英のユーロ参加問題
平成13年4月
(1)ポンド高に悩む、在英日系製造業の立場
ユーロに対するポンド高進行のため、在英製造業はユーロ圏に対する輸出競争力が低下し、輸出による利益が減少。JETROの調査(99年11月~2000年1月実施)によると、在英日系製造業の84.6%が対ユーロのポンド高を経営上の問題点としている。経団連やソニー、日産自動車をはじめとする日系製造業関係者より、英のユーロ参加によりユーロ/ポンド間の為替が安定するかどうかは死活問題であるとの発言があり、主要紙でも大きく取り上げられてきた。

(参考)ユーロ/ポンド為替動向:ユーロ圏経済の安定成長と英国の景気減速観測によりポンド高は一服
(出典:ブルームバーグ)
(2)英国がユーロ未参加の理由
- 製造業を中心に英産業界には早期参加を求める声が強い一方、世論調査ではユーロ参加不支持の回答が多数を占めること(昨年11月の調査では「不支持」が約7割)。
- ユーロ圏と景気サイクルにずれがあること(その結果、例えば為替水準及び政策金利(短期金利)において、相違が生じている。短期金利はユーロ圏が4.75%であるのに対し、英は5.5%。)。なお、英国は、為替水準を除き、ユーロ参加に必要な経済収斂基準を満たしている。(収斂基準項目:インフレ、長期金利、単年度赤字、政府累積債務残高、為替)
(3)英政府の参加に向けた取り組みと今後の見通し
- 2000年3月、英政府はユーロへの参加移行計画(National Changeover Plan)改訂版を発表。政府としてはユーロ参加準備を継続しつつ、経済条件の充足状況によって参加・不参加の判断を行うとの立場を確認した。同計画において、各省庁に対して、各々「移行計画」を作成するよう指示があり、また民間企業に対してもユーロ参加準備を行うよう呼びかけた。
- 2001年2月、ブレア首相は「次期総選挙にて労働党が勝利して2年以内にユーロ参加の可否につき判定する」旨発言した。(注:ブレア政権の任期満了は2002年5月ながら、次期総選挙は2001年6月に行われるとの見通しが強まっている)
- 政府が参加方針を決定した場合、国民投票にて民意を問う。
(参考)英政府がユーロ参加を判断する5つの項目(97年10月ブラウン蔵相演説)
(イ) |
我々がユーロの利率でずっと快適に暮らしていけるための、経済構造とビジネス・サイクルの持続的な収斂 |
(ロ) |
変革や予想外の経済事情に対する英国経済の十分な順応性 |
(ハ) |
企業が対英投資に関する長期的な決定を下すためのより良い状況の創造 |
(ニ) |
英国の金融サービス産業への肯定的な影響 |
(ホ) |
単一通貨への参加が雇用状況にとって良いことなのかどうか |
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