八 移動大使の派遣

最近の国際経済は、地域的に共通の問題を有する面が多く、従つて国際経済の動向およびそのわが国との関係を把握するためには、単なる国別の観点ではなく、広く地域的な見地から、統合的に観察研究する必要がある。

このような必要を満たし、わが国経済外交の総合的施策立案に資する目的で、昨年後半、民間の四氏に委嘱し、移動大使としてアジア、ラテン・アメリカ、欧州、中近東の四地域に派遣した。

移動大使の顔触れおよび担当地域は次の通りである。

渋沢敬三氏(国際電信電話会社会長) ラテン・アメリカ地域

小林 中氏(前日本開発銀行総裁)  アジア地域

伊藤武雄氏(大阪商船社長)     中近東地域

堀田庄三氏(住友銀行頭取)     欧州地域

渋沢大使は、八月十日東京を出発、メキシコ(メキシコシティー地区およびユカタン半島地区)、ペルー、ブラジル(リオデジャネイロ地区、サンパウロ地区およびアマゾン地区)、ウルグァイ、アルゼンティン、パラグァイ、チリ、ポリヴィア、パナマ、コロンビア、ヴェネズエラ、ドミニカ、キューバの諸国を歴訪、十月十二日帰朝した。

小林大使は、八月二十一日東京を出発、タイ、ビルマ、パキスタン、インド、セイロン、シンガポール、インドネシア、ヴィエトナム、カンボディア、フィリピン、香港を歴訪、十月十一日帰朝した。

伊藤大使は、九月十日東京を出発、エジプト、シリア、イラク、エティオピア、スーダン、サウディ・アラビア、レバノン、ジョルダン、トルコ、イランの各国を歴訪、十月二十六日帰朝した。

堀田大使は、九月二十日東京を出発、デンマーク、スウェーデン、ドィツ、スイス、オーストリア、ユーゴースラヴィア、英国、ベルギー、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、イスラエルの諸国を歴訪、十一月十六日帰朝した。

各移動大使は、歴訪諸国で、それぞれの国に駐在するわが在外公館長以下館員との意見交換、諸国政府民間要人との会談、在留邦人、進出商社との懇談、重要経済施設および地方の実情の視察等を行い、またこの移動大使派遣と時期を同じくして各地域別に開かれた在外公館経済担当官会議にも出席、所期の成果を収めた。

移動大使派遣は外務省として初めての試みであつたが、極めて有意義であつたので、昨秋は予定しながら実施できなかつた北米地域、経済開発の途上にありわが国との経済協力および通商も増大の余地があるアフリカ地域をも含め、こんごも実施する方針である。(詳細は特集五参照)

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