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海外交流審議会第2回領事改革部会

平成15年4月15日(火)
於:外務省仮庁舎

<会 議 開 催 概 要>

1. 日 時 4月15日(火) 15:00~17:00

2. 場 所 外務省仮庁舎1906号会議室

3.   出席者:
(委員側) 熊谷会長、大来委員、仮野委員、櫻井委員、谷野委員、中山委員、矢崎委員、横山委員
(事務局側) 小野領事移住部長、遠藤審議官、小澤領事移住部付検事、三好領政長、重枝領旅長、山本領外長、下井援護官、石井領対首席事務官

4.   議 題
旅券事務を巡る現状と課題について


<議事録>

熊谷会長 それでは、海外交流審議会第2回領事改革部会を開催させていただきたいと思います。
 皆様方、大変お忙しいところ、また、最近はたびたび開催をしておりまして、誠に恐縮でございます。前回に引き続きまして、本部会におきましても私が議長役を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 中谷委員は所用により欠席となっておりますので、ご了解いただきたいと思います。
 議題に入ります前に、小野幹事より、最近のイラク情勢及び香港等で流行しておりますSARS(重症急性呼吸器症候群)に関する外務省の対応につきまして、ご説明をいただければと思います。よろしくお願いします。

小野部長 お手元に、「イラク情勢に係る邦人保護状況」という1枚紙の資料がお配りしてございます。前回もご報告させていただきましたけれども、本日現在、イラクを取り巻く状況の中で、邦人の被害は出ていないということでございます。連日のようにテレビで茶の間に飛び込んでくるいろいろな映像がございますけれども、バグダッドに米軍が進攻した後、略奪、強盗で無政府状態が続いておりまして、そういう意味では、攻撃があったとき以上に、治安は悪化しているということだろうと思っています。
 ここに書いてありますように、イラクの邦人数を見ていただくと、11名というのは一般邦人で、いわゆるNGOも含めての数でございます。NGO6名は、比較的安定した北イラクのクルド人地域におりまして、それ以外の一般邦人は5名と今は少なくなってきております。この方々は、いわゆる人間の盾として入っておられた方が主でございます。一時は10名以上の方がおられました。最近になって、報道関係者が急速に増えておりまして、これは我々も人数を把握できない状況になってきております。これから更に増員する可能性があるのだろうと思っています。
 戦闘はまだ一部続いておりますので、総括するには早いのですけれども、一応、ほぼ制圧されたという状況の中で、振り返ってみますと、今回は米軍の攻撃が当初から想定されていましたから、外務省としては、早め早めの対応ということで、退避勧告をはじめ危険情報を発出して、周辺国から、不要不急の人にはできるだけ出ていただいてきた経緯があります。それから、チャーター便の手配、政府専用機の用意、自衛隊の艦船の手配、また、陸路の退避等については万全を期するということでやってきたわけですが、幸いにして、現在まで邦人の被害は皆無です。
 今後、テロの危険性はますます高まっていくのではないかということで、引き続き注意喚起が必要です。
 今後は、多くの報道関係者がイラク入りしますが、これは自己責任ということですけれども、何かあれば、政府として、できる限りの支援はするということだろうと思っております。
 前回も申し上げた点ですが、国の保護の限界と自己責任の間の線引きがなかなかすっきりいたしません。国の役割につき世論の見方や、プレスの反応、そして、国会での与野党の対応をみても明確にコンセンサスができているとも思えないわけです。そういう意味で、本審議会において、もう少しご議論いただいて、国民としての心構えというか、基本的認識について示していただければと考えております。
 次に、重症急性呼吸器症候群、「SARS」と言っておりますが、依然として広がりを日ごとに見せているわけで、資料2の「外務省がとった措置」として、3月17日、24日、28日と注意喚起を発出し、4月2日、WHOが香港、中国広東省に不要不急の渡航を検討するよう勧告したことを受けて、翌3日には、邦人に対して危険情報を発出しました。
 現在、感染者の数は増えてきている状況で、引き続き注意が必要だと思っております。
 次に「在留邦人支援」として、マスク等を送ると同時に、在留邦人に対する予防方法の説明、相談ということで、矢崎委員のご配慮で国際医療センターから2名の先生を、現在派遣していただいている状況でございます。また、外務省の医務官を香港に派遣しております。
 それから、11日に海外進出企業関係者に対する講演会を外務省主催で行いました。ショートノーティスにも拘わらず、約 200人も出席いただき、大変活発な質疑応答がなされました。それから、国際緊急援助隊の派遣も行っております。
 以上が感染症の関係でございます。
 次に、4月7日、東京で羅田広(ラ・デンコウ)中国外交部領事局長との間で領事当局間協議を行いました。1年半ぶりの協議で、双方とも言いたいことを言う中身の濃い協議でした。
 そこでは、中国の訪日団体観光、査証、中国人犯罪の問題、個別の関心事項について議論しました。団体観光については、発足して2年半で、中国から約5万 3,000人の観光客の訪日実績があるわけで、これをさらに発展させるべしとの共通の認識が示されました。
 ただ、その中で、約 0.5%にあたる約 250人の中国人が途中で失踪していくという問題があります。これについては問題であるということで、双方が一層の協力を図って失踪者を少なくする努力をする。日中双方で取扱い旅行社を追加する。日本側としては、早ければ本年中にも団体観光の査証の申請を広州総領事館でも受け付ける。さらに、対象地域は、今の3地域を拡大することを検討する旨発言しました。
 それから、中国側から、香港人に対する査免についての提案があり、今後課長レベルで話し合っていこうということになりました。
 それから、中国人犯罪の問題については、警察とか法務省からも発言してもらい、日本側の強い問題意識をきちんと先方に伝えました。
 中国側としては、(5)に書いてある、中華学校の法的地位の向上を非常に強く要請してきました。100年以上の歴史を有する横浜の山手中華学校と神戸の中華同文学校に関し、大学入試資格の問題とか、寄付金の免税措置の問題、それから、インターナショナルスクールと異なり、中華学校については、税制面での優遇が認められていない点等について、強く問題提起をしてきたわけでございます。
 「自国民保護」については、邦人が中国で拘束されると旅券を取られてしまうという問題があり、また、引き続き大連の航空機事故の際の邦人保護の点についてよろしくという話をすると同時に、中国側からは、中国人受刑者の待遇が、例えば刑務所で暴行を受けるとか、領事面会を申し入れても実現するまでに2~3か月かかるとか、取扱いについて様々な問題点の指摘がございました。そういう点について、法務省で事実関係をきちんと確認した上で、改善措置を講ずる必要があればしていくという話がございました。

熊谷会長 ありがとうございました。
 それでは、本日の議題であります「旅券事務の現状と課題」に移りたいと思いますが、その前に、委員の皆様方の大変なご尽力、ご支援によりまして、今般、領事部が領事局への格上げを外務省として決定されたようで、一部の法律改正があるようですが、そういうことになりましたことは皆様のご支援によるものでありますので、まずもってお礼を申し上げたいと思います。
 「旅券事務の現状と課題」でございますが、まず前半部分におきまして、旅券事務をめぐるいろいろな状況及び課題はどういうものであるかについて、まず小野幹事から説明をお願いいたしまして、その上で各委員のご意見をいろいろちょうだいいたしたいと考えております。
 それではよろしくお願いします。

