経済

APECリマ閣僚会議(概要と評価)

平成20年11月20日

I.会議の概要

 11月19日及び20日、ペルー・リマにおいて第20回APEC閣僚会議が開催された。我が国より中曽根外務大臣及び二階経済産業大臣が出席したほか、APEC各エコノミーから外務大臣、貿易大臣等が参加した(ペルーのガルシア・ベラウンデ外務大臣及びアラオス貿易観光大臣が議長)。20日には、閣僚共同声明(和文:主要点:抜粋骨子仮訳全文)(英語版(PDF)PDF)が発出された。
 議論の概要は以下のとおり。

1.国際経済問題(食料・燃料価格高騰問題を含む)

(1)現下の国際金融危機を受け、APEC地域を含めた国際社会が協力して金融危機に取り組む必要性、危機への対応における国際金融機関が果たすべき役割、国際金融システムの改善、規制・監督のあり方等に関し意見交換がなされた。

(2)中曽根大臣より、15日ワシントンでの金融・世界経済に関する首脳会合の成果も踏まえた、アジア太平洋地域における緊密な協力の重要性等を指摘した上で、この地域において金融危機の影響を受ける国に対しIMF、世銀等と協力をし、積極的な支援を行うとともに、アジア地域の金融協力強化と自律的発展のためODA等を活用した積極的かつ具体的な協力を促進していく旨述べた。また、食料価格高騰問題については、7月の洞爺湖サミットで合意されたG8首脳声明の着実な推進に加え、APECにおける食料生産力の強化等の中長期的な取組の重要性を指摘した。

(3)二階大臣より、実体経済への資金供給の確保と需要創造による実体経済の活性化のため、我が国の中小企業向け30兆円の緊急保証制度枠の実施や貿易保険機関による再保険等の国際協力を紹介しつつ、中小企業金融や貿易金融における国際協調の必要性を指摘した。また、政府の財政出動や制度改革や民間資金の流れの活性化を通じた各エコノミー内の消費の拡大を提唱しつつ、ERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター)を中核とした協力の意思を表明した。また、食料価格高騰については、透明性向上のための商品先物市場規制当局の連携や来月のERIAの食料・エネルギー価格の高騰に関するシンポジウムの紹介を行った。

2.WTOドーハラウンド交渉へのAPECの支持

(1)ドーハ・ラウンド交渉における年内モダリティ合意及び保護主義の抑制に向け、首脳による力強い前向きなメッセージを発出すべきことで一致した。

(2)中曽根大臣より、国際金融危機に対応するにあたり、更なる保護主義的な貿易措置の自粛を訴えた上で、農業、NAMA(非農産品市場アクセス)交渉に加え、サービス・ルール、知的財産等についての堅実な議論の進展に加え、途上国の自由貿易への参画を促すため、我が国として生産、流通、購入の3局面での包括的な途上国支援である「開発イニシアティブ」の着実な実施を主張した。

(3)二階大臣より、現下の厳しい経済状況におけるモダリティの年内合意の必要性を指摘しつつ、自由貿易体制の恩恵を受けて発展してきたAPECこそが共同の政治的意思を表明するとともに、各メンバーがジュネーブでこれまで以上の柔軟性を示して交渉打開のイニシアティブをとるべきことを主張した。

3.APEC地域経済統合

(1)昨年、首脳より閣僚及び高級実務者に対し指示のあった、2008年に地域経済統合の促進のためにとられた措置の概要をまとめた「APEC地域経済統合に関する進捗報告書」が承認され、首脳に報告されることとなった。

(2)中曽根大臣より、検討の進捗を歓迎し、本報告書を承認するとともに、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の検討等地域統合の推進及びよりよいビジネス環境を目指す円滑化の進展等は、紛れもなく本地域の発展に貢献してきており、APECホスト国として、2010年を新たなビジョンを示す契機とすべく、メンバーとの連携を深め責任を果たしていきたい旨発言した。

