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「中央アジア+日本」知的対話:第3回東京対話
議長サマリー

平成21年2月20日(金曜日)
於:外務省国際会議室

1.第3回東京対話の概要

 2009年2月20日に日本外務省の主催、国際交流基金の協力により、「中央アジアにおける環境協力」をテーマとした第3回東京対話が開催された。本対話は「中央アジア+日本」対話の5本柱の一つであるトラック2の知的対話として位置づけられており、「東京対話」はその通称である。第3回東京対話では、中央アジア諸国から5名、日本から有識者・政府関係者等20名がセンター・テーブルに参加し、さらに本対話に関心を有する約40名の出席を得た。議長は福島安紀子国際交流基金特別研究員が務めた。

 第1回、第2回の東京対話において、焦点を絞ったトラック2の会議が有意義なインプットを政府間対話に提供できることが明らかとなったことを受け、今回の対話においては、前回の東京対話で提言されたテーマの中から、環境問題、具体的には「中央アジアの土壌を巡る環境協力」と「気候変動問題が中央アジアの環境に与える影響」をテーマに取り上げた。

2.伊藤信太郎外務副大臣の基調スピーチ

 第3回東京対話の冒頭、伊藤信太郎外務副大臣は、中央アジアの重要性と「中央アジア+日本」対話を通じて推進してきた日本の対中央アジア外交を概観した上で、中央アジア諸国が、独立以前の旧ソ連時代に形成された環境負荷の大きい経済・社会体制等により生じた土壌汚染を含む環境問題への取組みと、これと両立させうる経済成長の達成といった課題を抱えており、その持続的発展のためには、関係国間の地域内協力が必要であることを指摘した。また、日本が経験した環境問題(公害)に関わる知見を中央アジア諸国と共有することが重要であるとの認識を示すとともに、有機農業など循環型社会形成のための様々な取り組みを紹介した。さらに「環境」をテーマとした第3回東京対話が、中央アジア諸国と日本との協力の一層の深化のために有益な提言を生みだし、政府間対話に反映されていくことへの期待を表明した。

3.各セッションにおける主な議論と提言

 第3回東京対話では、次の二つのテーマに基づき活発な意見交換が行われた。議論の主なポイントは以下の通り。

(1)第1セッション「中央アジアの土壌を巡る環境協力」

(イ)ソ連時代に形成された大規模灌漑農業における非効率的な水資源の使用や排水システム等により、塩害や砂漠化をはじめとする土壌劣化が深刻になり、農業の収量低下などの影響を招いている。また、過剰な放牧経営による放牧地の劣化、不適切な化学肥料投与による土壌汚染が深刻化している。

(ロ)鉱山開発地では、放射性物質をはじめとした金属性物質が土壌を汚染している。汚染された土壌は、ダム及び湖沼の決壊や河川を通じて拡散し、中央アジア地域の生態系システムに影響を与えている。

(ハ)これらの土壌劣化に関しては、GIS(地理情報システム)を使用したグローバル・マッピング・システム等の先端技術の活用が有益である旨指摘された。また、日本がウズベキスタンのカラカルパクスタン地域開発の一環として実施している土壌改善支援、その他モニタリング支援等が紹介され、このような対策が地域住民の関与も得て総合的に実施される必要性が認識された。

(2)第2セッション「気候変動が中央アジアの環境に与える影響」

(イ)地球温暖化等の影響により中央アジア諸国において氷河縮小、氷河湖の出現・決壊、砂嵐等が発生している。特に山岳地からの水の流量を調整する機能を持つ氷河の縮小は、今後、中央アジアにおける水資源供給の不安定化、土壌劣化の原因となりうる旨指摘された。

(ロ)気候変動はグローバルな問題であることが改めて確認され、中央アジア諸国の取り組み、日本政府のクールアース推進構想、国際協力機構(JICA)のスキームが紹介されたほか、経済発展と環境保全の双方を実現することが重要であり、地域内協力、さらにはグローバルな協力が不可欠であることが認識された。

(ハ)また、日本政府の取り組みとして、カザフスタンの環境行政関係者に対する日本での研修事業の実施や、ウズベキスタンのタシケント熱併給発電所近代化計画に関する調査団派遣等が紹介された。

(3)これら両セッションでの議論を通じ、環境分野における中央アジア地域内協力及び中央アジアと日本との協力につき、以下の点が提言された。

(イ)土壌劣化並びに氷河縮小、気候変動問題は国境内に留まる問題ではなく、中央アジア地域全体に影響が及ぶことから、情報共有を含めた地域内協力が問題の軽減・解決に不可欠である。このような地域内協力を「中央アジア+日本」対話の行動計画に基づき日本が支援することが重要である。

(ロ)環境問題では日本の公害対策、科学的なアプローチ、循環型社会形成に向けた取組みなどの経験が中央アジア諸国にとっても参考となるため知見を共有することが有用である。

(ハ)環境問題に取り組むにあたっては先端技術を含む科学的な調査が重要であるが、中央アジア諸国の独立以降、気象観測や土壌調査の拠点が減少している。このような科学的調査を充実し、日本が中央アジアで実施した調査やモニタリングの結果を十分に活用できるよう一層の協力推進が必要である。中央アジア諸国においてもこれらの調査やモニタリングの実施にあたり省庁間の分担や諸規則を整備し、こうした協力がより円滑に進むよう努力することが重要である。

(ニ)土壌劣化及び気候変動問題に有効に取り組むためには若手研究者などの人材育成が必要であり、この分野における日本と中央アジアの協力を具体的に推進することが重要である。

(ホ)環境問題は、健康被害を含めて人々の暮らしに影響を与えることから、住民参加型の啓蒙、協力、政策実施を行うことが肝要である。

(ヘ)環境問題は、灌漑農業における非効率的な水資源使用等によって生じる塩害、砂漠化、気候変動による氷河縮小と水資源供給の不安定化、放射性物質等を含んだ汚染土壌の河川や災害による拡散等、相関関係が深いため、その解決に向けた複合的なアプローチが必要である。

(ト)今回の東京対話を踏まえ、中央アジア諸国が域内外の関係諸国との間で、共通課題である環境問題について具体的な議論をさらに深め、協力を実現に近づけられるよう、日本が中央アジア諸国の環境問題関係者のために協議の場を提供することも有益である。

4.総括

 第3回東京対話においては、土壌と気候変動を巡る環境問題が極めて密接にかかわりあい、中央アジア地域全体の発展に大きな影響を与えていること、中央アジア各国政府は、この問題を解決するために必要な社会・経済体制を構築し、関係国と連携しつつ環境保護政策に真剣に取り組むことが重要であること、この分野で日本が果たしうる役割が少なくないことが認識された。

 第3回東京対話参加者は、対話の内容が高い水準であり、環境問題に焦点を絞った有益なトラック2の会議であったと評価し、同対話が今後とも継続され、具体的なテーマを議論することへの期待を表明した。次回の東京対話のテーマとして「環境に関する地域協力構想」、「人材育成」、「中央アジア・アフガニスタン運輸回廊」、「アフガニスタンの安定化と中央アジアの安定的発展」等が提案された。

 以上、ここに第3回東京対話の成果を報告し、今後の「中央アジア+日本」対話の政府間対話の参考とされ、提案を実現されることを希望する。

第3回東京対話 議長
国際交流基金特別研究員兼
青山学院大学国際交流共同研究センター客員研究員
福島 安紀子

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