小野部長 それでは、手短に私から簡潔にご説明し、旅券法改正の部分は、重枝旅券課長から補足してもらいたいと思っております。
 まず、1.に書いてありますように、旅券は公文書であるということです。それから、2.に書いてありますのは、日本国民に対して発給されるものであって、国の所有であるということでございます。ですから、旅券の返納命令ということで、国が返納を命ずることができることになっているわけです。
 3.に書いてありますのは、大きく分けて一般旅券と公用旅券があり、有効期間は10年旅券と5年旅券ということで、平成14年の国内発行数は 375万冊です。現在、4人に1人が旅券を所持している計算で、有効な一般旅券は 3,300万冊が現在存在しております。
 それから、外務大臣が発行権を有しているということで、明治以来、都道府県の旅券事務は行われてきているわけですが、これは法定委託になっておりまして、標準発給日数は日本は6日間。米国が6週間、カナダが10日、ドイツは4週間とありますように、日本は比較的早いほうになっております。それから、どこが取り扱っているかというと、米国、カナダは外務省、他方ヨーロッパの大陸系は内務省が旅券を取り扱っている。こういう歴史的な違いがございます。
 もちろん、戦前の日本は、今日ほど早く発給していなかったわけで、旅行に行く人が少なかったということもあると思いますけれども、もともと旅券を発給するに際してはいろいろなチェックをしていたわけで、警察が身元を確認するとか、学力とか資産状況、そういうものを調査して、場合によっては2~3か月かかって発給するという状況だったと承知しております。
 次に、旅券の手数料がここに書いてあります。注意書きにございますように、各国に比べると比較的高い旅券になっております。国と都道府県の分納制という形になってございます。
 「国民総渡航時代」ということで、これは、資料2を見ていただくと、旅券の発行数及び渡航者数の推移が出ております。左下は東京オリンピックがあった昭和39年に観光渡航の自由化が行われ、急激に渡航者が増えていきます。その後オイルショックでへこみ、湾岸戦争でへこみ、世界同時株安みたいなこともございまして、一気に米国の同時多発テロ、今日のイラク問題、SARS問題も大きく影響して、現在は、日割りで計算して3月20日の米軍のイラク攻撃の前と後で比べると、1日当たり4,000件くらい落ち込んでいる。旅券の発行数は、国際情勢に非常に影響を受けているということです。
 それから、「時代に応じた行政サービス」のため、現在、いろいろな改善措置に取り組んできているわけです。一例は、機械読み取り旅券というものがあります。それから、都道府県の事務所の増設ということで、平成元年では 200ヶ所だったのを、平成14年までに 319ヶ所に増やしまして、窓口時間を延長し、現在はいろいろな県で、日曜交付、時間外交付の実施を行っております。
 在外公館では、遠いところに住んでいる邦人のために、旅券申請の受付、交付について、領事が出張してサービスすることも行ってきております。
 また、本年度からオンラインによる申請ということで、24時間いつでも自宅あるいは職場等から旅券申請が可能になるよう試行的に行っております。
 それから、「旅券犯罪の深刻化」があります。これは非常に大きな問題になっているわけです。我が国の旅券は、高い国際的な信頼を得ていると同時に63ヶ国との間で査免措置を講じていることから、日本人への信頼性を逆手にとって、現在日本の旅券を持つ外国人犯罪が増えてきております。日本人に成りすまして、これら63ヶ国との間を自由に行き来するという問題があるわけです。
 近年、成り代わりによる旅券不正取得や年間4万冊を超える紛失・盗難旅券があります。平成11年に79件だった摘発が、昨年14年には摘発が126件。これはまさに氷山の一角でございまして、取締当局に言わせれば、この10倍の犯罪が行われているのではないかということでございます。
 具体的な事例としては、ブローカーが地方の暴力団と結託して、お金に困窮している男女数名に名義貸しを依頼して承諾させた上、外国人を成り代わらせて不正取得するとか、自己の戸籍抄本を偽造して女性の名前に変えて、さらに女装した顔写真を旅券申請書に貼り付けて旅券事務所に提出したけれども、同人が男性であることを看破された事案とかいろいろでございます。あの手この手で悪いことをするということでございます。
 ここに二つの旅券があります。実は、一つが真正で、一つが偽造ですが、一見すると、どちらが偽造でどちらが真正かわからないだろうと思います。イタチごっこに偽造も手が込んできているということで、さらにそれに対してこちらも対抗措置をとっていくということだろうと思っています。こうした事態は旅券秩序を揺るがすということで、国際的に旅券の発給管理強化を求める動きが高まってきております。犯罪対策は国民の利益そのものであるということです。
 今日の旅券事務の主要課題は、時代に応じた行政サービスの向上と適切な発給管理、旅券秩序の維持ということだろうと思っています。まず、サービス向上の分野ということですけれども、これは都道府県での旅券のオンライン申請、先ほど申し上げた申請時出頭免除ということを既に始めているわけですが、提出書類の簡素化を実現するということで、その普及、定着を図っていく必要があります。
 それから、国民の関心が高い発給に要する日数を、もっと短くしたい。在外などで盗難とか紛失した人は非常に困るわけです。そういう場合には、短期間に発給できる制度を、法的側面も含めて検討していきたい。
 それから、都道府県から市町村に委託事務を移すことの是非の問題があります。もっと身近なところで旅券の発給、交付を受けられる形にしたいという考えがあります。この点については、コスト面のみならず、旅券事務体制の維持・確保、不正取得防止の視点をきちんと検討していく必要があります。市町村委託のメリットは、申すまでもなく、住民の身近な場所で旅券取得が可能になる。市町村であれば、住民票、戸籍謄抄本の取得が容易である。それから、外務省のイメージアップということで、国民に身近な外務省ということにもつながるのではないか。それから、地方自治の強化にもなるでしょうということです。
 他方、都道府県に委託するメリットは、既に 100年の歴史があって蓄積がある、行政事務能力が高い、市町村に比べて経費面での規模の経済が働く、全国的に統一的な事務運営が確保し得る、旅券のオンライン申請において主要な役割を果たしているということでございます。
 市町村委託を行う場合に手当てすべきと考える主要課題は四点あります。都道府県との関係が第一点。第二として、人員設備の手当て。市町村に旅券事務所ができるわけで、担当の人たちに対する旅券知識の習得、人材の育成が必要になります。第三に、事務受託により採算割れする市町村及び事務受託が困難な小規模市町村に対する手当ても必要になります。第四に最大で3,200もの市町村に対応した外務省の人的・物的体制の確保があります。旅券はあくまでも外務大臣が発行するものですので、それなりのきちんとした体制を組む必要があるということです。市町村への委託問題は、今後の市町村合併の動きの中でまた出てくると思っております。
 発給管理(犯罪対策を含む)については、意識啓発の努力を一層強化する必要があります。例えば「旅券の日」というものを設けて広報に努めてきております。
 それから、犯罪防止のための国内関係機関、警察当局及び都道府県との連携強化ということで、数日前に全国的なネットワークとして、不正取得防止タスクフォースというものを立ち上げました。これは、都道府県と警察とタイアップして、ネットワークの協力強化を行うものです。
 また、平成16年の導入を目指して、高度の偽変造対策をほどこした新型旅券を開発するということで、これも既に開発の準備にとりかかっております。旅券に顔、虹彩等、バイオメトリクスの導入に向けた国際的な動きが見られており、今後日本旅券についても対応を検討する必要があるということでございます。
 「旅券へのバイオメトリクス(生体情報による本人確認技術)の応用を巡る動き」ということで、国際標準化のためにICAO(国際民間航空機関)の作業に我々も参加しておりますし、G8の中でも議論しております。他方、アジアでは、我が国が先端を行っていますので、中国とかシンガポール、韓国に声をかけて、他のアジアの国も国際標準化の流れに乗るように働きかけを行っています。この点の会議を今年東京で、日本が主催して行うことを予定しております。
 生物学的特徴を利用するものとして、顔、網膜、虹彩、指紋、掌紋等があり、また人間の行動に着目したものとして、音声、署名、筆跡等があります。生物学的特徴といってもいろいろなやり方があるわけで、指紋というと日本は抵抗があるわけで、如何なる方向で国際的な標準化を行う作業をするかにつき詰めていく必要があるということです。
 旅券犯罪の対処には、法制度面の手当てがどうしても必要なわけで、今の旅券法はかなり現状にそぐわなくなってきている部分があるものですから、旅券法の改正に向けて事務的に検討会を進めてきております。この旅券法改正については、来年の国会にかけるべく作業が行われていますが、重枝旅券課長から補足説明してもらいたいと思います。

