I 日程概要
- (1)ブータン王国国王ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク陛下及び同王妃ジツェン・ペマ・ワンチュク陛下は,11月15日から国賓として訪日され,東京,福島,京都を訪問され,11月20日に離日された。
- (2)15日朝に成田空港に到着された国王王妃両陛下は,夕刻,迎賓館において野田総理夫妻による表敬を受けられ,二国間関係,経済協力等に関し意見交換を行われた。
- (3)16日には,皇居においてご入院中の天皇陛下の御名代をされた皇太子殿下による歓迎行事に臨まれ,引き続き皇太子殿下とのご会見を行われた。その後,迎賓館に戻られ,皇后陛下の御訪問を受けられ御挨拶を交わされた。昼には衆参両院議長主催歓迎昼食会に出席され,夜には宮中晩餐に出席された。
- (4)17日には,慶應義塾大学で名誉博士号(経済学)を授与され,記念講演を行われた。正午からは,衆議院本会議場で国会演説を行われた。午後には明治神宮を御参拝になりその後,講道館を視察され柔道の演舞を御覧になられた。夕刻には日本国・ブータン王国友好議員連盟,日本ブータン友好協会,在東京ブータン王国名誉総領事主催の歓迎レセプションに出席された。
- (5)18日には,迎賓館で皇太子殿下の御訪問を受けられた。続いて皇后陛下とお別れの御挨拶をされた。その後,福島県相馬市を訪問され,小学生と交流され,被災地区で犠牲者の追悼を行われた。
- (6)19日には,京都において金閣寺,三十三間堂,京都伝統工芸館などを視察された他,生け花や茶の湯を体験された。夜には,京都府,京都市,京都商工会議所主催夕食会に出席された。
- (7)20日朝,仙洞御所を視察された後,関西空港より離日された。
1.野田総理夫妻による表敬
- (1)野田総理大臣より,両陛下のご成婚への祝意と国賓訪日を歓迎し,外交関係樹立25周年を迎えた日・ブータン関係の一層の強化,本年9月のブータンでの地震被害へのお見舞い及び東日本大震災に際してのお見舞いや支援への謝意を表明した。
- (2)国王陛下より,国賓招待への謝意,先代国王陛下,政府及び国民を代表して日本への敬意,東日本大震災の被災者へのお悔やみと連帯を表明し,日本の経済協力への謝意が述べられた。
2.衆参両院議長主催昼食会
参議院議長公邸において,平田参議院議長,横路衆議院議長主催の昼食会が開催され,衆参両院副議長,両院議運委員長,日本国・ブータン王国友好議員連盟幹部等が出席し,和やかな雰囲気の中,懇談が行われた。
3.宮中晩餐
- (1)皇太子殿下をはじめとする皇族方が出席され,宮中晩餐が催された。皇太子殿下が御名代として天皇陛下のお言葉
(日本語
・英語
) を読み上げられ,東日本大震災に際してブータン国内で追悼式や募金活動などが行われたことに深い感謝を表された他,皇室,王室間の交流や経済協力,前国王陛下が提唱された「国民総幸福量」等にも言及されつつ,今回の国王王妃両陛下の御訪日を契機に日本・ブータンの友好関係が一層深まることを願っているとの天皇陛下の気持ちを代読された。
- (2)国王陛下からは御答辞において,厚いおもてなしに謝意を表するとともに,東日本大震災の被災者及び日本国民に対して連帯とお見舞いのお気持ちや,日本とブータン両国は特別な絆を有しているとのお気持ちを述べられ,さらにゾンカ語で,天皇皇后両陛下のご健康とご多幸,ご長命,そして,日本と日本国民の末永い平和と幸福をお祈りされた。
4.国会演説(
衆議院ホームページ
参議院ホームページ
)
- (1)衆議院本会議場には,野田総理,藤村官房長官,玄葉外務大臣,町村日本国・ブータン王国友好議員連盟会長,同松本会長代行をはじめとする同友好議員連盟役員を含む国会議員464名(衆議院議員308名,参議院議員156名)が出席し,議場は満席となった。
- (2)国王陛下は,演説の中で,(1)東日本大震災に対する心からのお悔やみと復興に向けての励まし,(2)アジアの近代化をもたらした日本と伝統的価値観に根差した日本国民の卓越した資質に対する敬意,(3)国連安保理の議席拡大と日本の指導的役割に対するブータンの全面的支持,(4)日本からのこれまでの支援への謝意と日本とブータンの深いつながりなどに言及された。
- (3)国会演説中,議場では,しばしば大きな拍手が起きたほか,東日本大震災について,「いかなる国も国民も,決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮に,このような不幸からより強く大きく立ち上がることができる国が一つあるとすれば,それは日本と日本国民である,私はそう確信しています」と述べられるなど,日本と日本国民への深い思いやりに満ちたメッセージが感動を呼んだ。
