国際連合 CRPD/C/JPN/Q/1 障害者の権利に関する条約 配布: 一般 2019年10月29日 原文: 英語 英語,ロシア語,スペイン語のみ 障害者の権利に関する委員会 初回の日本政府報告に関する質問事項(注) A.   目的及び一般的義務(第1条-第4条) 1. 以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 「心神喪失」といった用語のような侮蔑的な用語を除く措置を含め,締約国(注:日本)の法律をさらに本条約に調和させること。 (b) 立法,政策及び実務において障害の人権モデルを採用すること。これには,障害の評価基準及び認定に関連するものを含む。 (c) 国,県及び市町村レベルにおいて障害者の権利を実現するために特別に焦点をあてた計画又は戦略を進め,履行し,監視し,評価すること。これには,異なった行政レベルの間での緊密な協力を確保するための,障害者基本計画,県の障害者計画及び市町村障害者計画を含む。 (d) 全ての障害者に特化した及び他の関連した立法や政策の起草,履行及び見直しの段階を含むあらゆる段階において,知的又は精神障害のある者,障害のある女子(women)と児童,及び民族的及び少数派に属する障害者を含む,障害者の,彼らを代表する団体を通じた完全かつ効果的な障害者の参加を確保すること。 (e) 障害者と共に行動する専門家(これにはソーシャルワーカー,司法及び警察関係者,及び刑務官を含む)に対し,障害者の権利に関する条約についての制度的研修を提供すること。 2. 本条約の選択議定書を批准する計画があれば,情報を提供願いたい。 B. 特別の権利(第5条-第30条) 平等及び無差別(第5条) 3. 障害者差別解消法が,直接差別,間接差別,複合差別及び交差差別であれ,障害のある女子(women and girls)に対するものを含め,生活のあらゆる分野において,障害に基づくあらゆる差別を禁止しているかどうかを本委員会に対しお知らせ願いたい。また,かかる法律が合理的配慮の否定を私的及び公的領域における障害に基づく差別の形態として認めているかにつき,明確に説明願いたい。 4. 障害に基づく差別があった場合に利用可能な既存の司法及び行政的救済措置についてお示しいただきたい。複合差別及び交差差別の事案におけるものを含め,実施された調査,課された制裁処分及び与えられた救済措置に関する分類した統計データを提供願いたい。 障害のある女子(第6条) 5. 以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。 (a) 障害のある女子(women and girls)の権利を主流化する一般的な男女平等政策,及び障害のある女子の権利を実現するための特別の立法措置,政策及び行政措置。 (b) 障害のある女子(women and girls)が全ての権利及び基本的自由を行使し及び享受することを保障することを目的として,彼女達の完全な能力開発,向上及び自律的な力の育成(エンパワメント)を確保するためにとられた措置。 障害のある児童(第7条) 6. 以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。 (a) 幼児期発達,教育,社会的保護及び全てのレベルにおける早期介入と包容サービスへのアクセスといった分野のものを含む,障害のある児童の権利を主流化する一般的な政策。 (b) 障害のある全ての児童が自己に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保するための措置。障害のある児童の意見が,その家族,里親養育,教育,保健,医療上の状況を含め全ての状況において,また司法及び行政手続においても相応に考慮されることを確保するための措置。 意識の向上(第8条) 7. 以下について情報提供願いたい。 (a) 家族レベルを含め,社会における障害者に関する否定的な先入観及び偏見と戦うためにとられた措置。 (b) 障害者を代表する団体が意識向上計画及び戦略の立案及び履行にいかに関与してきたか。 施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)(第9条) 8. 以下について情報提供願いたい。 (a) 公衆に開放され,又は提供される施設及びサービス(建物,旅客運送,情報通信を含む)の利用の容易さ(アクセシビリティ)を確保するためにとられた全てのレベルの立法及び行政措置。 (b) ユニバーサルデザインを通じた利用の容易さ(アクセシビリティ)に関する継続した研修計画を,建築家,設計者,エンジニア及びプログラマーのような専門家のためのカリキュラムの一部に含めるためにとられた措置。 生命に対する権利(第10条) 9. 以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。 (a) 締約国(注:日本)の死の幇助に関する法令が本条約に従い,かつその一般原則を尊重していることを確保するためにとられた措置。 (b) 精神障害のある者に対する強制入院又は身体的及び化学的拘束の最中に又はその後に発生した死亡事案の件数,並びにそのような出来事を防ぐためにとられた措置及び加害者を起訴するためにとられた措置。 危険な状況及び人道上の緊急事態(第11条) 10. 以下のために,障害者団体と緊密に協議し,同団体が積極的に関与しつ講じられた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 地震,原子力発電所災害を含めた危険な状況及びこれら状況の結果における全ての障害者に関する規範的な枠組の履行,監視,及び評価。 (b) 危険な状況及び人道上の緊急事態の全ての段階において,全ての障害者に対し入手可能な情報を提供すること。 (c) 危険な状況及び人道上の緊急事態において提供される,避難所,一時的住居及びその他のサービスが,利用しやすく,障害を受け入れ可能であり,かつ年齢や性別を考慮するものであることを確保すること。 (d) 障害の包容に特に注意を払いつつ,仙台防災枠組2015-2020の効果的実施を確保すること。 (e) 危険な状況及び人道上の緊急事態において自宅が損壊した障害者が立ち直ることを確保すること。 法律の前にひとしく認められる権利(第12条) 11. 以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 障害者が法律の前にひとしく認められる権利を制限するいかなる法律も撤廃すること。また,民法の改正によるものを含め法的枠組み及び実践を本条約に沿ったものとすること。事実上の後見制度を廃止すること。また,代替意思決定を支援付き意思決定に変えること。 (b) 法的能力の行使に当たって障害者が必要とする支援を障害者に提供すること。 (c) 全ての障害者が法律の前にひとしく認められる権利及び意思決定のための支援を受ける権利について意識の向上を図ること。特に,障害者とその家族,司法の専門家,政策立案者及び障害者のためにあるいは障害者と共に行動するサービス提供者を対象とするもの。 司法手続の利用の機会(第13条) 12. 以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 民事,刑事及び行政手続において障害者のために個人ごとに必要な事項を判断し個人ごとの支援と手続上の配慮を提供すること。これには,裁判所の建物,司法及び行政の施設への物理的なアクセスのし易さや,点字,デジタル版,読み易い版,手話言語,利用可能な有資格の通訳者の数を示すことを含め,補助的で利用し易いフォーマットで手続についての公式情報を入手可能な状態にすることを含む。 (b) 弁護士,裁判所職員,裁判官,検察官並びに警察官及び刑務官を含む法執行機関職員のための研修計画を含め,定期的に障害者の権利に関する意識向上キャンペーンを実施すること。 (c) 知的又は精神障害のある犯罪の被疑者(これには裁判前の勾留にある者を含む)が,差別なくかつ他の者との平等を基礎として,司法手続にアクセスできることを確保すること。 身体の自由及び安全(第14条) 13. 以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」,特にその第29条,第33条及び第37条,並びに「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」を含め障害者の自由及び身体の安全を実際の障害又は障害があると認められることに基づき制限する法律を撤廃すること。これには,障害者の強制的な施設収容を認める法令を含む。 (b) 知的又は精神障害のある者の入院件数が増加していることに対応すること,及び彼らの無期限の入院を終わらせること。 拷問又は残虐な,非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由(第15条) 14. 以下についての情報を提供願いたい。 (a) 障害者,特に知的又は精神障害のある者に対して用いられる,強制電気痙攣療法,強制治療,隔離,その他同意のない屈辱的で品位を傷つける実践を含む,物理的及び化学的身体拘束の使用を廃止するためにとった法律(「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」を含む)上及び実践上の措置。 (b) 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のもとで強制治療を受けた又は長期入院している知的又は精神障害のある者の権利の侵害について調査するための独立した監視システムが存在するかどうか。 15. 「旧優生保護法」のもとで行われた事案を含め,障害者に対する強制不妊事案を調査するためにとられた措置についてお示しいただきたい。また,強制不妊を受けさせられた者が出訴期限法によって司法手続の利用を制限されるかどうかについてもお知らせ願いたい。「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」のもと行う障害者に対する賠償及び補償の提供のための措置について,補償として支払った金額についての最新情報を含め説明願いたい。 搾取,暴力及び虐待からの自由(第16条) 16. 