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Vol.95 2012年12月27日
コーカサス諸国~外交関係樹立20周年を契機に

2012年は,コーカサス諸国と日本の外交関係樹立20周年にあたります。Vol.94においては中央アジアと日本の関係について紹介しましたが,今回はその中央アジアの近隣に位置し,独自の歴史と文化を有するコーカサスの3か国それぞれのプロフィールと地域情勢,そして日本との関わりについて解説します。

コーカサス諸国とは?

コーカサス諸国の歴史

コーカサス諸国とは、カスピ海と黒海にはさまれ,ロシアトルコイランと隣接する南コーカサス地方の3つの国,アゼルバイジャンアルメニアグルジアのことです。いずれの国も,かつては旧ソ連の構成国でしたが,ソ連崩壊後の1991年に独立しました。中央アジア諸国同様,コーカサス地域は欧州,アジア,ロシア,中東を結ぶ地政学的に重要な位置にあり,北側に5,000m級の山もあるコーカサス山脈が走る山がちな土地柄に,古来から様々な民族が入り組んで暮らしてきました。アゼルバイジャンのカスピ海沿岸部は,20世紀以後石油・天然ガス生産が盛んとなり,これらコーカサス諸国からなる南コーカサス地方は,カスピ海沿岸部の石油・ガスを欧州へつなぐ輸送回廊として,現在国際的に注目されています。なお,同地域にはナゴルノ・カラバフ及び南オセチア・アブハジアを巡る問題が存在しており,その平和的解決を目指して,国際機関による仲介努力や関係国・当事者間で協議が続けられています。

コーカサス諸国地図
 

アゼルバイジャン~豊かなエネルギー資源に支えられて

首都バクーのシンボル「乙女の塔」 アゼルバイジャンはコーカサス3国の中で唯一のイスラム教国です。石油・天然ガスの産出国であり,1902年には首都バクー沖のカスピ海上で世界初の洋上石油生産が始まりました。ソ連崩壊後にさらに油田開発が進み,現在では日本企業もカスピ海の石油開発に参画しています。こうした豊かなエネルギー資源を背景に,アゼルバイジャンは独立以来良好な経済状況にあります。近年は将来を見据えて石油依存の脱却を目指しており,天然ガス生産と輸送パイプライン開発,石油化学産業などの新産業プロジェクトを積極的に進めています。また,カスピ海に面したロシア,イランと共にキャビア生産でも有名です。前大統領の長男でもあるイルハム・アリエフ大統領(2003年就任)は安定した政権運営を行っており,外交面でも米国,ロシアとのバランスに配慮する一方で,同じイスラム教国のトルコ,イランとも友好関係を保っています。2012年には,初めて国連安保理非常任理事国に就任しました。コーカサス3か国の中でも特にアゼルバイジャンは日本との経済交流が盛んであり,日本企業がカスピ海沿岸の石油開発に参画している他,両国の経済関係者による経済合同会議が定期的に開催されており,更なる両国経済関係の発展が期待されます。

アルメニア ~世界最古のキリスト教国家

セヴァン湖にあるセヴァナヴァンク修道院 アルメニアは,アゼルバイジャンとグルジアのほか,イラン,トルコと国境を接している内陸国であり,世界で初めてキリスト教を国教として採用(301年)した国家としても知られています。アルメニアの主な産業は農業・宝石加工業で,2003年に旧ソ連諸国として4番目に世界貿易機関(WTO)に正式加入しました。また,アルメニアはブランデーの生産国としても有名です。19世紀末頃から多くのアルメニア人が他民族の迫害を避けて国外へ移住したため,現在,米国,ロシア,中東,欧州などに約700万人のアルメニア系移民がいると言われています。独立後もロシアとの協力関係を維持しており,国内にロシア軍基地も存在しますが,移民が多い米国との関係も緊密です。2008年に大統領に就任したサルグシャン大統領の下,内外政ともに安定した政権運営が行われています。日本とアルメニアの外交関係樹立20周年を迎える2012年には,アルメニアのサルグシャン大統領が訪日し,総理との間で「防災協力」を柱とする「両国の友好とパートナーシップの更なる深化に関する共同声明」が署名されました。

