東西貿易および対共産圏輸出統制問題

1 中共貿易

昨年上半期の対中共貿易額は、輸出四九、二一四千ドル輸入四七、五八○千ドル(大蔵省通関統計による)で、前年同期との比較において輸出七〇%、輸入七%、輸出入合計三二%とそれぞれ増加を示し、同じく前年下半期との比較においても四三%の増加に当り、一昨年の停滞ぶりを打破したが、ことに輸出の面で大幅な伸長が見られた。

第三次日中民間貿易協定が一昨年の五月期限切れとなつた後、昨年三月まで空白状態が継続し、しかも三月五日に締結された第四次民間貿易協定も中共側が後述の日本政府の態度を不満としたため実現しなかつたにもかかわらず、わが国の輸出がこのように伸長した原因は、昨年度が中共の第二次五カ年計画の初年度に当り、右計画に基いて原材料機械類等などの需要が増大したことと、一昨年七月の対中共輸出制限緩和によつて鋼材等の輸出が増加したことによるものである。

輸出商品構造からいえば、鋼材をはじめ、化学肥料、機械、化学繊維等、重化学工業製品が多くを占め、またそれらの契約が長期化していることが目立つた。右期間における輸入実績は特別の伸長を示さなかつたが、一方石炭、鉄鉱石、マグネシアクリンカー等の製鉄原材料および大豆、米、塩等の輸入契約の成立件数が増大し、これらの取引契約の成立を促進させた原因としては、一昨年末以来中共各種貿易使節団が相次いで来日したこと、および二月の広州、四月の武漢における日本商品展覧会の開催等が挙げられるが、この他昨年二月下旬北京で調印された「日中鉄鋼協定」は片道一億英ポンド、五カ年にわたる長期的なもので、とくにわが国の鉄鋼メーカーが中共との需給関係の大幅拡大に踏切つた点が注目された。

以上のような昨年初頭以来の貿易拡大の趨勢と平行して二月下旬には、一昨年十一月に中断された第四次日中貿易協定締結の交渉が再開され、三月五日調印の運びとなつた。右協定の調印に当つた日中貿易促進議員連盟等わが国の三団体は、政府に対して同協定の支持協力を要請したので、政府は、「わが国内諸法令の範囲内で、かつ政府を承認していないことに基き、現存の国際関係をも考慮して、貿易拡大の目的が達せられるよう支持と協力を与える」旨を回答した。五月十日にいたり中共側は右の政府回答を不満として対日輸出入許可証の発給を一切中止する措置をとるにいたつたが、この結果信用状開設済の契約の履行の場合を除いて、日中貿易は全面的に杜絶したまま現在に至つている。

その後は、わが国と中共との間に書簡、パンフレット、新聞等印刷物の取引が例外的に従来どおり行われているほか、香港商社とわが国商社との間で、中共産品と本邦品との小規模な求償貿易が行われているにすぎない。

なお昨年七月-十月間のわが国の対中共貿易は、輸出五七三千ドル、輸入一、一〇五千ドルであるが、この中には、特に輸入面において前記の取引停止以前の契約の履行分が含まれている。

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2 対共産圏輸出統制問題

政府は、ココムにおける検討の結果、一昨年七月対中共向戦略物資輸出統制を東欧・ソ連圏と同一水準に緩和したがその後もココム参加国の間で共産圏内の技術の向上に伴つて、統制を現状に即応したものとする必要が認められ、昨年初頭以来ココムにおいてその統制方式および統制品目の再検討が行われた。

この結果に基き昨年八月十五日政府は統制の大巾な緩和を発表した。その大要は次のとおりである。

(イ) 一八一品目に上つていた禁輸品目のうち、七一品目の禁輸解除を行い、残り一一○品目のうち、八一品目は仕様の改正によつて部分的的に緩和された。ただし禁輸品目の新規追加(一二品目)によつて新禁輸品目は一二二となつている。

(ロ)また数量統制方式の廃止によりその品目(二五品目)は解除され、監視統制品目は六三品目から三五品目に削減された。

この緩和によりココム統制は品目方式とも著しく簡素化されたわけであるが、わが国から共産向けに輸出し得ると思われる品目もほとんど解除された。その主なものは各種船舶、ベアリング(各一部)、電子顕微鏡、アルミニウム、銅等である。

なお、新技術の開発によつて、電子管制禦式工作機械、シリコン等精製加工機械等が新らたに禁輸品に指定されたが、これら品目の新規指定はわが国にとつては何ら実害とはならないものと思われる。

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