英連邦関係 |
国連第十二回総会に出席した藤山外相は、米国訪問を終えた後、九月二十七日から十月一日まで五日間英国政府の招請による賓客として英国を訪問し、その間、マクミラン首相、ロイド外相、ミルズ動力相、ボーン・モーガン商務担当国務相、大蔵省経済長官バーチ国務相ほか英国政府首脳と会談して、両国親善関係増進のため、諸般の問題につき卒直な意見の交換を行つた。
これらの会談は友好的なふんい気のうちに行われ、両国間の緊密な友好関係の回復は満足な進展をみていること、両国が自由世界の一員として世界平和の維持のため協力すること、および国連憲章の精神に従つて国際間の諸問題解決のため力を合わせることに意見の一致をみた。
これら会談において次のような問題が検討された
(1) 未開発地域の経済的発展およびこれら地域の国民の生活条件の改善が、自由および平和確保のための重要な要素であることに意見の一致をみ、コロンボ・プランの下における進展が検討され、日英両国が東南アジアの経済開発に貢献する方法が討議された。
(2) 欧州共同市場およびこれを補足する自由貿易地域について、隔意のない意見の交換を行つた。
(3) すでに会談が開始されている日英通商航海条約の早期妥結に努力することに意見の一致をみた。
英国政府が日・英両国の完全なガット関係を受諾できなかつたことについて、藤山外相は遺憾の意を表明したが、両国間の貿易関係が右の実現を可能にする日を英国政府が待望していることを知つて、欣快の意を表明した。日英間の最近の貿易拡大を歓迎し、さらに発展を希望する旨を明らかにした。
(4) 海運問題および工業用意匠の保護問題が討議され、両国の立場の相違の解決促進に相当改善がみられ、また将来も改善がつづけられることに意見が一致した。
(5) 平和条約の規定による英国未解決クレーム問題が検討された。
(6) 軍縮および核実験に関する諸問題が検討され、英外相は、核実験の停止が最近の西欧側提案の線に沿う第一段階の軍縮協定の一部をなす限り、同意の用意があり、この協定締結を歓迎するが、これができるまでは英国政府は核実験を続行する旨をのべた。
藤山外相は、英国政府が今冬の核実験計画を国連軍縮委員会において声明したことに対し強く遺憾の意を表明し、また核実験停止についての日本国民の真剣な熱望を強調し、核実験中止が人類の福祉と安全のため不可欠であるとの日本政府の確固たる信念を繰返しのべた。
(7) その他ソ連問題、中共問題、ピーター大帝湾問題が討議された。
日本とオーストラリアとの間の真珠貝採取に関する問題は(第一号七〇頁参照)、それを国際司法裁判所へ提訴するための特別合意書について合意に達しないまま、日本船の真珠貝漁業は、国際司法裁判所の判決あるまでの短期間適用される日豪間の暫定取極の適用をうけている。この取極によれば、日本船の操業規模については毎年両国間に協議が行われるとはいえ、けつきょくオーストラリア政府の決定する条件によつて日本船が操業しなければならないので、日本にとつて不利な点が少くない。
ところが昨年四月メンジス・オーストラリア首相が日本を訪問したさいに岸総理との間にこの問題について話し合いが行われ、さらに同年十二月岸総理のオーストラリア訪問のさいにも、両国の意見の相違を調整するため討議が行われた。これらの会談では、このような問題がいつまでも懸案として残つていることは、両国の友好関係増進の上に好ましいことではないとの観点から、両国の法律的立場を損うことなしに問題を実際的に解決する方法はないかを検討すべきであることについて意見の一致をみた。
したがつて今後は両国関係官の間で、この方向に従つて具体的に問題の検討が行われることとなつている。
日本とオーストラリアとの間の無線通信は、直通によらず、電信はシンガポール中継、電話は香港で中継されている。そのため通信の時間がかかり、電報料が高くなる等日本にとつて不利な状態にあるので、これまでたびたび日本側から直通無線回線を設定しようとする申入れをオーストラリア側に対して行つてきた。(第一号七一-七二頁参照)
昨年十二月岸首相が第二次東南アジア訪問旅行でオーストラリアを訪問したさいに、メンジス首相に対し、直通回線の問題を早く解決したい旨申入れたところ、オーストラリア側は直通電話連絡については開設する用意があること、および直通無線電信については料金を若干引下げることを考慮するとの回答があり、このための具体的な話し合いが両国の専門家の間で行われることとなつた。
西アフリカ諸国とわが国との貿易は、わが方の一方的出超で、著しい片貿易を示しているので、これを是正するための合弁事業、技術提携等が望まれ、一昨昨年および一昨年にはナイジェリア東・西両州政府から夫々経済使節団が訪日し、わが国からも同国への経済調査団派遣を要望されつつあつたが(第一号七六頁参照)、昨年十一月日本プラント協会からエジプトに派遣された製紙関係技師二名が、ナイジェリアヘの経済調査団の予備的視察の目的で帰路同国に立寄り、約三週間にわたり同国の経済事情を視察して来た。両技師は翌十二月上旬帰朝し、早速帰朝報告を行つたが、今後ナィジェリァヘわが国から本格的調査団を派遣するかどうかは、目下関係方面でそれぞれ専門的見地から研究中である。