障害者の権利に関する委員会 初回の日本政府報告に関する質問事項への日本政府回答 A. 目的及び一般的義務(第1-4条) 質問事項(CRPD/C/JPN/Q/1) 1 (a) に対する回答 1. 日本政府は、障害者団体との協議等を通じ、法律が障害者権利条約の趣旨及び目的に調和するよう不断の取組を行っている。例えば、事業者による合理的配慮の提供の義務化等を内容とする障害者差別解消法の改正法が2021年5月に成立した。 2. なお、「心神喪失」という用語は、我が国では一般的に「insanity」と訳しているが、あくまで「精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力がなく、又はこの弁識に従って行動する能力のない状態」を意味するものとして、ある者の刑法上の責任能力を問得るかを判断する際に用いられる法律上の概念として、刑法や「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」等で使用されているものであって、侮蔑的な用語ではない。 質問事項 1 (b) に対する回答 3. 本条約の趣旨及び目的を反映させるため、2011年に障害者基本法を改正し、同法の障害者の定義にいわゆる「障害の社会モデル」の考え方を反映している。障害者差別解消法においても、同じ障害者の定義を採っている。 4. 制度ごとに趣旨及び目的が異なるためその程度には差があるが、障害者基本法の下、各制度において、障害の社会モデルの考え方を考慮に入れている。 質問事項 1 (c)に対する回答 5. 政府においては、障害者基本法第11条に基づき、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として、障害者基本計画を策定することとしている。 6. 都道府県、指定都市及び市町村における障害者計画の策定状況は、2020年4月時点において、全ての都道府県及び指定都市がこれを策定済みであり、また、市町村全体の91.3%に当たる1,571市町村がこれを策定済みである。 7. 障害者基本法に基づく審議会その他の合議制の機関は、2020年4月時点において、都道府県及び指定都市では100%、市町村では全体の40.2%に当たる691市町村において設置されている。 質問事項 1 (d) に対する回答 8. 日本政府は立法や政策の起草や履行等に関し、障害者の効果的な参加を確保している。具体的には、例えば、障害者政策委員会、社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会において、障害当事者や障害者団体が参加し、議論や審議を踏まえて法制度や政策を検討している。 質問事項 1 (e) に対する回答 9. 相談支援に従事する者が相談支援に関わる前に受ける最初の研修や、精神保健指定医に対する指定前及び指定後5年毎の研修に、本条約や人権等を踏まえた内容を含めている。また、精神保健福祉士養成課程の教材に加え、社会福祉士養成課程でも条約に関することを学ばなければいけないことを、ルールとして明確化することにしている。 10. 刑務官、検察官、弁護士、警察官、法執行機関職員等に関しては、質問12(b)への回答及び別添1を参照。 質問事項 2 に対する回答 11. 本条約の選択議定書に規定される個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度と認識している。個人通報制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無及び個人通報制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識。個人通報制度の受入れの是非については、各方面から寄せられる意見も踏まえつつ、引き続き、政府として真剣に検討を進めている。 B. 特別の権利(第5条-第30条) 平等及び無差別(第5条) 質問事項 3 に対する回答 12. 障害者差別解消法においては、行政機関等及び事業者に対し、雇用分野を除くあらゆる分野において、障害を理由として、不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないとされている(同法第7条第1項、第8条第1項)。 13. また、行政機関等及び事業者は、その事務・事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときには、必要かつ合理的な配慮を行うことが求められる。こうした配慮を行わないことにより、障害者の権利利益を侵害する場合には、障害を理由とする差別に当たる(同法第7条第2項、第8条第2項)。 14. 障害者政策委員会において2020年6月に取りまとめられた「障害者差別解消法の施行3年後の見直しに関する意見」では、事業者による合理的配慮について、事業者を含めた社会全体の取組を進めるとともに障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から、更に関係各方面の意見等を踏まえ、その義務化を検討すべきであるとされた。政府は、その後、これを踏まえた検討を進め、2021年3月に、事業者による合理的配慮の提供の義務化等を内容とする障害者差別解消法の改正法案を第204回通常国会に提出した。同法案は、両院ともに全会一致で可決され、同年5月に成立した。その後、同改正法は、同年6月4日に公布された。 質問事項 4 に対する回答 15. 差別により権利を侵害された者は、訴訟又は仮処分により当該行為の差止めを求めることができるほか、不法行為に基づき損害賠償請求をすることができるなど、民事上の手続をとることが可能。また、法務省の人権擁護機関において、相談・調査を行い、関係機関と連携・協力し、事案に応じた適切な措置を講じている。 16. 2018年の障害者を被害者とする暴行虐待、社会福祉施設における人権侵犯、差別待遇、強制強要についての人権相談件数は2,857件であり、人権侵犯事件数は345件となっている。 障害のある女子(第6条) 質問事項 5 (a)に対する回答 17. 障害者基本法において、施策の基本方針として、障害者の自立及び社会参加のための施策が、障害者の性別等に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない旨規定している(同法第10条第1項)。また、2018年に策定した第4次障害者基本計画においては、障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援を、各分野に共通する横断的視点として位置付けている。 18. 2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画計画においては、障害者施策を含め、様々な分野についてジェンダー平等に関する施策を定めている。 質問事項 5 (b) に対する回答 19. 教育については、2013年に学校教育法施行令を改正し、就学先決定の仕組みを改め、「特別支援教育支援員」等の専門家の配置に係る税制措置及び支援を行っている。また、「特別支援教育に関する教職員等の質向上事業」を実施。障害のある子供の自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の整備を行っている。 20. 障害者総合支援法において、性別にかかわらず自立した日常生活または社会生活を営むために必要な障害福祉サービスや相談支援等を利用することのできる仕組みを構築している。 障害のある児童(第7条) 質問事項6 (a)に対する回答 21. 2021年に改訂した「障害のある子供の教育支援の手引」等において、早期からの一貫した支援の重要性を示した。また、2013年に学校教育法施行令を改正し、就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという就学先決定の仕組みを改め、本人や保護者の意見を可能な限り尊重しながら、市町村教育委員会において総合的な観点から決定する仕組みとした。 22. 身近な地域において障害児に対する支援を提供する中核的な機関である児童発達支援センターでは、障害のある子どもの最善の利益を考慮した支援の提供、ガイドラインの制定及び保育所等への専門的支援の提供に努めている。また、「保育所等訪問支援」を創設し、訪問先を乳児院及び児童養護施設にも拡大して、福祉施設における療育機能の強化を図っている。 