北米との貿易問題

(米国およびカナダにおける輸入制限運動については別項参照)

1 対米貿易の現状

 

わが国の対米貿易は、戦後年々入超を続け、一九五七年には為替実績で約八億ドルの入超を示した。しかし一昨年上期以降は、漸次輸入が減少する一方、輸出が次第に増大してきたため入超の幅もせばまり、一昨年全体としては対米入超額は一億五千万ドル(為替統計)にとどまつた。対米輸出増加の傾向は昨年に入つてから一層顕著となり、ほとんど全関係品目にわたつて進展したため、年間為替実績で一〇億六千万ドル(前年に比し四七パーセント増)に達したが、他方輸入は九億五千万ドル(前年に比し九パーセント増)にとどまつたので、戦後はじめてわが国の出超となつた。商品別にみると、輸出では油脂額が減少したほかは各商品とも大幅に増加し、とくに機械類、金属および同製品、織物や繊維製品等の増加が著しい。

輸入ではとくに目立つた変化はなく、穀類、食糧、非金属鉱物、石炭、機械類等が若干減少したほか、各商品ともそれぞれ増加したが、年間全体としては前年実績を約八千万ドル上回る程度であつた。

わが国にとつて対米輸出の増大が望ましいことはいうまでもないが、昨年の輸出の伸びを一昨年の前年比たる一四パーセント増と比較すれば、かなりの増大というべきであつて、これが米国における輸入制限運動を活発にしたことは否めない。さらに米国においては、最近国際収支が悪化する傾向にあるため、保護貿易主義的傾向が深まつてきている。すなわち従来はわが国の輸出の伸びが著しい商品に関係する米関連業界が輸入制限運動の主体であることが多かつたが、昨年あたりから、このような運動ないし考え方が一般的風潮として米国議会、財界、業界および労働界等にまで広く浸透していることは注目に値する。

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2 輸銀借款問題

 

綿花の輸入に関するワシントン輸出入銀行よりの短期借款については、前年同様日米間に協議が行なわれた結果、昨年七月ワシントンで同行と日本銀行との間に三千万ドル(期間十二カ月、金利四・七五パーセント)分の綿花輸入について借款契約が調印された。

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3 海運業の米国独禁法違反問題

 

北米航路は、不況下にあるわが海運業界にとつて重要な位置を占めているが、最近同航路関係の各国船会社間の協定、慣行等が、米国海事法および独占禁止法に違反する疑いがあるとして問題となつている。元来この問題については、昨年はじめから米国下院アンティ・トラスト小委員会が調査を行なつてきたが、同国法務省もこれをとりあげ、本年一月はじめにいたり、ワシントン地区連邦裁判所から日本海運会社(在米支店)十一社を含む諸海運会社百三十社(外国会社ではわが国のほかに英、加、仏、伊、独、蘭、ノールウェー、フィリピンのものを含む)に対し、関係書類持参の上出頭すべき旨の召喚状が発せられた。

わが国としては、北米航路に関する船会社間の協定、慣行等が独禁法に違反することが決定されるならば、わが海運業にとつて極めて重要な同航路に大きな混乱が惹起されるものと予想されるので、とりあえず本年一月二十六日米国政府に対し、わが政府の有する重大な関心を伝え、今回の措置がとられるにいたつた背景と今後の推移につき通報を得たい旨を申入れた。

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4 対米貿易使節団の派遣

 

政府は、日米貿易の健全な発展を計るための方策の一つとして、昨秋岡松成太郎氏(元商工次官、日本商工会議所参与)を団長とする貿易使節団を米国に派遣した。

同使節団は、団長の他機械、自動車、ゴム製品、雑貨等の業界の専門家五名からなり、十月二十四日から一カ月余にわたつて米国の十都市を訪問した。その間米国務省、商務省、農務省等政府の要人および各地業界の有力者等と日米貿易問題につき懇談し、かつつぶさに米国市場を視察した。とくにこの使節団は、一昨年派遣された貿易使節団の意見にもかんがみ、主として米国中部および南部等従来わが国になじみが浅く、または市場開拓の進んでいなかつた地域を歴訪したのであるが、これは日米両国の相互理解を深める上に極めて有益であつたと思われる。

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5 対加貿易の現状

 

従来多額の入超を続けてきた対加貿易は、昨年にいたつてわが国の輸出が大巾に伸長して一億一千六百万ドルに達し、他方輸入は若干増加するに止まつたので、ほぼ収支が均衡することとなつた。すなわちわが国のカナダ向け輸出の増加は、ほとんどすべての商品分野にわたつているが、とくに伸びの著しかつた品目はキャンパス・シューズ、ゴム靴等のゴムはき物、まぐろ(、、、)かん詰、ミシン、ラジオ、カメラ、化学薬品等であつた。このような輸出増加の理由としては、カナダ経済の好況という理由のほかに、本邦産品の優秀性がカナダの消費者層に認識されてきたことがあげられる。

わが国昨年の対共産圏貿易実績(通関統計による)は、輸出三億七千四百万ドル、輸入六億九千五百万ドルであつた。これを一昨年輸出額七億五千一百万ドル、輸入額八億六千七百万ドルと比較すると、輸出は五〇%、輸入は二〇%それぞれ減少している。

わが国昨年の対共産圏貿易実績(通関統計による)は、輸出三億七千四百万ドル、輸入六億九千五百万ドルであつた。これを一昨年輸出額七億五千一百万ドル、輸入額八億六千七百万ドルと比較すると、輸出は五〇%、輸入は二〇%それぞれ減少している。