重枝課長 旅券課長の重枝でございます。簡単に「法律改正の主要項目例」というところでご説明いたします。今ご覧になっておられる説明資料の3ページ目の3でございます。
 これから法律改正を考えていくのですが、法律的なバランスの問題、予算の問題を考えながら具体的な内容を固めていくことになると考えております。ただ、基本的な方向としては、もとよりサービス面は考えていきますが、今の世の中で国民全体の利益を図る上では、旅券をめぐる犯罪をいかに防止するかが重要となっています。その意味で、旅券発給の管理という側面を中心とした法律改正を考えております。
 内容を申し上げますと、一つがサービス分野を考えていく。先ほど領事移住部長よりご説明申し上げました通り、現在の発給期間は6日ですけれども、これをさらに短くできる旅券をつくれるかどうかということが一つ。それから、例えば旅券の個人情報が変更された場合、旅券を変えたり、手直しをしたりする作業をしてございますけれども、そのときにつきましては、安い手数料、実費を単位としてそういうことをさせていただきたい。ただし、旅券は新しいものに変えていただきたいということです。この理由は、例えば結婚して姓を変えられたときに、今まで手書きで旅券の中に新しい姓あるいは古い姓を書いていたのですが、入国管理が最近厳しくなりましたのでとがめられることが多くなったということもございまして、旅券の個人的な情報は、すべて旅券の一番大きなところに記していただくほうが良いと考えたということでございます。
 それから、発給管理分野の検討事項ですけれども、これは、旅券法の中にない部分、今まで想定していなかったような事態が出てきて、これに対して今の旅券法で手当てできない部分を新しくつくらなければいけないと考えた部分でございます。一つは、旅券の場合は、なくされたりしたときに、新しく旅券を再発給することをしなければ、前のなくした旅券が効力を失わなかったということがございます。これは、旅券発給という行政処分があって、それを化体するのが旅券の冊子ですが、この物をなくしても効力自体は失わないという発想が昔からあったのだと思います。
 今まではそれでよろしかったのですけれども、旅券は取りたくないけど、なくした旅券は早く効力をなくしてくださいという国民の声が最近多数寄せられてございます。こういうことを考えますと、旅券を新しく出すことよりも、まず取り消すことが重要ではないかと考えましたものですから、紛失の届出があったときに取り消す措置を設けたいと考えた次第です。
 あわせて、こうしますと、処分がそこで断絶しますので、再発給制度を見直して、廃止する方向で考えていきたいと思います。
 それから、旅券を所持することが適当でないと考えられる人がいます。例えば、犯罪を犯して逮捕を逃れるために海外に逃げている人とか、そういう人には返納してくださいという手続をとって、それを拒んだときに失効させるという非常に間接的な手続をとっていますが、これは非常に時間がかかり、機を免する場合がある。
 さらに、他人に成り代わって旅券を取った人に対して、その旅券はおかしいから返しなさいと要求したいのですが、実は、実際に旅券を取った人間はどこのだれだかわからない。名前をかたられた人に返しなさいと言っても無意味ですから、まずはその旅券の効力を失わせるために、返納という手続によらずして効力を失わせる制度ができないかということを考えました。ですから、今までの体制にはない仕組みを、今の旅券犯罪を的確に抑えていくために必要な制度ということでございます。
 それから、旅券法には罰則がございまして、これにつきましては少し厳しくする必要があると考えています。特に営利目的の場合での罰則を厳しくしたいと考えてございます。今は3年以下、30万円以下の罰金ですけれども、大体は執行猶予で終わりまして、実際に監獄には入らない。さらに、旅券の値段も、30万円であれば、またやってもペイするということがございます。こういう事情に鑑みて、抑止効果という点を高めるためにも、少し厳しくしていきたいと考えています。
 さらに、旅券法のシステムの中で、今の時代に合わなくなっているものとして、旅券法では、実際に旅券を交付しないと、つまり物理的に悪い人に旅券を手渡さないと旅券法で言う「不正取得」という犯罪は成立しないという点があります。これは何を意味するかと申しますと、大体、審査の過程を通じて不正取得であろうとの判断がなされていきますが、その場合でも、最後に旅券を交付しないと「不正取得」の罪は成立しない仕組みになっているということです。しかし、こうした犯罪が多発している現状では、渡す前に何とか旅券法で処置できないか、あるいは、警察に捕まえてもらえないか、わかっているのに旅券法で処罰できないのは不合理であるという意見が都道府県の事務所からも少なからず出てきております。この点で、不正取得が成立する前の措置、即ち未遂罪というものが旅券法にはございませんので、これを入れさせていただきたいと考えております。
 それから、偽変造旅券につきましては、刑法では、そういうものをつくったり、それを使ったりする罪はございますけれども、例えば仲買人としてそれを持っているような場合、正当な理由なくして持っている場合ですが、こういうことに対しては刑法の適用は微妙なところがございますので、旅券法でははっきりとそれを規定して行く必要があるのではないかと考えております。自分の旅券ではないもの、あるいは、正しくない旅券を持っていることについては、正当な理由がない限りしかるべき措置をとる必要が生じているということでございます。
 それから、今、世界では、紛失・盗難された旅券については、一般に失効させておりますが、そうした紛失・盗難旅券の情報につきましては、各国とも情報を交換し合うべきとの動きが高まっております。なぜかと申しますと、紛失・盗難旅券を悪用してだれかが他の国へ行くことがございますので、そういう情報があれば、出入国管理あるいはそういう悪い人の摘発に役に立つということだからです。このことは我が国にとっても有益なことと考えますので、こうした分野での国際協力に我が国としても協力することが大切と考え、他の国の関係機関、出入国事務所、関係国際機関に、必要な場合は紛失・盗難旅券の情報を提供できることを規定できればと考えてございます。
 また、在外で発給する旅券は東京で集中作成したいと思います。理由は、旅券上の偽変造対策を高度化するためでございます。
 更に、旅券上に生体情報を搭載することを検討していきたいと考えております。これは旅券の偽変造対策上の有効な措置として国際的に注目され、検討が行われているものです。このためには、指紋、虹彩、顔など幾つか候補がございますけれども、法律の規定を必要とするかもしれませんので、旅券法の中で、もしそれを取り込んでいくのであれば、どの生体情報にするかどうかを考えていく必要があるということでございます。

熊谷会長 ありがとうございました。
 これまでに、旅券事務の現状と課題、旅券法改正の問題全般にわたってご説明を受けたわけですけれども、旅券問題につきましては、どのようなことからでも結構でございますから、ご意見、ご質問がある方、ぜひご発言をお願いしたいと思います。
 今ご説明がありましたように、いろいろな問題を含んでいると思いますし、国民からすれば、早く、サービスは十分にいろいろやってもらいたいということがあるのでしょうけれども、一方においては、今のような犯罪に関することもありまして、その辺の兼ね合いが難しいのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

谷野委員 旅券の作成にドイツの倍の費用がかかるということですが、作成にかかる費用を安くする余地はまだありますか。

重枝課長 確かに日本の旅券はちょっと高いのではとのご意見をいただくことがございます。お安くなれば、それは喜んでいただけるのでしょうが、旅券の値段、つまり費用構成は各国でそれぞれ違っておりまして、日本の場合は発給に要する費用のほかに、例えば邦人保護に関係する経費を組み込む、いわゆる保険料みたいなものを旅券の有効期間にわたり積み立てた形で出来上がっています。この点例えばドイツの場合は確かに実費ですが、それ以外に必要があった場合は別途取るということをやっている可能性がありますし、また、イタリアの場合は発給費用とは別に海外に出かけるたびに毎年手数料を徴収するという形を取っているようです。日本の場合は、旅券の経費の中に邦人保護的な経費を予め入れ込んでつくられております。その意味で事前に関係経費を入れ込むか、あとで別途徴収するか等、国によってまちまちではないかと考えます。

横山委員 特別会計になっているわけではないですよね。

小野部長 特別会計ではありません。

横山委員 考え方の問題だという気がしますが。

櫻井委員 ということは、そうはいっても、普通は税金を払っているわけですから、行政サービスはただでやることが基本だろうと思います。そうすると、特に受益者負担というか、それを、昔、旅券制度が始まってからそういう制度になっているということなのでしょうか。

重枝課長 いわゆる事件・事故等にかかわる邦人保護の数がどれくらい増えてきたか、そして、そのためにどの位の体制が必要になっているか等にもよると思います。明治時代であれば、海外に行く人は今日に比べてはるかに少なかったでしょうが、その後の時代の流れの中で海外へ行くことが一般的となり、渡航者が増加するという状況が見られるという、そうした中で勘案してやっていたと思いますけれども、今の日本の場合は、税金は基本的には国民全般に裨益する形で使うものではないでしょうか。他方、手数料といったものについては、その手数料によって得るサービスの対価ということで、それを得る人が払っていくとの考え方ではないかと思います。ですから、税金で賄うことがいいのか、応益負担で賄うのがいいかということはあるのですけれども、旅券の場合は応益負担という考え方が取られています。それを希望し、サービスを必要とされる方について、そのサービス関係に伴う邦人保護ということで‥‥。

