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日・マレーシア共同首脳声明
「新たなフロンティアへ向けて強化されたパートナーシップ」
(仮訳)

骨子英語版

1.総論

1.1 鳩山由紀夫日本国内閣総理大臣とナジブ・ラザク・マレーシア首相は、ナジブ首相の初の公賓訪日の機会に、2010年4月19日、東京において、首脳会談を行った。

1.2 両首脳は、東方政策の実施によってますます強くなった日・マレーシア両国国民の強固な紐帯を踏まえつつ、二国間関係が強化されたパートナーシップの新たな段階を迎えつつあることを確認した。

1.3 ナジブ首相は、友情・友好関係の精神に基づき、鳩山総理をマレーシアに正式に招請した。鳩山総理は喜んでこの招請を受け、近い将来、双方の都合の良い時期にマレーシアを訪問したい旨述べた。

1.4 両首脳は、ASEANが原動力となる形での東アジア共同体構築を含む、東アジア地域のアーキテクチャーの推進へのコミットメントを再確認した。鳩山総理は、民主主義、法の支配、良い統治の原則並びに人権及び基本的自由の尊重及び保護へのASEANのコミットメントをとりわけ強調するASEAN憲章を高く評価した。また、鳩山総理は、2015年までのASEAN共同体実現に対する支持を表明した。

1.5 両首脳は、将来的な東アジア共同体構想の実現に向けた実務的な協力及び国際場裡におけるグローバルな諸課題への取組を含め、以下のアジェンダに特定されるとおり、二国間協力を新たなフロンティアへと更に強化するという双方の希望を表明した。


2.平和と安全のための協力

2.1 両首脳は、ミンダナオにおける平和と安定の維持の重要性を認識し、フィリピン共和国政府(GRP)及びモロ・イスラム解放戦線(MILF)が和平プロセスにおける交渉を継続するよう希望する旨表明した。鳩山総理は、和平プロセスにおけるマレーシアの仲介役としての役割を評価した。この点について、両首脳は、マレーシア主導の国際監視団(IMT)の再開を歓迎した。ナジブ首相は、社会経済開発分野及び国際コンタクト・グループ(ICG)への参加を通じた日本の貢献を評価した。両首脳は、和平プロセスへの関与及び復興支援を継続していくことで一致した。

2.2 両首脳は、国際的努力の一環として、中東和平プロセス促進のための協力を強化し、パレスチナの人々の国づくりを支援する取組を強化するという希望を表明した。

2.3 ナジブ首相は、国連開発計画(UNDP)を通じたマレーシア平和維持訓練センターに対する日本の貢献及び日本の平和構築人材育成事業を評価した。両首脳は、双方が平和構築分野での協力を引き続き推進していくことで一致した。

2.4 両首脳は海上航行、特に海上交通路における航行の安全確保の重要性を共有した。この点について、鳩山総理は、マレーシアが、マラッカ海峡を含むマレーシアの海上水域において、同国が継続的に海上航行の安全確保のために取り組んでいることを評価した。両首脳は、ソマリア沖の海賊がもたらす継続的な脅威に対する懸念を共有し、この問題に包括的に取り組むべきであるとの点で一致した。両首脳は、海上航行の安全確保のための努力を今後も強化する意図を表明した。

2.5 両首脳は、平和で安全な核兵器のない世界を達成するという共有された目標に沿って、世界的核軍縮の達成のために引き続き緊密に協力していくことで一致した。また、両首脳は、5月にニューヨークで開催される2010年NPT運用検討会議において、有意義な成果を達成できるよう緊密に協力していくことで一致した。また、両首脳は、原子力の平和的利用における協力を更に強化することで一致した。両首脳は、原子力の平和的利用を促進する上で、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティ関連の国際合意文書を批准することの重要性を強調した。

2.6 両首脳は、双方が輸出管理における協力を強化することで一致した。鳩山総理は、包括的輸出管理体制整備に向けたマレーシアの取組を歓迎した。

2.7 両首脳は、国連の包括的改革、特に常任・非常任両カテゴリーの拡大による安保理改革の早期実現の必要性を再確認した。ナジブ首相は、拡大された安保理における日本の常任理事国入りに対するマレーシアの支持を改めて表明した。鳩山総理は、マレーシアの支持に対し深い謝意を表明した。

2.8 両首脳は、グローバルなテロとの闘いにおける各ASEAN加盟国及び国際社会による重要な進展を認識しつつ、グローバルなテロとの闘いへの強力なコミットメントを新たにした。ナジブ首相は、マレーシアのテロ対処能力、特に海上安全保障分野における能力向上への日本の支援を歓迎した。鳩山総理は、マレーシアのテロ対処能力分野の進展を歓迎した。

2.9 両首脳は、北朝鮮の核及び弾道ミサイルの開発計画に対する懸念を共有し、朝鮮半島の非核化が関連の安保理決議及び2005年9月の六者会合共同声明に従い、不可逆的かつ検証可能な形で実現されなければならないとの点で一致した。両首脳は、すべての国連加盟国による安保理決議第1718号及び第1874号の完全な実施の重要性を再確認した。両首脳は、北朝鮮に対し、拉致問題を含め、国際社会が有する安全保障上及び人道上の懸念に直ちに取り組むよう強く要請した。

2.10 両首脳は、ミャンマーにおける国民和解の重要性を強調し、ミャンマーでの本年の総選挙実施が自由、公正かつ包含的なものとなり、ミャンマーの安定と発展に寄与することに対する期待を表明した。


