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「中央アジア+日本」知的対話:日本・中央アジア経済フォーラム
「日本・中央アジア経済交流の促進に向けて」
平成23年7月26日(火曜日) 於:外務省国際会議室
議長総括

英語ロシア語(PDF)

1.日本・中央アジア経済フォーラムの概要

 2011年7月26日,日本外務省の主催により,日本・中央アジア経済交流の促進に向けた「日本・中央アジア経済フォーラム」が開催された。

 本フォーラムは,2010年8月に行われた「中央アジア+日本」対話第3回外相会合において,中央アジア諸国との貿易・投資関係の促進を目的として開催が表明されたものであり,中央アジア諸国から4名(カザフスタンは在京大使が代理出席),日本側から政府関係者,企業関係者等10名が報告を行い,本フォーラムに関心を有する約80名が出席した。議長は上月豊久中央アジア担当日本外務省特別代表/外務省欧州局参事官が務めた。

2.伴野豊外務副大臣の基調スピーチ

 フォーラムの冒頭,伴野豊外務副大臣が基調スピーチを行い,1)地政学的重要性,2)豊富な天然資源,3)アフガニスタンの安定化,麻薬取引の取締等,現在国際社会が直面する喫緊の課題への対処といった観点から,我が国にとっての中央アジアの重要性について指摘した上で,本日の会議は,こうした重要性を持つ中央アジア地域と日本との貿易・投資関係をさらに活発化していくための方策について考える機会である旨説明した。

 また,本フォーラムでの議論のポイントとして,1)中央アジア地域全体が経済的に発展していくための方策,2)中央アジア全域を外国資本にとって魅力的な共通市場としていくための方策,3)中央アジアの経済発展に貢献し得る日本企業の活動,の3点を挙げた上で,こうした問題意識が,地域内協力の推進を日本が「触媒」として支援するという「中央アジア+日本」対話の趣旨を反映したものである点を強調した。さらに,今回のフォーラムが日本と中央アジア諸国との今後の経済分野における協力の活発化に向けた有益なヒントを生みだすことへの期待を表明した。

3.各セッションにおける主な議論

 フォーラムにおいては,参加者により,日・中央アジア経済交流の促進に向けた活発な議論が行われた。各セッションにおける議論の主なポイントは以下の通り。

(1)第1セッション:「中央アジア+日本」対話~新展開に向けて~

(イ)日本側政府・政府関係機関の代表から,日本と中央アジアとの経済交流の促進に向け,以下のような様々な取組について紹介がなされ,中央アジア側からは,このような日本側の取組が中央アジアの経済発展に大きく寄与しているとの高い評価が示された。

  1. 1)中央アジア地域における経済的活動の基盤となるインフラの整備,資源・原子力分野における協力の強化に向けた取組

     具体的には,電力・運輸等のインフラ整備を通じた地域内協力の促進,戦略的資源,プラント等の取引への融資・貿易保証の付与,原子力,石油・天然ガス関連産業発展への支援等について説明がなされた。特に,国際協力銀行(JBIC),国際協力機構(JICA),日本貿易保険(NEXI),日本貿易振興機構(JETRO)といった政府関係機関がどのような役割を果たしてきたか,また果たし得るかについて各機関代表より詳細な説明があり,中央アジア代表はこれに耳を傾けた。また,これら枠組の運用について日本企業から関連質問が出された。

  2. 2)中央アジアにおける産業育成や貿易促進に向けた取組

     具体的には,i)産業育成・産業多様化への支援,ii)民間セクターの活性化,iii)二国間経済フォーラムの開催,iv)日本企業向けビジネス情報の発信,v)中央アジアから日本への輸出支援といった具体的な取組が挙げられた。

  3. 3)市場経済の運営や経済交流の基盤となるシステム整備への日本の協力

     具体的には,i)市場経済の円滑な運営のための制度整備支援,ii)投資協定等の締結による法的基盤の強化,iii)投資環境改善に向けた施策等が説明された。

  4. 4)中央アジアにおいて経済改革,日本とのビジネスを実際に担う人材の育成,人的ネットワーク強化

     具体的には,ビジネスコースやセミナーの実施,研修員受入,専門家交流等の具体的な取組が紹介されるとともに,人的ネットワークの継続的なフォローアップの必要性が指摘された。また,中央アジアにおける日本企業の活動をバックアップするため,現地日本大使館が各種セミナー等の取組を活発に行っている事例が紹介された。

