障害者の権利に関する条約 (CPRD) 初回政府報告書に関する質問事項への回答 日本国政府 別添5 新型コロナウイルス感染症への対応:障害のある人に関わる主な措置(2021年4月時点) (1) 障害福祉関係 障害福祉サービス等事業所を始めとする社会福祉施設等が提供する各種サービスは、利用者の方々やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、十分な感染防止対策を前提として、利用者に対して必要な各種サービスが継続的に提供されることが重要である。 そのため、厚生労働省では、地方自治体に対し、社会福祉施設等における感染拡大防止に向けた取組について、感染者が発生した場合の留意事項や衛生用品等の適切な管理、障害福祉サービス等の報酬、人員、施設・設備及び運営基準等の柔軟な取扱いについて要請するとともに、緊急事態宣言後の対応等について周知した。 障害福祉サービス事業者等への支援としては、感染者が発生した事業所等への各種手当や消毒の費用などのかかり増し費用、人員確保のための費用等の助成や利用者と接する職員に対する慰労金の支給を実施した。 このほか、障害福祉サービス現場における感染症への対応力の底上げを図るため、感染対策マニュアルや業務継続ガイドラインを策定し、周知を行った。 (2) 障害者雇用関係 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動の低下による障害者雇用への影響を踏まえ、障害者の雇用の安定に向けた必要な支援を実施するため、地域障害者職業センターにおいて障害者の配置転換等に関する専門的な支援を実施したことに加え、公共職業安定所(ハローワーク)において、離職を余儀なくされた障害者の就職に向けて、障害者向けチーム支援などに取り組んだ。 また、事業主による雇用維持の取組を支援するため、雇用調整助成金について支給要件の緩和、助成内容の拡充等の特例措置を講じたほか、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース及び障害者短時間トライアルコース)について特例措置を設けた。 公共職業安定所(ハローワーク)においては、感染拡大防止の観点から、電話による職業相談や、郵送又はインターネットなどできる限り来所を求めない方式により求職申込み又は求人申込みが可能であることを周知した。また、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センターにおいて、できる限り来所を求めない方式により支援の継続に努めること等、柔軟な対応を推進した。 さらに、支援対象障害者の職場定着支援(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金)について、従来対面での支援を助成対象としていたところ、ICT等を活用したオンラインによる支援も助成対象とした。 加えて、事業者団体に対して、障害のある人の雇用の安定に向け、特段の配慮を求める要請を行った。 (3) 教育関係 各教育機関等における新型コロナウイルス感染症に関する対応については、国内で感染者が確認され始めた当初より、文部科学省において、新型コロナウイルスに関連した感染症対策に係る情報を、児童生徒、学生、保護者及び教職員等に周知するとともに、安全確保に細心の注意を払う旨を教育委員会等に依頼するなど、各種対応を行ってきた。 A 初等中等教育 2020年2月27日に、子供たちの健康・安全を第一に考え、多くの子供たちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、小・中・高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業を要請する方針が内閣総理大臣から示された。このことを受け、翌28日に、文部科学省から各学校の設置者へ春季休業開始日までの間の臨時休業の実施を要請し、多くの学校において、臨時休業の措置が取られた。 この一斉臨時休業に際し、特別支援学校等に在籍する障害のある幼児児童生徒の中には、保護者が仕事を休めない場合に自宅等で一人で過ごすことができない者がいることも考えられることから、障害のある子供の居場所の確保に取り組んだ。 また、臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学びを保障するために、2020年4月10日に「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」において、学校が課す家庭学習に関する基本的な考え方を示すとともに、5月7日に「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業中における障害のある児童生徒の家庭学習支援に関する留意事項について」において、障害のある児童生徒の家庭学習を支援するに当たり、障害種毎の家庭学習上の留意事項を通知するとともに、各学校において家庭学習への支援を積極的に行うことを要請した。 緊急事態宣言は段階的に解除されたが、2020年6月19日には、これまで文部科学省がガイドライン等で示してきた障害のある幼児児童生徒への指導等を行う際の基本的な考え方などを「特別支援学校等における新型コロナウイル感染症対策に関する考え方と取組」として整理し、周知した。 B 高等教育 高等教育段階においては、新型コロナウイルスの感染拡大防止と学生の学修機会の確保を両立するため、2020年6月5日に「大学等における新型コロナウイルス感染症への対応ガイドライン」をまとめ、各大学等に対して周知を行った。また、コロナ禍においても学びを継続するため、大学等における遠隔教育の実施に関する環境整備への支援を行うとともに、障害のある学生の受講についても配慮するよう、2020年5月22日に「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&A」において周知した。 C 社会教育 文部科学省は、公民館や図書館等の社会教育施設について、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促しているところである。新型コロナウイルス感染拡大への対応としては、2020年5月に公民館や図書館等の全国組織が策定した感染症対策ガイドラインを地方公共団体に周知することにより、感染予防対策を徹底するとともに、新型コロナウイルス感染拡大時においても障害のある人を含む地域住民が学びの機会を確保できるよう、公民館や図書館等の取組事例を紹介した。 (4) スポーツ、文化芸術 A スポーツ 新型コロナウイルスの感染拡大により、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が延期になったことに加え、2020年第7回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム・北海道や第54回全国ろうあ者体育大会が中止となり、全国障害者スポーツ大会が2023年に延期となった。 このような状況を踏まえ、公益財団法人日本パラスポーツ協会は、各種スポーツイベントの再開に当たっての基準や再開後の開催時における感染拡大予防のための留意点についてまとめた「スポーツイベントの再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」を策定した。 B 文化芸術 新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、障害者芸術等に関するイベントも含め、文化芸術関係イベントの中止や開催方式の変更等文化芸術活動は多大なる影響が生じた。 そのため、政府全体としての雇用維持等に向けた取組に加えて、持続化給付金、雇用調整助成金や中止等となった文化芸術関係イベントのチケット代金の寄附に係る税制特例、税や社会保険料の猶予など、あらゆる手段で、文化事業の継続と雇用の維持を図ってきた。 加えて、文化庁においては、令和2年度第1次・第2次・第3次補正予算を活用し、文化施設の感染症対策、文化芸術団体の活動継続や収益力強化の取組、感染対策を十分に実施したうえで行う積極的な公演への支援等を通じ、文化芸術活動の再開・継続・発展に向けて取り組んだ。