質問事項6 (b) に対する回答 23. 教育に関し、2013年に学校教育法施行令を改正し、本人や保護者の意見を可能な限り尊重しながら、市町村教育委員会において総合的な観点から決定する仕組みとした。こうした仕組みにおいては、障害のある子供本人の意見について、保護者を通じて表出される場合が多いと考えられる。子供本人が意見を表明する権利を保障するため、障害の発達の状況等を踏まえつつ、別途本人の意見聴取を行うことが望ましい場合もあると考えられることを教育委員会に示している。 24. 保健及び福祉に関し、児童福祉法第21条の5の6及び第24条の3の規定に基づき、障害児及びその保護者の支援の利用に関する意向等を勘案して支給要否決定を行うこととしている。また、児童相談所運営指針には、児童相談所が援助を行う場合は、子ども等の意見を聴くべきこと等が定められているが、さらに、2019年の児童福祉法等の改正法に基づき、児童が意見を述べることができる機会の確保等の在り方について検討している。 25. 司法手続に関しては、家庭裁判所の家事審判や家事調停の手続において、その障害の有無にかかわらず、子の陳述の聴取及び子の意思を把握するよう努めることとされており、審判や調停に当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされている(家事事件手続法第65条、第258条参照)。検察庁においては、障害児を含む児童が犯罪の被害に遭った場合において、当該児童が繰り返し聴取されることによる心理的負担を軽減し、供述の信用性を確保するため、警察や児童相談所と連携し、児童の供述特性も踏まえつつその代表者が聴取を行う取組を推進している。 意識の向上(第8条) 質問事項 7 (a) に対する回答 26. 障害及び障害者に対する国民の関心、理解を深めるとともに、障害者の社会参加意識の高揚を図るため、毎年12月3日から9日までの1週間を「障害者週間」としており、全国で、官民にわたって多彩な行事を集中的に実施するなど、積極的な啓発・広報活動を実施している。 27. 正しい障害理解を促進するため、教育分野においては、 1) 学習指導要領の改訂等による交流及び共同学習の促進、 2) 「心のバリアフリーノート」等の教材の作成及び公表、 3) 各自治体における優良取組事例の収集及び公開などを推進している。 28. 更に、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、「共生社会等に関する基本理念等普及啓発事業」において、共生社会の理念等について、障害福祉従事者や事業経営者等が改めて学び、それを実践につなげていくことを目的とした研修を実施し、広く一般の者に向けての普及啓発のため、フォーラムを開催している。 29. また、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第7条にもとづき策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」において、障害者の人権を人権課題の一つとして、啓発活動を充実・強化することを明記し、法務省の人権擁護機関では、「障害を理由とする偏見や差別をなくそう」を啓発活動強調事項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。 質問事項 7 (b) に対する回答 30. 質問7(a)で回答した、一般の者に向けての普及啓発のためのフォーラムについて、障害者団体の関与の下、開催を行っている。 31. 「障害者週間」においては、その前後の期間も含め、国のみならず地方自治体や関係団体とも連携した多様な取組が全国で行われている。 施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)(第9条) 質問事項8 (a) に対する回答 32. バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」における移動や施設利用の利便性や安全性の向上の促進、市町村が作成する基本構想等に基づく、地域における重点的かつ一体的なバリアフリー化の推進、2020年に施行された「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」にもとづく電話リレーサービスの開始、2018年に施行されたユニバーサル社会の実現に向けた諸政策の総合的かつ一体的な推進に関する法律を踏まえた、ユニバーサル社会の実現に向けた諸政策の策定及び実施を進めている。 33. 高齢者や障害者を含む誰もが公的機関のウェブサイトを円滑に利用できるよう、公的機関に求められる対応をガイドライン(「みんなの公共サイト運用ガイドライン」)として策定し、ウェブアクセシビリティ改善に向けた取組を促している 質問事項 8 (b) に対する回答 34. 「建築士法」により、建築士が定期的な講習を受けることを義務づけており、当該定期講習の内容にはバリアフリー法に関する内容が含まれている。 生命に対する権利(第10条) 質問事項 9 (a) に対する回答 35. 自殺関与又は同意殺人について規定している刑法202条以外に、現時点で、死の幇助に関する特別の法令は存在せず、政府、国会において法案を議論していない。 質問事項 9 (b) に対する回答 36. 本人の意思によらない入院又は身体的拘束の最中に又はその後に発生した死亡事案の件数については把握していない。 37. 精神保健福祉法に定める本人の意思によらない入院制度は、精神障害者であることのみを理由として適用されるわけではなく、精神障害のために自傷他害のおそれがある場合又は自傷他害のおそれはないが医療及び保護が必要な場合であって、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものである。実施に当たっては、精神保健指定医による診察や入院措置についての本人への書面告知が義務づけられている。 38. また、精神保健福祉法上、身体的拘束は、精神保健指定医が必要と認める場合でなければ行うことができないこととしており、また、自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合、多動又は不穏が顕著である場合及びその他精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合に、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われるものと定めている。 危険な状況及び人道上の緊急事態(第11条) 質問事項 10 (a) に対する回答 39. 災害に於いては、障害者を含む社会的弱者への配慮が必要であり、避難確保計画の作成及び避難訓練の実施が義務づけられている。また、避難経路のバリアフリー化も進めている。地方自治体に於いても、地域の実情に即して、要求園舎支援の指針の策定等の防災の取組を進めている。 40. 厚生労働省においては、障害者の救助・支援活動をサポートする災害時ボランティアリーダーや、障害特性に応じた対応方法を熟知した災害時リーダーを養成する研修を実施した。また、民間事業者、団体等の福祉支援ネットワークを構築する事業に対する補助を行った。 質問事項10 (b) に対する回答 41. 2018年3月、駅、空港、ホテル等で障害者に災害情報を伝達し屋外への避難誘導を効果的に行うために、施設関係者がディスプレイやスマートフォンアプリを活用して、避難誘導の視覚化を行うためのガイドラインを策定し、リーフレットの配布など、啓発を進めている。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場においては、聴覚障害者に対して、音響通信技術を用いて災害を文字化することで、円滑な避難誘導を実現するための取組を実施した。 質問事項 10 (c) に対する回答 42. 障害者団体を含む関係者の意見を踏まえて国が策定したガイドライン等を参考に地方公共団体が避難所の確保や運営を行うこととしており、障害者等の特別な配慮を必要とする者の福祉避難所の確保等に努めることとしている。福祉避難所以外の避難所についても配慮した運営に努めるよう取組を推進し、国は財政面を含め支援している。 43. 「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」(2020年5月)の作成に当たっては、女性の障害者団体等へのヒアリングを実施し、女性のニーズに配慮すること等を盛り込んだ。 