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Vol.9 2008年10月3日
「ポスト京都議定書」温暖化防止に向けた日本の提案

京都議定書の合意から10年。日本では温室効果ガス排出「マイナス6%」をめざしてさまざまな取り組みが行われていますが、これと並行して、京都議定書の第一約束期間が終了する2013年以降の国際的な約束=いわゆる「ポスト京都議定書」の枠組み作りに関心が集まっています。この次期枠組み作りに向けた日本の提案を紹介します。

異常気象、生態系の影響等を指摘するIPCCの報告

気候変動を巡る国際的な動きは、2007年2月のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書から急速に活発になります。この報告書では、過去100年の気候の変化とその原因、および今後100年の予測をまとめ、このままでは、温室効果ガスの増加によって、2100年までに気温は1.1~2.9度上昇し、海面は26~59cm上昇するという衝撃的な報告を行いました。

 

努力目標を定めた気候変動枠組条約と具体的義務を定めた京都議定書

気候変動に対する国際的な取り組みとしては、大気中の温室効果ガスの濃度を安定させることを目指して努力することを定めた気候変動枠組条約があります。現在、国連加盟国のほとんどである191カ国および欧州共同体(EU)がこの条約に加盟しています。しかしながら、この条約には、この努力目標を達成するための具体的な義務は規定されていません。この義務を規定しているのが、京都議定書です。京都議定書は、1997年12月、気候変動枠組条約の締約国会議(COP3)で採択されましたが、日本の主導により京都で開催されたことからこの名前が付いています。

 

2013年以降の各国の義務

つまり、気候変動枠組条約では締約国の努力目標を定め、それを実現するために、どの国がどれだけ削減する、という具体的な義務を定めたものが京都議定書です。京都議定書は、温室効果ガス削減の具体的な数値義務を、締約国の先進国に対して課したという点で、非常に画期的なものです。しかし、京都議定書が定めている義務は、2012年までのものなので、それ以降の各国の義務など次期枠組みをどうするかが大きな課題です。

 
 

温室効果ガスの排出量と吸収量をバランスさせる

次期枠組みを考えるにあたっては、もう少し、温暖化の現状を理解する必要があります。温暖化の原因となるCO2、メタンなどの温室効果ガスと呼ばれる気体は、かつては自然の中に吸収されることで大気中のバランスがとれていたものでした。しかし現在、私たち人間の活動によって排出される温室効果ガスの量は、自然吸収量の約2倍以上にも達しており、それが昨今の地球温暖化現象を招いていると言われています。温室効果ガスの濃度を安定化させるためには、自然吸収量と同じ量、つまり現在の排出量を1/2に減らさなければならないのです。

長期目標の前提となるデータ:排出量と吸収量のバランス
 

2050年までに排出量を半減させる「クールアース50」

そこで、次期枠組み作りにあたって、温室効果ガスの排出量を半減するという目標を明確に掲げた提案が、日本の「クールアース50」です。2007年に提案された「クールアース50」では1.「世界の温室効果ガス排出量を2050年までに半減する」ことを世界全体の目標にする2.次期枠組み作りのための3原則:主要排出国の参加、柔軟かつ多様性のある枠組み、環境保全と経済発展の両立、3.京都議定書達成のための国民運動の展開の3つの提案が盛り込まれています。

 

クールアース50を実現するための具体策が「クールアース推進構想」

この「クールアース50」は、気候変動枠組条約と同じく目標を表したものです。この目標を実現するための具体策が、2008年、ダボス会議において福田総理が発表したクールアース推進構想です。「クールアース推進構想」は、京都議定書の問題点や課題を解消できるような提案となっています。では、京都議定書の問題点とは何でしょうか。

世界各国のCO2排出量(2005年)
 
 

京都議定書の課題:実効性、参加国、公平性を確保する

京都議定書は、温室効果ガス削減の具体的な数値義務を、締約国の先進国に対して課したという点で、非常に画期的なものでした。しかし京都議定書は、その実効性において幾つかの問題も抱えています。削減義務のある国の中には、京都議定書に参加していないアメリカや、先進国に含まれない中国、インド等、排出量の多い国々は含まれていないため、削減義務の対象となるのは、世界全体の3割程度にしかならないのです。さらに、目標値の算出基準が必ずしも公正ではないという議論や、守らなかった場合の措置が明確に定められていないなどの指摘があります。

世界各国のCO2排出量(2005年)
 

「クールアース推進構想」3本柱:ポスト京都フレームワーク、国際環境協力、イノベーション

こうした課題を解消するため、「クールアース推進構想」では、1.セクター別アプローチにより公平な国別総量削減目標を設定し、全ての主要排出国が参加できる枠組みを作る、2.国際環境協力として世界全体で2020年までに30%のエネルギー効率改善を世界共有の目標とする。また、5年間で100億ドル規模の資金を用いて「クールアース・パートナーシップ」を構築し、排出削減と経済成長の両立を目指す途上国の気候変動分野を支援する、3.環境・エネルギー分野の研究開発に5年間で300億ドル程度の資金を投入する=「イノベーション」、の3つを提案しています。

 

公平な削減目標を設定するためのセクター別アプローチ

セクター別アプローチについてもう少し説明しましょう。温室効果ガスの約8割を占めるCO2について、産業、発電、家庭、業務、運輸等のセクター別に分け、今後活用される技術を基礎として、それぞれがどれだけ削減できる可能性を持っているか、どれだけコストがかかるのかを分析し、セクター別に可能な削減量を積み上げていきます。こうすることで、野心的かつ実現可能な削減目標を設定できます。その結果、公平で全ての国が参加できる枠組み=実効性の高い枠組みができると考えています。

 

京都議定書から北海道洞爺湖サミットへ

2005年2月16日京都議定書が発効したことにより、その後、首脳レベルが集まる国際会議でも、気候変動問題は頻繁に取り上げられることができました。2005年のグレンイーグルスサミットでG8サミットの主要テーマの1つとなってから、08年の北海道洞爺湖サミットに至るまで、G8の最重要課題として国際的にも認識されています。

 
 

洞爺湖サミットの成果と主要国のポジション

2008年7月に行われた北海道洞爺湖サミットでは、「2050年までに世界全体の排出量を少なくとも50%削減する」とする長期目標についてG8の合意が得られたことが、大きな成果となりました。また、先進国は中期の国別総量目標を実施し、排出量の絶対的削減を達成するために各国が行動をとること、そのためには、日本が提唱するセクター別アプローチが有効な手段となりうることなど、途上国も排出抑制のために適切な行動をとることなど、ポスト京都議定書次期枠組みに関して幾つかの進展を見ることができました。しかし枠組み構築に関する各国の立場はさまざまです。今後は、この洞爺湖サミットの成果を受けて、気候変動枠組条約の締約国会議(COP)において上で議論を重ねていくことになるでしょう。

主要国のポジション
 
 

日本の今後の課題

新しい枠組みは、アメリカや中国、インドを含む、全ての主要経済国が責任ある形で参加し、実効性のあるものでなければなりません。地球環境問題をリードする日本は、今後、「クールアース推進構想」で示した施策を着実に実施し、さらに具体化するとともに、京都議定書で課された日本の義務である6%削減目標を確実に達成することが大切です。日本の場合、産業部門においてのCO2排出量が減ってきているのに比べ、家庭部門が増加している傾向がうかがえます。「低炭素社会・日本」を目指すためには、今後国民1人1人が主役となった、さらなる価値変革が必要になってくるでしょう。

我が国の部門別CO2
 
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