谷野委員 邦人保護ということですが、そういう極めて限定的な人が裨益する事項について、そのための経費を国民全部にかぶせるというのは、おかしいんじゃないのかな。それがゆえに旅券の価格が高くなっているとすれば、何かすっきりしない。

重枝課長 保護の形態等はケース・バイ・ケースで異なりますので一律には申し上げられませんが、そうした可能性もあるとは思います。

谷野委員 でしょう。そうすると、邦人保護にかかる費用として何がありますか、不特定多数の国民で負担すべきものは。

重枝課長 いわゆる基盤的な経費、邦人保護活動に当たるような人の通信‥‥。

谷野委員 それだって外務省の通常の通信手段でほぼ賄えますよね。それ以上に必要ならば、別途予算措置をとればよい。

大来委員 邦人保護の費用と、旅券の収入マイナス実費とは完全に見合うという計算がされているんですか。

重枝課長 邦人保護関係経費という形ですけれども、大体合う形になっています。設備経費、通信等。

大来委員 先ほどのご質問にあったように、ほかの経費とごっちゃになっていて線が引けないものがありますよね。例えば、領事部の人が邦人保護の仕事をするかたわら他の仕事もするというと、その人件費は、どこからどこまでが邦人保護で、どこからどこまでが領事部の仕事か、そういう線は引けないので、完全な対応はつけられないのではないかと思いますが。

重枝課長 そうした若干微妙なところもありますが、基本的な線引きはなされております。その点は実は都道府県の場合も同じでございまして、都道府県のほうも、事務をやるときは、人、設備、通信の経費を要しますが、例えば職員についても、その人がいるからその給料全部が旅券の手数料で賄っているというわけではなくて、その人が何時間その仕事をしたとか、どのくらい関与したとか。つまり、1人ですけれども、 0.3人分の関与といった仕切をしています。

仮野委員 犯罪防止のために抑止効果を高めることを考えて、手当てをすること、そしてまた、罰則を強化するということは、これだけいろいろな犯罪が多様化して、また、犯罪に旅券が使われている時代なので、ある程度必要だと私は思っております。そしてまた、旅券をさらに現代化していくことも必要だろうと思いますし、本人識別のノウハウを新しくすることも必要だろうと思います。
 今の話と関連してくるのですが、もし、そういうふうにどんどん新しい旅券にしていくと、料金はまた高くなるんですか。その関連で、今初めて、邦人保護費用が含まれていることを知ったのですが、今、国に回ってくるものが10年の旅券で1万 3,000円、5年のもので 8,000円。これに邦人保護の経費が入っているのでしょうが、これは具体的にどのくらい含まれていますか。
 それから、最初の質問に戻りますが、もし、ありうべき旅券にしていくと、旅券手数料は高くなるんですか。

重枝課長 邦人保護費用と言われている、いわゆる間接経費の構成は国についてのみありまして、それは1万円です。内訳は、旅券の冊子が 1,000円、いろいろな通信代や設備費等々で使うものが 2,000円。残りの1万円は10年分で、1年間 1,000円。その 1,000円がそういった邦人保護関係のための諸経費にあてられます。1年で 1,000円ですから、1月当たり約83円となります。
 もう一つの御質問ですが、偽変造防止のためのバイオメトリクスの導入とかいった形で旅券を高度化していった場合、将来、手数料がまた高くなるのかというお話についてですけれども、私どもとしては、旅券作成機械の効率化、近代化、事務の効率化を通じて、値段自体は全体的に抑えていきたいとは考えております。ただし、どうしようもない費用が出てきます。それはいわゆる実費でございまして、仮に顔の情報といったバイオメトリクスを入れるときに、情報を入れる記録媒体によっては、1人に 1,000円か 2,000円ぐらい、どうしてもかからざるを得ない。そういったどうしても必要な部分については、国民のご理解をいただかざるを得ないと考えております。
 こうした措置は、本来やりたいと思うわけではございませんけれども、そうした措置がないが故に、国民の方々が海外に行かれる際に出入国手続きなどで煩雑なチェック受けたり、場合によっては、そういった本人確認情報を備えていない旅券を持つ人を、飛行機に搭乗させると入国先の関係当局によって航空会社が罰金等の制裁を課せられるというので、搭乗を拒まれるといった事態が仮にも見られるようになってはいけないと考えております。今日の国際社会はテロ対策、不法移民対策等のために出入国管理の強化や渡航文書の偽変造対策に大きな関心を有しております。そのようなことがございますので、国民の方にご理解をいただいて、その費用についてもぎりぎりのところで出てくる可能性があります。こうしたことは今の段階から、その可能性について正直に申し上げておく方がよいと考えています。

熊谷会長 これは基本的には全部実費で賄うという考え方ですか。

重枝課長 そうしたいと思っています。

熊谷会長 これからもですし、今も、実費で大体賄われるような性格のものですか。

重枝課長 基本はそうなります。例えば、違う分野の話で申し訳ないですけれども、特許料は、実費という概念ではなく、政策的観点から決められた経費と聞いておりますし、裁判の記録閲覧費も、国民に裁判を受ける公正な権利を保障するための見地から決められている由です。いわゆる手数料は、いろいろな角度からの理由づけがあると思いますけれども、会長がおっしゃったとおり、旅券については、理由づけは直接費、間接費の区別はありますが、基本は実費的なもと考えています。

櫻井委員 ちょっと説明が苦しいのではないでしょうか。
 旅券手数料というものは、旅券法に規定がありましたか。

重枝課長 ございます。法律規定事項になっています。

櫻井委員 ここに「制定50年」と書いてありますけれども、50年前から基本的にそういう考え方でやってきたと理解してよろしいのでしょうか。

重枝課長 そのように考えています。

櫻井委員 邦人保護的経費として計上してきたというのは、恐らく、説明としては、昔は確かに外国に行くことは非常に珍しかったし、かなり特権的な行為であったという前提があって、したがって、在外に行ったときに、特別な行政サービスを得る可能性があるというようなことで、わりあい時代適合的な説明だったのかなと思います。
 ただ、今日のご報告でもそうでしたが、国民総渡航時代ということをうたっておられるわけで、ということになりますと、理論的には理屈はまた別に考える余地はあると思いますが、基本的には、だれでも、いつでも、外国に行かれるというイメージで議論されておられて、そうだとすると、特別の料金ですよ、受益者負担的な特権的なものだから払ってねという説明は、やや厳しいかなという感じがします。理屈としては、必ずしも実費ベースの積み上げというだけではなくて、プラスアルファのそういう政策的な部分で料金設定することはないではないと思いますけれども、そこら辺は時代に合う形で説明を変えるといいますか、きちんと説明がつくものしか取ってはいけないという前提ですけれども、そこは少し現代的に考え直さないと、もしそれで説明がつかないのであれば、やはり値下げするのが筋だということにならざるを得ないのではないかと思いますが。

仮野委員 それに関連して、たしか邦人保護に関して、どうしてもお金がない場合は、国家が立て替えておくという制度がありましたよね。正確な名前は忘れましたが。国援法ですか。それとの関連はどうなっていますか。例えば邦人保護で入った1万円が国援法にも回っているのか、そこはどうなっていますか。

重枝課長 それは別立てです。それは別途法律に基づいておりますので。

仮野委員 国援法は正確には何と言うんですか。

重枝課長 「国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律」です。帰国する者について、国の援助を必要とする場合に関して領事官の職務規定といったものです。お金がないときは、帰国費をお貸しする。ただし、そのお金はちゃんと返していただかないと、次は旅券がスムーズには出ないかもしれませんよということが旅券法の中にございますので、その意味での連携はございますが、経費の基本的立て方としては別でございます。

小野部長 旅券の手数料については、今説明した基本的な考え方で今後とも行くのか、今後、新しい旅券とか、旅券法の改正があるので、新しい考え方に基づいて手数料も決めていくというご議論があり得ると思います。
 もう一つは、都道府県は 2,000円で一律やっているわけですが、都道府県は都道府県で、県によっては足りないと言ってきているところもございます。ますます人件費その他がかかってきているものですから、それに対しては、都道府県は都道府県として、都道府県ベースで必要経費は上乗せしていくという考え方もあります。