質問事項 10 (d) に対する回答 44. 仙台防災枠組では障害者を含めた関係ステークホルダーとの関与が強調されている。2019年に発生した台風においては一連の被害を検証するチームを立ち上げ、障害者団体の意見も踏まえ、課題を整理した。引き続き、防災に関する政策の立案と実施に関しては必要に応じて障害者等との意見交換を行っていく。 質問事項 10 (e) に対する回答 45. 自然災害(台風、洪水等)によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を生活の再建を支援するために、支援金を支給する制度がある。 46. なお、東日本大震災の津波による自宅損壊に対する支援や福島原発事故により自宅に帰還できない障害者を含む被災者の支援については、当該震災からの復興のために設立された復興庁が中心となり、個別の対策を講じている。 法律の前にひとしく認められる権利 質問事項11 (a) に対する回答 ○民法上の制度及び趣旨 47. 我が国の民法は、「私権の享有は、出生に始まる」旨規定し(民法第3条第1項)、全ての人が権利能力を有することとされている。この点について、障害者であることを理由とした制限は設けていない。 48. 成年後見制度は、判断能力の程度に応じた類型、意思の尊重、司法機関による審査が民法により確保されている(詳細は別添)。我が国では、成年被後見人の自己決定権を尊重し、成年後見人が本人の意思決定を支援する形での取組を進めている。日本政府は、2022年3月に閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画に基づき、障害者及びその代表団体の関与の下、成年後見制度の包括的な見直しを検討している。 質問事項 11 (b) に対する回答 49. 障害者総合支援法に基づく相談支援として、障害者等からの相談に応じ必要な情報の提供や助言等を行う「基本相談支援」等の他、成年後見制度の利用に要する費用を補助する事業(成年後見制度利用支援事業)や法人の活動を支援する事業(成年後見制度法人後見支援事業)を実施している。 50. 日本司法支援センター(法テラス)において、2018年1月に全面施行された改正総合法律支援法に基づき、認知機能が十分でない高齢者・障害者等を対象として、本人からの申し出がなくても、福祉機関等からの連絡を受け、弁護士・司法書士が出張して法律相談を行うことができるようになった。 51. 法務省の人権擁護機関では、全国311箇所の法務局・地方法務局及びその支局において、障害者の人権問題を含むあらゆる人権問題について相談に応じているほか、施設での特設の人権相談所を開設して相談対応を行っている。人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、関係機関とも連携・協力し、事案に応じた適切な措置を講じている。 質問事項 11 (c) に対する回答 52. 意思決定支援の定義や意義、標準的なプロセスや留意点を取りまとめた「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」を2017年3月に作成し周知した。2020年度より、国において上記ガイドラインに基づく指導者養成を開始し、同時に都道府県においても意思決定支援に基づく研修を実施している。 53. 障害を理由とした差別の禁止や合理的配慮の提供については、地方公共団体等を通じたリーフレットの配布などにより周知を行っているほか、「障害者週間」の機会を活用した啓発活動を行っている。 54. 弁護士、裁判所職員、裁判官、検察官並びに警察官及び刑務官を含む法執行機関職員に対する意識の向上については、下記質問12(b)回答及び別添1を参照。 司法手続の利用の機会(第13条) 質問事項 12 (a) に対する回答 55. 裁判所では、「裁判所における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」が定められており、各裁判手続等において、障害を有する当事者や証人等が、適切に意思疎通を図り、円滑に権利行使ができるようにするため、裁判官の判断で、障害の内容や程度に応じて、手話通訳人を付す、要約筆記等による手続を行う、あるいは、補聴器を貸与する、裁判所が作成、交付する書面を点訳するなどの配慮のほか、裁判官が当事者に対する手続の説明や質問をする際にも、その内容や方法に配慮するなどの措置が講じられていると承知している。 56. また、障害を有する子供に対しては、裁判官の判断で、さらにその発達段階に応じた質問内容や方法にするなどの配慮をしているものと承知している。 57. 民事訴訟事件及び非訟事件の手続において、当事者は、難聴、言語障害、知能が十分でないこと等により、十分な手続上の行為ができない場合、裁判所の許可を得て、補佐人と共に出頭することができる(民事訴訟法第60条、非訟事件手続法第25条)。 58. 民事訴訟における口頭弁論及び非訟事件の手続の期日に関与する者(当事者となる場合のほか、証人等となる場合を含む。)が耳が聞こえない者又は話をすることができない者であるときは、通訳人を立ち会わせ、又は、文字で問い若しくは陳述をすることができるとしている(民事訴訟法第154条第1項、非訟事件手続法第48条)。 59. 刑事訴訟法及び刑事訴訟規則上、以下のとおり規定されている。 (1) 障害者であるか否かにかかわらず、被告人及び被疑者は、私選弁護人を付することができ(刑事訴訟法第30条第1項)、被告人及び勾留を請求され又は勾留状が発せられている被疑者は、貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所に対し、国選弁護人の選任を請求することができる(同法第36条、第37条の2)。さらに、裁判所は、被告人が、耳の聞こえない者又は口のきけない者であるとき(同法第37条第3号)、心神喪失者又は心神耗弱者である疑いがあるとき(同法第37条第4号)、その他必要と認めるとき(同法第37条第5号)、若しくは、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があるとき(同法第37条の4)は、職権で国選弁護人を選任することができる。 (2) 裁判所は、裁判所の手続において、耳の聞こえない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる(刑事訴訟法第176条)。 (3) 証人尋問においては、証人が耳が聞こえないときは、書面で問い、口がきけないときは、書面で答えさせることができる(刑事訴訟規則第125条)。 60. 次に、捜査機関において、障害を有する被疑者や参考人に対して取調べを行う際は、対象者の特性を考慮して適切な方法により行うことの重要性を意識し、知的障害者等に対し供述特性を踏まえた分かりやすい発問等を行うこと、必要な場合には、その供述特性等に精通している心理・福祉関係者により助言を受けたり同人らを取調べに同席させたりすること、聴覚障害者に対し手話通訳や筆談を用いること、必要に応じ、検察官らが自宅や病院等に赴いた上で事情聴取を実施することなどの配慮を行っている。 質問事項12 (b) に対する回答 61. 弁護士、裁判所職員、裁判官、検察官、警察官、刑務官及びその他職員について、障害者の権利や理解・配慮に係る研修を実施し、意識の向上を図っている。(詳細は別添1参照) 質問事項 12 (c) に対する回答 62. 検察官及び警察官による障害者に対する対応、裁判所及び訴訟手続における障害者に対する措置については、上記パラ12(a)に述べたとおり、司法手続のアクセスが確保されている。 身体の自由及び安全(第14条) 質問事項 13 (a) に対する回答 63. 精神保健福祉法に定める本人の意思によらない入院は、上記質問9 (b)回答を参照。また、行動制限については別添1を参照。 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「医療観察法」という。)においても、精神保健福祉法と同様の仕組みがあり、医療観察法第92条で、入院対象者の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができると定めている。指定入院医療機関の管理者は、同法第93条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を遵守しなければならないとされている。