中近東関係 |
昨年五月二十六日、二十七日および二十八日の三日間ベイルートにおいて第五回中近東公館長会議が開催された、同会議には地元のレバノン駐在河野大使をはじめ中近東各国駐在の十公館長、パキスタン、国連駐在の両大使および外務省牛場経済局長、新関欧亜局参事官が出席し、イラク情勢を中心に最近の中近東政情について検討するとともに、わが国と中近東諸国との政治、経済、文化、啓発等の諸問題に関する意見の交換を行なつた。
イラク政府は昨年七月十四日革命第一周年を迎えるに当り、各国代表を招いて約一週間にわたり盛大な記念式典の行事を行つたが、わが国も同式典に招へいされたので、政府は日本・イラク両国間の友好親善関係促進のため太田一郎大使を代表として同式典に派遣した。
レフィク・コラルタン・トルコ国会議長は、同国々会議員八名および随員三名を帯同し、わが国会および外務省の招客として昨年九月二十二日来日し同二十七日まで滞在した。この間同議長は、天皇陛下に拝謁を賜り、岸総理大臣、衆参両院議長を始め各界の要人と会談したほか、関西地方を旅行し、文化、産業等の施設を視察した。
アフガニスタン外相兼第二副首相サルダール・モハマッド・ナイム殿下(国王の従弟)はシェルザード商務相以下十名の随員を帯同し、わが政府の賓客として九月十六日来日、外相は同月二十二日まで、商務相以下の随員は同二十五日まで滞在した。この間一行は、天皇陛下に拝謁を賜り、岸総理大臣を始めわが国政府および民間の要人と会談したほか、京浜地区の文化、産業施設、東海村の原子力研究所等を視察した。
アフメド・バラフレージ元モロッコ首相兼外相は、随員一名を伴い、わが政府の賓客として昨年十一月二十八日来日し、同十二月十日まで滞在した。この間同氏は天皇陛下に拝謁を賜り、岸総理大臣および藤山外務大臣と会談したほか、関西地方を旅行し、各種産業、文化施設を視察した。
以上のほか、アラブ連合シリア州よりシェバード同州交通次官およびラハム郵便電信電話総局長、イラクよりタウフィク国有鉄道長官およびサラム国鉄技師長、トルコよりイレン商工会議所連合会理事長、ジョンク経済次官および教育視察団、イランよりバートマンカリーチ内相、ナフィシー文部次官、エラヒー建設銀行総裁およびカラゴズルー灌漑庁長官がそれぞれ外務省の招客として来日し、文化、経済、技術協力等の問題についてわが国関係方面と会談し、関連施設を視察した。
またメンデレス・トルコ国防相もわが国防衛庁長官の招待により昨年四月四日来日し、同八日まで滞在したが、外務省は同国防相の接遇、視察等に関して防衛庁に協力した。
スレイヤ・アンデリマン駐日トルコ大使夫妻は、昨年九月二十八日大使官邸で急死したので、わが政府は遺体送還のため日航特別機をチャーターし、外務省儀典長をして丁重にトルコへ護送せしめた。羽田空港出発の際の儀式には岸総理大臣、藤山外務大臣等政府首脳、外務省関係者多数が在京各国大公使等とともに参列し、十九発の礼砲が発射せられた他、自衛隊儀仗隊および音楽隊も参列する等最高の儀礼がつくされた。また岸総理大臣および藤山外務大臣とトルコ首相および外相との間にそれぞれ弔謝電が交換された。
一八九〇年(明治二十三年)トルコ皇帝アブドゥル・ハミト二世は日土修交を求め、両国親善の基礎を築くためオスマン提督を軍艦エルトゥールル号とともにわが国に派遣したが、同艦は、任を終えて帰国の途中、同年九月十六日熊野灘において台風に遭遇難破し、乗組員五八一名の犠牲者を出した。
昨年十一月二十二日その七十周年追悼記念式典が和歌山県および串本町共催の下に、地元官民多数、在京トルコ代理大使および同大使館員、外務大臣代理等の参列を得て、串本町遺霊塔前で盛大に挙行された。その後右に対しゾルル・トルコ外務大臣からも鄭重な感謝のメッセージが寄せられるなど、同式典は日土友好関係の増進に寄与するところ大なるものがあつた。
中近東諸国とわが国との関係は、政治、経済をはじめ多くの分野で近時極めて緊密となつているので、政府は、昨年度次のとおり同地域在外公館の整備強化を行なつた。
(1) 四月一日付で在レバノン公使館を大使館に昇格した。レバノン側も同日在京公使館を大使館に昇格した。
(2) 同じく四月一日付で在カサブランカ領事館を総領事館に昇格した。
(3) 本年一月十六日付で日本・イラク両国公使館をそれぞれ大使館に昇格した。
(4) わが国は一九五六年七月以来エジプト駐在大使をしてサウディ・アラビアを兼轄せしめてきた(当初は同国に法制上わが国の公使館を設置したが、一昨年四月これを大使館に昇格した)が、すでに一昨年一月より本邦に実際に大使館を開設しているサウディ・アラビア側の要望もあり、また最近わが国と同国との関係が著しく緊密となつていることにもかんがみ、わが国は本年一月十日ジェッダに実際に大使館を開設した。