大来委員 私もこの1万 5,000円というのは、実際に自分で払ったときには高いなと思ったことがあります。こういうものの手数料は、私は昔、経済企画庁の物価局にいたときに、住民票とか戸籍抄本の手数料というものがありまして、それを自治省が値上げしたいと言ってきて、その根拠は何かといったら積算が出てきたのですけれども、上げるのは高すぎるのではないかと企画庁のほうで言いましたら、自治省が引っ込めてしまったということがありました。だから、こういうものはいくらにでもできる性格のものではないかと思います。
 ただ、他方で、紛失・盗難旅券を原因とする旅券の不正使用が非常に多いというご説明があったことを考えると、資料のパンフレットで、なくさないようにと女優が訴えているものがありましたけれども、あれはあまり効かないと思います。一番効くのは、やはりなくしたときのペナルティが高いということがいいと思いますので、ある程度値段は高いほうが、盗難を防ごうというインセンティブになるのではないかと思います。
 ただ、初回は、1万 5,000円というのはちょっと高いかなと思います。だから、なくしたときの再発行の値段を高くするとか、何かの方法がないのかなという気がしております。
 今、再発行の値段はどうなのでしょうか。

重枝課長 8割掛けで発給しています。

大来委員 10割以上にするとかね。

重枝課長 今度の旅券法の改正での、方向性としては、再発給の形はなくしたいと考えていまして、すべて新しく出すことになりますので、1年目になくした方はまた新しく正式に取らなければいけなくなります。これはある意味でのペナルティかもしれません。本当はそういう形では考えたくはないのですけれども、旅券をなくしました、盗られましたというケースが、毎日毎日電報で世界各地から飛んできますので。日本国内での紛失・盗難件数もっと多いのですが、紛失・盗難の届出をされない方も沢山いるようですので、実際の紛失・盗難された旅券の数はもっともっと多いと見ています。

大来委員 邦人保護の経費という理屈を使うと、再発行のときに8割とか9割とかの高い割合で取ることの説明が難しくなる可能性があると思います。ですから、その辺の理屈づけも含めて、新しい方式で、なくしたら罰金という方向にすることも一案ではないかという気がしました。

熊谷会長 旅券の手数料の問題につきましては、いろいろと今議論が出ているので、その辺の詰めをしていただきまして、いわばリーズナブルであれば、それはそれでいいと思いますが、今のようないろいろなご意見を、事務当局で、新しい旅券法改正も考えられる中での検討ということにしていただきたいと思います。
 それでは、サービスの面で何かご意見がございますか。それからもう一つは、今ご説明があった中で、旅券事務の一部を市町村に委託すべきだという意見があるそうですが、それが本当にサービスとしていいのかどうか。便利になるからということだろうとは思いますが。それから、もっと早くすべきなのか、6日間というのは世界的に見ても早いほうだから、そのくらいは当然だろうということなのか。
 サービス面について、何かご意見がございますか。

横山委員 ご説明の一番最後のページで、管理分野での検討事項の中に、在外旅券の集中作成化に関する規定ということがございますが、これをすると、再発行してもらうときには今よりも時間がかかるということですか。集中作成を東京でされるとなると。

重枝課長 時間はかかります。

横山委員 それはちょっと逆行ではないかと思いますが。

重枝課長 集中作成について申し上げますと、日本は海外に 217の総領事館、大使館がございます。その中で、機械で旅券をつくれるところは30か所で、それ以外の 187か所はタイプライターで作るという、いわば手作りでやっているわけでございます。その理由は、予算の制約と発給数が少ないところにまで作成機械を置くことの効率性に関する会計検査院の指摘等があったためと承知しております。旅券の集中作成に関しては、こうした事情を踏まえた上での対応となります。更にもう一つ重要なことは、高度な偽変造対策をほどこした旅券は、集約的な形でつくるほど技術が高度なものを期待できるということです。集中作成はこのようにコスト面と技術面で大きな利点を有しています。
 更に、今、アメリカが中心になっていますけれども、機械でつくった旅券を持ってきてください。そうでないと、査証免除の措置がなしになりますよという動きが出てきています。これは国民の方からすると非常に不便なことになります。その不便をなくするために機械でつくるような形にしたいのですが、他方、高い機械を 217公館に置くことはとてもできませんので、徐々に世界的な流れになりつつあると思われますが、旅券は本国で作成して、現地公館に送付して交付させる方式を我が国も考えていかなければならない時代が来ていると考えます。他方、それについてはやはり日数はかかります。日数については、ひとえに郵便事情と、現地に届いてからの連絡、手渡しに要する日にちとなります。既にアメリカは集中作成を導入してきてございまして、2週間から3週間と言ってます。

小野部長 次世代旅券の国内集中作成体制については、省内で議論しているところでございます。ちょっと複雑なのですが、今、課長から説明したところは、外務本省にホストコンピュータがあって、そこで基本的に全ての旅券を作成することになります。都道府県との関係も今後の関係如何では、申請と交付は都道府県で受け付けますけれども、実際の作成は本省で集中作成を行う可能性もあります。
 他方、在外公館においては、緊急に旅券を必要とする場合、例えば盗難に遭った人とか、そういう人たちの便宜を考える必要があります。つまり、本省で作成するA旅券は、申請から交付まで2~3週間かかるので、緊急に必要とする人のためにB旅券を発給するとのアイデアが出てきています。旅券のタイプとして、A旅券とB旅券という二種類になるわけです。より高度な偽変造技術を施したものはA旅券として時間をかけて作成し郵送するわけですが、それを待っていられない人の便宜のためにB旅券をつくるとの考えです。このB旅券についても、そう簡単に偽変造ができないようなものにする必要はあるわけで、果たしてかかる二種類の旅券をつくることの是非も慎重に検討しなくてはなりません。B旅券のほうが偽変造がしやすいのであれば、犯罪はそこを狙ってくる可能性があるわけです。ですから、A旅券でも大丈夫だと言っておきながら、他方でB旅券をつくることが、本当に犯罪防止になるのかということは慎重に検討しなければいけないと思っております。
 サービスと犯罪防止を如何に両立させるかという問題ですので、ここのところもご議論いただきたいと思います。

谷野委員 在外でパスポートをなくしたと駆け込んでくる人は、私も経験があるけど、それは本国で会議が待っているとか、次の予定が待っているという人がほとんどですよね。せいぜい待てて一両日。それが今の話だと、テロ対策のために、本省から新しい旅券が届くのに2週間ですか。

重枝課長 そういう人のためには、即日或いはそれに近い時間でB旅券を発給しますということです。

谷野委員 両方の旅券が必要だと思います。いずれにせよ1週間も2週間も待っておられる人はほとんどいないと思いますよ。在外でパスポートをなくした人は。

熊谷会長 現在はどうなっているんでしたかね。

重枝課長 各館のおかれた状況によって差異がありますが、総じて邦人の方の事情に応じて対応しており、早ければ2~3日、場合によっては即日で出しています。普通は1週間とか10日位かかるのですが、そこは個別の事情なども十分加味して努力しています。こうした状況ではありますが、つくる旅券が、例えば手作りの旅券が多いものですから、邦人の方がそれを持って動こうとしたときに、今後不便が出ますよということになりつつある中で、それをどういう形で解決するかということで出てきたものが今のアイデアです。

小野部長 B旅券の有効期間は何年でしたか。

重枝課長 有効期間は、まさに検討中の部分ですが、例えば1年とかを考えています。緊急の用とか急な事情が生じた場合に利用していただく、当座の便宜としてお使いいただくための旅券となるわけです。例えば急いで本国に帰る必要が生じた方、住所が違う国にあって旅の途中で旅券をなくされた方等、必要とされる事情にはいろいろな形態があると思います。

横山委員 確かに、日本だけでは決められないかもしれませんね。旅券に外国のビザがスタンプされているとかいうケースもありますから。日本だけではだめかもしれませんが、やはり翌日ぐらいには出ないと、実際に困る人がものすごく出るのではないでしょうか。