当該基準において入院対象者の個人としての尊厳を尊重し、その人権に配慮しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の促進に資するものでなければならないものとしている。また、処遇に当たって、入院対象者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を入院対象者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに、その制限は入院対象者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとしている。 64. 医療観察法において規定されている精神障害者に対する入院等の処遇は、殺人や放火などの重大な犯罪に当たる行為を行い、かつ、当該行為の当時、心神喪失又は心神耗弱の状態にあったと認定され、不起訴処分又は無罪等の確定裁判を受けた者について、当該行為を行った際の精神障害を改善し、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に行われるものである。処遇は、精神障害者であることそのものを理由として行われるものではない。処遇の決定に当たっては、対象者の鑑定を実施するとともに、弁護士や保健・福祉に関する専門家等の関与の下で審判期日を開催し、対象者に意見を述べる機会を与えた上で、裁判官と医師である精神保健審判員の合議体において、処遇の要否及び内容を適切に判断することとされている。(同法第2条、第33条ないし第42条) 質問事項 13 (b) に対する回答 65. 精神障害者の入院件数及び1年以上の長期入院者も増加はしていない(統計別添4のとおり)。 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由(第15条) 質問事項 14 (a) に対する回答 66. 行動の制限については、別添1を参照。 67. 精神保健福祉法第38条の4において、精神科病院に入院中の者又はその家族等は、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。 68. なお、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(平成26年厚生労働省告示第65号)において、精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性として、インフォームドコンセントの理念に基づく精神障害者本位の医療の実現などが定められている。 69. 医療観察法第92条も同様に、入院対象者の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができると定めている。 さらに、医療観察法第95条において、同法の決定により指定入院医療機関に入院している者又はその保護者は、厚生労働大臣に対し、指定入院医療機関の管理者に対して当該入院している者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命ずることを求めることができる。 70. なお、電気けいれん療法は、迅速な治療効果が必要な症例や、薬物療法において副作用が出現しかつ薬物治療で反応性に乏しい症例にも有効で、改善率や安全性が確立されたものである。原則患者の同意を得た上で、適応疾患や予想される危険と利益、人権保護の観点からも十分検討し、総合的な判断の上で行われている。 質問事項 14 (b) に対する回答 71. 精神保健指定医や法律に関する学識経験者等で構成される独立した第三者機関であり、都道府県に設置される精神医療審査会が存在する。 72. 精神科病院の管理者は、都道府県知事に対して、本人の意思によらない入院中の者の症状等を定期的に報告しなければならない。また、入院中の患者やその家族等は、都道府県知事に対して、処遇改善請求や退院請求を行うことができる。 これらの報告や請求については、当該精神医療審査会により、その入院の要否や処遇の適否が審査される。都道府県知事は、その審査の結果に基づき、その入院が必要でないと認められた者を退院させ、又は病院の管理者に対して退院等の措置を採ることを命じなければならない。 73. 更に、厚生労働大臣又は都道府県知事は、精神科病院の管理者に対して、入院中の者に関する報告や書類の提出・提示、病院への立入調査を要求することができ、入院中の者の処遇が法令に反する場合や著しく適当でないと認めるときは、精神科病院の管理者に対して処遇改善命令を行うことができる。 質問事項 15 に対する回答 74. 2018年3月以降、旧優生保護法下における不妊手術について、以下のような調査を実施してきた。 ・ 都道府県、保健所設置市、特別区に対して、関連した資料等の保管状況等の調査(同年9月結果公表) ・ 医療機関・福祉施設や保健所設置市以外の市町村における優生手術に関する個人記録の保有状況の調査(同年10月結果公表) 75. 「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「旧優生保護法一時金支給法」という。)においては、全文で反省・おわびを表明するとともに、国は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対し、320万円の一時金を支給することとなっており、2022年4月30日時点で994名に対して支給を認定した。 76. また、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合う社会の実現を促進する観点から、旧優生保護法に基づく優生手術等に関する調査その他の措置を実施することとされている。 77. 旧優生保護法の被害者に対しては、2020年4月1日の時点ですでに20年が経過していれば、その権利が消滅することになるのが原則であるが、個別の事案において、損害賠償請求権が消滅しているか否かは、裁判所の判断ということになる。 搾取、暴力及び虐待からの自由(第16条) 質問事項 16 (a)に対する回答 78. 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律第3条において、障害者への虐待を禁止している。取組推進に当たり、支援事業の実施や、都道府県や市町村における体制整備を行っている。 79. 以下の法律により、障害者を含む虐待や暴力の禁止、被害者への支援が規定されている。配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律、児童虐待の防止等に関する法律、児童福祉法、学校教育法、民法及び刑法。 80. 労働基準監督署においては、労働者からの相談など各種情報に基づき、労働基準関係法令の違反の疑いがある事業場に対し監督指導を実施し、法違反が認められた場合は、その是正を指導している。 質問事項16 (b)に対する回答 81. 上記質問16(a)回答は、障害のある女子と児童にも当てはまるため、16(a)参照。 個人をそのままの状態で保護すること(第17条) 質問事項 17 に対する回答 82. 旧優生保護法については、障害者の権利の実現に向けた取組が進められる中、障害者を差別する優生思想を排除するため、1996年に議員発議により、法改正が行われた。具体的には、遺伝性精神疾患等を理由とする優生手術(不妊手術)等に関する規定は全て削除され、母性の生命健康を保護することを目的とする法律に改められ、母体保護法と改称された。 また、同年、地方自治体に対して、その改正法の趣旨等について周知を行った。詳細は質問15への回答を参照。 移動の自由及び国籍についての権利(第18条) 質問事項18 に対する回答 83. 精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者又はその能力が著しく不十分な者で、所定の補助者(出入国管理及び難民認定法施行規則第4条)が随伴しないものについては上陸を拒否することとなる(出入国管理及び難民認定法第5条第1項第2号)。精神障害があることではなく、それに伴う社会への影響を考慮して判断している。知的障害又は精神上の障害があることのみに基づいて上陸を拒否することはない。 