欧州連合(EU)

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気候変動に関する日EU共同シンポジウムの開催

2008年1月23日
於、スロベニア商工会議所(リュブリャナ市)
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 日本とEUは、2001年に首脳レベルで合意した日EU協力のための行動計画に則り、市民社会の連携や人的交流を促進するため、日EUの有識者が参加するシンポジウムを2002年から毎年テーマを変えて開催しています。第6回目となる今年は「気候変動問題と日EU協力の展望」をテーマに、今年前半のEU議長国を務めるスロベニアの首都リュブリャナで開催されました(我が国外務省及びスロベニア政府による共催、スロベニア商工会議所が協力)。

 シンポジウムには、日本から、植田和弘(うえたかずひろ)京都大学大学院教授(環境経済学)、新澤秀則(にいざわひでのり)兵庫県立大学教授(環境経済学)、高村ゆかり(たかむらゆかり)龍谷大学教授(国際公法・国際環境法)の3氏が、EU側からは、アルトゥール・ルンゲ・メッツガー欧州委員会環境総局気候変動担当課長、ローレンス・グラフ同次長、アンドレア・ウルバンチッチ・ヨーゼフ=ステファン研究所(スロベニア)エネルギー効率センター主任研究員の3氏がそれぞれスピーカーとして参加しました。司会はスロベニア環境省のアンドレイ・クランツ国家気候変動委員会事務局長が務めました。シンポジウムには、EU加盟国の気候変動問題の専門家をはじめ、スロベニア内外の学術関係者、政府関係者、企業関係者、ジャーナリスト、外交団など、約70名が聴衆として参加し、スピーチ終了後には活発な質疑応答が行われました。

気候変動の経済的側面と我が国の排出権取引への取り組み

 シンポジウムの冒頭、司会を務めるクランツ・スロベニア環境省国家気候変動委員会事務局長が歓迎の挨拶を行い、シンポジウムの成功を期待しているとの、ポドブニック・スロベニア環境大臣のメッセージを紹介しました。続いて、本田悦朗(ほんだえつろう)外務省欧州局審議官が、共催者である我が国外務省を代表して挨拶し、「美しい星50」をはじめとする日本政府による気候変動問題に対する基本的立場を紹介するとともに、基本的価値を共有するパートナーである日本とEUが、この問題に協力して取り組んでいくことへの期待を表明しました。引き続き、会場ともなったスロベニア商工会議所のサモ・フリバル・ミリッチ事務総長が、シンポジウムを通じ、経験の共有とネットワークの構築が図られることへの期待感を表明しました。

 専門家によるプレゼンテーションでは、まず、植田和弘京都大学大学院教授が「地球温暖化の経済的側面」と題するスピーチを行いました。スピーチの中で植田教授は、スターン・レビューを紹介しつつ、気候変動問題が経済に与える影響や、何ら対策をとらなかった場合のコストと対策にかかるコストの比較などに触れ、スターン・レビューの主要なメッセージは、国際社会が野心的な目標をもって温暖化効果ガスの排出削減に取り組む必要があるということであり、そのために効果的な国際炭素市場を確立し、開発途上国の参加も促していく必要があるということだと述べました。植田教授はまた、我が国における気候変動対策の取り組みの概要を紹介しました。安倍前総理が提唱した「美しい星50」が大変野心的な提案であると指摘するとともに、京都議定書の削減目標を達成し、低炭素社会を実現するためには、国内においても、また東アジア地域においても、「ウィン・ウィン戦略」を追求していかなければならないと、データを示しながら説明しました。

 新澤秀則兵庫県立大学教授は、「地球温暖化ガス排出権取引:日本における議論」と題してスピーチし、EUの排出権取引制度(EU-ETS)と比較しつつ、日本における国内政策の進展について紹介を行いました。なかでも、排出権取引の基盤として排出源ごとのモニタリングがすでに整っていること、産業界による自主的な取り組みが排出権取引につながりうること、具体的な排出権取引の制度設計について議論すべき余地があることを説明しました。また、排出権取引制度に対しては批判もあることを紹介するとともに、なかでも、無償の初期割当が費用最小化という排出権取引の目的を損ないうることを解説したうえで、従ってオークションによる初期割当が望ましいが、国際競争上、EUが一方的にオークションを拡大するのは無理なので、多国間で取り組むことが重要であると強調しました。

EUの新エネルギー・気候変動パッケージ

 日EU共同シンポジウムと同じ1月23日、欧州委員会は、昨年3月の欧州理事会で合意したEUの気候変動対策目標(2020年までに温暖化効果ガスの排出量を少なくとも20%、他の先進国が同様の取り組みを行う場合には30%削減することなどを内容とするもの)を実現するための「エネルギー・気候変動パッケージ」を採択しました。前々日と前日の21日と22日に、EU各国の専門家がこの問題について議論するため、リュブリャナ市近郊のクラン市でワークショップを開催したばかりということもあって、日EU共同シンポジウムでも、新パッケージの内容に焦点が当たりました。