(3)二階大臣より、現下の金融危機における地域経済統合の取組の確実な前進のため、CEPEA(東アジア包括的経済連携)、ASEAN+3、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの取組を同時並行で進めるべきことを主張したほか、知的財産権や基準認証等の貿易・投資の自由化以外の幅広い分野でも経済統合の推進に向けて知恵を出し合いたい旨発言した。

4.地域貿易協定・自由貿易協定(RTA/FTA)モデル措置

(1)ビジネス界のニーズに応え、質の高い、包括的なRTA/FTA策定のための参照とするためのモデル措置策定作業が継続して行われ、昨年の3章の完成に続き、本年はさらに4章(セーフガード、ビジネスマンの一時的入国、競争政策、環境)のモデル措置が合意されるに至った。なお、一部の章について更に1年検討を加えることとなった。

(2)中曽根大臣より、本モデル措置がRTA/FTA締結交渉時に積極的に参照され、効率的な交渉、地域経済統合に貢献していくことを期待する旨発言した。

5.貿易・投資円滑化

(1)昨年の閣僚会議で承認された、今後2010年までに貿易取引費用の更なる5%削減を目標とする第二次貿易円滑化行動計画(TFAP2)及び、本年7月の貿易担当大臣会合で承認された、投資円滑化行動計画(IFAP)の重要性が確認された。

(2)中曽根大臣より、ABTCカードの普及等に見られる本分野での作業の進捗はビジネス界をはじめとする人々が具体的成果として実感できるものであり、設定した両計画を確実に実施していくことの重要性を指摘した。

(3)二階大臣より、投資環境の整備や知的財産権の保護は、ABAC(APECビジネス諮問委員会)から特に期待されている分野であり、今年はIFAP(投資円滑化行動計画)の策定や知的財産権専門家と税関との情報共有の取組が進展し、このような分野横断的な取組を進めていきたい旨発言した。

6.構造改革・国内措置

(1)構造改革及び国内措置に関する取組は、ボゴール目標達成の手段として、また地域経済統合に資するものとして重要との認識の下、8月の構造改革大臣会合における成果が評価された。

(2)二階大臣より、各エコノミーに存在する異なる投資規制や行政上の手続きの煩雑さが問題となっており、アジア太平洋地域で活動する国境を越えた企業活動を円滑化する観点から、APECとして構造改革を進めなければならない旨発言した。

7.企業の社会的責任(CSR)

(1)企業の自主的な取組を基本としたCSR活動の更なる普及が期待されるとともに、APECにおけるビジネス界の代表であるABACの積極的な関与が慫慂された。

(2)二階大臣より、我が国では、広範なステークホルダーが参加した「円卓会議」を年内に発足させ、企業の自主的な取組を支える環境整備を行うことを紹介した。さらに、既存のOECDや国連等のガイドラインを活用しつつ、ABACとの連携を強め、APECとして企業のCSRに向けた活動を奨励すべき旨発言した。

8.人間の安全保障

(1)APECが行ってきたテロ対策について、多くのエコノミーが支持し、今後もAPECでの活動を継続することが承認された。

(2)中曽根大臣より、生物・化学テロに関する我が国の取組を紹介するとともに、CBRN(化学、生物、放射能、核)テロに関する我が国のイニシアティブの継続を検討すること、ソマリア沖海域を含めた海賊対策の強化等による海上における安全の確保等を指摘した。

(3)また、中曽根大臣より北朝鮮問題にも言及し、地域の平和と安定の確立、更なる繁栄のため、拉致、核、ミサイル問題といった諸懸念を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現すべく努力するという我が国の基本的立場を述べた。

9.APEC機構改革

(1)APECでの取組の効率性・継続性を確保する観点から、APEC専任事務局長の選定プロセス等の諸条件を含む、事務局機能の強化を柱としたAPEC改革案が承認された。

