2008年8月
カメルーン共和国(ヤウンデ、ドゥアラ)(国際電話国番号237)
カメルーンはアフリカのミニアチュアと言われています。民族的にはスーダン系及びバントウー系の各部族など全部で約250部族が居住し、右を背景とする多くの異なった文化が存在し、地理・気候的には南部は熱帯雨林、西部は渓谷と火山、中部は高原、北部はサバンナあるいは砂漠地帯と多様性に富んでいます。季節は、乾季・中雨季・小雨季・大雨季に分かれます。高温、多湿な気候のため、マラリア以外にもウイルス、細菌、寄生虫等による感染症(下痢などの消化器感染症、急性呼吸器感染症、肝炎)が蔓延しています。またHIV/AIDSを含む性行為感染症が蔓延し、油を多く使う食生活から、糖尿病・高血圧患者が多いこと及び整備不良、乱暴な運転による交通事故の多発などが社会問題となっています。首都ヤウンデは標高800メートルの丘陵地帯で朝夕は冷え込むことがあり、また年間降水量は約1500ミリメートルで、アフリカの中では気候が比較的快適な都市の1つと言われています。商業都市ドゥアラは港湾都市で雨量も多く(年間降水量 約4000ミリメートル)、高温、多湿です。医療機関の水準は、先進国(欧米、パリ、ロンドンや日本)とは遙かに異なります。重症、急病時に備え、緊急移送可能な海外旅行傷害保険に必ず加入しておいて下さい。薬局にはフランス製の薬や抗マラリア薬、蛇毒血清等が取り揃えられており、24時間態勢で対応してくれる薬局もあります。また、首都ヤウンデにあるパスツール(Pasteur)研究所では、各種予防接種及び検査が可能です。
(1)マラリア:当地での健康管理にあたって特に注意したいのがマラリアです。ヤウンデ、ドゥアラを含むカメルーン全域において、マラリア感染の危険があります。国民の死亡原因のトップとしてあげられ、外来患者の50%、入院患者の23%、各家庭の医療費の50%を占めています。予防には、蚊に刺されないようにすることが重要です。マラリア原虫は雌のハマダラカによって媒介されるのですが、この蚊が活動するのは日没から夜明けまでなので、夜間の外出を避ける、長袖の服を着る、蚊帳、昆虫忌避剤、蚊取り線香を使用することなどで予防をすることができます。また、予防薬としては、アトバコン+プログアニル、メフロキン、ドキシサイクリン、プログアニル+クロロキンなどがあります。しかし、いずれも100%予防が可能なわけではなく、副作用もありますので注意が必要です。マラリアには、熱帯熱マラリア・三日熱マラリア・四日熱マラリア・卵形マラリアの4種類がありますが、当地では95%が熱帯熱マラリアです。これは、いかにはやく治療を開始するかが生死の分かれ目となり、5日目までに治療が開始されないと50%の確率で死亡するといわれています。マラリアによる死亡のほとんどは、迅速かつ正確な診断の欠如に因りますので、発熱時には、マラリア感染症の可能性を考え、早急に最寄りの病院、診療所を受診して下さい。また最近マラリア原虫は次から次に薬剤抵抗性を示しており、当地では最も安価な治療薬であるクロロキンが50%の症例で効かなくなっています。直接薬局に行くと、クロロキンを処方されることがありますからご注意ください。なお地元の公立病院で治療及び検査を受けた場合(外来のみで対処)、4万FCFA(10,000円相当)ほどかかると考えて下さい。
(2)腸チフス、パラチフス:チフス菌、パラチフスA菌に汚染された糞尿から食べ物や手指を介して感染する急性の感染症です。血液や便をとって病原体の存在を確認することで診断されます。症状は人によって様々ですが、1~2週間の潜伏期間ののち熱が階段状に上昇し高熱が続きます。全身倦怠から意欲のない顔貌になるのと熱の割に脈が速くならないのが特徴ですが、”腸チフス”といっても下痢や便秘などの腹部症状を伴うのは50%位だといわれています。回腸が冒されるため、治療と安静を怠ると腸出血や腸穿孔などの合併症をひきおこし、腸チフスでは30%くらいの人が死亡します。パラチフスは一般に症状は軽く亡くなる人はまずありません。腸チフスのみワクチンがあります。腸チフスの予防接種は日本ではできませんが、当地のパスツール研究所で接種可能です。
