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2008年度米国予算教書(概要)

平成19年2月6日

 2月5日、ブッシュ米大統領は、2008会計年度(2007年10月~2008年9月)の予算教書を議会に対して提出したところ、概要は以下のとおり。

(注)予算教書*1とは、米大統領が議会に示す予算の編成方針。一般教書、大統領経済報告と並び「3大教書」と呼ばれ、毎年2月初めに議会に提出される。

【米国3大教書】
種類(実施日) 内容
一般教書(1月23日) 上下両院に外交や内政情勢を報告し、今後1年間の施政方針を表明
予算教書(2月5日) 来年度予算案の編成方針を大統領が議会に提示
大統領経済報告(未定) 当面の経済情勢に関する判断を示す(CEA(大統領経済諮問委員会)が作成))

*1 米国では、議会に予算編成権があり、また、行政府には法案提出権がないため、議会が歳入、歳出に関する予算関連法案を独自に作成して審議する。したがって、通常予算教書は議会に対する大統領の提案に留まり、何ら拘束性を有していない。このように、予算教書は法的には参考資料程度の意味しかないが、実際上は問題のない部分はそのまま受け入れられる。また、議論の余地がある部分についても歳出法案について大統領が拒否権を行使することができるため、議会とホワイトハウスとの交渉により予算教書の内容を歳出法案にかなり反映させているのが実情である。

1. 一般教書での発言

(1)ブッシュ大統領は1月23日の一般教書演説の中で、現在の米経済は、雇用は増加しており、失業率は低く、インフレーションも低下、賃金は上昇していると経好調さを強調し、企業の役割を拡大していくことを通じて経済の好調を維持していくことの重要性を訴えた。

(2)財政に関しては、増税することなく、2012年度には財政を均衡させることを目標に掲げ、05年だけで、180億ドルにのぼっていたイヤマーク(紐付き予算)を今会期末までに半減させること、社会保障等義務的支出の見直しに言及。

2. 2008年度予算教書の特色

(1)2012年度までに財政均衡を達成

(2)テロとの戦い及び国土安全保障のための予算を増額

(3)減税継続による経済成長

(4)優先分野の施策の促進(教育、エネルギー安全保障、医療保険)

(5)安全保障分野以外の裁量的経費の伸びを1%に抑制

(6)制度改革により義務的経費の伸びを抑制

3. 財政見通し(概要)

(1)2008年度予算は、歳入2兆6,620億ドル(前年度当初比4.8%増)、歳出2兆9,020億ドル(同4.2%増)、財政赤字は2,390億ドルとなる見通し。なお、2012年度には財政収支は610億ドルの黒字へ転換する見込み。

(2)裁量的経費(歳出権限ベース*2)については、9,298億ドルになる見込み。国防総省予算は4,814億ドルと前年度比12.1%の増加、国土安全保障費は343億ドルと前年度比7.2%の増加。一方、義務的経費(支出ベース*3)については、前年度比4.2%増の1兆5,270億ドルを見込む。

(3)補正予算については、2007年度中にイラク・アフガン戦費で996億ドル、ハリケーン対策で34億ドルの補正予算を見込む。また、2008年度にもイラク・アフガン戦費で1,452億ドル程度の補正予算を見込んでいる。

(4)2012年度の財政収支は610億ドルの黒字となる計画であるが、一方で、前提となる経済情勢については、07年実質GDP成長率が2.7%(民間エコノミストの平均値は2.4%)と楽観的な見通しに立っていることや、イラク戦争を中心とした戦費等についても、不確実性もある。

(5)また財政収支黒字化を目標にしている2012年以降には、減税恒久化、年金改革の影響が大きくなることにも留意する必要がある。

*2 歳出権限ベース(budget authority):多年度にわたり支出する歳出額の限度。

*3 支出ベース(outlay):その年に実際に使われる金額。

4. 2008年度予算案

(1)歳入:2兆6,620億ドル

(グラフ)2008年度予算案(1)歳入


 制度改革により、2008年度から10年間で総額1兆9,657億ドルの減収を見込んでいる。主な措置は以下のとおり。なお、数字は特段注記のない限り2008年度から10年間の増減収額。

1)ブッシュ減税の恒久化:▲3,872億ドル
  配当所得・キャピタルゲイン減税、所得税率の引下げ、遺産税の廃止等の恒久化。

2)民間医療保険料に対する概算控除の創設(2009年以降):▲327億ドル
  一定の要件を満たす民間医療保険につき、1家族につき15,000ドル、単身は7,500ドルの概算控除。

