村山未知等チェッコ国際音楽祭を視察
五 月 ヴァイオリニスト、ヨゼフ・スーク(チェッコ)来日
五 月 バス、イワン・ペトッフ(ソ)来日
五 月 東京都とミュンヘン市との日独交歓放送音楽会開催
八 月 スペインの国際音楽講習会へ参加
九 月 ピアニスト、ヘルムート・ロロフ(独)来日
九 月 ピアニスト、レフ・ブラセンコ(ソ)来日
九 月 ヴァイオリニスト、ジュリアン・オレフスキー(米)来日
九 月 藤原義江、砂原美智子の台湾に於ける独唱会開催
十 月 指揮者、ゴッフレード・ペトラッシ(伊)来日
十 月 タイ国立チュラルンコン大学へ山葉ピアノを寄贈
十一月 ウィーン・フィルハーモニー交響楽団(墺)来日
十一月 チェッコ・フィルハーモニー交響楽団(チェッコ)来日
十一月 作曲家アンドレ・ジョリヴェ(仏)来日
十一月 ヴァイオリニスト、ミハエル・ワイマン(ソ)来日
十一月 ヴァイオリニスト、イゴール・オジム(ユーゴー)来日
十一月 砂原美智子、イスラエル・ナショナル・オペラに出演(イスラエル)
十二月 ソプラノ、リタ・シュトライヒ(独)来日
十二月 バリトン、ジェラール・スーゼイ(仏)来日
十二月 指揮者、ニコライ・マルコ(米)来日
十二月 NHK交響楽団渡欧計画のためNHK芸能局次長安藤膺等三名関係諸国往訪
演劇および舞踊関係
四 月 花柳茜および飛鳥のシンガーポール、バンコック日本舞踊公演
五 月 雅楽米国派遣
八 月 宝塚歌劇団カナダ、アメリカ巡回公演
九 月 国立コロ舞踊団来日
十 月 国立モイセーエフ舞踊団来日
各種展示会
四 月 シンガーポール国際生花大会に参加
六 月 スイス、ウィンタトゥール市で日本新旧工芸品展開催
七 月 オーストリア、グムンデン市第一回国際陶磁器展に参加
七 月 ベルギー、オステンド第二回国際現代陶芸展に参加
十 月 東京高島屋百貨店でメキシコ民芸品展開催
十 月 コペンハーゲン国際菊花大会に参加
スポーツ交歓
二 月 米国スクオヴァレーのプレ・オリンピック大会へスキー選手派遣
二 月 BCレベルストーク(カナダ)の国際スキージャンプ大会へ参加
二 月 香港における第二回国際三万米レースへ参加
三 月 第二十五回世界卓球選手権大会(西独)へ参加
三 月 BCラグビー・チームの来日
三 月 サンパウロの国際自転車耐久レースへ参加
四 月 デ杯東洋ゾーン日本対印度戦東京開催
四 月 第六十三回ボストン・マラソン参加
四 月 東芝女子バスケット・ボール・チームの訪比
五 月 第五十五回オリンピック委員(I・O・C)総会ミュンヘン開催
六 月 アジア・リクリエーション大会東京開催
六 月 第三回アジア野球選手権大会東京開催
六 月 中華民国バレーボール・チームの来日
七 月 マニラにおける第十回世界ボーイスカウト大会
八 月 カリフォルニアに於ける日米高校親善野球大会開催
八 月 ブエナ・パーク少年野球団来日
八 月 第二回日本ジャンボリー大会開催
八 月 トリノの大学生スポーツ国際競技大会に参加
八 月 トリノの国際スポーツ展へ参加
八 月 飯田山岳会のネパール・ヒマラヤのランタンヒマール登山
八 月 福岡大学のヒマラヤ・ガウリサンカールおよびギャチュンカン山登山
八 月 慶応大学のヒマラヤ・ダウラギリ第二峰登山
八 月 学生三名による米国一周日本紹介自動車旅行
九 月 マレーにおけるアジア国際フットボール競技大会へ参加
十 月 チェッコ・コシチのマラソン大会へ参加
十 月 八幡製鉄・蹴球団の訪印
十 月 テヘランの世界レスリング選手権大会に参加
十 月 西独のローラールフ・スケート世界選手権大会に参加
