外務本省

日独フォーラム第21回合同会議における吉良外務副大臣講演

セッション3 成長する東アジアの挑戦:日独両国の見解と協調
11月7日(水曜日) 9:00~9:30
講演題名「我が国のアジア太平洋外交」

平成24年11月7日

1 講演

(1)冒頭・二国間関係

 本日は,講演する機会を頂き感謝申し上げます。
 本フォーラムの開催により,日独関係の発展に重要な役割を担ってこられた皆様の,長年のご尽力に敬意を表します。また,昨日,メルケル首相との面会を設定されるなど,今回のフォーラムの成功のためにドイツ政府が行われている協力に感謝します。

(2)アジア太平洋情勢全般 

  • このセッションの議題であるアジア太平洋が,世界の新たな重心になりつつあることは間違いありません。現在この地域には,世界の約70億人の人口のうち,約40億人が住んでいます。アジアの中間層は,現在の9.4億人から,2020年には20億人になるとも言われており,アジア太平洋が世界で占める比重は更に高まり,世界経済を牽引すると期待されます。
  • この意味で,世界的なパワーバランスが大きく変化しています。米国はアジア太平洋地域へのリバランシングを行っており,我が国はこれを歓迎しています。また,我が国としても,防衛大綱に基づき,動的防衛力の考え方の下,南西地域も含め,周辺海空域の安全保障や島嶼部における対応能力の充実などを図る防衛力の整備を進めております。
  • 急速に発展するアジア太平洋地域は,多くのチャンスをもたらす一方で,不安定かつ不確実な要素を孕んでいるのも事実です。この地域は,政治体制や経済の発展段階,民族などの多様性があり,さらに,安全保障観についても各国によって様々です。欧州は,過去20年,政治同盟の基礎とすべく,経済・通貨同盟の構築に努めてきました。アジアでも,地域諸国間の協力を築く努力が行われていますが,各国が急速な成長により国力を伸ばした結果,拡張主義的な対外政策を採る誘因が高まっており,各国間の利害対立も発生しがちになっています。また,アジア太平洋の各国は,世界経済や気候変動などの地球規摸の課題で,影響力を強めようとしています。
  • このような新たな事態に,どう対応すべきか。この点で,日独両国は,認識を共有していると考えます。本年2月,ヴェスターヴェレ外務大臣が適切に指摘されたとおり,現在我々は,新たなグローバルな問題を,より多くの新たなパートナーと共に解決せねばならなくなっています。そして,我が国も,これらの国々と,競合するのではなく,協力関係を築きたいと考えています。
    アジア太平洋地域にあっては,我が国は,アジア太平洋の繁栄と安定のための秩序形成と国際法に則ったルール作りを,地域諸国とともに行ってきました。例えば,自由な経済活動を支えるルール作りがその例です。我が国は高いレベルの経済連携を引き続き進め,このアジア太平洋地域の自由な21世紀型の貿易投資ルールの形成に向けて主導的に取り組みたいと考えています。特に,アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を目指し,国益の確保を大前提として,守るべきものは守りながら,TPP,日中韓FTA,東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を同時並行的に推進していきます。海上安全保障に関しては,EASやARF等の枠組みを発展させ,引き続き,海洋秩序の構築に貢献していく考えです。今月には,日本が提唱してきたAMF(ASEAN海洋フォーラム)拡大会合が開催されるなど,協力が進展しています。