3)代替ミニマム税の軽減措置の一年延長:▲364億ドル

4)中小企業の即時償却枠の拡大:▲122億ドル

(2)歳出:2兆9,020億ドル

(グラフ)2008年度予算案(2)歳出


1)裁量的支出(歳出権限ベース9,298億ドル)

  • 安全保障関係予算(国防、国土安全保障及び外交)については、5,539億ドル
    (+10.7%)を計上、非安全保障関係予算については、3,759億ドル(+1.0%)としインフレ率以下に抑制。
  • 国防予算については、テロとの戦いのために軍の高練度を維持するための経費、21世紀型の軍への変革のための経費等が含まれ、10.5%の増加。
  • テロとの戦いのための経費として、2007年度には996億ドル、2008年度には1,452億ドル、2009年度には500億ドルの補正予算追加を見込んでいる(2007年度及び2008年度についてはフルコスト計上、2009年度については一部分を計上)。
  • 成果が乏しいあるいは優先度の低くなった141のプログラムを削減・廃止等することにより、2008年度に▲120億ドルの歳出削減を図る。

2) 義務的支出(1兆5,270億ドル)

(イ)義務的支出全体で、5年間で総額960億ドルの歳出削減

(ロ) 義務的支出の主な内訳は以下のとおり。

  • メディケア(高齢者医療保険)
     短期的には競争と革新を通じ、質が高くかつコストの低い医療を促進することとし、また、臨床検査サービスにおいて入札制度を導入するなどの提案を行っている。長期的な対策案として、社会保障税及び保険料がメディケア経費の55%を下回った場合、55%を回復するまでは、一定額の自動的な給付削減を行うこととするといった提案も行っている。
  • メディケイド(低所得者医療保険)
     効率性を高め、過払いを防ぐなど、財政規律を高める改革を通じて5年間で68億ドルの削減を行うとしている。
  • 年金改革
     これまでの大統領提案と同様、高額所得者の年金給付を賃金スライドから物価スライドに変更し、給付額を削減。また、個人勘定の創設等を提言。

5. 2006年度の財政赤字

(1)2006年度の財政赤字は前年度比22.0%減の2,480億ドル(対GDP比▲1.9%)にとどまったと発表。財政赤字は5年連続となったが、景気拡大に伴う税収増から赤字額は大幅に減少した。

(2)歳入は、個人及び法人の所得税収が伸びたことから、前年度比11.7%増の2兆4,070億ドル。歳出は、イラク駐留経費や社会保障費などがかさみ、同年度比7.4%増の2兆2,655億ドルだった。

(3)同年度の赤字額は、昨年2月に発表した2007年度予算教書での2006年度赤字見通し(4,230億ドル)と比べて、約41.4%下回った。

6. 財政規律回復のための枠組み

(1)裁量的経費

 今後、2012年までの裁量的支出について毎年度の上限額を決定するCap制を導入し、これを超過する場合には、上院の5分の3以上の賛成を得た上で、一律削減を行うことを提案。

(2)義務的経費

 Pay-as-you-go原則の導入。義務的経費(減税を対象外)を増加する法改正を行う場合には同額の他の義務的経費の削減(増税は対象外)を行うこととし、これを超過する場合には、上院の5分の3以上の賛成を得た上で、例外経費を除いて一律削減を行うことを提案。

(3)イヤマーク(紐付き予算)改革

 イヤマークを明示すること及びその数・額の半減*4を提案。

(4)項目別拒否権

 政府の最優先項目ではないと大統領が判断した場合には、歳出法案の一部分を拒否する権限を大統領に与える項目別拒否権の導入を提案。

(5)その他

 この他に、以下のような提案を行なっている。

1)予算の重複等を監視する超党派の委員会を設置する。

2)各歳出法案の審議に先立って行なわれる予算決議を、両院の合同決議とし大統領の署名も必要とする。

3)奇数年に2年度にわたる予算を作成する。

4)年度開始までに予算が成立しない場合、自動的に、大統領提出予算と前年度予算の低い額を限度として予算執行を可能とする。

*4 議会においては、今国会でイヤマークに関する情報公開を義務化する下院規則が制定され、上院でも同様の内容が倫理関連法案の一部として上院を通過している。

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