5.福島県相馬市訪問
- (1)国王王妃両陛下は,新幹線で福島駅に到着し,佐藤福島県知事の案内で車列まで移動され,ブータン国旗を打ち振る一般市民の大歓迎を受けた。相馬市までの沿道でも随所で県民が車列を待ちうけ,歓迎の意を表した。
- (2)相馬市立桜丘小学校では,同校生徒の歌と踊りを鑑賞し,続いて,ブータンの子どもたちにもよく話される「龍」の話をされ,経験や体験を糧にして,強くなり,自分の中にいる龍を大切に育んで欲しいとエールを送られた。
- (3)その後,相馬港原釜・尾浜地区では,先に到着し法要を行ったキンレイ高僧一行とともに,被災地区に向かって手を合わせ,約3分間の祈りを捧げられた。祈りを終えられた後,「この地を訪問できて良かった。犠牲者のために,祈り続けたい。」と述べられた。
6.京都訪問
金閣寺では,参拝の後,国王王妃両陛下は世界平和を祈願して鐘を突かれ,案内した住職に対して「地球上ではどこかで戦争をしている。仏教の力でそれが収まることを期待している」と話された。三十三間堂では,本堂の千手観音座像の前に白い布を敷かれてお祈りをされ,また,蝋燭に両陛下のお名前を記しお供えをされた。続いて,京都伝統工芸館では,竹細工,漆工芸等々の制作の様子を御覧になられた後,東日本大震災の津波で流失した岩手県陸前高田市の松を用いて制作中の仏像に両陛下とものみを入れられ,削った部分に手を添えて祈りをささげられた。その後,龍村美術織物錦帯工場を視察され,帯などの伝統的な織物を熱心に御覧になられた。なお,京都府,京都市,京都商工会議所主催夕食会には国王王妃両陛下は和服姿で臨まれ,参加者に大きな感動を与えられた。
II.評価
- (1)日・ブータン国交樹立25周年に行われた今回の国王王妃両陛下の国賓としての訪日は,両国友好関係を飛躍的に増進させる歴史的な御訪問となった。特に,国王陛下は,宮中晩餐や国会演説を始め,あらゆる機会を通じて,日本への敬意と親愛の情,これまでの日本のブータンの国造りに対する支援への深い謝意とともに,東日本大震災の被害に対するお見舞い及び連帯を伝えられ,その優しい人柄と美しい民族衣装をまとった王妃陛下と仲睦まじくお幸せそうな姿と共に,テレビ等のメディアにおいて連日大きく取り上げられた。
- (2)また,今回の訪日を機に,ブータンの国家開発の指針である国民総幸福量(GNH)や,同国の開発に多大な貢献を行った故西岡京治農業専門家の功績等,ブータンの様々な話題が国内メディアを通じて広く紹介され,国内での同国に関する親近感が高まるとともに理解を深める契機となった。
- (3)今後,我が国とブータンは,開発のパートナーとしてだけではなく,政治・経済,環境,人的・学術交流,国際場裡での一層の協力など,多層的な良好な二国間関係のさらなる強化が望まれるところであり,今回の訪日は,様々なレベルでの両国関係の一層の深化を促す機運を高めたものと評価される。
【参考】日程
- 11月15日(火曜日)
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- 本邦到着
- 野田総理夫妻による表敬
- 11月16日(水曜日)
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- 歓迎行事
- 御会見
- 衆参両院議長主催昼食会
- 宮中晩餐
- 11月17日(木曜日)
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- 慶應義塾大学名誉博士号授与式
- 国会演説
- 明治神宮参拝
- 講道館視察
- 日本国・ブータン王国友好議員連盟,日本ブータン友好協会,在東京ブータン王国名誉総領事主催歓迎レセプション
- 11月18日(金曜日)
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- 御訪問
- 福島県相馬市立桜丘小学校訪問
- 相馬港原釜・尾浜地区視察
- 11月19日(土曜日)
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- 金閣寺視察
- 三十三間堂視察
- 生け花体験
- 京都伝統工芸館視察
- 龍村美術織物錦帯工場視察
- 京都府・京都市・京都商工会議所主催夕食会
- 11月20日(日曜日)
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- 仙洞御所視察