経済

APECハノイ首脳会議(概要と評価)

平成18年11月19日

I.会議の概要

 11月18日及び19日、APEC首脳会議がベトナム・ハノイで開催された。ベトナムのグエン・ミン・チエット国家主席が議長を務め、我が国より安倍総理が出席したほか、ブッシュ米国大統領、胡錦濤・中国国家主席、プーチン・ロシア大統領を始めAPEC各エコノミー首脳が参加した。
 18日にはWTO・DDA(ドーハ開発アジェンダ)に関する独立文書(英文仮訳)が、19日には首脳宣言(骨子仮訳英語PDFPDF)が、それぞれ採択された。また、北朝鮮の核実験に関する口頭の声明が発出された(声明仮訳)。
 議論の概要は以下のとおり。

1.経済問題(18日午後)

(1)多くの首脳から、多角的貿易体制の強化が優先事項であり、WTO・DDA交渉再開に向け政治的リーダーシップが不可欠であるとの指摘がなされた。さらに、APEC域外にも呼びかける力強いメッセージを発出すべきとの認識で一致し、WTO・DDAに関する独立文書が採択された。
 安倍総理からは、保護的となっている国を含め、DDA交渉の成功裡の終結を呼びかける必要があると発言した。さらに、イノベーション(技術革新)とオープン(開放性)という2本立てによる開かれた日本について言及があり、アジア・ゲートウェイ構想を進めたい旨発言があった。

(2)アジア太平洋の自由貿易圏構想については、長期的展望として、地域経済統合を促進する方法及び手段についてのさらなる研究を実施し、来年のAPEC首脳会議に報告することとなった。
 安倍総理より、アジア太平洋の自由貿易圏構想については、同地域は世界経済の約6割を占めていることから、現行のWTO体制・交渉との関係にも留意しつつ、重層的な取組の一つとして検討を行うことは有意義であり、議論に積極的に参加していく旨発言した。

(3)ボゴール目標の達成に向けた今後の道程を具体化する行動計画である「ハノイ行動計画(PDF)PDF」(英文(PDF)PDF)が、高い評価を受けつつ、承認された。

2.人間の安全保障等(19日午前)

(1)テロ対策・感染症対策・エネルギー安全保障

(イ)テロ対策等、安全保障に関する問題や、感染症対策がAPECの課題として再確認され、この分野におけるAPECのイニシアティブや活動を歓迎した。また、テロ対策に加え、教育の欠如や貧困など、テロの根源の除去が重要である等の指摘もあった。
 安倍総理も発言において、テロ対策や感染症等の問題は「人間の安全保障」の視点から取り組むことが重要と指摘しつつ、テロや国際組織犯罪の防止・根絶に取り組む旨述べた。

(ロ)また安倍総理より、北朝鮮のミサイル発射及び核実験は我が国のみならず東アジア及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できない、六者会合の開催は歓迎するが、北朝鮮に対し、六者会合共同声明や安保理決議第1718号等の履行を働きかけていくことが大切である等発言した。また、安倍総理より、北朝鮮は拉致問題にも誠実に対応していないとして、同問題を国際的な連携を通じ一日も早く解決する重要性を訴えた。これに対し、ブッシュ大統領を含む何人かの首脳から支持があった。
 また、会議総括にあたって、議長であるチエット国家主席より、安倍総理から発言のあった拉致問題につき認識を共有すると発言があり、北朝鮮による核実験に関する口頭声明の読み上げがあった。

(2)複数の首脳から、エネルギー問題の重要性を指摘する発言があり、代替エネルギーや新技術の重要性や省エネルギー、クリーンエネルギーの研究開発の必要性について発言があった。
 安倍総理より、エネルギー安全保障は重要な問題、国内にエネルギー源を持たない我が国は、エネルギー効率の向上、環境保全等において世界でも有数の進んだ技術を有しており、各国・地域と積極的に協力していく用意がある旨述べた。

(3)APEC改革について、効率性、継続性の向上につき意見が一致した。

3.ABACとの対話(18日午後)

 APEC首脳と各エコノミーのAPECビジネス諮問委員会(ABAC)委員との対話が、5つのグループに分かれ質疑応答の形で行われた。安倍総理からは、質問に答える形で、自由貿易体制・エネルギー安全保障・中小企業対策等について説明を行った。

(なお、APEC首脳会議の機会に、安倍総理は、チリ、シンガポール、中国、豪州、米国、韓国及びロシアの首脳と二国間会談を行った。)

II.会議の評価

  1. APECはこれまでもWTO・DDA交渉を支持してきており、今次首脳会議において、中断しているWTO・DDA交渉に政治的推進力を与えるべく、APECメンバーとして現在の膠着状態を打開する用意ができていること、APEC域外の国々に対しても準備と決意を示す必要があることを呼びかける独立文書が発出されたことは、今次会議の成果である。
  2. APECとして、長期的展望としてのアジア太平洋の自由貿易圏を含め、地域経済統合を促進する方法について研究を行うこととなった。多数のFTA(自由貿易協定)/RTA(地域貿易協定)が策定される中で、この地域の経済統合の大きな方向性についての議論に重要な貢献を行った。
  3. ハノイ行動計画が策定され、ボゴール目標達成に向けての具体的作業が明確化された。また、その関連で、我が国が重視する構造改革、知的財産権の保護、透明性等の国内措置の重要性についても確認された。
  4. テロ対策・感染症対策について、閣僚共同声明に盛り込まれた内容が改めて首脳により合意され、この問題が今後ともAPECの中心議題の一つとなることが確認された。
  5. また北朝鮮に関しては、議長より、北朝鮮によるミサイル発射や核実験への強い懸念を表明するとともに、国連安保理決議や六者会合共同声明の完全な実施の重要性を強調する口頭声明が発出されたことにより、国際社会の一致したメッセージを発出することができた。
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