 欧州委員会環境総局のアルトゥール・ルンゲ・メッツガー課長及びローレンス・グラフ次長は、それぞれのスピーチにおいて、新「エネルギー・気候変動パッケージ」の内容を踏まえたプレゼンテーションを行いました。最初に話したグラフ次長は、「気候変動に対するEUの取り組み:京都議定書第一約束期間から2020年まで」と題するスピーチの中で、まず、EUが京都議定書の温暖化効果ガス削減目標達成のために行ってきている取り組み(ECCP I及びECCP1 II)について説明しました。また、今後2020年までの削減目標達成のための追加的取り組みとして、欧州委員会が1月23日に採択したパッケージとして、排出権取引制度(ETS)の見直し、排出権取引制度の対象外のセクターにおける取り組み、再生可能エネルギー促進指令案、二酸化炭素回収・貯留(CCS)指令案などについて紹介し、特に、コスト効率性を高めるため、ETS等の市場メカニズムの活用を重視していること、公平・公正の観点から、ETS以外の排出削減努力については国民一人当たりGDPに基づき加盟国毎に差別化を図ることなどについて説明しました。グラフ次長は、こうした努力を通じ、EUとして低炭素社会の実現を目指し、引き続き国際的に主導的な役割を果たしていきたいと述べました。

 ルンゲ・メッツガー課長は、「国際的な炭素市場の拡大:選択肢と展望」と題したスピーチの中で、世界の炭素市場において主導的な役割を担うEUは、2008年から2012年までのEU排出権取引制度(EU-ETS)の第2フェーズにおいては、2007年までの第1フェーズの経験から学び、割当方式としてこれまで以上にオークションを採用するなど、市場メカニズムの一層効率的な活用を図っていくと述べました。また、2013年以降については、先進国の排出削減努力に加え、開発途上国の排出削減に向けインセンティブを与えることが重要であり、EU域内の努力とクリーン開発メカニズム(CDM)をうまく組み合わせていくことが必要だと述べました。CDMについては、気候変動対策の特効薬というわけにはいかないが、技術移転の分野に焦点を当てていくなど工夫することで「CDMプラス」とも呼ぶべき仕組みに発展させることを提案しました。

2013年以降の国際的枠組み

 高村ゆかり龍谷大学教授は、「2013年以降の国際的な気候変動対策の見通し:日本の視点」と題したスピーチにおいて、2012年に京都議定書の第一約束期間が終了した後の新たな国際的枠組についての日本国内の議論を紹介し、京都議定書が採用した方式について概ね肯定的に評価され、その基本的構造を維持することが支持されているものの、産業界には、京都議定書は世界的な排出量の30%しかカバーしておらず、日本の負担が過度に重いという不満の声があるとして、昨年10月の経団連の提案を紹介しました。その上で、拡大する炭素市場が、途上国において相当の排出削減を実現しつつあり、同時に、途上国の温暖化対策に必要な資金と技術の流れを生み出していることが、各国の立場に影響を与えており、国際交渉の場では炭素市場を中軸とする制度への支持が強くなってきていることを指摘しました。そして、新たな国際的枠組については、費用対効果の高い削減方法の提供によるより迅速で大規模な排出削減の実現や、途上国での排出削減を可能にする技術と資金の流れの確保、主要排出途上国の参加を促すといった観点から、炭素市場を中心とする制度が今後の交渉での有力なオプションの一つとなるだろうと述べました。他方で、こうした炭素市場を中軸とする制度がその期待される役割を果たすためには、フリーライダーを抑止するコンプライアンスの制度、他の環境問題や社会経済問題に対する影響への考慮も折り込んだクリーン開発メカニズムなどのルールづくり、衡平な国際的な負担分担を考慮した枠組の構築が課題となると指摘しました。そして、最後に、「市場こそが大幅な排出削減に必要な規模の資金と技術の動員を図ることができるが、そのためには、そうした方向性と要請が政府から示されなければならない」というドリンジャーの言葉を引用しながら、そうした方向で、日本とEUの政治的リーダーシップが発揮されることへの期待を表明しました。

 アンドレア・ウルバンチッチ・ヨーゼフ=ステファン研究所主任研究員は、「2013年以降の国際的な気候変動対策の見通し:EUの視点」と題してスピーチし、京都議定書以後のフレームワークは、効果的かつ野心的なものであることが必要で、京都議定書をベースになるべく多くの国の参加を得て、2009年中の合意を目指していくと述べました。特に、開発途上国の貢献が重要であり、また炭素市場が重要な手段であるとの見方を示しました。

 日本側、EU側それぞれ3名の有識者によるスピーチが終了した後、40分ほどにわたり、聴衆とスピーカーの間で熱心な質疑応答が行われました。聴衆からは、EUが排出権取引制度の構築にあたり、域内の利益団体に対しどのようなロビイング活動を行ったのか、ノウハウを公開してほしいといった意見や、気候変動対策がビジネスにもたらす機会としてはどのようなものがあるか、EUにおける排出削減目標の各加盟国への割当をどうやって決めるか、日本における環境税導入の可能性についてなど、さまざまな質問が出されました。最後に本田外務省欧州局審議官より、気候変動問題に対するアプローチは日本とEUとで異なる点もあるが、相互に経験や意見を交換していくことが重要であり、特に本年7月の北海道洞爺湖サミットに向けて、日本とEUが一層協力していきたいと述べ、シンポジウムの結びとしました。

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リンク(いずれも英文):

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