84. また、出入国管理及び難民認定法第5条第1項第2号に該当するかどうかの判断は、医学的判断を要するものであることを踏まえて、医師の診断を経た上で行うこととされており(同法第9条第2項)、慎重な手続により行うこととなる。 自立した生活及び地域社会への包容(第19条) 質問事項 19 (a)に対する回答 85. 障害者の総数は、2018年10月1日時点で、964.7万人と推計されており、そのうち在宅の障害者は914万人、施設に入所している障害者は50.7万人である。 86. 2020年に実施した「障害者福祉計画に係る実施状況報告 地域移行アンケート」結果によると、2019年度中に障害者支援施設から退所した者のうち、地域生活に移行した者は約1,600人となっている。このうち、主な移行先を居所別に見ると、グループホームが約700人、家族が住む自宅等が約900人となっている。また、地域生活に移行した者の主たる日中活動の場は、生活介護が約500人、就労継続支援B型が約300人、一般就労が約200人となっている。 87. 2019年に実施した調査の結果によると、2019年10月1日時点の障害者支援施設及び障害児入所施設の在所者数とその内訳は、別添の表1及び表2のとおり。2019年に実施した調査の結果によると、2018年10月1日から2019年9月30日の間に障害者支援施設を退所した者の退所後の住居は、別添の表3のとおり。 88. 精神病床における性・年齢階級・都道府県別の在院状況については、別添3の通り。 質問事項19 (b)に対する回答 89. 障害福祉サービス等の提供体制の確保等に関しては、障害者総合支援法第88条及び第89条の規定に基づき、都道府県と市町村が定める障害福祉計画により定めている。この計画は、国が定める基本指針(障害者福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)を踏まえて策定することとしている。基本指針においては、障害者等の自立支援の観点から、福祉施設等からの地域生活への移行、地域生活の継続の支援の提供等、地域の社会資源を最大限に活用し、提供体制の整備を進めることとしている。 90. 同法に規定する共同生活援助(グループホーム)、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援において、各種支援を実施している。 91. 精神障害者の医療機関からの退院については、より一層の地域移行を進める観点から、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を平成29年より進めている。 個人の移動を容易にすること(第20条) 質問事項 20 に対する回答 92. 障害者総合支援法に基づき、各種事業を実施している。詳細は別添1を参照。 93. 福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律第7条に基づき、福祉用具の実用化開発を行う事業者に対する助成や、研究開発及び普及のために必要な情報の収集・分析及び提供を実施している。 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(第21条) 質問事項 21 (a) に対する回答 94. 障害者基本法において、全ての障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることとされている(障害者基本法第3条)。 95. また、2018年に施行されたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律においても、国及び地方公共団体は、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の策定及び実施に当たっては、障害者、高齢者等の言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段並びに情報の取得及び利用のための手段を確保することに特に留意しなければならないとされている(ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律第8条)。 質問事項21 (b)に対する回答 96. 首相官邸ホームページにおいては、「首相官邸ウェブアクセシビリティ方針」を策定し、緊急時の情報発信を含む主要コンテンツについては、日本産業規格JIS X 8341-3:2016「高齢者・障害者等配慮設計指針‐情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス‐第3部:コンテンツ」のレベルAA準拠の維持を目標として運用しているが、政府として情報発信を行うことを目的とした官房長官記者会見等については、文章や画像のみならず、手話通訳の映像等を合わせて掲載している。 97. 厚生労働省では「音声読み上げ/文字拡大サービス」の導入と「点字ファイル」の提供を行っている。 98. 選挙公報掲載文については、音声読み上げソフトに対応する形式での掲載を進めるため、電子データでの提出を可能とした。また、参議院選挙区選出議員選挙の政見放送において、手話通訳及び字幕の付与を可能にするとともに、スタジオ録画の場合にも手話通訳の付与を可能とした。2019年4月の統一地方選選挙では、視力に障害のある有権者の投票環境の向上を図るため、点字及び音声による選挙情報のきめ細かい提供を行った。 質問事項 21 (c) に対する回答 99. 字幕番組、解説番組及び手話番組の制作費等に対する助成を実施し、放送事業者における取組を促進している。2019年度は122者に助成し、字幕番組助成件数は47,302本、解説番組助成件数は3,984本、手話番組助成件数は1,547本。 質問事項 21 (d) に対する回答 100. 2004年に国内外の既存ガイドラインを参考に日本語特有の事項も考慮し国家規格JIS X8341-3(高齢者・障害者等配慮設計指針‐情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス‐第3部:ウェブコンテンツ)を制定。その後、W3C勧告”WCAG2.0”に沿った国際規格ISO/IEC 40500:2012に一致させるため対応する同JISを2016年3 月に改正した。 101. こうした規格への対応に資するものとして、高齢者や障害者を含む誰もが公的機関のウェブサイトを円滑に利用できるよう、ガイドライン(「みんなの公共サイト運用ガイドライン」)を策定し、公的機関のウェブアクセシビリティ改善に向けた取組を支援している。 プライバシーの尊重(第22条) 質問事項 22 に対する回答 102. マイナンバー制度については、マイナンバー法を制定し、障害者を含め、マイナンバー及びマイナンバー付きの個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう規定を定めている。個人情報保護法も、障害者を含め、個人情報の適正な取り扱いを図っている。 家庭及び家族の尊重(第23条) 質問事項 23 (a) に対する回答 103. 民法第770条第1項第4号については、配偶者の一方が回復の見込みがない強度の精神病に罹患し、その者が夫婦としての協力義務を履行できない状態にある場合には、他方配偶者の意思に反してまで婚姻を継続させることは相当ではないとの考慮に基づくものである。 104. もっとも、同条第2項は、同条第1項各号に該当する事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができると定めている。 105. 当該規定は、婚姻当事者双方の利益に配慮したものであり、障害者を差別した規定であるという指摘は全く当たらない。 106. いずれにしても、民法等の規定については、社会情勢の変化等を踏まえ、必要な見直しをしていく必要があるものと考えている。 質問事項 23 (b) に対する回答 107. 障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ必要な情報の提供や助言等を行っている。児童相談所では、常に子どもの最善の利益を考慮し、援助活動を展開しており、相談、通告を受けた場合、児童やその家庭の状況等を勘案して援助している。 108. また、特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づき、特別児童扶養手当及び障害児福祉手当を支給している。 教育(第24条) 質問事項24 (a) に対する回答 109. 