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2007年度米国予算教書(概要)

平成18年2月7日

 2月6日(米国時間)、ブッシュ大統領は、2007会計年度(2006年10月~2007年9月)の予算教書を議会に対して提出したところ、概要は以下のとおり。

(注)予算教書*1とは、米大統領が議会に示す予算の編成方針。一般教書、大統領経済報告と並び「3大教書」*2と呼ばれ、毎年2月初めに議会に提出される。

1. 財政見通し

(1)2007年度予算は、歳入2兆4,160億ドル(前年度当初比5.7%増)、歳出2兆7,700億ドル(同2.3%増)、財政赤字は3,540億ドルとなる見通し。なお、2011年度までの5年間に、累積赤字は1.2兆ドルに膨らむ見込み。(なお、2006年度の財政赤字は4,230億ドルと予想され、過去最大となる見通しが示されている。)

(2)裁量的経費*3(歳出権限ベース*4)は、裁量的支出の伸び率をインフレ率以下(2006年のインフレ率予想:3.3%)の前年度比3.2%に抑制することにより、8,707億ドルになる見込み。国防総省予算は4,393億ドルと前年度比6.9%の増加、国土安全保障費は331億ドルと前年度比3.3%の増加。また、非安全保障関連支出(3,983億ドル)もレーガン政権以来となる厳しい歳出政策をとり、前年度比▲0.5%に抑制。一方、義務的経費*5(支出ベース*6)については、前年度比2.5%増の1兆4,940億ドルを見込む。

*1 米国では、議会に予算編成権があり、また、行政府には法案提出権がないため、議会が歳入、歳出に関する予算関連法案を独自に作成して審議する。したがって、通常予算教書は議会に対する大統領の提案に留まり、何ら拘束性を有していない。このように、予算教書は法的には参考資料程度の意味しかないが、実際上は問題のない部分はそのまま受け入れられる。また、議論の余地がある部分についても歳出法案について大統領が拒否権を行使することができるため、議会とホワイトハウスとの交渉により予算教書の内容を歳出法案にかなり反映させているのが実情である。

*2 米国3大教書

種類(実施日) 内容
一般教書(1月31日) 上下両院に外交や内政情勢を報告し、今後1年間の施政方針を表明
予算教書(2月7日) 来年度予算案の編成方針を大統領が議会に提示
大統領経済報告(2月13日予定) 当面の経済情勢に関する判断を示す(CEA(大統領経済諮問委員会)が作成))

*3 裁量的支出:議会が毎年可決する歳出法案(appropriation bill)のなかでその金額が決められる経費。
(例)国防費、高速道路建設費、宇宙開発費、教育関係費、対外援助費、FBI費。

*4 歳出権限ベース(budget authority):多年度にわたり支出する歳出額の限度。

*5 義務的支出:毎年の立法措置がなくても、現存する権限法(authorization act)によってその金額が決められる経費。この経費の水準を変更する場合には、受給資格に関わる法律本体を修正しなければならない。(例)公的年金、メディケア、メディケイド等。

*6 支出ベース(outlay):その年に実際に使われる金額。

(グラフ)財政収支「2007年度予算案」

(グラフ)財政収支「2007年度予算案」

(3)補正予算については、2006年度中にイラク・アフガン戦費で700億ドル、ハリケーン対策で180億ドルの補正予算を見込む。また、2007年度にもイラク・アフガン戦費で500億ドル程度、鳥インフルエンザで23億ドル程度の補正予算を見込んでいる。

(4)2009年度の財政赤字は2,080億ドルとなる見通しであり、ブッシュ大統領が昨年2月の2005年度予算教書提出時に発表した2005年度財政赤字5,210億ドルを2009度までに半減するとの公約は達成できるとしている。

(5)ただし、今後の赤字の減少幅については、イラク・アフガニスタン戦費等の不確定要因があること、また減税恒久化、年金改革の影響が大きくなる2012年度以降の長期見通しは示されていないことに留意する必要がある。また、ブッシュ大統領は裁量的支出の抑制を強調しているものの、同支出のウェートは支出全体の約3分の1(非安全保障分野は全体の約6分の1)にとどまっていることから、義務的支出や安全保障関連の裁量的支出の抑制が課題となる。

【財政収支見通し推移】

単位:億ドル
  2005年度予測 2006年度予測 2007年度予測 2008年度予測 2009年度予測 2010年度予測 2011年度予測
歳入 21,540 22,850 24,160 25,900 27,140 28,780 30,350
歳出 24,720 27,090 27,700 28,140 29,220 30,610 32,400
財政収支 -3,180 -4,230 -3,540 -2,230 -2,080 -1,830 -2,050
対GDP比 -2.6% -3.2% -2.6% -1.5% -1.4% -1.1% -1.1%

(グラフ)米国の連邦財政赤字

(グラフ)財政収支「2007年度予算案」

【参考】一般教書での発言

(1)ブッシュ大統領は1月31日の一般教書演説の中で、経済分野については、最近の原油高や自然災害にもかかわらず、米国経済成長率は健全かつ力強いこと強調。また、米国経済が成長していくためには、国民が更に支出・貯蓄・投資することが大切とした上で、減税政策、財政政策、社会保障・公的医療保険改革、エネルギー政策、開放市場の推進等の重要性を訴えた。

(2)財政に関しては、安全保障関連以外の裁量的支出の伸びを抑えることにより、競争力を高めているとして、財政規律の重要性を改めて強調した。今年も引き続き抑制路線をとり、140億ドルもの来年度予算を節約し、2009年までに財政赤字を半減させていくことに言及。