(ロ)また,日本側は,中央アジア諸国におけるビジネス環境改善のための努力を肯定的に評価しつつも,中央アジアとの経済関係を更に促進していくためには,一部で見られる腐敗・汚職,通関・出入国手続き,法令解釈・運用,海外送金手続き等の問題の改善が引き続き求められている旨の指摘を行った。また,日本側から,今後,基礎的な経済データをはじめとする情報を整備,開示していくことの重要性が指摘された。

(2)第2セッション:中央アジア諸国の取組と「中央アジア+日本」対話

(イ)中央アジア各国の代表から,各国の経済・貿易活動,産業構造,近年の経済成長実績等について説明がなされた。また,外国投資誘致のために実際に行っている取組として,i)外国企業の活動に係る国内法の整備,ii)企業活動に対する税制優遇策,iii)産業発展プログラムの策定,iv)自由経済特区・自由観光特区の設置,v)世銀等の国際機関による評価改善への取組,vi)インターネットサイトを通じた登記手続き等が可能となる「一つの窓」プロジェクトの導入といった施策が紹介された。

(ロ)また,各国代表から,日本企業の進出・投資を希望する分野として,以下が挙げられた。

  1. 1)中央アジア地域における経済発展を確保していく上では,インフラ整備が引き続き重要であることを踏まえ,発電所,送電網,運輸等の基幹インフラ整備に向けた投資への要望がなされた。
  2. 2)中央アジアに存在する豊富な天然資源を,日本企業の経験と技術を用いて共同で開発することは有望であるとして,ウラン・レアメタル等の鉱物資源開発,オイルシェール等の石油資源開発,水・エネルギー資源の利用・開発等における協力が提案された。また,日本が先進的な技術を有する代替・再生可能エネルギーの導入等に対する関心が示された。
  3. 3)日本からの技術移転による産業の近代化を図ることを目的として,自動車・医療機器・精密機器・建材等の製造業,化学・石油化学工業,冶金工業,製薬業,繊維工業,農業等の分野における投資協力が提案された。
  4. 4)中央アジアの豊富な観光資源,自然環境の活用を促進し,より多くの日本人観光客を誘致することを目的として,観光分野における日本企業との協力への要望がなされた。
     これに対し,日本側からは,特に経済インフラ整備や資源開発の分野を中心に,今後の協力への関心が示された。

(3)第3セッション:「中央アジア+日本」対話の協力分野における日本企業の活動

(イ)中央アジアにおいて実際に活発な活動を展開している日本企業4社の代表から,カザフスタンでのウラン開発及びレアメタル開発,ウラン尾液からのレアメタル・レアアースの回収,石油精製プラント近代化,物流センターの建設,タジキスタンでの甘草製品製造プラント建設,トルクメニスタンでのガスマスタープランの作成協力,ウズベキスタンでのオイルシェール及び含有鉱物資源開発等の事業内容について紹介がなされた。

(ロ)日本企業側から,中央アジアにおいてビジネスを実際に展開する上での問題点として,i)法令・規則等,投資の前提となる条件の頻繁な変更,ii)査証取得の困難さ,iii)頻繁な人事異動,iv)一部で見られる汚職・腐敗等を提起するとともに,改善に向けた要望を表明した。

(ハ)日本政府側からは,現地に進出している企業への全面的な支援の表明がなされた。日本企業側からは,中央アジアにおいて長期的・安定的なビジネス関係の構築を目指していること,また,将来的には中央アジア全域へのビジネス展開をも視野に入れていることを強調するとともに,日本企業は各分野において中央アジアの経済発展に貢献できるとの確信を表明した。また,日本企業側からは,中央アジアには豊富な人材が存在し,現地でビジネスを展開していく上ではこれら人材との人的繋がりが重要との指摘がなされた。

