インドネシアの「生物多様性保全センター整備計画」ほか3件に対する無償資金協力について
平成16年7月26日
- わが国政府は、インドネシア共和国政府に対し「生物多様性保全センター整備計画」、「グレシック火力発電所3・4号機改修計画」、「主要空港・港湾施設安全対策拡充計画」および「東西ヌサトゥンガラ州地方給水計画」の実施に資することを目的として、51億2,700万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、7月26日(月)、ジャカルタにおいて、わが方飯村豊駐インドネシア国大使と先方マカリム・ウィビソノ外務省アジア・太平洋・アフリカ総局長(Mr. Makarim Wibisono, Director General of Asia Pacific and Africa, Department of Foreign Affairs)との間で行われた。
(1) |
「生物多様性保全センター整備計画」
(the Project for Improvement of Research Facilities for BiodiversityConservation and Utilization)
供与限度額(国庫債務負担行為) |
21億7,200万円 |
(平成16年度 |
2億1,400万円) |
(平成17年度 |
17億5,500万円) |
(平成18年度 |
2億300万円)
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(2) |
「グレシック火力発電所3・4号機改修計画」
(the Project for Rehabilitation of Gresik Steam Power Plant Units 3and 4)
供与限度額(国庫債務負担行為) |
19億8,500万円 |
(平成16年度 |
5億1,200万円) |
(平成17年度 |
14億7,300万円)
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(3) |
「主要空港・港湾施設安全対策拡充計画」
(the Project for Improvement of the Security Equipment in MajorAirports and Ports Facilities)
供与限度額(国庫債務負担行為) |
7億4,700万円
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(4) |
「東西ヌサトゥンガラ州地方給水計画」
(the Project for Rural Water Supply in the Province of NUSA TENGGARA BARAT and NUSA TENGGARA TIMUR)
供与限度額(国庫債務負担行為) |
2億2,300万円
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(1)「生物多様性保全センター整備計画」
インドネシアは、世界でも有数の生物多様性が高い地域である。この特長を活かした農林業と漁業は、同国人口の19%にあたる約4,000万人が従事する主要産業であり、同国の持続的発展のためには生物多様性の保全が重要な課題である。
生物多様性の保全および利用については、インドネシア科学院生物学研究センターが基礎研究を行っているが、そのうち、植物部および微生物部は本来研究施設ではない建物を使用しており、機材も旧式で不十分である。また、19世紀から蓄積された約130万点の植物標本の多くは保存状態が悪く、適切な修復と保存環境の改善が喫緊の課題となっている。
このような状況の下、インドネシア政府は、ジャカルタ近郊のチビノンに植物学・微生物学研究所を建設し、研究環境や植物標本の保存環境を改善するために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、植物学・微生物学研究所の研究環境が改善され、その研究結果が経済開発に寄与するとともに、標本の保存環境が改善され、貴重な標本が国際水準で保管されることが期待される。
(2)「グレシック火力発電所3・4号機改修計画」
インドネシアの電力需要は、首都ジャカルタを中心とするジャワ島に集中しているため、同島のジャワ-バリ間の電力系統は、2003年の供給可能能力が12,500から14,000 MWであるのに対し、2002年の実績最大負荷は13,830MWに達しており、インドネシア国営電力会社による電力供給に私企業の売電による電力供給を加えても、電力不足が予想される。
また、ジャワ島のグレシック火力発電所3・4号機は建設以来すでに約15年が経過して経年劣化が進んでおり、特に蒸気タービンは復水器から海水が浸入したために通常より早く劣化し、出力が低下している。
このような状況の下、インドネシア政府は、ジャワ-バリ間の電力系統の安定に不可欠なグレシック火力発電所3・4号機の蒸気タービン、主要蒸気弁、ボイラー給水ポンプ等を改修するために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、グレシック火力発電所3・4号機の出力回復および発電効率の改善が達成され、ジャワ-バリ間の電力系統の安定に寄与することが期待される。
(3)「主要空港・港湾安全対策拡充計画」
2002年10月に発生したバリ島爆弾テロ事件やその後インドネシア国内各地で発生した爆弾事件により、インドネシアの観光産業をはじめ経済活動は大きな打撃を受けており、安全対策を改善する必要に迫られている。
航空および海上輸送の保安については、インドネシア政府は「航空の保安と安全に関する政令」(2001年)、「テロ対策法」および警戒態勢の強化に関する運輸通信大臣通達(20 03年)等により、安全確保に必要な様々な対策を講じることとしている。しかし、主な空港および港湾においては、検査機器の機能劣化や不足のため、国際機関の条約・標準・指針に則した保安検査を実施することができず、空港および港湾の保安と航空機および船舶の安全性が十分確保できていない。
このような状況の下、インドネシア政府は、国内の主要7空港および主要3港湾における保安検査機器の更新・新設および保安要員への指導等のために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、空港および港湾の保安と航空機および船舶の安全性が改善されるとともに、テロの再発防止、治安の安定が対外的にアピールされ、外国人観光客数の回復を通じて経済の安定成長に寄与することが期待される。
(4)「東西ヌサトゥンガラ州地方給水計画」
東ヌサトゥンガラ州、西ヌサトゥンガラ州はインドネシアの中で最も貧困な地域であり、安全な水を入手できる住民は人口の50から60%程度にとどまっている。両州の衛生面の改善、特に給水設備の整備は最も重要な課題となっている。
各村落の給水施設は、主に住民組織(水利用者組合)の責務で維持管理を行い、県公共事業局および県保健局、地方水道公社で組織されるプロジェクトチームがそれを支援することとなっている。しかしながら、大部分の給水施設では有効な支援体制が確立されていない状況となっている。
このような状況の下、インドネシア政府は、東西ヌサトゥンガラ州の3県6村落における7カ所の給水施設の整備および村民の衛生教育、給水施設の運営維持管理能力の向上のために必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、東ヌサトゥンガラ州および西ヌサトゥンガラ州の6村落の住民(約2万4千人)が新たに安全な水を入手することが可能となる。
(参考)
インドネシアは、面積約190万5,000平方キロ、人口2億1,990万人(2003年)、人口1人当たりのGNI(国民総所得)約710米ドル(2002年)である。
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