(2)二階大臣より、一環した視点から継続的に政策提言を行う中核的な機関として設置されたPSU(ポリシー・サポート・ユニット)について、提案国の一つとして積極的に協力すること、また、OECD、世界銀行等に加え、ERIAとのPSUの連携の必要性を発言した。

10.気候変動問題

 気候変動に関する取組についても、複数のエコノミーから発言があった。
 二階大臣より、気候変動問題への対応に加え、エネルギー安全保障・産業の競争力強化にも資するエネルギー効率の向上に域内で取組むことが重要であり、セクター毎に特定された技術の途上エコノミーへの移転を促進することで世界全体の削減を実現する「セクター別アプローチ」や「アジア太平洋パートナーシップ(APP)」の推進等の域内協力を強化したい旨述べた。

II.会議の評価

  1. グローバル金融市場における現下の混乱は、APEC地域の成長にとっても重大な問題であるという認識のもと、15日の金融・世界経済に関する首脳会合の結果も踏まえ、グローバルな経済の見通しについて幅広く意見が交換された。
     その上で、アジア太平洋地域における緊密な協力・協調の必要性、特に、国内消費の拡大、中小企業や貿易金融での資金供給の確保等について閣僚声明にも盛り込まれ、また、本問題に対処するため首脳レベルでの力強いメッセージの発出の必要性が閣僚レベルで共有されたことは、極めて有意義な会合であった。
  2. 15日の首脳会合において、WTOドーハ・ラウンド交渉を促進するための前向きなメッセージが発出されたことを受け、今次閣僚会議の機会に、世界経済の6割を創出するAPECメンバーの間で、WTO交渉の今後の取り進め方について有益な意見交換が行われた。また、保護主義的な貿易措置を自粛し、WTOドーハ・ラウンド交渉における年内のモダリティ合意に向けた力強いメッセージを首脳レベルで発出すべきであるとの点につき意見の一致を見、こうした趣旨が閣僚声明に盛り込まれた。これらは、同交渉の早期妥結に向けた機運を高める上で意義のあるもの。
  3. 昨年APEC首脳から閣僚及び高級実務者に検討の指示が与えられた地域経済統合に関する進捗報告書が承認された。具体的には、APEC域内の既存のRTA/FTAの類似点・相違点調査等を通じた長期的展望としてのFTAAPの検討、IFAPの策定、構造改革大臣会合の開催、APEC事務局機能強化のためのPSUの設置等、包括的な分野における本地域の一層の経済統合に向けた取組が実施され、将来的な地域経済統合に向けた事務的検討が前進した点は評価できる。
  4. 近年、議論の幅を安全保障分野にも広げてきているAPECにおいて、本年もテロ対策・不拡散問題や感染症対策などの取組が歓迎されたことは、APECにおける安全な貿易を確保し、アジア太平洋地域の安定、安全、繁栄を目指した取組を引き続き進める上で有意義であった。
  5. さらに、この機会を活用し、中曽根大臣は、APEC地域の外相が参加する非公式会合に出席し、国際経済問題及び国連ミレニアム開発目標(MDGs)について意見交換を行ったほか、豪州、シンガポール、カナダ、ニュージーランド、韓国、ペルーの各外相と個別に会談を行い、有意義な意見交換を行うことができた。
  6. また、二階経済産業大臣は、米国、豪州、シンガポールの通商担当大臣との非公式会合(レジェンド・グループ会合)に出席し、来年以降のAPECプロセスについて協力して取り組んでいくことを確認したほか、米国、豪州、シンガポール、インドネシア、韓国、ペルー等と会談を行い、世界各国での需要拡大の必要性やWTOドーハ・ラウンドの推進、地域経済統合のあり方、二国間の経済問題等について幅広く議論を行った。
  7. 来年2009年の議長国であるシンガポールに続いて、2010年に日本、2011年に米国がそれぞれ議長国をつとめることとなるが、今後のAPECの活動を考える上で、かつ我が国が主導的な役割を果たしていくためにも、2010年の準備作業の取組みを進めていくことが必要である。
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