フィリピンの「第六次教育施設拡充計画」ほか2件に対する無償資金協力について
平成15年8月8日
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わが国政府は、フィリピン共和国政府に対し、「第六次教育施設拡充計画」、「地方都市水質改善計画」および「カガヤン灌漑施設改修計画」の実施に資することを目的として、総額25億9,200万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、8月8日(金)、マニラにおいて、わが方高野幸二郎在フィリピン大使と先方ブラス・オプレ外務長官(Blas F. Ople, Secretary of Foreign Affairs)との間で行われた。
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「第六次教育施設拡充計画」(the project for Improvement of Educational
Facilities(Phase VI))
9億4,700万円
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「地方都市水質改善計画(the project for Improvement of Water Quality in
Local Areas)
7億3,900万円
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(3) |
「カガヤン灌漑施設改修計画」(the project for Rehabilitation of Cagayan
Irrigation Facilities)
9億600万円
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2. |
(1) |
「第六次教育施設拡充計画」
フィリピンは、人口約7,650万人を有し、近隣国として長年にわたりわが国と緊密な関係を保っているほか、特に貿易・投資等の面でわが国と緊密な相互依存関係を有している。しかしアジア通貨危機の影響により一時減速したフィリピンの経済は、1999年以降は回復を続けているが、依然として多くの貧困層を抱えており、一人当たりのGNP(国内総生産)も1,020ドル(2002年)と低い。
このためフィリピン政府は、「フィリピン中期開発計画(2001年から2004年)」の中でも、フィリピンが直面している「貧困」と戦うための政策の一つとして「総合的人材開発と弱者保護」を掲げ、特に教育分野では、就学機会の拡充、教育の質の向上、教育の効率改善を重要課題として掲げている。
しかしながら、同国では高率の人口増加が続いているため、学校の教室数が不足しており、これら教育分野の重要課題を解決するためには、早急に相当数の学校校舎建設を行うことが必要であるが、フィリピン政府の財政事情は厳しく、学校建設が思うように進んでいないのが現状である。このため一部の学校では2部・3部制授業や定員を大幅に上回る過密状態での授業を余儀なくされている状況にある。
このような状況の下、フィリピン政府はルソン島中部における教室不足の緩和のため、「第六次教育施設拡充計画」を策定し、初等・中等学校53校の校舎建設のために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、フィリピン政府が重要課題としている、教育機会の拡充および教育の質の向上に貢献することが期待される。
なお、わが国政府は、フィリピンに対し平成5年度から「教育施設拡充計画」として、これまで初等・中等学校443校を対象に校舎の建設に協力を行ってきている。
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(2) |
「地方都市水質改善計画」
フィリピンでは、上水道の水源として水量の安定した深井戸を利用している場合が多いが、一部の地域では地質的に高濃度の鉄分・マンガン等が地下水に含まれている。このため同地域では、地下水の塩素による殺菌効果が低下するため、有色で臭みの強い水が供給されており、住民にとって衛生的な上水道サービスが提供されていない状況にある。その結果、住民の中には独自の浅井戸により生活用水を確保するものもいるが、浅井戸が生活排水によって汚染され、伝染病が蔓延する可能性についても懸念されている。
このような状況の下、フィリピン政府は「地方都市水質改善計画」を策定し、深井戸の鉄分・マンガン等の除去設備およびその他関連施設・機材の整備に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、地下水に含まれる鉄分・マンガン等が適切に除去され、塩素による殺菌も効果的に行われることとなり、衛生的で安定した水供給が可能となる。またそれに伴い、水因性伝染病が減少することも期待される。
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(3) |
「カガヤン灌漑施設改修計画」
フィリピン政府は1997年に「農水産業近代化法」を制定し、農水産業の生産性および競争力の向上、主要穀物の自給率の改善を目標に掲げ努力しており、目標達成に向けた具体策の一つとして、既存の灌漑施設の改修による灌漑効率の回復が掲げられている。
フィリピンの北部に位置するカガヤン州の灌漑施設は、わが国円借款「カガヤン総合農業開発事業」(1976年:61億6,000万円)により、カガヤン州にある3カ所のポンプ場、幹支線用水路などの農業生産基盤が整備され、受益農家の営農意欲が向上し、フィリピンにおけるポンプ灌漑開発事業の中でも最も成功した州の一つとなっている。
しかしながら、近年のカガヤン川の洪水による河道の変化や土砂の堆積によって灌漑用水の取水に支障を来しているほか、土砂の増加によるポンプの摩耗・損傷も著しく、灌漑施設の本来の機能が低下しており、灌漑用水の安定的な供給が困難な状況にある。
このような状況の下、フィリピン政府は「カガヤン灌漑施設改修計画」を策定し、カガヤン州の灌漑地域におけるポンプ場の改修および維持管理用機材の調達に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、カガヤン州の灌漑施設が改修され、対象地域への安定的な灌漑用水の供給が可能となる。また、灌漑用水が安定して確保されることにより、対象地域における米の生産量が増加し、地域農民の所得向上にも寄与することが期待される。
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