十 月 ブラジル、ポルトアレグレのスナイプ級ヨット選手権大会へ参加
十 月 モスクワの第一回世界学生体操競技大会および交歓競技会へ参加
十一月 シドニーのアンポール・トーナメントおよび第七回カナダ・カップ大会にプロ・ゴルファ参加
十一月 ビルマ・ゴルフ協会よりプロ・ゴルファ招へい
十一月 メルボルンのインター・ナショナル・ジョッキイ・トーナメントに参加
十二月 マイアミ・オレンジボール、テニス・トーナメントに参加
十二月 読売新聞社より、日印親善虎狩りと動物生態調査隊派遣
十二月 日本鋼管バレーボール・チーム香港および台北派遣
十二月 スウェーデン卓球協会より荻原選手夫妻招へい
十二月 バスケットボール日本学生選手団の訪比
十二月 アイスホッケー・チームの西カナダ遠征
学術調査団派遣
三 月 東京大学イラン遺跡調査団派遣
三 月 東京大学インド植物調査隊派遣
七 月 京都大学イラン、アフガニスタン、パキスタン学術調査隊派遣
十 月 シッキム、アッサム調査団木原均等派遣
十 月 東京大学インド歴史遺跡綜合調査団派遣
十一月 雪男探険隊派遣
造園・建築関係その他
一 月 パキスタン陸軍士官学校へ桜苗木寄贈
三 月 ヴァンクーヴァーBC大学へ造園専門家派遣
三 月 東京都よりトロント市へ苗木寄贈
三 月 シアトル市へ東京都より茶室一棟寄贈
四 月 シアトル市へ東京都より建築技師派遣
七 月 エル・サルヴァドル大学で日本現代建築資料展示
十一月 シアトル市へ東京都より造園技師派遣
十二月 リオデジャネイロ市へ東京都より桜苗木寄贈
人 物 交 流
政府招へいによるもの
六 月 フランス・アカデミー会員、作家ド・ラクルテル氏、同アシャール氏、国立美術館総長シデ氏、ソルボンヌ大学美術教授ユイグ氏、彫刻家ザッキン氏、映画監督デュヴィヴェ氏、画家ヴナール氏夫妻の来日
外務省招へいによるもの
三 月 日秘文化協会会長ミロ・ケサーダ氏の来日
十 月 コペンハーゲン大学助教授ステーマン女史の来日
十 月 ダッカ大学副総長兼ダッカ高等裁判所判事ラーマン氏およびパキスタン国教育省文化体育担当官カルダール氏の来日
十一月 イタリア中亜極東協会会長ジゥゼッペ・トウッチ博士および同協会事務総長インペリアーリ氏の来日
十二月 ペルー元労働大臣アントニオ・ピニラ博士の来日
教授、教師等の招へいおよび派遣
三 月 久田和彦および塩月弥栄子両名を茶道教師としてインドおよびビルマに派遣
六 月 ドイツ連邦共和国政府の兼重日本学術会議会長以下十名の招へい
七 月 ヴェネズエラ科学研究所の名古屋大学御手洗助教授の招へい
九 月 アルゼンティン・ツクマン大学の東京教育大学佐藤教授の招へい
各種団体の派遣および来日
二 月 日本青年団協議会等代表の東南アジア派遣
四 月 タイ教育視察団の来日
四 月 日本大学藤沢教授の南米訪問
五 月 アルゼンティン国立大学建築学部卒業生四名の来日
七 月 早稲田大学学生三名のフィリピン親善訪問
七 月 日本学術会議第四七委員会委員長小谷東大教授のインド訪問
七 月 法政大学多田教授の欧州各国訪問
七 月 国語審議会委員高橋健二氏のドイツ派遣
八 月 東京外国語大学インドネシア語科学生三名のインドネシア訪問
九 月 日本私立小学校連合会会長浜野重郎氏および日本私立幼稚園連合会会長青柳義智代氏両名の欧米各国派遣
十 月 西ドイツ青少年団代表J・P・ジュステン氏外五名の来日
十二月 東京都教育庁社会教育課長児島金一氏外三名の青少年教育指導者の欧州派遣
そ の 他
一 月 シドニー大学講師英国人ニサ氏の来日
四 月 ペルー演劇研究家E・M・ケサーダ女史の来日
四 月 米国人バーバラ・ハットン女史の来日