谷野委員 ものすごく出ると思う。

小野部長 アメリカはどうしていますか。

重枝課長 アメリカは、やはり暫定旅券制度をつくっておりまして、緊急事情を有する人には暫定旅券を出すシステムです。
 帰国のための渡航書もありますが、これはもう本来本国に帰ることのみを目的としておりますし、またこれは別途使い道がございまして、例えば旅券を使える資格がなくなった人のために使わせていただくことになると考えています。
 アメリカは暫定旅券制度で、本当の旅券は本国で集中作成しています。高度の技術が入ったものをつくります、お待ちください、2~3週間かかります。但し、お急ぎのときは暫定旅券を発給します、それは1年有効でマルチに使えます。その際に手数料を、例えば1万円払えば、その払った手数料で正式の旅券もつくられますので、後で交換してくださいといったシステムです。日本もそうした方式があり得るのかなと考えていますが、他方、そうなると、あるいは、極めて安易に、例えば直前になって旅券が見つからないので暫定旅券を欲しいといった事例が増えて、乱発されることになるのではないかという懸念も部内の議論で出ました。運用に難しいところがあるかなとも思います。

櫻井委員 B旅券のコンセプトがいまひとつわからないのですけれども、あくまでもA旅券が正式のもので、B旅券も正式だけれども、少しだけ期限が短いとか、そういうイメージですか。

重枝課長 そうです。

櫻井委員 暫定旅券というものでもないわけですか。仮のものであれば、とりあえず当面の用が足せれば問題がないわけですし、本来持っていることが例外的であるようなものだということだとすると、1年というと随分長い感じがしますし、今、マルチとおっしゃったのですが、基本的にA旅券と同じようにどこにでも行けるというのも、ちょっとどうかなという気もします。行く場所は決まっているわけですよね。だからこそ緊急性があるわけで、同じ位置付けで認める必要があるのだろうかと思います。
 要するに、あくまでも暫定で、本来はA旅券を取るべきものだとすると、3か月後とか、もしくは帰国してからとか、条件の付け方は考えどころですけれども、それと引き換えにA旅券と交換してもらうという仕組みにすることが一つかなと思いました。

重枝課長 貴重なご意見をありがとうございます。

小澤検事 残存期間がある程度ないと入国できないような場合があるので、その関係もあって1年としているのだと思います。だから、1年は長いかもしれませんけれども、6か月程度は最低限は要ると思います。

横山委員 日本だけで決められる問題ではないですね。

谷野委員 先ほどお話があったように、そういう新しい旅券を造ろうという背景にはテロ対策があるわけでしょう。さっきのバイオメトリクスとかいろいろ埋め込んだ新しい旅券になると、発給までに更に時間がかかる。それは日本だけの問題ではなくて、新しい旅券の話は、アメリカ主導の動きらしいけど、G8の場などで知恵を出し合って、小野部長が言われるような両用の旅券をつくるのか、日本は日本の知恵を出すのか。しかし、国際的に、日本は二つの旅券を発給していることが認知されなければいけないですね。G8がいいのか、ICAOがいいのか、国際的な場で少し議論したらよい。
 今、横山委員が指摘されたような問題点は、日本だけの問題ではなくて、アメリカも同じ問題になるわけですからね。

重枝課長 そういう問題を抱えております。ただ、出入国にものすごく厳しくなったアメリカが、まだそういう暫定旅券という形でサービスを図っているところがなかなか切ないところではあるのですが。

横山委員 基本はやはり、不便を過度にはかけない。テロ対策とか何かである程度の不便は忍ばなければならないという面はあるとは思いますが、やはり基本は、なるべく不便はかけないものにすべきでしょう。これだけたくさんの人が外国へ行っているわけですから、海外で旅券を盗まれた、紛失したというケースはこれからもどんどん増えるでしょうから、そういう人たちが途方にくれないで済むようなことは、やはりお考えいただかないといけないと思います。

仮野委員 先ほど熊谷会長からお話があった、市町村での発給の話ですけれども、私も非常に関心を持っております。そこで、私なりの結論は持っているのですが、逆にまずお伺いしますが、市町村自体から、「うちもやりたい」という声は挙がっているのでしょうか。それが1点。
 それから、いわゆる一般国民から、現在、旅券の発給所は全国に 319か所かあるということでしたが、「それでは足りない」という声が外務省には届いていますか。

重枝課長 市町村から、旅券事務に参画したいという声はあります。ただ、非常に例外的です。構造特区の関係である市から旅券事務をやってみたい、住民サービスになるだろうからとの要望もありました。それは1か所だけでしたのですが。
 この事項については、昨年1年かけて、東北から鹿児島まで、人口規模を異にする約30の市町村を訪ねて話を伺いました。先方側の意見は、既に沢山の仕事をかかえており、わざわざこれ以上負担がかかる仕事は望まない、旅券事務は本来は国の事務であって、地域住民に対する事務とは直接関係ないのではないか、仮に、どうしてもやるということになるのであれば、人、金、設備の手当をきちんとすべき、国は仕事は回すけどお金はあまり回してくれないというようなことでした。
 それから、一般国民の方々からは、市町村でやってほしいという声は寡聞にして殆どお聞きしたことはありません。自治体の方々の話によれば、パスポートの仕事は都道府県がやる仕事だという意識が住民の中に定着している感があり、近くの市町村でといった声は特になかったようです。むしろ、住民の方々の声としては、例えば日曜日にパスポートを取りにいけないのかとか、勤めの帰りにパスポートの申請はできないのかという要望が多いとのことでした。その他にも、パスポートをもっと早く手に入れることはできないかという声もあるとお聞きしましたが、市町村でなければだめだといったような話は特段なかったように思います。

仮野委員 一般国民からの声がないというのは、たまたま外務省が聞いていないだけかもしれないけど、増やしてほしいという声はなんでしょうね。
 そうなると、市町村に法定受託事務を押しつけることになるから、行政的にはかえって混乱が起きるような気がします。私は要らないのではないかと思います。
 現在の319か所を少し拡充すれば間に合うような話だし、いわゆるパスポート管理の面からも、山の中の2,000人ぐらいの村にそんなものを任せられるわけがない。市町村にやらせることは無理があるような気がします。今、そこまで不便を感じているということは、国民もないのではないでしょうか。つまり、319か所に出かけていって手続きをすることこと自体、今は交通の便が良くなっているわけですから、いいのではないかという感じがします。
 ただし、今の話にあった、窓口時間の延長や日曜交付はどんどん進めてほしい。もちろんこれは都道府県の判断になるのでしょうけれども。それで十分なような気がします。
 私の考えは以上です。

矢崎委員 さっきの旅券の再発行ですが、私ども国際シンポジウムでたくさんの人が行って、ホテルで荷物が盗難に遭って、パスポートも一緒ということが多いです。ですから、ぜひこのイメージ図の案を具体化していただきたいと思います。
 それから、皆さん、パスポートが国のものであることを知らないんですね。自分のものだと思っていますので、盗られたときに、領事館に出向くと、さんざんこれは国のものだと言われて、始末書を取られて、ずっとお説教をくうということで、確かにわかるのですが、その対応を、外国で盗られて、気持ち的に落ち込んでいるところへさらにプッシュするようなことはしないよう、ぜひお願いしたいと多くの方々から言われました。
 もう一つは、交付の件ですが、交付するときには、やはり本人確認という大事なポイントがありますよね。あるいは、申請がオンラインになったときにも。ですから、今、車の免許証も、都内に警察の本署がたくさんありますが、例えば丸の内警察署とかごくごく限られています。新宿警察署にもあったのですが、予算の関係で、近いということで都庁でやるということがありますので、サービスとコストのバランスがあって、あまり必要ないサービスにコストをかけるとか、事務的な負担をかけるよりは、安全な設備でやったほうがよろしいのではないかと思います。
 それと、私自身、バイオメトリクスに大変興味持っています。これはもう映画の世界かと思っていたら、こういうものができてくるということで、コスト的にどうなのか。今までは透かしとかそういうものは、従来の技術の発展でいろいろ工夫されていますが、今度、バイオメトリクスを入れると全く違う次元の装置とか、そういうものが必要ですよね。そうしますと、10年旅券手数料のうち1万円の根拠も、私は今日初めて知ったのですが、なかなか理解しにくいところがあります。ですから、バイオメトリクスを導入したときにどうなるのかなということと、1万円の根拠が邦人保護とかそういうサービスで使われているというときに、これからサービスを充実するといったときに、こういう補償金で賄える部分と、そうでない部分がなかなか仕分けがしにくいところがありますね。ある人が、病気で倒れて、病院を紹介してどうこうといったときに、どこまでをそういうコストでカバーするのか。医療費は当然ご本人に払ってもらうのでしょうけど。
 外国へ行きますと、リスクがあって、いろいろなことが起りますから、1対1で払えない部分もあるので、全体的な保障制度も、一種の保険みたいなことでやる考えは、一般的な社会的コストとして、ある程度はカバーしてあげましょうと。税金で賄えない部分をこういう料金で取ることは十分理解できますが、それにしても、それがなぜ1万円なのかというところがあって、なぜ9,000円ではいけないのかとか、5,000円ではだめなのかとか、そういう説明がなかなか難しいかなという気がいたします。

