2月7日(日曜日)から10日(水曜日)まで、アッバース・パレスチナ自治政府大統領が来日したところ、概要と評価は以下のとおりです。
1.主要日程
2月7日(日曜日) 広島訪問
2月8日(月曜日) 日パレスチナ首脳会談、総理主催夕食会等
2月9日(火曜日) 衆参両議長との会談、中東調査会主催講演会、岡田大臣主催夕食会等
2.主な随行者
(1)マーリキ・パレスチナ自治政府外務庁長官
(2)アッザーム・アフマド・パレスチナ立法評議会ファタハ会派長
(3)ムハンマド・ムスタファ・パレスチナ投資基金総裁
(4)アブルデイネ大統領府報道官
(5)ハーリディー外交政策担当大統領補佐官
3.概要
- (1)アッバース大統領は、東京訪問に先立ち広島を訪れ、湯﨑広島県知事との会談後、平和記念公園を訪問し、秋葉広島市長らによる案内の下、原爆死没者慰霊碑にて献花を行い、平和記念資料館を視察しました。
- (2)8日の日パレスチナ首脳会談では、鳩山総理から、次の点を伝えました。
(イ)イスラエルとの共存を目指すアッバース大統領の和平路線を高く評価し、支持する。中東各国と友好関係を有する日本として、米国等国際社会と連携しつつ、中東和平実現のために役割を果たしていきたい。
(ロ)パレスチナ自治区の経済発展のため、日本はこれまで10億ドルを超える支援を行ってきており、「平和と繁栄の回廊/ジェリコ農産業団地構想」を引き続き進めていく考え。
(ハ)パレスチナ国家建設を支援する観点から、(a)国家建設に向けた制度づくり、人づくり、(b)民間部門の交流の活性化を提案。
(ニ)また、日本が、東アジア諸国とともに、パレスチナ国家建設を支援し、中東和平に貢献していくとの構想を提案。 - (3)アッバース大統領からは、日本の政治的・経済的役割を高く評価しつつ、パレスチナ自治政府の中東和平への取り組みとパレスチナ内部の和解問題への取り組みについて説明がありました。
- (4)会談終了後に、共同プレス・リリース(英文・和文仮訳)を発出しました。
- (5)9日行われた岡田大臣主催夕食会では、上述のような基本的な論点を確認した上で、中東和平の現状と課題について、詳細な議論を行いました。
4.評価
- (1)今般のアッバース大統領の訪日は、2005年以来3回目(大統領として2回目)となります。米国をはじめとする国際社会の和平促進の努力にもかかわらずイスラエル・パレスチナ間の和平交渉が未だに再開されない中、一貫して対イスラエル和平路線を掲げるアッバース大統領への支持を表明することを通じ、日本の和平プロセスへの貢献を示しました。同大統領は国際社会の支持を得るために欧州やアジア各国を周っており、目下の状況下で、国際社会による和平プロセス促進に向けた努力と同調する意義もありました。
- (2)パレスチナ支援については、従来の方針に加えて、「パレスチナ国家建設支援」という観点を加えていく方針を示しました。日本として具体的にいかなる分野で協力をするかは、今後、調査団を派遣して調整するなど、JICA、JETRO等関係機関の協力を得ながら進めていく必要があります。
- (3)東アジア諸国とともに中東和平実現に貢献していくことについては、パレスチナ側から歓迎されており、今後、東アジア関係国及びパレスチナ自治政府と緊密に連絡をとりつつ、構想を具体化していく必要があります。