(3)A型肝炎:アフリカではサハラ以南全域で流行しています。戦前には日本でも一般的でしたが衛生状態の改善で激減し、A型肝炎に免疫のある日本人(HAV抗体を持っている人)は40歳未満ではほぼ0%ですので、注意が必要です。ウイルスは汚染された糞尿から、食べ物や手指を介して感染しますが、子供の頃に罹ればごく軽くてすみ、年をとればとるほど症状は重くなります。典型的な例では、感染後4週間ほどで嘔吐や全身倦怠を伴う38度をこえる急激な発熱を生じ、その2~3日後には黄疸が明らかになり尿は濃い琥珀色に、便は白っぽくなります。劇症化、慢性化はまれで普通は1~2ヶ月で肝機能ももとにもどります。治療は安静にしていることが第1で、美味しいものを食べてゴロゴロしていることです。有効なワクチンがありますから、流行地にいかれる方はぜひおすすめします。
(4)黄熱病:カメルーンは黄熱病予防接種証明書(イエローカード)がないと入国できません。予防効果はほぼ100%なので邦人が罹ることはまずありませんが、現地では流行しています。(カメルーンにおいては、2004年度から予防接種拡大計画に組み入れられ、幼児は無料で受けられるようになりました)ネッタイシマカによって媒介され、3~6日の潜伏期の後突然39度台の発熱と頭痛を生じます。10~20%の症例で、皮下・口腔・消化管などに出血がみられ、黒色の吐血があったり、肝臓や腎臓に障害がおよぶこともあります。特効薬はなく、免疫がない場合の死亡率は50%です。
(5)アメーバ赤痢:病原体は、赤痢アメーバという原虫です。アメーバシストは人の糞便中に排出し、汚染された生の野菜や果物、人の手指や水から感染するといわれていますが、原虫が直接相手の粘膜に進入する可能性もあり、性行為感染症として同性愛者に広がっていることが現在問題になっています。原虫は煮沸することで死滅します。潜伏期間はだいたい7~21日ですが、数週間ときには数年のこともあります。初期の症状は余りひどくないことが多く、下痢と腹部の不快感を感じる程度ですが、放っておくと便に血液が混ざり、テネスムスという排便しても便意がのこる症状を生じます(腸が空の状態になることを好むため)。自然によくなることはなく、ここで放置すると腸に潰瘍をつくり穴があいて腹膜炎をおこしたり、肝臓など他臓器に転移病巣を形成することがあり治療が難しくなります。治療にはメトロニダゾールを使いますが、副作用としてめまいや肝機能障害に注意してください。
(6)細菌性赤痢:小腸と大腸の両方をおかす急性の細菌性の病気で、これも糞便で汚染された食べ物や水から感染するといわれています。感染力は強く数十個から数百個のわずかな菌が体内に入っただけで発病するため集団発生の危険があります。潜伏期間は1~3日、下痢、発熱、吐き気とともに、典型的なものではアメーバ性赤痢と同様に、粘血便とテネスムスを生じます。治療は抗生物質(ニューキノロン薬もしくはフォスフォマイシン)の内服と水分補給を行います。適切な治療が行われれば2~3日で排菌は停止しますが、内服期間が短いと再排菌する可能性がありますので5日間は確実に抗生物質をのんでください。
(7)コレラ:糞便で汚染された食べ物や水から感染する小腸をおかす急性の細菌性の病気で、特に気温の高い熱帯の密集地に多く存在します。潜伏期間は数時間から3日、米のとぎ汁のような激しい水様性の下痢(便臭は余りなく生臭い様な臭い)を生じ、急速にひどい脱水状態となるため注意してください。ただ、正常な胃であれば少しぐらいのコレラ菌は殺してしまい典型的な症状をおこすことはないのですが、胃切除後や慢性胃炎などのため制酸剤などを飲んでいる人では、コレラ菌は十二指腸までいき大増殖する可能性があります。十分な水分補給ができないと亡くなることもあるので、コレラにかかったと思ったらとにかく水分補給を考えて下さい。(ひどい下痢の場合、迅速に大量に水分補給をおこなわなくてはいけません。体重の1割、すなわち50キログラムの人なら5~6リットルを3~5時間で補う必要があります。)予防のためのワクチンがあり、当地ではパスツール研究所で接種可能です。