我が国では、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応えられるよう、通常の学級、通級による指導(多くは週1~2時間)、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の整備を行っている。同時に、学習指導要領の改訂等を通して障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に学ぶ機会である「交流及び共同学習」を拡充している。また、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対する支援や通常の学級に在籍するための権利保障を進める観点から、立法上、政策上、財政上の措置を講じた(詳細は以下の回答を参照)。 110. 立法措置としては、以下の措置を講じた。 1) 障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという就学先決定の仕組みから、本人及び保護者の意向を可能な限り尊重する仕組みへの改正 2) 学習指導要領の改訂による特別支援学校とその他の学校の教育課程の連続性の強化 3) 通常の学級において学習活動上のサポート等を行う特別支援教育支援員や医療的ケア看護職員の省令への位置付けによる配置促進 4) 高等学校における通級による指導の制度化 5) 公立小中学校等施設に対するバリアフリーの義務化 6) 国及び地方公共団体への医療的ケア児が在籍する学校への支援等を義務付け等 111. 政策上の措置としては、以下の措置を講じた。 1) 交流及び共同学習に関する各自治体の好事例を取りまとめた「交流及び共同学習ガイド」の改訂 2) 授業で活用可能な「心のバリアフリーノート」の作成 3) 通常の学校の教師に対し、特別支援教育科目の履修を必修化するといった、全ての教員を目指す学生が特別支援教育を学ぶ機会の確保 4) 教員への様々な研修の機会の提供等 112. 財政措置としては、教員配置や外部人材の配置を拡充するため、以下の措置を講じた。 1) 特別支援教育支援員や医療的ケア看護職員の配置に係る財政支援の充実 2) 小中学校の通級による指導の教員定数の基礎定数化 3) 高校の通級による指導に関する加配措置の充実 質問事項 24 (b) に対する回答 113. 個別化された支援を提供するため、以下の措置を講じた。 1) 2017年以降の小学校学習指導要領等の改訂において、通級による指導を受ける児童生徒について個別の指導計画と個別の教育支援計画の作成を義務づけ 2) 特別支援教育支援員の配置促進 3) 一人一人に応じた入出力支援装置の整備支援やICT活用にかかる調査研究等、個々の障害の状態等に応じた学びの充実に資する予算の確保 4) 2021年に「障害のある子供の教育支援の手引」を改訂し、学校や教育委員会に各障害種別に教育的対応を明示 114. 合理的配慮については、以下の措置を講じた。 1) 2021年の障害者差別解消法の一部改正により、合理的配慮提供義務を私立学校にも拡大 2) 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における合理的配慮提供事例の提供 3) 学校関係者を対象とした合理的配慮推進セミナーの開催等を実施 115. 教職員に対する研修については、以下の措置を講じた。 1) 通常の学級の教員も含めた全ての教職員の特別支援教育に関する理解促進のため、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所や独立行政法人日本学生支援機構、都道府県等において研修を実施 2) また、通常の学校の教師に対し、特別支援教育科目の履修を必修化する等、教員が特別支援教育を学ぶ機会の確保を制度化 質問事項24 (c)に対する回答 116. 該当するデータはない。 健康(第25条) 質問事項25 (a) に対する回答 117. 精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性として、2014 年 3 月に、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(平成26年厚生労働省告示第 65 号)を策定し、同指針では、入院医療中心の精神医療から地域生活を支えるための精神医療への改革の実現に向け、地域で生活するために必要な保健医療サービス及び福祉サービスを提供できる体制を確保することとしている。 118. また、難病患者等に対する医療提供体制の確保については、より早期に正しい診断をできる体制の整備等を進めており、2021年4月現在、44都道府県において難病診療連携拠点病院が整備されている。加えて、難病の患者の療養生活環境整備については、難病患者等に対する相談・支援等を行う拠点施設である難病相談支援センターの設置に取り組んでおり、2021年1月現在、都道府県及び指定都市に概ね1箇所整備されている。 質問事項に対する 25 (b) に対する回答 119. 我が国においては、障害のある方も含め、必要な医療サービスについては、医療保険制度により保障されているところ。さらに、障害のある方については、心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療費(自立支援医療費)の支給を一定の所得区分に応じて行うことにより、障害者等の医療費の負担軽減措置を講じている。 120. また、身体障害者福祉法第15条に規定する身体障害者手帳の交付を受けた者及び都道府県知事又は指定都市の長から療育手帳の交付を受けた者は、障害者総合支援法の第4条に規定する障害者及び障害児の範囲に含まれ、支援の必要度合いに応じて障害者総合支援法第6条に規定する自立支援給付を受けることが出来る。 121. 加えて、難病に関する施策の推進として、2019 年7月までに、医療費助成の対象疾病が56 疾病から333疾病に拡大した。 質問事項 25 (c) に対する回答 122. 学校教育における性に関する指導に関しては、障害のある児童や知的又は精神障害者を含め、学習指導要領に基づき、個々の児童生徒の発達段階、障害の状態や経験等に応じて、各学校で適切に行われている。 123. 障害のある者を含め、以下のような施策に取り組んでいる。 ・ 性と健康の相談センターを通じた、思春期から更年期に至る女性を対象とした相談支援 ・ 専門的知識を有する医師や助産師、保健師等による学校等での健康教育や講演会の推進等の施策 ハビリテーション及びリハビリテーション(第26条) 質問事項 26 に対する回答 124. 障害者総合支援法第76条に基づき 、補装具(障害者等の身体機能を補完・代替し、長期間に渡り継続して使用される福祉用具)の購入等に必要な費用を支給しているところである。また、第77条第6号より、日常生活用具等給付事業により、日常生活上の便宜を図る用具の給付等を実施している。 125. 補装具費支給制度における直近の支給状況(平成30年度)は以下のとおりである。 購入 :申請 162,396件 決定 160,087件(98.6%) 修理 :申請 114,045件 決定 113,499件(99.5%) 借受け:申請 8件 決定8件(100.0%) 126. 公共職業安定所において2019年度支援を行い就職した件数は、103,163件であり、そのうち身体障害者25,484件(全体に占める割合:24.7%)、知的障害者21,899件(21.2%)、精神障害者49,612件(48.1%)、その他の障害者6,168件(6.0%)となっている。 127. 同年度地域障害者職業センターを利用した人数は30,925人であり、そのうち身体障害者は1,185人(3.8%)、知的障害者は7,783人(25.2%)、精神障害者は11,686人(37.8%)となっている。 128. 2019年度障害者就業・生活支援センターでの支援を受けた人数は197,631人であり、そのうち身体障害者は22,615人(11.4%)、知的障害者は91,991人(46.5%)、精神障害者は73,250人(37.0%)、その他の障害者は9,775人(4.9%)となっている。なお、性別・年齢別の状況については把握していない。 労働及び雇用(第27条) 質問事項27 (a) に対する回答 129. 障害者総合支援法の下、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援を実施。