経済

APEC貿易担当大臣会合(概要と評価)

平成18年6月2日

I. 会合の概要

 6月1日及び2日、APEC貿易担当大臣会合がベトナムのホーチミンで開催された。APEC各メンバーから貿易担当閣僚等が出席した(我が国からは二階経済産業大臣及び遠山外務大臣政務官が出席)。ベトナムのチュオン貿易大臣が議長を務め、会合終了後に議長声明及びWTOドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉に関する閣僚声明が発出された。会合における議論の概要は以下のとおり。

1.多角的貿易体制の強化

(1)WTO交渉に関し、農業及び非農産品市場アクセス(NAMA)のモダリティ(注:関税削減等に関する数字の入った各国共通のルール)を6月末までに合意するため、6月19日までに農業及びNAMAに関する議長提案を提出し、6月最終週頃に閣僚レベルの会合を開催するスケジュールが多くのエコノミーより支持された。また、NAMAでの関税削減方式については、「2つの野心的な係数のスイス・フォーミュラ」とすることが支持され、昨年12月の香港閣僚宣言よりも一歩踏み出した表現となっている。

(2)我が国より、DDA交渉が困難な局面にあるときこそAPECとして交渉を後押しすることが重要であることを指摘しつつ、NAMA、アンチダンピング、貿易円滑化等について我が国の立場を表明。さらに、農業分野では、モダリティに合意するためには、輸出国側が現実的な姿勢を示す必要があること、サービス分野では、APECメンバーが質の高いオファーを示すとの強いコミットメントを示して交渉を牽引すべき、開発については、昨年小泉総理が発表した「開発イニシアティブ」の下での成功例が生まれるよう途上国とともに努力したい旨述べた。

2.FTA/RTA

(1)FTA/RTAはボゴール目標達成への重要な手段であり、質が高く、透明で、かつ、WTO協定に整合的であるべき、との認識が再確認された。また、10を超えるFTAモデル措置が提案されたことが歓迎され、ビジネス界との対話を活用しつつ2008年までにできるだけ多くの分野について策定作業を進めることで一致した。

(2)我が国より、我が国は投資分野についてのモデル措置を提案しており、各エコノミーと協力して作業を進めたい旨発言するとともに、FTA交渉に携わる実務者間での情報交換や経験・ノウハウの共有の促進にセミナー開催等を通じ積極的に貢献する意向を示した。

3.釜山ロードマップの実施のための行動計画

 昨年のボゴール目標中間評価報告書に示された「釜山ロードマップ」の主要分野を実施に移すための行動計画の作成が重要であるとの認識が共有され、行動計画作成作業のための骨子が合意された。

4.貿易・投資の自由化及び円滑化

(1)貿易取引費用削減(2002年から2006年までに5%)に向けた取組が歓迎されるとともに、2010年に向けてさらに貿易取引費用を5%削減するための行動計画の改訂作業が支持された。

(2)我が国より、ビジネス界の意見を真摯に受け止めつつ、投資の自由化・円滑化を促進することがボゴール目標達成のためにも重要であると指摘した。

(3)多くの閣僚より、知的財産権の保護の重要性が指摘され、模倣品・海賊版対策イニシアティブの推進のため、既に策定されたモデルガイドラインの着実な実施が支持された。

5.人間の安全保障

(1)多くの閣僚より、テロ対策や鳥インフルエンザ対策、腐敗対策の重要性が指摘された。我が国主催の鳥インフルエンザ能力構築セミナー(本年9月に越で開催)をはじめ各エコノミーの貢献が歓迎された。

(2)我が国より、テロ対策・不拡散問題、感染症対策等安全保障環境の向上のための取組の拡充・強化の必要性に言及するとともに、鳥インフルエンザ対策として本年1月に我が国が表明した総額1.55億ドルの国際支援の実施例として、先月行われた50万人分の備蓄用タミフルの引渡式等を紹介した。

6.経済・技術協力

 経済・技術協力がボゴール目標達成のための重要な柱であり、なかでも経済格差を狭めるため、中小企業対策の実施の必要性が多くのエコノミーから指摘された。また、我が国が推進する「一村一品運動」が多くのエコノミーから高く評価された。

II. 会議の評価

  1. WTO交渉が重要な局面を迎えているときに各エコノミーが6月末までに農業とNAMAのモダリティを確立することに改めてコミットするとともに、NAMAで「2つの野心的な係数を持ったスイス・フォーミュラ」等で一致するなど、APECとして交渉前進のために有益なインプットを与えることができた。
  2. 近年APEC地域で多くのFTAが締結され、又は交渉が開始される中、我が国が原案を作成した投資章を含め、FTA交渉の参考となる具体的措置を列挙したモデル措置の策定作業について、各エコノミーと協力して行われることになった。これは、ビジネス界の懸念にも応えつつ質の高いFTA締結に資する動きであり、評価できる。
  3. 釜山ロードマップを実施するための行動計画の骨子が合意されたことは、先進エコノミーにとってのボゴール目標達成期限であり、我が国がAPECを主催する年でもある2010年に向けて、具体的な取組を進めていくための一歩として評価できる。今後、11月のAPEC首脳会議までに行動計画のとりまとめが期待される。
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