(8)上気道炎:当地の気候が乾季、雨期に分かれていることから、極端にほこりっぽい時期や湿気の強い時期があり、ヤウンデなど都市部では自動車からの排気ガスの問題も加わり、日本に比べ副鼻腔炎、慢性及び急性気管支炎、感冒など呼吸器に関する病気にかかりやすくなっています。特に持病にアレルギー性鼻炎、喘息、慢性副鼻腔炎などの既往のある人、喫煙者は注意が必要です。うがいを心がけて下さい。
(9)ロアロア(マンゴフライ):マンゴフライとよばれるアブに摂取されたミクロフィラリアが、10日ほどで発育して感染幼虫となり、アブの下唇あたりに集まります。このアブにさされることで感染するのですが,この幼虫は皮下組織内を活発に移動し成長して4~6センチぐらいの成虫となり皮下や眼球結膜に痛み、かゆみ、むくみを生じます。治療は外科的に虫体を取り除き、ジエチルカルバマジンという駆虫剤を内服することが最も確実です。
(10)オンコセルカ症:ブユが刺入した皮膚の傷口からミクロフィラリアが体内に侵入し、成虫が皮下に寄生してクルミ大のこぶをつくります。皮膚にかゆみや色素異常、異常な肥厚や萎縮を生じることもあります。眼球近くにこぶができると、眼球内部にミクロフィラリアが移動して視力の低下から失明にいたることもあるため、河川盲(リバー・ブラインドネス)ともよばれています。治療には、イベルメクチンを用います。
(11)砂ノミ症:砂ノミは高温乾燥の環境を好みます。家畜の糞の散っているほこりっぽい道を歩いたときに、受精した雌が人に付き(足の裏の皮膚の裂け目や爪のまわりに多い)、皮膚の中に入り込み、次第に大きくなり、小さな豆粒くらいになります。局所はひどくかゆく、かくと化膿し、くずれて潰瘍になります。刺激がおこる前に切開しノミを取り出す必要がありますので、危険地では毎日足をよく注意して調べて下さい。砂ノミのいる地帯では、靴をはき、昆虫忌避薬をつけてノミを防ぎます。
(1)飲料水:水道水は濁っており、細菌、寄生虫、ウイルスで汚染されている可能性がありますので、必ず、濾水器を通した水を煮沸滅菌して飲用に供します。15分間の煮沸で十分です。ミネラルウォーターが市販されている場合はそれを用います。
(2)食べ物:
(a)果物、野菜:市場、スーパーマーケットなどで買う果物や野菜は細菌、寄生虫、ウイルスで汚染されていたり、殺虫剤が残っている可能性があります。前処理として、水道水で汚れを良く取り除くこと・消毒液(約4リットルの蒸留水に、5%のchlorineを含んだ家庭用漂白剤を小さじ1杯いれる。)に15分以上ひたすこと・蒸留水で良く洗い流すことを、おすすめします。しかし葉野菜、カリフラワー、ブロッコリーなどの表面のでこぼこしたものは完全に消毒することや消毒薬の除去が難しいので、生で食べるのはさけた方が無難です。
(b)肉及び魚貝類:まず、火が良く通っていることを確認して下さい。生や加熱不十分の肉は旋毛虫症・条虫症、生の魚介類は食中毒やA型肝炎、生の淡水魚は各種寄生虫症の原因となります。
(c)卵、乳製品:サルモネラ感染症(飼育飼料に病原菌が混入して、肉や卵が汚染される。)を予防するために、卵は、石けんと水で良く洗ってから殻を割って下さい。卵と一緒に調理されるものは、すべて火を通して下さい。乳製品は、低温殺菌されたものを購入されることをお薦めします。
(3)熱中症:高温多湿の環境で長時間働くと起きます。体内の余分な熱を放散することができないために生じる状態で、高体温、意識の混濁、筋肉のけいれんを伴います。対応が悪いと生命にかかわる危険もあります。脱水症状が原因で起こりますので、汗として身体から出る水分と塩分を、たびたび補い予防することが大切です。
