その他の地域との貿易問題

 

1 日 韓 貿 易

 

対日貿易中断措置

韓国政府は、在日朝鮮人の北朝鮮帰還に関するわが国と北朝鮮間の会談が妥結したことに対する報復措置として、昨年六月十五日対日貿易を全面的に中断する措置を採つた。

過渡的例外措置

しかしこの措置が韓国物価の高騰を招く結果になつたこと、また日韓会談が昨年十一月に再開されたこと等の事情により、韓国政府は、同十一月二十四日過渡的な例外措置という形で、無煙炭、土状黒鉛および鮮魚一四〇万ドルの対日輸出を認める旨わが政府に正式に申し入れて来た。

これに対しわが国も、右三品目の輸入に見合うものとして、電気製品、機械類および織物等の対韓輸出を許可する措置を行なつた。

対韓累積債権

日韓貿易は、一九五二年四月二十八日に締結された日韓貿易協定および支払協定に基づきオープン勘定方式で行なわれ、スウィング額は二〇〇万ドルとなつている。

対韓債権は一九五三年六月まで順調に現金決済されていたが、朝鮮動乱を機に、韓国が復興および消費材等の急激な買付を行なつたため、わが国の対韓輸出が増大したのに反し、対韓輸入は極度に縮少し、爾来わが国の一方的な出超となり、対韓債権の累積となつた。その後わが国の累次の申入れにもかかわらず、韓国側はスウィング・オーヴァー額の現金決済を行なわず、今日におよんでいる。従つてオープン勘定貿易のスウィング・オーヴァー累積額は昨年十二月末現在で、日本側の貸越四、二四九万弗となつている。

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2 インドネシアとの人絹織物および陶磁器ならびに米綿委託加工に関する書簡交換

 

昨年五月インドネシア政府は、船舶およびドックヤード設備に対するわが国の借款を強く要請して来たので、日・イ間で交渉を行なつた結果、賠償を引当とすること、インドネシアが現在わが国で滞貨となつている人絹織物および陶磁器をそれぞれ一五〇万ドルずつ信用状ベーシスで輸入すること、および米綿委託加工の第三国加工委託分の七五%をわが国に割当てることを条件として、合意が成立した。よつて同十月十六日東京において、藤山外務大臣とスバンドリオ外相の間で、船舶およびドックヤード設備に対する借款に関する書簡と共に、人絹織物および陶磁器の輸入ならびに米綿委託加工の割当に関する書翰の交換が行なわれた。

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3 日本・インドネシア第二次米綿委託加工取極の締結

 

昨年五月二十九日に締結された米・インドネシア余剰農産物協定に基づき、インドネシアが米国から購入する綿花をわが国がインドネシアに輸出する綿製品の支払の一部とし、加工賃を現金支払するいわゆる米綿委託加工取引の取極につき、わが国は昨年九月以来ジャカルタにおいてインドネシア政府と交渉を行なつて来たが、両国政府の意見が一致、同十二月二十九日両国政府の代表により右取極の署名が行なわれた。

この取極により、インドネシア政府は、第三国に加工を委託する原綿総量のうち、少くとも七五%(一、〇五〇万ドル)をわが国が輸出する綿製品の原綿代に引当てるよう取り計うことになつた。(この結果輸出綿製品代金は推定約一、五〇〇万ドルに達する見込である。)

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4 日本・ビルマ第二次米綿委託加工取極

 

日本・ビルマ第二次米綿委託加工協定は一昨年十一月十九日に署名されたが、わが国が受領する米綿の算定方式(いわゆる重量制限方式大)に技術的困難があるところから、引続き日・米・ビルマの三国間で交渉を行なつた。その結果、重量制限方式を廃止し、加工賃の算定に関し、綿糸については輸出代金の三五%、綿布については輸出代金の四五%とそれぞれ固定することに合意が成立したので、昨年十月十九日ラングーンにおいて相互に書簡を交換して右改訂を確認した。