小野部長 実は、旅券に限らず、証明事務とか戸籍、国籍事務も手数料をいただいています。この際、これらの手数料を含め全体を見直すことが必要ではないかと思っております。
 今、各委員からのコメントは大変参考になります。旅券法の罰則規定を強めるという話が先ほどありました。他方で、実際は旅券法上の措置はなかなかとりにくいというのが現実です。例えば、今回、人間の盾としてイラクに入っていかれる方に対して、国としてどこまで保護するかというときに、本当に危険なところへ入っていく人には、旅券返納命令をかけても法的には問題ないという考え方もあり得ます。あるいは、憲法上保障された渡航の自由に反するという議論もあるわけですが、行政上の措置として理論的には可能です。
 例えば精神的な障害を持っている方が一旦海外へ出ていろいろ問題を起こす場合、両親等家族は、旅券返納を命じてくださいと言ってくるのですけれども、実際にはそこまでやっていません。なかなか難しいところですけれども、世の中個人の人権とか、憲法上保障された問題についてはセンシティブになっている反面、行政的には海外で邦人自身の生命とか身体に危険が及ぶこともありますし、周りの社会に迷惑をかけるということから、旅券法上は、返納あるいは旅券法上の措置をとるべしとの考えもあります。この点、旅券法上の措置をもっと積極的にとるべきだというご意見などがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

谷野委員 それは、法律的にそこが、明確な規定がないということではなくて、規定はあるけれども、人権その他に遠慮して、法がきちんと執行されていないということですか。

重枝課長 お手元の別添資料の資料17に、旅券法関連条文がございます。それの2枚目に「返納」の項目がございます。そこの第19条1項4号、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」ということで、外務大臣または領事官は、期限をつけて旅券の名義人に旅券の返納を命ずることができるとあります。あえて申し上げれば、これが法律上の根拠規定になります。

小野部長 同項5号は如何。

重枝課長 5号の場合は、精神的に十分ではない方も含めて、故意でそういう行為をする方たちが渡航先で行った行為が、日本国民の一般的な信用または利益を著しく害する場合については、渡航を中止させるというものです。

小野部長 5号は今までにやったことがあるんですか。

重枝課長 5号については、実は現在その適用を検討すべきと思われる事例が見られています。これまではなかなか行わなかったことですが、旅券法の場合、例えば犯罪を犯した人について、どうしても必要と考えられる場合には制限を行ってきました。これはいわゆる刑事司法的な措置を旅券の分野から支援するということですが、他方、個人の活動の自由に対して、いわゆる旅券の秩序や日本国民の淳風美俗のためにやるということは、憲法上の権利ということも考慮すると、実際上なかなか難しいことです。他方、それで果たしていいのかというような事例も今日出てくるようになってきています。例えば、精神的になかなか難しい状態にある方が海外に出て、違う環境でご自分を傷つけたり、周りにいろいろな迷惑、損害を与える。そのときに、ご家族に連絡した場合、帰国させてくださいということもあれば、申し訳ないが、海外に行ってくれて正直ホッとしているという反応をいただく場合もあります。そうした境遇にある方を保護するときにどういう保護の仕方があるか。旅券を取り上げてしまえば、もう帰るしかないわけで、そういう扱いをすることが適切なのかどうかといったことです。こうしたところがわからなくて悩んでいるところです。

櫻井委員 今の返納命令の話と、共通している問題は発給制限のところですね。そこは同じように議論していいだろうと思いますが、前提として、ある人に精神的な問題があるとか、人間の盾になろうとしているとか、そういう情報は、外務省としてはどういうルートでキャッチして、どういう手続があって、どのように動いているのかがいまひとつよくわからないです。まして、次世代旅券みたいな形で電子化してしまいますと、さらに人間が介在することが減ってくることになりますので、そのあたりも展望を教えていただけるとありがたいのですが。

重枝課長 旅券の場合は、旅券それだけの措置ということはありません。つまり、旅券法上の措置を使って何の利益を実現するか。例えば邦人保護であれば、危ないから保護しなければいけない、その手段としては最早帰国させることしか選択肢がない。その場合に本人が帰国が嫌だということになったときには何があるかと考えた末に、保護の手段とし旅券を返納していただくといった形で使われます。そうした場合の、関係情報は、邦人保護を担当する部署から来るわけです。

櫻井委員 そこには、だれがどういう形で‥‥。親が言ってくるということですか。

重枝課長 親にも連絡をしたりしていろいろやります。いろいろ手を尽くして説得したり、親元に連絡をしたが、本人はどうしても帰らないし、親御さんのほうも限界がありそうだという話に行きつきます。そうした場合に、邦人保護の措置として更に何が適当かということを考えなければならなくなるという次第です。

小野部長 あとは、在外公館から、具体的にこの日本人は無銭飲食の札付きで、ヨーロッパを転々としていてみんなに迷惑をかけて、借金を踏み倒して、今はどこかのホテルのロビーで寝泊まりしているという人が出たとしますね。そういう人たちを何とかしてくれと、その社会の別の邦人から苦情が来たり、あるいは、当該国の警察から、大使館で何とかしてくれという話が来るわけです。ところが、それに対して、まずは説得するわけですけれども、なかなか説得を聞かないとか、お金を貸してくれとか、いろいろなことで居すわろうとしている人が少なからずいます。そういう迷惑邦人に対して、一つには旅券法を有効な手段として考えられないか、返納を命ずるなり、失効させるなりということは如何でしょうか。

熊谷会長 検討事項の中に、旅券返納によらずに当該旅券の効力を迅速に取り消すことができるようにするとなっていますが、私の立場で言うのはあれですが、迅速に取り消すことができるようにすれば、もしそれができれば、そういう点はスピードを上げてできるようになると思います。しかし、そこの判断のところは難しいかもしれませんね。

重枝課長 おっしゃるとおりでございます。客観的にそれが適切かどうか、他のすべての手段を尽くしたのかどうか。仮にも安易に、事務上の負担を軽減するためにそういうことをしたということは決してないのですけれども、万が一にも誤解されるような形になってはいけないということだけを心配しています。そのために判断の客観性が非常に必要です。そこが、実は、迷惑をかけてくる邦人ではないのですけれども、精神的に不完全な形になってしまった邦人の場合、保護というところに問題がかかってくると思います。

谷野委員 私は法律の専門家でないけど、第19条1項4号の運用はよほど慎重であるべきだと思いますがね。あえて言えば、違憲っぽいにおいさえする。

中山委員 同じ考えです。ただ、旅券法にこういう条項があることが大変大事な点かもしれません。運用の面で、うかつに適用した場合、訴えられる可能性もあり、人権の問題と絡んできて非常に難しくなる面もあると思います。

谷野委員 この間、ある新聞でしたけど、欧米、特にヨーロッパの政府は、人間の盾の数は全然把握していないらしい。行きたいならどうぞと。日本はとにかく、一人ひとりの動静を追いかけて、ようこそご無事にお帰りになりました、国境のところまでお出迎えに行きますと。あそこまでやる必要があるのか。他方、自分の生命や財産を失う覚悟で行く人たちを止めることには、よほど慎重であるべきだと思う。
 他方、ヒトサマに迷惑をかけるとか、日本国民としての名誉を傷つけるとか、こういう人たちはどんどん取り締まったらいいと思います。本当にひどい連中がいますから。これは大変恥ずかしいことです。