五 月 オックスフォード大学国際政治学専攻ハドソン教授の来日
五 月 オーストラリア建築家フォックス氏の来日
七 月 スウェーデン・コウモリ研究家ワーリン氏の来日
八 月 セイロン人僧侶T・ラトナサラ氏の来日
九 月 カナダ演げきプロデューサー、エドガー・ストン氏の来日
九 月 オーストラリア人建築家ロイ・グランド氏の来日
九 月 スウェーデン人林学者グーテンベルグ大学教授リンドキスト氏の来日
九 月 米国ジョージタウン大学極東問題専攻唐教授の来日
十 月 ユタ大学オルピン総長の来日
十 月 スウェーデン人詩人セッターリンド氏の来日
十 月 米国人実業家S・コールマン氏の来日
十 月 サン・フランシスコ日本協会初代副会長スミス氏の来日
十二月 メキシコ人メキシコ大学建築科学生コロナ氏の来日
外国人留学生の招へい
わが国は昭和三十四年度七十名の国費留学生を海外から招いている。留学生は学部留学生(東南アジアおよび中近東諸国の留学生のみを対象とする。期間五カ年、ただし医科および歯科は七年)研究留学生(期間二カ年)の二つに分れ、ともにわが政府から月額二〇、〇〇〇円の奨学金、ならびに東南アジアおよび中近東諸国からの来日者に対しては片道航空賃(ツーリスト・クラス)の半額程度が支給される。これらの留学生は、在京学生の場合、女子を除き日本国際教育協会の寮(東京都目黒区駒場八六二、収容力一〇〇名)に入寮し、女子は、国際学友会の寮(東京都新宿区柏木四の八九五、収容力一六八名)に入寮している。その他関西地方所在留学生の場合には、国際学友会関西支部の寮(大阪市北扇町七五、収容力五〇名)および北九州所在留学生の場合には、国際学友会福岡支部の寮(福岡県粕屋郡古賀町、収容力一三名)にそれぞれ入寮しているが、一部には一般民家に下宿しているものもある。
日米教育交換計画による招へい
昭和三十四年度における米国人学者および学生の招へいは四六名(内八名は前年度以前に来日し滞日期間を延長しているもの)であつた。
外国政府給費留学生の招へい
昭和三十四年度において外国政府の給費留学生として海外へ招へいされたわが国の学者学生等は次のとおりである。
アメリカ(日米教育交換計画)二四九 イギリス一五 フランス五三 ドイツ七七 イタリア一二 カナダ一五 スウェーデン一 ユーゴースラヴィア二 イスラエル一 オーストリア六 オランダ八 ポーランド一 スペイン二 インド四 イラン一 タイ一 アフガニスタン一 インドネシア二
海外諸国には、当該国人と現地の在留邦人とが協力して、わが国との文化の交流を行なうことを目的とする団体が設立されている場合が多い。
例えばジャパン・ソサイエティ(北米)、ブリティッシュ・コロンビア大学日本研究所(カナダ)、日墨協会(メキシコ)、日伯文化協会(リオ・デ・ジャネイロ)、日伯文化普及会(サンパウロ)、日本アルゼンティン文化協会(アルゼンティン)、日智文化協会(チリ)、日本コロンビア文化協会(コロンビア)、日印協会(ニュー・デリー、カルカタおよびボンベイ)、日本パキスタン協会(カラチおよびダッカ)、日本インドネシア協会(インドネシア)、日独協会(ドイツ)、中亜極東学校(イタリア)等は、いずれも活発にわが国との文化交流活動を行なつている。また最近はアジア地域各国においても、この種の団体を結成しようという気運が高まつている。
これら団体の文化活動は、各種の文化展、映画会または講演会の開催、機関誌の発行等多岐にわたつているが、このような活動を通じて日本文化の紹介およびわが国との親善友好関係の増進に大きな貢献をしている。外務省は、在外公館を通じて、これらの団体に能う限りの協力を行なつている。