就労系障害福祉サービスから一般就労への移行者数については、11.5倍に増加(2003年度1,288人から2017年度14,845人)している。 130. 加えて、知的・精神障害者も含む障害者が、その能力や希望に応じて一般就労できるよう、障害者雇用促進法に基づき、公共職業安定所における障害特性に応じたきめ細かな職業紹介、障害者職業センターにおける職業評価・職業準備訓練、障害者就業・生活支援センターにおける就業面と生活面の一体的な相談・支援等を行っている。 質問事項 27 (b) に対する回答 131. 雇用分野における障害者に対する差別の禁止や合理的配慮の提供義務については、2013年の障害者雇用促進法改正において既に措置している。 132. 2018年5月、多数の国の機関と地方公共団体で法定雇用率を達成していない状況であったことが明らかになったことから、政府において、事案の実態や原因を検証し、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」を策定した。この結果、公務部門における障害者雇用率は改善した(2019年6月1日現在)。 133. また、地方公共団体における障害者向けの募集及び採用においては、合理的配慮の提供が行われれば業務遂行できる者について、応募を制限する募集及び採用は、障害者雇用促進法の趣旨に反するものと考えられるとされており、2018年12月28日、厚生労働省と協力し、総務省は、公正な採用選考を実施するよう地方公共団体に対して助言している。 134. 加えて、2019年9月、総務省は、地方公共団体における障害者雇用に関する取組状況調査の結果の各地方公共団体への情報提供とあわせて、合理的配慮指針において講じることとされている「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」といった雇用管理上必要な措置について、速やかに講じるよう依頼をしたところである。 135. なお、2019年度からは、雇用する障害者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設や設備の設置、整備等に要する経費に対して地方交付税措置を講じている。 質問事項27 (c) に対する回答 136. 厚生労働省において事業主に対する「障害者差別禁止指針」や、「合理的配慮指針」、障害種別ごとの合理的配慮指針の事例集を作成し、事業主に周知している。 相当な生活水準及び社会的な保障(第28条) 質問事項28 (a) に対する回答 137. 公的な住宅等の入居者資格等については、公営住宅法、地方住宅供給公社法等において入居者の募集方法、資格、選考につき公正な手続き及び要件を定めている。 138. また、民間賃貸住宅に関しては、ここ20年程度で増加している空き室や空き家を活用し、障害者等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を創設し、住宅の改修、入居者負担の軽減等や居住支援協議会等の居住支援活動等への支援を実施することにより、民間賃貸住宅等への円滑な入居を促進することとしている。 139. この他、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律においては、共同住宅を建築する場合、建築物移動等円滑化基準に適合するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされている。 質問事項28 (b) に対する回答 140. 生活保護法による保護は、障害者を含む全ての国民に対して、無差別平等に実施されている。生活扶助の一部として、障害者である被保護者に対しては、障害者加算が支給されている。 141. また、国民年金法第1条・厚生年金保険法第1条によると、障害年金は、現役期に障害を有することとなった場合に、その者の稼得能力の喪失に対し、日常生活能力や労働能力の著しい制限といった観点に着目して、所得保障を行うことを目的としている。障害年金の受給者の方が働いて収入を得る場合であっても、基本的には障害年金が支給停止となったり減額されることはない。 142. さらに、2019年10月1日より障害年金生活者支援給付金が創設され、所得の額が一定の基準以下の障害基礎年金の受給者にこの給付金を支給することにより、受給者の生活の支援を図ることとしている。この請求手続については、氏名等を記載するだけの簡易なものとする、代筆を認めるなど、障害がある方が請求しやすいよう工夫を行っている。 143. 加えて、特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づき、著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の者に対して特別障害者手当を支給している。また、障害者総合支援法に基づき、心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療費(自立支援医療費)の支給を一定の所得区分に応じて行うことにより、障害者等の医療費の負担軽減措置を講じている。 質問事項 28 (c) に対する回答 144. 障害者総合支援法に規定する共同生活援助(グループホーム)、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援において、各種支援を実施している。 145. 施設から退所した後の精神障害者に対する社会的な保障としては、精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の一部又は全部を公費で負担することとし、障害者のための医療・リハビリテーション医療の充実を図っている。 146. また、精神障害者が退所後地域で生活するに当たって、 精神科外来、デイケアや訪問看護等の医療サービスを受けることができるとともに、地域での生活をさらに支援するため、訪問支援(アウトリーチ)や精神科救急医療体制の充実等にも取り組んでいる。 147. さらに、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進するため、ピアサポートの養成、アウトリーチ支援などの地方自治体の取組を推進している。 政治的及び公的活動への参加(第29条) 質問事項 29 に対する回答 148. 公職選挙法第9条及び第10条に基づき、選挙権及び被選挙権は、性別や障害の有無により区別することなく保障されている。 149. 障害者の投票権の行使や投票の機会確保のための措置としては、政府報告書パラ187のとおり各種の投票制度を設けている(運用の対応は別添1参照)。 150. その他、各市町村で国政選挙に際し必要となる経費については財政措置を行い、投票所における車イスや車イス用の投票記載台の設置や、選挙人の動線となる通路の段差の解消を進めている。 151. 選挙に関連する情報の提供についてとられている措置としては、日本の初回政府報告書パラ187のとおり国政選挙及び都道府県知事選挙においては政見放送を実施できるところ、2018年の法改正以降、政見放送を実施できるいずれの選挙についても、政見放送に手話通訳・字幕の少なくとも一方を候補者の選択によって付与できるようになっている。 152. また、国政選挙においては、全都道府県で選挙公報全文を内容とする点字及び音声による「選挙のお知らせ版」の作成し、配布している。併せて、音声読み上げソフトに対応するテキストデータの提出を候補者等に依頼し、提出されたテキストデータは各都道府県選挙管理委員会のホームページに掲載している。 153. また、参議院では、障害を有する議員に対し、介助者の帯同、介助者による代理賛否表明等を認めているほか、発言、表決への配慮を行っている。現行制度では、重度障害者への福祉サービス給付を通勤・就労中は受けられないところ、国会議員としての活動時間帯については、参議院が当面費用を負担することとした。 文化的な性格、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加(第30条) 質問事項 30 (a) に対する回答 154. 障害者(学校に通う障害児を含む)のスポーツを行う上での障壁、観戦する際の障壁について調査を行い、障害者が身近な場所でスポーツを実施できる環境の整備等を図る事業を実施している。 155. 