共産圏との貿易問題 |
わが国昨年の貿易総額が一昨年と比較して輸出入ともに約二〇%の伸長をみたのにかかわらず、共産圏との貿易がこのように激減したのは、従来わが国の東西貿易の主要な相手国であつた中共との貿易が、なお杜絶状態にあるためである。一昨年五月、中共がわが政府の第四次日中民間貿易協定に対する態度を不満とし、また長崎における中共国旗引下し事件を契機として、対日経済断交の挙に出て以来今日に至るまで日中貿易は杜絶しており、昨年はわずかに香港を経由して若干量の中共原産雑豆、採油用種子、麻類、皮革、屑綿等がわが国に輸入され、同じく香港を経由してわが繊維製品、医薬品、金属製品等が少量中共に向け輸出されたにすぎなかつた。このような経路で行なわれた昨年の対中共貿易を通関実績でみると、輸出は三百六十万ドル、輸入は千八百八十万ドルで、一昨年の実績に比し輸出は約十分の一、輸入は約三分の一にそれぞれ大巾に縮少している。
しかし経済以外の特殊な事情に基づいて中断されている中共貿易を除けば、わが国の昨年における対共産圏貿易は一般に順調に進展しており、ソ連、東欧諸国、北ヴィエトナム等に対する貿易額の対一昨年伸長率を平均すると、輸出で三四%、輸入で六〇%に達する。
就中近年における対ソ連貿易の増勢には著しいものがあり、昨年のわが対ソ輸出は一昨年の実績を二七%上廻つたが、さらに対ソ輸入も同様に七八%増加し、往復取引額は六千二百四十万ドルに達した。これを両国間貿易協定の締結に先立つ一九五六年当時までの輸出入総額五百万ドル程度と比較すれば、まさに飛躍的な伸長振りということができる。
(日・ソ貿易についてはなお別項「日本ソ連間一九六〇-六二年貿易支払協定の締結」参照)