この協定に基づきわが国は、昨年十二月七日現在、綿糸については約三六〇万ドル、綿布については約一、〇一〇万ドルの輸出を行なつた。

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5 アラブ連合シリア州との特定国待遇問題

 

一昨年十二月シリア経済省は、外貨事情の悪化から輸入制限措置を強化し、従来の輸入禁止品目に加えて、暫定的輸入禁止品目および特定国待遇品目の両リストを制定し、アラブ諸国およびシリアからの出超国に対し特定国待遇を与えることとしたが、わが国に対しては、従来の綿花買付量が一九五三年六月の貿易支払取極付属書簡で約束した年間五千トンに達しなかつたことを理由に、五八-五九綿花年度中に七千トンの買付を実施することを条件として、特定国待遇を与えるべき旨を申入れて来た。よつて政府は、わが国関係業界の協力を求めたところ、ほぼ先方の申出量を消化する見とおしを得たので、シリア政府と折衝を行なつたが、その結果昨年二月十二日にいたり、わが国によるシリア綿七千トンの買付とシリア側による対日特定国待遇供与とについて、両政府の間に合意が成立した。

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6 イラクからのデーツ買付問題

 

わが国とイラクとの貿易関係は、従来わが国の一方的出超状態にあるが、イラクは、一昨年七月の同国革命後、国別均衡貿易対策を強く推進し、わが国に対しても同国産品(大麦、デーツ等)の買付を希望して来た。とくにデーツ(なつめ椰子)については再三その買付を要望してきたが、主として価格が割高なため、わが国による買付はほとんど実現されなかつた。このためイラク側は、対日報復手段として昨年八月中旬以後対日輸入許可証の発効を事実上停止し、ここに日・イ貿易関係は停止状態に陥つた。しかしわが国の業界は、このような事態に対するため、昨年九月上旬取りあえずデーツ一千トンの買付を行ない、さらに十二月に入り追加四千トンの買付を行なつたため、イラク側は十二月下旬レーヨン織物等二〇品目にわたる対日制限品目の解除を発表し、日・イ貿易関係はようやく正常化の第一歩を踏み出すに至つた。

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7 綿業視察団のスーダンへの派遣

 

昨年十二月にカルトゥームで行なわれたスーダンとわが国との貿易調整交渉(別項参照)において、スーダン側から再三にわたり、同国の綿作の実情を認識してもらうために、わが国の紡績および綿業代表からなる視察団を派遣するよう希望してきた。よつて政府は、紡績協会および綿花協会に対しその派遣方につき協力を求めたところ、本年一月六名からなる視察団が編成された。

この視察団は、本年二月三日東京を出発し、カルトゥームに十日間滞在して、スーダン政府当局首脳との懇談、現地の視察等を行なつたが、両国の親善と貿易関係の増進に大いに寄与するところがあつたものと認められる。

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8 対カリブ海域諸国貿易使節団の派遣

 

政府は、輸出振興とくに重機械類の輸出増進を目的とする啓発活動を行なうため、昨年十月下旬から約五十日にわたつてメキシコ、グァテマラ、エル・サルヴァドル、コスタ・リカ、パナマ、エクアドル、コロンビア、ヴェネズエラ、ドミニカ、ハイティ、およびキューバのカリブ海域十一カ国に対して業界代表八名を含む十名の貿易使節団を派遣した。

同使節団は、訪問各国において、政府および経済界の要路者との懇談のほか、新聞、ラジオ、テレビ等による広報活動をも活発に行なつた。

訪問先各国は、いずれも最近におけるわが国工業力の躍進を高く評価しており、各国が現在実施中の工業化計画ないし経済開発計画の遂行上必要な重機械類をわが国から輸入することのみならず、わが国の資本や技術を導入することについても積極的な関心を示した。なお訪問先各国における本邦商品の評判としては、日本製品は品質、価格共に良好であるが、現地の販売ルートおよび宣伝活動が欧米先進工業国のそれに比較して貧弱であるといわれているので、今後わが国関係業界がこれ等の点で努力すれば、重機械類を含めてわが国の輸出は、大いに増進することが期待される。

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