経済

APECシドニー首脳会議(概要と評価)

平成19年9月9日

I.会議の概要

 9月8日及び9日、APEC首脳会議が豪州・シドニーで開催された。豪州のジョン・ハワード首相が議長を務め、我が国より安倍総理が出席したほか、ブッシュ米国大統領、胡錦濤・中国国家主席、プーチン・ロシア大統領を始めAPEC各エコノミー首脳が参加した。

 今次首脳会議においては、APEC首脳宣言(骨子)、気候変動に関する独立首脳宣言(骨子)及びWTO交渉についての独立声明(仮訳)が採択されるとともに、「地域経済統合に関する報告書」が承認された(要旨部分の全文仮訳)

 議論の概要は以下のとおり。

1.気候変動とエネルギー安全保障(8日午後)

 ハワード首相のイニシアティブにより、本年のAPEC首脳会議の主要議題として気候変動問題が取り上げられた。気候変動がAPEC地域においても非常に重要な課題であることが確認され、また、幅広い意欲的な行動を通じ環境問題に対処することが必要との認識が共有された。

 安倍総理よりも、「美しい星50」で示された「安倍三原則」を紹介し、気候変動問題のため広くAPECメンバーの叡智と意志を結集していく必要を呼びかけ、参加メンバー首脳の賛同を得た。

 これらの議論を受け、首脳レベルで「気候変動、エネルギー安全保障及びクリーン開発に関するシドニーAPEC首脳宣言」を採択。同宣言において、1)2030年までに域内のエネルギー効率を少なくとも2005年比で25%向上させる、2)2020年までに域内の森林面積を少なくとも2000万ヘクタール増加させる、との数値目標を含む行動指針に合意した。

2.WTOドーハ開発アジェンダ(8日午後)

 多くの首脳から、極めて重要な時期を迎えているWTO・DDA交渉の早期妥結に向けて積極的に取り組む姿勢が示された。

 安倍総理からは、ラウンド早期妥結のため、7月に農業・NAMA(非農産品市場アクセス)交渉議長が作成したテキストをベースに、ジュネーブでのマルチの交渉をしっかり進めていくことが重要と発言した。

 交渉に弾みをつけるべく首脳レベルで力強いメッセージを発出すべきとの認識で一致し、WTO交渉についての独立声明が採択された。

3.地域経済統合の促進、人間の安全保障等(9日午前)

(1)地域経済統合の促進

 今後の地域経済統合のあり方に指針を与える「地域経済統合に関する報告書」が、高い評価を受けつつ承認された。

 安倍総理より、アジア太平洋地域の自由貿易圏(FTAAP)といった野心的な長期的展望を持ちつつも、地域の特性にも配慮した、現実的な方法と手段がバランス良く取りまとめられたものであり、我が国としても評価する旨述べた。

(2)人間の安全保障

 テロ対策、緊急事態や自然災害への備え、感染症対策等人間の安全保障に係る課題につき、各首脳よりそれぞれの取組を紹介し、この分野におけるAPECでの活動を歓迎、一層の協力緊密化で意見の一致をみた。

 安倍総理より、APEC地域の安定的な成長を達成するためには、テロ対策、感染症対策、災害への備えが不可欠である旨指摘し、また、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決も地域の平和と安定のためには不可欠であること、拉致問題の解決や「不幸な過去」の清算も必要であるといった我が国の基本的立場を述べた。

(3)その他

 首脳会議において、ブッシュ米国大統領より2011年のAPECを米国で、またプーチン・ロシア大統領より2012年をロシアで開催する意向がそれぞれ示され、歓迎された。

 また、APECへの新規参加問題は、2010年に再検討することとした。

4.ABACとの対話(8日午前)

 APEC首脳と各エコノミーのAPECビジネス諮問委員会(ABAC)委員との対話が行われた。安倍総理のグループでは、特に気候変動について積極的な意見交換が行われた。総理よりも環境規制や省エネ対策に官民一体となって取り組んだ経験を紹介しつつ、我が国としての協力を惜しまない旨発言した。

(なお、APEC首脳会議の機会に、安倍総理は、米国、ロシア、豪州、メキシコ、の首脳と二国間会談を行った他、日米豪3カ国首脳による朝食会に出席した。)

II.会議の評価

  1. 気候変動問題については、米・中を含み、世界のCO2排出量の約6割を占めるAPEC地域の首脳の間で、エネルギー効率及び森林面積に関し、拘束力はないものの具体的な数値目標を含めた独立宣言を発出することができた。米国ハイレベル協議、年末のバリCOP会議や、我が国が主催する来年のTICAD、G8北海道洞爺湖サミットといった協議・交渉日程を考えると、今次会議において、具体的な数値目標を含む行動指針及び京都議定書後の枠組みに含まれるべき諸点について合意できたことは、きわめて大きな意義があった。
  2. 今次首脳会議は、WTOの農業・NAMA(非農産品市場アクセス)議長テキストに関する本格的な議論がジュネーブで始まる重要な時期に開催された。今次首脳会議において、APECの首脳レベルで、WTOラウンド交渉の今後の取り進め方について有益な意見交換を行うとともに、ラウンド交渉が年内に最終局面に入ることを確保するとの政治的意思を約束し、そのために農業・NAMA交渉議長テキストをベースに交渉を再開する旨を表明したWTO交渉についての独立声明を採択したことは、極めて有意義であった。
  3. 地域経済統合を促進する方法についての報告書が承認された。報告書では、アジア太平洋地域の自由貿易圏(FTAAP)について、選択肢及び展望の検討実施が合意されている他、幅広い分野にわたる具体的な行動について合意されており、今後、地域経済統合の一層の促進に資するものと評価される。
  4. 人間の安全保障の議題においては、緊急事態への備え、感染症対策、テロ対策・不拡散問題などこの地域の安定的な成長を達成するために不可欠な取組について議論することができた。
このページのトップへ戻る
目次へ戻る