以下のためにとられた法的措置及びその他の措置についての情報を提供願いたい。 (a) 身体的,心理的,性的・ジェンダーに基づく暴力,家庭内暴力,強姦,虐待,搾取及び体罰を含めあらゆる形態の暴力から障害者を保護すること。 (b) 障害者特に障害のある女子(women)と児童に対するあらゆる形態の暴力の発生を確認し,これを予防し,また起訴すること。上記は,家庭,学校,病院,施設を含めあらゆる状況のもとでのものとし,知的又は精神障害のある者に対するその保護者による虐待事案についても含める。 個人をそのままの状態で保護すること(第17条) 17. 障害者に対する強制不妊を法律上及び実践上で廃止するためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 移動の自由及び国籍についての権利(第18条) 18. 「出入国管理及び難民認定法」第5条のもと,実際の知的・精神障害又はこれら障害があると認められることに基づき,締約国(注:日本)が入国を拒否し得るかどうか明確に説明願いたい。 自立した生活及び地域社会への包容(第19条) 19. 以下についての情報を提供願いたい。 (a) いまだ施設にいる障害者,施設から退所した障害者と彼らの現状について,とりわけ性別,年齢,居住地,支援提供の有無によって分類した数値。 (b) 障害者の施設からの退所についての短期及び長期戦略及びリソースの配分(リソースを精神科病院から個人ごとの支援や地域の利用可能なサービスに移行することによるものを含む)。 個人の移動を容易にすること(第20条) 20. 障害者の制限のない個人移動に必要な,移動補助具及び支援補装具,支援機器並びにサービスの利用に関する詳細な情報を提供願いたい。これには,居宅訪問介護,同行援護サービス,地域生活支援サービスのもとでの移動支援サービスを含む。 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(第21条) 21. 以下についての情報を提供願いたい。 (a) 日本手話を国レベルで公式な言語として法律上認めるプロセス。 (b) 点字,読み易い版及びその他補助的及び代替的な意思疎通の方法と様式を含め,利用可能なフォーマットで公式情報を発信するために全てのレベルの当局によって講じられた手段,及び意思疎通支援のために割り当てられたリソース。 (c) 音声解説,手話通訳及び字幕の使用を通じ障害者が理解しやすいテレビ番組を制作するためにとられた措置。 (d) 公衆に開放され又は提供されたウェブサイトが利用し易く,またワールドワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)のウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブによって開発された規格に従っていることを確保するためにとられた措置。 プライバシーの尊重(第22条) 22. 障害者に関するデータの守秘やプライバシー保護を確保するためにとられた立法上,行政上及びその他の措置について,本委員会にお知らせいただきたい。特に,社会保障・税番号制度としても知られている「マイナンバー」制度を利用する際や意思疎通支援を受ける際のものについてお知らせいただきたい。 家庭及び家族の尊重(第23条) 23. 以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 家族生活,婚姻及び離婚に係る全ての事項に関し,民法などの法律における障害者(知的又は精神障害のある者を含む)に対する差別的条項を削除すること。 (b) 障害を理由に家族が分離することを防ぐために,他の者との平等を基礎として親子に関する権利と責任を行使することができるよう確保すべく,障害をもつ児童とその親,障害のある親(シングルペアレントの場合を含む)に対する支援を提供すること。 教育(第24条) 24. 以下についての情報を提供願いたい。 (a) ろう児童及び盲ろう児並びに知的又は精神障害のある児童を含め,障害のある全ての者のために,分離された学校における教育から障害者を包容する(インクルーシブ)教育に向け移行するための,立法及び政策上の措置並びに人的,技術的及び財政的リソース配分。 (b) 個別化された支援を提供するためにとられた措置。全てのレベルにおける一般の(mainstream)教育において障害者に対する合理的配慮の拒否を防ぐためにとられた措置。また,質の高い障害者を包容する(インクルーシブ)教育についての教職員に対する制度的な研修を確保するための措置。 (c) 全てのレベルの教育(第三次教育及び高等教育を含む)における,性別,年齢,障害で他の生徒と比較し分類した障害のある生徒の退学率。 健康(第25条) 25. 以下についての情報を提供願いたい。 (a) 障害者に対する医療や保健サービスに関する法令とその実施が本条約に従っていることを確保するためにとった措置。特に,「難病の患者に対する医療等に関する法律」について。 (b) 総合及び専門保健サービス並びに障害に特化したサービスと機材は国の保健制度の対象範囲となっているか,どの程度そうであるのか。