西欧関係

1 西欧諸国との友好関係の増進

西欧諸国は古くから世界外交の中心舞台であつたが、戦後においては米国および英国とならんで自由主義陣営の中核を形成し、さらに東西両陣営の接触面として国際政局上極めて重要な地位を占めている。

これら諸国は大戦による甚大な被害からめざましい復興をとげ、すでに戦前に倍する経済的繁栄を実現したばかりでなく、最近ではさらに相互の連携関係の強化により、米ソ二大国に対抗する第三広域圏の樹立をめざして、いわゆる欧州統合化の動きを着々推進しており、その国際政治における発言力はとみに重要性を加えるにいたつている。

これら西欧諸国との友好関係は、わが国が近代国家として発足していらい、わが国の政治的、経済的、文化的発展の上に極めて重要な意義を有してきたのであるが、戦後わが国はこれら諸国との国交をすべて再開し、戦後処理上最大の難関であつたクレーム問題もすでにほとんど解決したばかりでなく、さらにひとしく自由主義諸国の一員としての共通の基盤の上に、進んでこれら諸国との協力関係を各般の分野において強化しつつある。

昨年七月以降においても、九月にスウェーデンの戦争クレームに関する交渉が妥結したのを始めとして、十月にはドイツとの文化協定およびノルウェーとの通商航海条約が発効し、さらに十一月になつてフランスとの貿易取極の成立をみたほか、国際連合およびその専門機関等の国際会議においても、わが国と西欧諸国との協力提携関係は、相互の一そう深い信頼と理解を基礎としてますます促進された。

昭和三十二年末現在で、西欧諸国のうちわが国が戦後新たに文化協定を締結した国は、フランス、イタリアおよびドイツの三カ国、通商航海条約はギリシャ、スペイン、スイス、スウェーデン、デンマーク、オランダおよびノルウェーの七カ国、航空協定は別項のように六カ国、査証相互免除取極にいたつては西欧の主要国をすべて網羅する十一カ国の多きに及んでいる。今や西欧はこのようにわが国との基本的な国際協力の面において極めて緊密な関係を有するにいたつた。

このような友好関係の強化に伴つて、わが国と西欧諸国との要人の往来もとみに頻繁の度を加えつつある。政府は、昨年秋堀田移動大使を欧州十三カ国に派遣して、最近の経済金融事情を視察せしめ、欧州経済の動向の把握および関係諸国との親善強化に寄与するところ大であつた。またこれと前後して元フランス首相アントワーヌ・ピネー氏を政府賓客として招待したほか、さらに同国下院財政副委員長アンリ・カイヤヴェ氏、同国国連代表ルィ・ジャッキノ氏があいついで来日し、それぞれわが政、財界の当路者と隔意のない意見交換を行い、日仏関係の改善に大きな成果をおさめた。

このような各般の領域におけるわが国と西欧との間の交流の緊密化は、西欧諸国のわが国に対する関心と認識とをますます深めるとともに、わが国の国際的地位の向上に少からぬ寄与をなしつつあり、今後その一そうの発展が期待される。

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2 航空協定の締結

わが国は、昭和二十八年いらいオランダ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フランスおよびスイスの六カ国とつぎつぎに航空協定を締結した(第一号六六頁参照)が、現在さらにベルギーとの間に航空協定締結のため交渉が行われている。

なお前記の諸国中協定により北極圏航路線を認められているのは、現在のところスカンディナヴィア三国およびフランスである(現在運航中の会社はスカンディナヴィア航空のみ、エールフランスは運航準備中)。また、最近オランダも北極圏航路開設の希望を表明しており、昨年八月これに伴う協定改正に関する協議が両国航空当局の間で行われた。

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3 中立国クレームの処理

今次大戦中日本国内および日本の占領地域において、日本軍の軍事行動により中立国政府および国民が蒙った損害につき、戦後約百六十六億円のクレームが提起された。これらクレームは、連合国のそれと異り、平和条約とは関係なく、一般国際法に基いて処理されるものである(第一号六七頁参照)。

主な未解決クレームのうち、スウェーデンのクレーム(要求額約十三億円)については、昨年九月交渉が妥結し、わが国が約五億円相当のスウェーデン貨を支払うことにより、本件を完全かつ最終的に解決する旨の協定が署名された。

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