
アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
最近のポーランド情勢と日本・ポーランド関係
平成22年8月
1. 最近のポーランド情勢
(1)政治情勢
- 2007年10月21日に行われた総選挙(上院・下院)では、最大野党の「市民プラットフォーム」(PO)が勝利。農民党との連立に合意し、11月16日、POのトゥスク党首を首班とする連立政権が発足した。トゥスク政権はPOへの比較的高い支持率を背景に安定した政権運営を行っている。
- トゥスク首相は、2007年11月の所信表明演説の中でリベラルな経済政策、医療制度改革、年金改革、汚職対策等の実現を主要課題として掲げている。
- 2010年4月10日、カティンの森70周年追悼式典に出席のため、カティンに向かっていた政府専用機がスモレンスク(ロシア)近郊で墜落、カチンスキ大統領夫妻等乗員乗客96名が死亡。同年6月及び7月に実施された新大統領選出のための選挙では、与党POのコモロフスキ下院議長が、死亡した前大統領の双子の兄であるカチンスキ「法と正義」(PiS)党首に勝利した。
-
トゥスク政権は、独、露等の課題を抱える国とも対話を通じて関係を構築していくとの姿勢。2011年後半のEU議長国就任への準備を重要課題の一つに挙げ、前向きな対欧州外交を展開すると共に、EU東方政策に力を入れている。
- ポーランドは、米国との関係を安全保障の観点から重視。2008年8月にポーランドと米国が基本協定に署名した米国ミサイル防衛システムのポーランド国内への配備については、オバマ米政権の2009年9月の方針転換を受けて当初の計画は取り止められた。
表:2007年10月21日の下院選挙結果(460議席)
政党名 |
獲得議席(選挙前議席) |
得票率 |
市民プラットフォーム |
209(131) |
41.51% |
法と正義 |
166(150) |
32.11% |
左派民主主義者 |
53(55) |
13.15% |
農民党 |
31(27) |
8.91% |
ドイツ少数民族党 |
1(2) |
- |
表:2010年大統領選挙結果
候補者(所属政党) |
第1回投票得票率 |
第2回投票得票率 |
ブロニスワフ・コモロフスキ(「市民プラットフォーム」) |
41.54% |
53.01% |
ヤロスワフ・カチンスキ(「法と正義」) |
36.46% |
46.99% |
グジェゴシュ・ナピエラルスキ(民主左翼連合) |
13.68% |
・・・・・ |
(2)経済情勢
-
2006年又は2007年は好調な輸出と内需拡大を背景に6%台の経済成長を記録したが、2008年は、世界金融・経済危機の影響を受け、4.8%へと鈍化。欧州各国がマイナス成長となった中、唯一2009年にプラス成長を維持。
-
トゥスク政権は、2008年10月、ユーロ導入目標時期を2012年1月1日とするユーロ導入に関する工程表を閣議決定したものの、2008年の世界金融・経済危機の影響を受けて、導入目標を放棄。
2. 日・ポーランド関係
(1)政治関係
両国関係は伝統的に良好。2007年5月に麻生外務大臣のポーランド訪問や、2008年10月のシコルスキ外務大臣の訪日、同年12月のカチンスキ大統領の訪日及び2010年3月のボルセヴィチ上院議長の訪日など要人往来も活発に行われている。
(2)経済関係
(イ)貿易
- 近年、日本からの自動車輸出などを中心に着実に拡大している。
- 日本の主な貿易品目は、輸出が自動車、カメラ・TV等の部品、映像機器、輸入は自動車部品、エンジン部品、人造黒鉛となっている。
表:日本の対ポーランド貿易
年 |
対ポーランド輸出 |
対ポーランド輸入 |
収支 |
2005年 |
1,101億円 |
251億円 |
950億円 |
2006年 |
1,229億円 |
305億円 |
924億円 |
2007年 |
1,934億円 |
446億円 |
1,448億円 |
2008年 |
2,053億円 |
496億円 |
1,557億円 |
2009年 |
1,296億円 |
347億円 |
949億円 |
(出典:財務省貿易統計)
(ロ)投資
- 日本からは、自動車関連産業等を中心に約254社(2009年10月現在)が進出している。
(3)文化・人的交流
- 両国間の文化交流は活発。1994年、著名なポーランド人映画監督アンジェイ・ワイダ氏夫妻の尽力により、ポーランドのクラクフ「日本美術技術センター(現在の名称は「日本美術技術博物館」)」が設立。約5,000点の浮世絵をはじめとする、日本の伝統文化や最新技術についての展示が行われており、ポーランドにおける日本文化の重要な発信拠点となっている。また、1997年夏に両国関係者の尽力により復活したヴロツワフの日本庭園「白紅園」は、ヨーロッパで最も大きな日本庭園の一つとして知られている。
- ポーランドでの日本語及び日本研究は活発。1919年、ワルシャワ大学に日本語講座が開設、現在ではクラクフ、ポズナン、ウッジなど各地に日本語及び日本研究の拠点が形成されている。2010年現在、ポーランドの高校、大学及び市民講座等の計60機関において、3,600名以上のポーランド人が日本語を学習。ポーランドの高等教育機関の日本語教育は高水準で知られ、文部科学省の日本語・日本文化研修留学生の試験には、毎年20名前後のポーランド人学生が合格している(非漢字圏では第1位)。
- 2009年は、日・ポーランド国交樹立90周年。日本とポーランド双方で様々な記念行事が行われた。2010年はショパンの生誕200周年であり、両国間の文化・人的交流も活発に行われている。