(3)中国のプレゼンス増大と日本の対応

  • アジア太平洋の中でも,中国のめざましい発展はチャンスです。中国の国際社会と協調した形の成長は経済的機会をもたらすのみならず,中国が,地域でより大きな役割を果たす可能性を高めうるものです。
  • 一方で,中国と我が国を含む地域諸国との間では,海洋を巡る問題等で,緊張も生じがちです。このような現下の状況は,アジア太平洋地域,ひいては国際社会全体が,平和と繁栄を享受していく上で,今後数十年にわたる国際秩序を規定する非常に重要な時期であると考えています。現在の海洋をめぐる問題等は,中国が国際法に従い国際社会で責任ある安定的なプレイヤーになれるか否かの試金石になっていると言えましょう。
  • アジア太平洋の秩序を構築するためには,中国の全面的な参加が不可欠です。 現在,尖閣諸島をめぐり緊迫した事態が発生していますが,日本は,地域の責任あるプレイヤーとしてあくまでも冷静に対応します。日中関係は両国のいずれにとっても最も重要な二国間関係の一つであるのみならず,世界第二位・第三位の経済大国として,アジア太平洋地域及び世界の平和,安定,発展に対し大きな影響力を有し,厳粛な責任を負っているという事実を念頭に,戦略的互恵関係を一層深化させていくことが必要であると考えています。中国側に対しても,冷静に対応し,自制するよう求めていきたいと思います。
  • 日本は,地域の平和・安全保障・安定の礎である日米同盟を基軸としつつ,中国との関係を深化させ,地域における対話と協力を推進していきます。そのことが,アジア太平洋全体の協力関係の深化と秩序形成に大いに貢献するものと確信しています。この地域において,今後,領土や海域をめぐる様々な事態が発生することも考えられますが,国連憲章の理念に沿って,国際法に従い紛争を平和的に解決することが重要であるとの認識を地域諸国が共有することが重要であり,我が国は,そのための努力を続けます。

(4)ドイツへの期待 

  • 先月の玄葉外務大臣の仏英独訪問や,昨日まで行われていたASEM首脳会合などを通じ,我が国はドイツを含む欧州と一層緊密に対話を行っています。特にEUとの間では,基本的価値を共有するグローバルパートナーとして,包括的な関係強化を図るべく,経済連携協定及び政治分野等に関する国際約束の交渉を早期に開始することを重視しており,ドイツともこれまで以上に緊密に協力していきたいと思っています。
  • このように独との対話,協力を進めてきましたが,今後独には,東アジアの安全保障環境について,大きな関心を払って頂くことを期待申し上げたいと思います。すでに申し上げたとおり,アジア太平洋地域の安全保障環境は依然厳しく,拙速な政策変更等により,こうした環境を更に不安定化させることがないようご理解いただきたいと考えます。グローバル化が進む中,アジアと欧州の安全保障は密接不可分であり,この意味で,グローバルな問題に大きな責任を有する我が国と独を含む欧州は,世界の重要な成長センターであるアジア太平洋地域の秩序形成とルール作りから大きな影響を受けることを指摘したいと思います。
  • さらに,我々が共有する価値観の重要な柱である「法の支配」について言及したいと思います。例えば,現在,日米EUが中国のレアアースの輸出規制についてWTOに共同提訴していますが,WTO協定をはじめとする国際ルールの遵守や透明性の確保は,世界の貿易・投資の拡大を促し,新興国との間でもwin-winの関係を築くことになると考えます。
  • また,新興ドナーを中心に開発に携わる国が増えることについては,歓迎すべきことですが,新興ドナーによる援助が,これまで国際社会により実践されてきた援助実施の手続きやルール等に沿って行われることは,援助を受ける側の途上国に過剰な負担をかけないためにも重要になります。こうした点を踏まえ,新興援助国とどのように協力していくかなどについて日独は意見交換していくべきと考えます。
  • 先般の玄葉外務大臣のドイツ訪問に当たっては,玄葉大臣からヴェスターヴェレ外相に対し,アジア太平洋情勢につき現下の日中関係に関する我が国の立場を説明し,事態を平和的に,また国際法に基づいて処理する必要性について一致しました。また,アジア太平洋の地域情勢について,今後日独間の様々なレベルで頻繁に協議していくことでも一致した点は,深い意義のある成果でした。
  • 今回の自分(吉良副大臣)の訪独も,このような外相間の合意に基づく取組の一環です。また,政府間の協議に加え,政治,経済,マスコミ等各界の代表者が集う本フォーラムにおいてアジア太平洋情勢が議論されることは大変有意義であると考えます。本日の議論を通じ,有益なご意見を伺えることを大変楽しみにしております。

ご静聴ありがとうございました。


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