特別支援学校等の体育・運動部活動等の充実、特別支援学校等を拠点とした障害者の地域スポーツクラブの設立などを支援している。 156. 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとなる国立競技場について、「世界最高のユニバーサルデザイン」を基本理念の一つに掲げ、整備した。整備にあたっては、多様な利用者ニーズを把握しながら進めるため、高齢者、障害者団体等により構成されるユニバーサルデザインワークショップを実施し、関係者から意見を伺い、障害・年齢・性別・国籍にかかわらず、様々な利用者への細やかな配慮をすることで、多くの人が快適に観戦できる環境が整っている。その他取組は別添1参照。 157. 文化について、平成30年(2018年)6月に施行された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」に基づき、平成31年(2019年)3月「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、障害者による文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいる。 158. 国立博物館・美術館においては、障害者手帳等を持つ方の入場料を無料としているほか、全国各地の劇場や博物館・美術館等では、車いす使用者にも対応したトイレやエレベーターの設置等、来館者の利便性向上に係る環境づくりを進めている。 159. バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」についての上記質問8(a)への回答を参照。 質問事項30 (b) に対する回答 160. 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約は、2019年1月1日に我が国について効力を生じている。国内においては、マラケシュ条約の加入のための必要な措置を含んだ「著作権法の一部を改正する法律」が、2018年5月25日に公布された。マラケシュ条約に関連する改正部分については、同条約の発効と同じく、2019年1月1日に施行された。 161. また、改正著作権法では、著作権を制限する行為について、複製、譲渡や自動公衆送信に加えて、新たにメール送信等を対象とすることとした。これにより、例えば肢体不自由で書籍等を保持できない者のために音訳図書を作成・提供することや、様々な障害により書籍等を読むことが困難な者のために作成した音訳データをメール送信すること等が、権利者の許諾なく行えるようになった。 162. 2019年6月に施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)第13条においては、国は、マラケシュ条約の枠組みに基づき、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、その入手に関する相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備について必要な施策を講ずると規定されている。同法に基づき、政府は、2020年7月に、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を策定した。障害の有無に関わらず、全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に向けて、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進していく。 C. 特別の義務(第31条-第33条) 統計及び資料の収集(第31条) 質問事項 31 に対する回答 163. 2018年度を始期とする第Ⅲ期公的統計の整備に関する基本的な計画においては、障害者統計の充実を図る旨を盛り込んだ。その具体的な取組の一環として、障害者と障害のない者の比較を可能とするため統計データの整備に向けた検討を内閣府、総務省、厚生労働省で協力しながら実施した。その際、障害者を捉える設問の在り方については、「障害に関するワシントン・グループの短い質問セット」で提案されている設問も含めて検討を進めた。総務省では、2021年に実施する社会生活基本調査において、日常生活への支障の有無による生活時間の違いなどを把握することとし、調査実施の準備を進めている。また、厚生労働省では、2022年に実施する国民生活基礎調査において、障害者統計の充実に資する設問の追加の検討を進めている。 164. 文部科学省では、障害のある子どもに対する教育の充実に向け、地域・学校における支援体制の整備状況等について調査を実施し、インターネット等において情報発信している。 165. 在宅の障害児・者等の生活実態とニーズを把握することを目的として、5年に一度「生活のしづらさなどに関する調査」を実施しており、調査結果を厚生労働省のホームページに掲載している。 166. また、毎年、法定雇用率により1人以上の障害者の雇用が義務づけられている企業からの報告に基づき、企業に雇用されている身体障害者、知的障害者、精神障害者の数を把握し、公表している。加えて、従業員が5人以上の事業所についても雇用されている障害者の性別や賃金などについて、5年に一度調査を行い、公表している。 167. さらに、公共職業安定所における障害者の就職状況等についても、毎年、障害の種別や程度ごとに把握し、公表している。 国際協力(第32条) 質問事項 32 (a) に対する回答 168. 2015年に国際協力機構(JICA)の障害分野の方針を示した課題別指針「障害と開発」を策定。JICAにおいて障害者権利条約を踏まえ、障害に特化した取り組みとJICA事業への障害の主流化を行う方針を示すもの。 169. 「環境社会配慮ガイドライン」において、JICAの実施する案件について障害者の権利について配慮することが求められている(詳細は別添1)。 170. 個別案件審査時には、調書において障害者配慮について記載することとなっており、同項目に基づき円借款案件、海外投融資案件において、裨益者から障害者が排除されないよう、案件の審査時に確認している。2020年度には、新型コロナウイルス感染症危機対応の緊急支援円借款を含む23件の事業計画において障害の主流化に関する取組が含まれている。 171. 例えば、インドのデリー・メトロ建設(案件名:デリー高速輸送システム建設事業)では調査計画段階に障害者団体の参加があった。 質問事項 32 (b)に対する回答 172. 日本政府は、国際協力を行うにあたり、対象国の実態や要請内容を十分に把握し、その国の文化を尊重しながら柔軟に対応することが大切と考え、障害者を含む現地の様々なニーズにきめ細かく対応している。 173. 具体的な取組には以下が含まれる(詳細は別添1)。 1) 障害者団体との相談 2) 各種事業への障害者の参加を保障するガイドラインの作成 3) 市民参加協力事業での障害当事者団体の参加 174. 市民参加協力事業は、NGO、大学、自治体等からの提案に基づき実施される事業であるが、障害者団体との協議により、2021年度から合理的配慮にかかる予算を事業費の上限とは別に申請できるよう制度を整備した。 国内における実施及び監視(第33条) 質問事項 33 に対する回答 175. 条約の実施の監視は、障害者政策委員会が、障害者施策の方針の根本を成す障害者基本計画が本条約の趣旨及び目的に沿って実施されているかを監視することによって行われる。また、障害者政策委員会は、障害者基本計画の実施状況を監視し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告することができる(委員会の取組実績については、別添1参照)。 176. 委員は内閣総理大臣の任命によるところ、第4期(2019-2021)の選出においては、人的・技術的リソースを強化し、障害当事者等の参画を拡充するため、精神障害の当事者や学識経験者を含む専門委員4名を追加した。さらに、第5期(2021-2023)委員の選出においては、更に障害当事者や学識経験者など専門委員3名を追加した。この障害者政策委員会には、当事者やその家族からなる団体の者が多数参画しており、これを通じて障害者を代表する団体の意見の反映を行っている。 質問事項 34 に対する回答 177. 人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況も踏まえ、引き続き適切に検討している。