また,締約国(注:日本)中で全ての障害者にとって負担し易く,入手し易く,利用し易いものとなっているか,どの程度そうであるのか。 (c) 障害のある児童や知的又は精神障害のある者を含め,障害者が性と生殖に関する健康と権利について年齢に適した情報及び教育にアクセスすることを確保するためにとられた措置。 ハビリテーション及びリハビリテーション(第26条) 26. 国及び地方の当局によって提供された支援補装具及び器具を含め,ハビリテーション及びリハビリテーションを提供するためにとった措置についてお知らせいただきたい。かかるサービスを受けた障害者の数を,性別,年齢,障害によって分類し,全サービス要望数のうちのパーセンテージとして示していただきたい。 労働及び雇用(第27条) 27. 以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 障害者,特に知的又は精神障害のある者や障害のある女子(women)の雇用を,「福祉的就労」及び保護作業所から開かれた労働市場に移行することにより,促進すること。 (b) 合理的配慮の拒否を含め,雇用の分野における障害による差別を禁止する法的条項を履行すること。また,個別具体的な支援の提供を確保すること。更に,公務部門及び民間部門における雇用の分野における障害による差別があった場合は救済措置を講じること。 (c) 障害者の権利と貢献について雇用者の間で意識を向上すること。 相当な生活水準及び社会的な保障(第28条) 28. 以下についての情報を提供願いたい。 (a) 障害者が公的及び民間住宅を差別なく利用できることを確保するためにとった措置。 (b) 社会的な保障と支援サービス,特に障害年金,福祉給付,生活扶助が障害者にとって利用し易いものであるか,また,相当な生活水準を保障するために障害に関連する追加費用を十分考慮に入れているか。 (c) 施設から退所した後の知的又は精神障害のある者に対する社会的な保障と支援を提供するためにとられた措置。 政治的及び公的活動への参加(第29条) 29. 全ての障害者,特に障害のある女子(women)が,他の者との平等を基礎として,投票,公職への立候補及び公務の遂行(特に政治的及び公的な意思決定する地位)に完全に参加する権利を行使し,またそうした機会を有するよう確保するためにとられた措置について情報提供願いたい。また,選挙のプロセスと選挙に関連する情報が完全に利用可能であることを確保するためにとられた措置について情報提供願いたい。 文化的な性格,レクリエーション,余暇及びスポーツへの参加(第30条) 30. 以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a) 物理的環境,旅客運送,情報通信技術を含めた情報通信,文化,観光,レクリエーション,余暇,スポーツの場所に関連する施設及びサービス,特に,障害のある児童のためのものや,来る2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関するものである計画や活動に関する全ての側面での利用のし易さ(アクセシビリティ)を改善すること。 (b) 「盲人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」を履行すること。 C. 特別の義務(第31条-第33条) 統計及び資料の収集(第31条) 31. 性別,年齢,障害,地理的位置及び社会経済的・教育・雇用状況の事情によって分類したデータを収集し,分析し,広めるためにとった措置について情報を提供願いたい。特に,「持続可能な開発目標17.18」及び「障害に関するワシントン・グループの短い質問セット」を考慮にいれたデータについて。 国際協力(第32条) 32. 以下について説明願いたい。 (a) 政府開発援助のもとや「持続開発な開発のための2030アジェンダ」や「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」に関連して行われたものを含め,国際協力機構によって実施された国際協力取決,プロジェクト及びプログラムが,障害を包容するものであることを確保するためにとられた措置,またこれらが本条約に従っていることを確保するためにとられた措置。 (b) 国際協力案件の形成と実施にどのように障害者が彼らを代表する団体を通じて意義ある形で相談を受け関与しているか。 国内における実施及び監視(第33条) 33. 障害者政策委員会が本条約の第33条2に要求される独立した監視の仕組みとしての任務を遂行できているかどうか,またどのように遂行しているかに関連し,同委員会の役割,同委員会に割り当てられた人的,財政的及び技術的リソース,並びに障害者を代表する団体との同委員会の協力について明確に説明願いたい。 34. 申し立てを受け取り,調査し解決することができるパリ原則に従った独立した人権監視の仕組み(本条約のもとの障害者の権利を監視するための特別の仕組みを含む)を設立するためにとられた措置について情報提供願いたい。 (注)2019年9月23-27日の会期前作業部会にて採択