 

グルジア ~親欧米路線で民主化と市場経済化を推進

山上から見た首都トビリシの風景 黒海の東岸にあるグルジアは,国民の約8割がグルジア正教を信仰するキリスト教国です。カスピ海の石油や天然ガスをトルコや欧州へ送る輸送路に位置しており,石油・ガスパイプライン建設を背景とするサービス部門等を中心に国内産業は好調です。また,世界最古のワイン生産地の一つでもあり,グルジアワインは世界で愛飲されています。2004年に大統領に就任したサーカシヴィリ大統領は,親欧米路線的外交政策を展開する一方,国内では民主化,市場経済化,汚職対策等を推進してきました。こうした努力が実り,現在,グルジアは旧ソ連圏で唯一汚職の撲滅に成功した国と言われています。また,グルジアは世界銀行等が実施する「ビジネスの行いやすさランキング(2012年)」において9位と極めて高い評価を受けました。日本とグルジアの外交関係樹立20周年を迎える2012年には,グルジアから首相及び外相が訪日した他,両国で多くの記念文化行事が行われました。両国間では,柔道や相撲等のスポーツ,文化,芸術を通じた交流が盛んです。特にグルジア出身の世界的バレリーナであるニノ・アナニアシヴィリは,20年以上にわたり日本公演を行ってきた親日家であり,2012年には,20周年記念事業として,日本全国でグルジア国立バレエを率いてバレエ公演を行いました。

地域フォーラム「GUAM」とは?

コーカサス諸国のうち,グルジアとアゼルバイジャンが黒海の対岸にある2つの国と結んでいる地域協力の枠組みが「GUAM」です。「GUAM」とはグルジア(Georgia),ウクライナ(Ukraine),アゼルバイジャン(Azerbaijan),モルドバ(Moldova)の4か国の頭文字をつなぎ合わせた略称で,事務局はウクライナの首都キエフに置かれています。原則年1回,首脳会合(サミット)が開催され,議長国はアルファベット順の輪番制。主に経済・貿易分野や安全保障などにおける地域協力について話し合われています。日本は2007年6月にアゼルバイジャンの首都バクーで開催された第2回サミット時参加した際初めての「GUAM+日本」会合を開催し,現在も日本は「GUAM」の地域内協力を積極的に支援しています。

 

日本とコーカサス諸国①~各国の国づくりを積極的に支援

日本はコーカサス諸国の地政学上の,そしてエネルギー安全保障面での重要性を考慮して,ODA(政府開発援助)などの経済協力によって各国の国づくりをさまざまな分野でバックアップしてきました。たとえば,民主化,市場経済化に向けた人材育成,保健医療などの社会セクター再構築支援や経済発展に向けたインフラ整備など,各国の現状に応じた日本のきめ細かな支援は大いに感謝されてきました。また,紛争後のグルジアに対する運輸インフラ整備などの復興支援,ナゴルノ・カラバフ地域の難民キャンプへのテント支援等も行っています。コーカサスの3か国はいずれも親日国で,米国,EU諸国,ロシアなどの影響力が交錯するこの地域において,こうした経済協力によって日本は独自のプレゼンスを築き上げています。

日本によるコーカサス諸国への援助累計額
 

日本とコーカサス諸国②~次の20年に向けてさらなる関係強化を

これまで日本は資源を中心とした経済外交やODA協力,政治対話等を通じてコーカサス諸国との結びつきを深めてきました。今後はさらに「GUAM+日本」対話で話し合われている観光,投資・貿易,そして防災などの分野でも,協力関係を築いていこうとしています。昨年の東日本大震災後には,コーカサス諸国からもあたたかい支援と激励,お見舞いが届きました。2012年の外交関係樹立20周年を契機に,日本とコーカサス諸国との関係,さらに民間も含めた人的交流や経済交流がますます活発化することが期待されています。

日本とアゼルバイジャン,アルメニア,グルジア各国の外交関係樹立20周年ロゴマーク
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