2.2007年度予算案

(1)歳入:2兆4,160億ドル

  1. ブッシュ減税の恒久化

    (イ)5年間で▲1,783億ドル(10年間で▲1兆4,122億ドル)

    (ロ)配当所得・キャピタルゲイン減税、所得税率の引下げ、遺産税の廃止等の恒久化を提案。

  2. 中小企業の即時償却枠の拡大

    (イ)5年間で▲124億ドル、10年間で▲187億ドル

  3. ヘルスケア税制

    (イ)5年間で▲592億ドル(10年間で▲1,563億ドル)

    (ロ)医療貯蓄口座(Health Savings Account)の拡充、高免責額医療保険の購入に対する所得控除・税額控除等を提案。

(注)抜本的税制改革については、今回の予算教書では柱とされていない。現在、財務省により検討が行われており、中間選挙後に内容が発表となる見込み。

(2)歳出:2兆7,700億ドル

(うち裁量的支出1兆290億ドル、義務的支出1兆4,940億ドル、利払い費2,470億ドル。支出ベース。)

  1. 裁量的支出(歳出権限ベース8,707億ドル)

    (イ)2007年度は、前年度に続いて裁量的支出全体の伸びをインフレ率(2006年度3.3%)以下の3.2%に抑制。

    (ロ)裁量的支出につき注目される点は以下のとおり。

    • 国防総予算

      4年毎の国防計画見直し(Quadrennial Defense Review)に基づき、通常戦力・核兵器を対象とした従来の一元的抑止から、テロリストに対する機動的且つ多元的抑止を重視し、国土防衛の強化等を推進するために、兵器調達予算842億ドル(+10%)を計上するなど、全体で6.9%の伸び率。

    • 政府事業の削減

      施策の優先度合い、及びPART(Program Assessment Rating Tool、プログラム評価採点ツール)による評価に基づき、政府事業施策の見直しを行い、141のプログラムを削減又は廃止することにより、▲150億ドルを削減。

    • 教育

      教育省の数学・科学教育プログラムに3.8億ドルを計上し、教員の訓練、カリキュラム開発等を実施。また、800億ドルを超える高等教育向け奨学金を確保し、コミュニティーの職業訓練を強化する。

    • 研究開発予算

      連邦の研究開発予算1,370億ドル(対2001年度比50%増)を計上。全米科学財団、エネルギー省科学部、商務省基準・技術研究所を通じた基礎研究予算を10年間で倍増。

    • その他

      エネルギー源の多様化、自動車動力源の多様化を促進し、エネルギー省のクリーン・エネルギー研究予算を22%増加させる。

  2. 義務的支出(1兆4,940億ドル)

    (イ)義務的支出全体で、5年間で総額▲652億ドル(10年間で▲1,724億ドル)の歳出削減を提言。

    (ロ) 義務的支出につき注目される点は以下のとおり。

    • メディケア(高齢者医療保険)

      インフレ連動した医療報酬の引き上げ幅を抑制し、5年間で▲359億ドル(10年間で▲1,050億ドル)を削減。

    • 年金改革

      高額所得者の年金給付を賃金スライドから物価スライドに変更し、給付額を削減。また、個人勘定の創設等を提言。

3. 2005年度の財政赤字

(1)2005年度の財政赤字は前年度比22.9%減の3,183.46億ドル(対GDP比▲2.6%)にとどまったと発表。財政赤字は4年連続となったが、景気拡大に伴う税収増から赤字額は大幅に減少した。

(2)歳入は、個人及び法人の所得税収が伸びたことから、前年度比14.5%増の2兆1,539億ドル。歳出は、イラク駐留経費や社会保障費などがかさみ、同年度比7.8%増の2兆4,722億ドルだった。

(3)同年度の赤字額は、昨年2月に発表した2006年度予算教書での2005年度赤字見通し(4,270億ドル)と比べて、約25%下回った。

4. 財政規律回復のための枠組み

(1)裁量的経費

 今後、5年間の歳出額を今回の予算教書見通しの範囲内に抑制するキャップ制を導入し、これを超過する場合には、上院の5分の3(60票)以上の賛成を得た上で、例外経費を除いて一律削減を行う。

(2)義務的経費

 Pay-as-you-go原則を導入し、歳出を増加する改正を行う場合には同額の他の歳出の削減(増税は対象外)を行うこととし、これを超過した場合には、上院の5分の3(60票)以上の賛成を得た上で、例外経費を除いて一律削減を行う。

(3)その他

 大統領の項目別拒否権の導入、予算決議の法律化等を提案。

5.政府経済見通し

○ 行政管理予算局(OMB)が発表した、分析(analytical perspective)によると、米国政府の予算教書が前提とする経済見通しは以下のとおり。

(1)実質GDP成長率

(グラフ)実質GDP成長率

○ 2005年の実質GDP成長率は3.5%と、高い成長率を記録。今回の予算教書では、2006年度には3.4%、2007年度は3.3%、2008年度以降は3%台前半で推移するとの見通しを示した。

(2)失業率

(グラフ)失業率

○ 2005年の平均失業率は、5.1%と前年比0.4%の改善。2006年度以降は、更に改善が見込まれ、5.0%で推移する見通し。

(3)消費者物価上昇率

(グラフ)消費者物価上昇率

○ 2005年の消費者物価上昇率は、エネルギー価格の高騰から3.4%に上昇。2007年度以降は、2.4%で推移する見通し。

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