その他の地域との貿易の諸問題 |
一昨年十一月スエズ問題が発生したため、セイロンの重要な輸出品である茶をその主要輸出国である、エジプトに対し直接輸出することが困難な事態となつたので、セイロンは、茶の対エジプト輸出を可能ならしめるよう、わが方がなんらかの措置をとるよう要望し、あわせてそのさい、セイロン商社を積極的に利用できる方策を考慮してほしいとつけ加えた。
もともと、セイロンはわが国の伝統的綿製品輸出市場であり、将来にわたりこれを確保することが望ましいばかりでなく、日本、セイロン両国間の従来からの政治的友好関係を促進する上からも、このセイロン側の希望に応えることが適当と考えられた。そこでその実現のための具体的方策として、わが方は、日本がエジプト綿花約一万俵をセイロン・ルピーで購入し、この金をセイロンに積立て、この資金でエジプトがセイロンから茶を購入することを骨子する案をセイロン側に示した。
この案は為替技術的な問題点があつたが、セイロンもほぼわが方案を納得したので、五月末日本、セイロン両国間にこれに関する取極が結ばれた。
この協定の結果、セイロンは今年九月初め代表団をエジプトに派遣し、日本、セイロン間取極に基き、エジプト、セイロン間取極を締結することに成功し、この取引きのための三国間協定が実質的に成立することとなつた。
インドは第一次五カ年計画に引続き現在第二次五カ年計画による建設を進めているが、計画期間中の資本財の要輸入量は一五〇億ルピー(約三〇億ドル)に及ぶものといわれ、このため計画第二年度(一九五七年)に入るや同国の国際収支は急激に悪化した。
このため外国からの経済援助を希望するとともに資本財は長期の延べ払による以外は輸入を原則とし禁止することとなつた。このため従来から日印間で交渉中の資本財輸出はすべて長期の延払条件とする必要を生じ、たとえば最近にいたり五年の延べ払い(円建ポンド払)条件による繊維機械の輸出契約の仮調印をみたが、インド側の事情からみて、こんごの輸出契約はほとんど政府がその成立まで強力に援助せざるをえないものと考えられ、政府はこんごとも民間企業と緊密な協力の下に資本財の対印延べ払い輸出の促進をはかる方針である。
パキスタンの外貨事情も前記インドのそれと同じく、著しく悪化しており、日パ貿易取極交渉においても、わが方の経済協力を希望した。
最近パ側との間に経済協力に関し、具体的話し合いの進んでいるものは多数あるが、特に最近契約が成立した神戸製鋼他四社とPICD(パキスタン産業開発公社)提携による尿素工場建設は、総額約百億円にのぼるわが国最大のプラント輸出であり、こんごの日パ経済協力のテストケースとしてその成功が日パ双方から期待されている。
これら経済協力の進展によりわが国の技術がパキスタン業界に認識されればこんご類似提携の対日申入れが増加することは明らかで、政府としてこんごこのような経済技術提携による進出については、全面的に協力援助する方針をとつている。