4.総括

 各セッションでの議論を通じ,日・中央アジア経済交流の促進に向けた提言がなされたことを踏まえ,本年秋に開催予定の「中央アジア+日本」対話高級実務者会合(SOM),更に来年東京で開催予定の「中央アジア+日本」対話第4回外相会合へと議論を積み重ねていくこととする。

(1)中央アジア地域全体が経済的に発展していくための方策

 日本は中央アジア地域経済協力(CAREC)等の国際機関等とも連携し,東西南北の輸送回廊,発電所・送電網等の整備を通じて中央アジア地域全体の経済発展に寄与してきており,今後,特にアフガニスタンの安定にも資する南への物流ルート,周辺国にも裨益するエネルギー・インフラ等の整備を含め,ODA等のツールを活用した協力の可能性について検討していく。これに関し,中央アジア側からは,ODAの枠組を通じた協力の継続,日本からの投資拡大,人的交流の一層の促進に向けた支援等に対する要望が表明された。

 現在,日本企業により中央アジア地域の外部経済圏との連携強化に直結するプロジェクトを推進されており,こうしたプロジェクトを成功裡に実施するとともに,今後,更なる協力の進展を目指すことが中央アジアの地域としての発展を促進する上でも有効である。

(2)中央アジア全域を外国資本にとって魅力的な共通市場としていくための方策

 外国投資の誘致に向けて,中央アジア各国が,それぞれの国情を踏まえて多様な努力を行っていることが肯定的に評価されたが,同時に,引き続き改善すべき課題が残っていることも指摘された。

 日本政府としても,投資協定等の締結を通じた法的基盤の強化,現地大使館による日本企業支援,ワーキング・グループの実施等の取組を通じ,引き続き中央アジアにおけるビジネス環境改善に取り組んでいく。また,制度整備等における協力を通じて,企業活動に関する透明性,公平性,投資予測性を高めるとともに,受け皿となる現地民間セクターの能力向上を図っていくことの必要性も指摘された。

 中央アジアに更なる投資を呼び込むため,1)登記手続き等の行政サービスにおけるワンストップ・サービスの確立,2)銀行・企業財務等に関する情報の整備及び開示,3)電気・ガス・水等の公共インフラの整備,4)信頼できるパートナーの確保のためのビジネス・マッチング・サービスの整備等について提案がなされた。

 また,日本と中央アジアとの経済関係の更なる緊密化のためには,日本人の国民性,文化的背景への中央アジア側の理解も重要であり,特に,1)予見可能性,2)約束を守る,3)長期的視点という3点への配慮が必要との指摘がなされた。

 中央アジア地域は今後,消費市場としても発展していく潜在性を有しているが,そうした潜在性を発揮していくため,今後,基礎的な経済データを始めとする情報を整備,開示していくことが重要である。

(3)中央アジアの経済発展に貢献し得る日本企業の活動

 本日の議論を通じ,日本企業が中央アジアへの進出,事業展開について大きな意欲を有していることが確認された。中央アジア各国から提案のあった今後の協力分野については,今後,各企業においても事業進出の可能性等について検討を行うとともに,日本政府・政府関係機関においても,ODA等のツールも含めた協力の可能性について検討していく。

 日本企業からは,プロジェクトの事業性評価からファイナンス,設計,技術供与,建設,メンテナンス等の一連のプロセスを一括して日本企業が請け負うことで,より有機的な事業展開が可能となるとして,ビジネス分野においてもワンストップ・サービスを推進することの利点が指摘された。

 日本政府からは,現地大使館を通じた企業支援,大使館等の施設を利用したセミナー実施等を通じ,中央アジア地域における日本企業の進出,ビジネス活動への支援を積極的に実施していくとの方針が改めて表明された。

 参加者は,今次フォーラムにおいて活発な議論が行われたことを高く評価するとともに,こうした取組を今後とも継続することの意義を確認した。

日本・中央アジア経済フォーラム 議長
中央アジア担当日本外務省特別代表/外務省欧州局参事官
上月豊久


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