○湯川大使からセラノ外務大臣代理にあてた書簡(仮訳)

書簡をもつて啓上いたします。本使は、最近行われた貿易会談に関連し、日本国政府およびフィリピン共和国政府が、両政府が国際合意によつて約束している多角的決済の枠内で互恵的基礎上に日本国とフィリピン共和国との間の貿易および通商を発展させる目的のために有効に採択されることができる方法を、それぞれの代表者を通じて討議した結果、次のとおり合意したことを確認する光栄を有します。

1(a) 両国は、輸入手統および規制に関して無差別待遇の原則に従うものとし、したがつて、他方の国の産品に対しては、同様の条件の下にいずれかの第三国 から輸入される同様の産品に対して与えられる待遇と同じ待遇が与えられるものとする。

(b) 両国は、関税およびそれに関連する手続について無差別待遇の原則に従つて、できる限り好意的な待遇を他方の国の産品に対して与えるものとする。

(c) 無差別待遇の原則は、フィリピン共和国がアメリカ合衆国の産品に対して与える待遇、恩恵又は利益に対しては、それらが関税に関連する場合には、適用されず、また、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約の第三条に定められた地域からの産品に対して日本国が与える待遇、恩恵または利益については、前記の第三条の第二文に規定された状態がこれらの地域に対する行政、立法および司法に関して継続する限り、適用されないものとする。

(d) 両国は、国際通貨基金協定の規定に基いて認められる為替に関する制限措置をとることを妨げられない。

2 両国は、輸出入管理、為替管理およびその他の国際間の貿易および決済に関する管理であつて、他方の国の管轄下にある地域において随時有効でありかつ実施されているものに従うことを確保するために可能なすべてのことを行うものとする。

3 両国は、この協定の規定の実施に関し、必要なときは、他方の国と協議するものとする。この協議のため一方の国の要請によつて招集される合同委員会を設置するものとする。

この合同委員会は、マニラ又は東京において、少くとも三箇月に一度会合するものとする。両国は、それぞれの代表者の氏名を他方の国に対してできるだけ早く通報するものとする。

4 この協定は、両国の同意によつて改正されることができ、また、書面による六十日の予告をもつて終了させることができる。この協定の改正または終了は、その改正または終了の効力発生の日以前にこの協定に基いて生じたいかなる権利又は義務をも害しないものとする。

本使は、さらに、この書簡およびこれに対してフィリピン共和国政府のために前記のことを確認された閣下の回答が、協定を構成するものとみなされ、かつ、その協定は本日付の閣下の返簡により効力を生ずるものとすることを提案する光栄を有します。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十八年一月七日

日本国特命全権大使 湯川盛夫

フィリピン共和国

外務大臣代理 フェリクスベルト・M・セラノ閣下

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