3.競争力強化と持続的成長のための協力

3.1 両首脳は、長きにわたる経済関係が強固な日・マレーシア関係の基礎の重要な部分を形成してきたことを認識した。ナジブ首相は、マレーシアの経済発展における日本の貢献を評価した。鳩山総理は、2020年までの先進国入りを目指し、規制緩和や経済自由化を進めるナジブ首相のイニシアティブを評価し、新経済モデルの下での更なる進展に期待を示した。両首脳は、マレーシアにおける投資環境の更なる改善及び日本企業のマレーシアに対する投資拡大を含む両国企業の連携の促進に対する確信を表明した。

3.2 ナジブ首相は、日本企業によるイスラム金融やハラル産業への投資を評価した。両首脳は、両国の民間部門がサービス・金融セクター、またグリーン・テクノロジー、再生可能エネルギー技術、バイオテクノロジー及び情報通信技術等の新しい技術分野でもジョイント・ベンチャーにおいて更に協力できるという点で一致した。

3.3 両首脳は、二国間の貿易・投資の拡大及びビジネス環境の整備をもたらしてきた日・マレーシア経済連携協定(EPA)の重要性を再確認した。両首脳は、引き続き着実にEPAを実施し、二国間の経済連携を強化していくことで一致した。

3.4 両首脳は、官民協調の下、産業界のニーズを踏まえた政策を進めていく重要性を認識した。

3.5 鳩山総理は、ナジブ首相に同行しているマレーシアの企業団を心から歓迎し、同企業団が日本の企業と実質的な協力を継続あるいは開始することができるだろうと確信した。

3.6 鳩山総理は、自主的にボゴール目標の2010年評価対象エコノミーになるというマレーシアの決定を歓迎した。ナジブ首相は、本年APECの議長を務める日本に対する期待と支持を表明した。両首脳は、地域経済統合、新たな成長戦略、人間の安全保障の2010年APECの3つの議題について検討を深めることを期待した。

3.7 鳩山総理は、ASEAN内の格差是正等、2015年までのASEAN共同体設立に向けてのASEANの統合努力を引き続き支援することへのコミットメントを表明した。また、同総理は、そのためのビンプ・東ASEAN成長地域(BIMP-EAGA)及びインドネシア・マレーシア・タイ成長の三角地帯(IMT-GT)の取組に対する期待を表明した。ナジブ首相は、長期的なビジョンとして、経済関係分野を含む地域協力を通じて東アジア共同体構築を目指す鳩山総理のイニシアティブを評価した。この目的のため、両首脳は、日ASEAN、ASEAN+3、東アジア首脳会議等の既存の地域的枠組みを一層促進するために緊密に協力を進めていくことの重要性を再確認した。両首脳は、日アセアンセンターの活動が、日・ASEAN間の協力の補完及び強化に効果的であると認識した。また、両首脳は、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)への支持を表明し、有益な研究及び実際的な政策提言の提供を通じたERIAの地域協力への貢献を評価した。

3.8 両首脳は、これまでの対第三国共同支援における実績をベースとした上で、双方が重視する地域・分野を特定し、南南協力及び三角協力の強化へとつながる協力を検討することで一致した。

3.9 両首脳は、持続可能な開発、感染症、人身取引、気候変動等のグローバルな課題に対処するに当たり、個人とコミュニティの保護と能力強化を重視する、ボトムアップ、包括的、分野横断的アプローチの重要性を確認した。両首脳は、両国が署名している国際約束及び国連憲章を踏まえ、国連、APEC、ASEAN等の国際場裡においてこのアプローチの理解促進につき双方が協力することで一致した。


4.環境・エネルギー分野での貢献のための協力

4.1 両首脳は、気候変動問題を含む環境問題の重要性を再確認した。両首脳は、気候変動に取り組むに当たり、公平、公正かつ法的拘束力のある合意に達することが必要であることを認識しつつ、国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)の成功に向けて双方が協力することを確認した。

4.2 両首脳は、両国がエネルギー安全保障上重要なパートナーであり、またグリーン・テクノロジー導入による競争力強化及び持続的成長を目指している点を踏まえ、環境・エネルギーに関する協力を強化することで一致した。両首脳は、「日・マレーシア環境・エネルギー協力イニシアティブ(日本語版(PDF)英語版(PDF))」を発表した。

4.3 両首脳は、持続可能な森林経営及び生物多様性の保全及び持続可能な利用のための協力を強化することで一致した。ナジブ首相は、日本が主催する生物多様性条約第10回締約国会議の成功へ向けた協力を表明した。


5.人材育成及び交流促進のための協力

5.1 両首脳は、東方政策が教育交流や能力強化を通じたマレーシアの人材育成及び両国間の人的交流促進に果たしてきた役割を評価した。両首脳は、東方政策の下での新たな協力分野を模索する取組を歓迎した。

5.2 両首脳は、高等教育分野における既存の交流を歓迎し、工学分野での日本の経験を可能なところでマレーシアの高等教育に取り入れるための協議を双方が継続していくことで一致した。

5.3 両首脳は、東アジア青少年大交流計画(JENESYS)の下、青少年交流が実績を挙げていることを評価した。両首脳は、双方が今後も青少年を含むあらゆるレベルでの人的交流を推進していくことで一致した。

5.4 両首脳は、日・マレーシア間の人的交流が、両国間の観光客の相当な出入りを通じて常に強化されてきたことを認識した。ナジブ首相は、マレーシアが日本のインバウンド施策において重点市場に位置づけられたことを歓迎した。両首脳は、両国間の観光客の動きを促進するため、更なる努力と措置が必要であることも認識した。


2010年4月19日、東京にて署名した。

日本国内閣総理大臣
鳩山由紀夫
マレーシア首相
ダト・スリ・モハメド・ナジブ

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