(4)交通事故:外国人が亡くなる原因として多いのが、交通事故によるものです。交通ルールがほとんど守られない上に整備不全の車が多く、道路側の整備も整っていません。町中では、イエローキャブ(タクシー)の運転に注意してください。ウインカーをださずに急に停車・発進したり、道路側のドアーから突然人が降りてきます。郊外ではヤウンデ、ドゥアラ間の幹線道路での死亡事故が多く社会問題となっています。大事故は特に日没以降に多く、こちらがいくら気を付けても反対車線から無理な追い越しをしてくれば避けがたいものがありますので、日没以降の運転は可能な限り避けてください。
(1)赴任者に必要な予防接種
(2)現地の小児定期予防接種一覧
| 初回 | 2回目 | 3回目 | |
|---|---|---|---|
| BCG | 出生時 | ||
| ポリオ | 1ヶ月半 | 2ヶ月半 | 3ヶ月半 |
| DPT | 1ヶ月半 | 2ヶ月半 | 3ヶ月半 |
| MMR | 9ヶ月半 | ||
| 黄熱病 | 9ヶ月半 |
B型肝炎 実施予定
その他;ポリオは日本と同じく経口ワクチンを用いています。
(3)現地校に入学する際にワクチン接種証明の提出を求められることがあります。
当地では乳児健診は行われていません。
(1)診療所 Centre Medico-Social de la Cooperation Francaise
電話:2223-0139
概要:仏大使館付属の医療施設。乳幼児から大人まで対応。また救急疾患、切傷の縫合にも対応。診察には事前登録(登録料1人あたり30000FCFA)が必要。登録しておけば24時間対応。入院設備は無い。
(2)病院 Clinique Edou
電話:2220-1856
概要:私立病院のため値段は高いが、衛生管理は整っている。入院設備あり、外国人の利用が多い。内科、外科、小児科、産婦人科があり、乳幼児から大人まで対応。必要に応じて専門医を招請し、手術も可能。24時間救急対応可能。
(3)病院 Hopital Gyneco-Obstetrique et pediatrique Yaounde
電話:2221-2437(救急外来:2221-2431)
概要:中国政府により設立された産婦人科、小児科専門病院で入院設備あり。15歳以上の男性でも、救急外来での診察・処置は可能。公立病院のなかでは衛生管理等しっかりしている。外国人の利用も多い。乳幼児も対応可能。24時間救急対応可能。
(4)予防接種センター Centre Pasteur de Cameroun
電話:2223-1015
概要:各種検査、予防接種・抗毒素血清の接種が可能。ワクチン接種は通常午後1時~午後3時30分。緊急事態にも対応可能。ただし時間外の場合は、接種料金は通常料金の2倍となる。
(5)歯科医院 Cabinet Dentaire de L’Omnisports
電話:2221-2195
概要:衛生管理の整っている歯科医院。外国人の利用も多い。幼児から大人まで対応可能。受診の際は予約が必要。
(6)救急搬送 SAMU (Service d`Aide Medicale Urgente)
電話:19 携帯より119
概要:ヤウンデおよびドゥアラで24時間利用可能な救急車(有料)。
(1)病院 Hopital General de Douala
電話:9987-1424
概要:半官半民の総合病院。ヘリポートを有し脳外科手術も可能。カメルーン国内では最も信頼のおける病院の1つ。乳幼児も対応可能。24時間救急対応可能。
(2)診療所 Polyclinique Bonanjo
電話:3342-7983 (救急外来:3342-1780)
概要:IBISホテルの横にあり、外国人患者が多い。乳幼児も対応可能。24時間救急対応可能。
インターネット
世界保健機構(WHO)国別情報: http://www.who.int/countries/cmr/en/
(感染情報あり)
バイリンカルの国だといわれていますが、実際ヤウンデ及びドゥアラでは、仏語8割、英語2割と考えてください。(仏語はどこでも通じますが、英語の通じるところは少ない。)ただし、ほとんどの医師は英語でのコミュニケーションが可能です。