小野部長 精神的な問題については、在外で、担当官は、仮に精神的にちょっと病んでいる人がいても、即座に判断が難しいと思います。
 矢崎委員はどのようにお考えでしょうか。

矢崎委員 それは非常に難しい問題で、例えば医師免許証がありますよね。これは、唯一この免許を持っていると人を傷つけても許されるという特別な免許証です。これは昔から、例えば目が見えない者と耳が聞こえない者とか、麻薬中毒患者、精神疾患は欠格条項の中に入っていたんです。それを今度撤廃して、麻薬中毒は医師の診断で出さない。精神疾患は、欠格条項から除かれたんです。ですから、今年の医師国家試験で、目が見えない方3名の受験があって、これは大変でした。免許をどうするか、試験問題をどうするかと。結局は、それだけの能力のある人は通しましょうと。すなわち、医師免許証の試験の直前に病気で失明したという人がいるわけです。そのときには、ちゃんとコンサルテーションを受けて、それで医師免許証は渡すということです。
 精神疾患に関しては、普通はわかりませんね。もう一つは、例えば精神疾患で入院させるときには、家族の申請だけではだめです。やはり第三者的な方でしっかり資格を持った人が診断して、客観的にという診断がないと、もちろん家族の同意も必要ですが、それだけではだめです。ですから、旅券の段階でそれをどう判定するかは極めて難しい。
 逆に、世の中で、例えば無差別殺傷事件があると大きく取り上げられますよね。それは、社会的に大きく取り上げられるのですが、精神疾患の方でそういう犯罪が犯せる方というのは、極めてまれです。それと同じようなことは、新宿の歌舞伎町や何かでしょっちゅう起こっているわけです。ただ、外国に行った場合には、薬をちゃんと飲んでいた人が、外国に行ったために予定が狂って薬を飲まなくなったとか、そういうケースがあり得るので、精神疾患と一括りで対策を立てることは、今の時代はなかなか難しくて、それは精神科の専門の方とか、そういう人とよくご相談して、具体的な方策を決められたほうがよろしいのではないかと思います。そういう可能性があるのではないかと思います。

中山委員 今のお話で、まず旅券法の改正は大変重要なことで、ぜひ進めていただければと思っています。
 先ほどのお話の中で、精神疾患を理由に取り消すことは非常に難しいだろうと思いますので、医師の正式な証明書を付ける等、そのようなことが運用面では必要になってくると思います。
 もう1点、現在、国際的なテログループが動いております。日本でも、いずれテログループに応ずる者の出現もあり得ると思いますので、テロ対策的な理由で、旅券と絡む問題を考えておいた方がいいのではないかと思います。この19条12項5号で読めるのか、どこかで読めればよろしいのですけれども。はっきりした形で入れてもらえたらと思います。
 話が前後してしまいますが、このホストコンピュータに生体情報を入れていくことは非常に大きな決断だと思います。これから議論になるのでしょうが、専門の方々のご意見を尊重し、進めていただけたらと思います。
 最後にもう1点、このようなパンフレットを出すことは大変いいことだと思っております。大変かわいい方ですし、ただ、矢崎委員がおっしゃられたように、公文書であるという言い方で、国のものですということを言っているのだと思いますが、もう少しはっきりと言わないと理解されないので、わかりやすい言葉ではっきり言いきったらいかがでしょうか。

谷野委員 もう時間がないのですけれども、これだけのメンバーが集まっておられるのだから、次回でもぜひご議論が必要だと思うのは、まさにバイオメトリクスの問題です。これは旅券自体が大きく変わることですし、その背景には、だれもチャレンジできないテロ対策、日本もこれに協力していくという国の大きな方針があるわけです。アメリカの強いリーダーシップから出ている話のようですけれども、それは別として、協力せざるを得ないと思います。
 ただ、そういうことを前提で申し上げた上で、どういう方法がいいのか、私は専門家ではないのでわかりませんが、例えば指紋は私は現役時代に経験があります。在日韓国人の指紋押捺制度をなくすということで、随分議論して、私自身は治安当局の方たちから随分御批判も受けたけれども、やはり指紋をとるというのは、治安ご当局の気持ちはわかるけど、非常に強い拒絶感がありますよね。これに対する拒絶感は日本社会でも非常に強い。犯罪人扱いをするのか、そういうところに感情的に結びつきやすい。だから、必要性は大いにわかるのですけれども、慎重に、例えば、特に野党はこういう問題をどのように考えるのか。それから、メディア。これを先ずは慎重に瀬踏みをされてはいかがでしょうか。幸い、これはまだ新聞種にはあまりなっていないけど、個人情報については随分議論が出てきていますね。進め方は、慎重になさらないと、やるべきことができなくなるかもしれないという心配があります。

横山委員 また返納の問題に返って恐縮ですけれども、やはり旅券法の返納命令を使って、おっしゃったような、身体・精神障害者の方とか、先ほど小野部長がおっしゃった何回も誘拐に遭った人を止めるとか、これは必要があってお使いになるのですけれども、ちょっと広すぎるのではないかと感じます。
 今、小野部長が例に挙げられた、何回も誘拐された人にパスポートを出さない形で、外国へ行くのはあきらめてもらったということですけれども、たまたまきっとどこかの工場の経営者か何かの方だろうと思いますが、例えば純粋にボランティアでいろいろなところへサービスに行くという人が何回もそういう目に遭って、まだ行きたいという方を止められるかという問題がございますので、この返納規定でそこまでいろいろなことをおやりになると、逆に今度は、外務省がその責任を全部背負わなければいけない形になって、それはそれでまた大変なことになると思いますし、法律的に言えば、それだけ広いディスクレションを与えることが本当にいいのかなという感じがあります。例えば身体障害者の方の問題、精神障害者の方の問題は、そのための特別な法律でコントロールしていくべきでしょう。犯罪者も、テロの問題も、それぞれそのための法律で対応していくというあれが必要ではないでしょうか。

櫻井委員 その点ですけれども、まさにおっしゃるとおりで、おっしゃったことは、精神障害者についてもそうですし、人間の盾になるような人に対してパターナリズムで救済するかどうかという話というのは、ちゃんと制度化して、あるいは、制度化したものを運用しようとするとものすごく大変なことで、正面突破ができない話ですよね。だから、私はむしろ、旅券の特殊性というか、外務行政の特殊性ということだと思いますが、旅券というものは、外国に行ってしまったときに、国と当該個人を結ぶ唯一の紐帯みたいなものです。行政に期待するのは、そういうところでうまく当該本人をキャッチできるわけですよね、情報を含めて。そうしたら、上手に行政指導する機会にしてほしいと思っています。
 そこら辺は状況を見ながら、私もちゃんと法律ができればいいと思いますが、それはできないので、その辺は落としどころを考えつつ、むしろ上手にやっていくことが当面の対策としては必要ではないだろうかと思っていまして、それは外務省には期待しているところです。

大来委員 この第19条1項4号については、使い方が難しいというのは、私も賛成です。
 同5号ですけれども、「信用又は利益を著しく害しているため」という場合に、精神病の場合も慎重にやらなければいけないことは、私もそう思います。ただ、先ほど小野部長が言われたような、現地の法律を犯しているようなこと、無銭飲食をしたら窃盗罪ですよね。そういう法律を犯していてもこの旅券法が発動できないとしたら、この五の書き方が抽象的で、一般的な、「信用又は利益を著しく害しているため」という書き方になっていますが、それをもうちょっと、「滞在先の法律に抵触するような行為等」とか、もう少し具体的にして、そのかわり遠慮なく発動できるように具体的な文章にして、そのことによって旅券法の働きを強めることはできないのかなと思いました。
 それから、さっきのB旅券については、かなり危惧というか、懐疑感を表明されましたけれども、パスポートコントロールで日本のB旅券は慎重にチェックしてくれと世界中に言うことによって、B旅券をもっと積極的に使う方向に進めないのかなとちょっと思いました。

熊谷会長 時間になってしまいました。
 旅券問題はまだまだ十分に議論しなければならない問題がいっぱいあるかと思いますが、本日はそういうことで、時間になりましたので、改めてまた次の機会にさらにいろいろお考えいただいて、疑問点、あるいは、こうすればいいのではないかということがあれば、またご提言いただくことにいたしまして、本日はこれにて散会させていただきます。
 どうもありがとうございました。



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