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Vol.59 2010年6月22日
スーダン~多様性に満ちた国

内戦後の和平プロセスが進むスーダンで2010年4月,実に24年ぶりとなる複数政党による選挙が実施されました。多くの犠牲者を出した南北スーダンの内戦やダルフール紛争を経て,平和な国づくりを模索するスーダンとはどのような国なのでしょうか。多様性に満ちた社会の成り立ちや最近の情勢などとともに考えます。

青ナイルと白ナイルがはぐくむ豊かな国土

アフリカ大陸の北東部に位置するスーダン共和国は,日本の約7倍の国土(250万平方km)を持つアフリカ最大の国で,北はエジプト,東はエチオピアなど9か国に隣接しています。国土の大部分は平原ですが,北部は乾燥地帯,南部は熱帯と,国内でも気候は大きく異なっています。国土を縦断するように流れているのが,有名なナイル川と,その源流である青ナイル(エチオピア・タナ湖から)と白ナイル(ケニア・タンザニア・ウガンダの国境であるビクトリア湖から)です。首都ハルツームでは,この青ナイルと白ナイルが合流し,大河となってエジプトへと流れていきます。ナイル川沿岸には,アフリカ最大規模の穀倉地帯が広がっており,特産の小麦や綿花,アラビア・ゴム,ゴマ,ハイビスカスなどが生産されています。農業生産はスーダンのGDPの40%を占めており,国民の多くが農業に従事しています。国内にはまだ開発が進んでいない耕作地も多くあり,近年では中東諸国などを中心に海外からの農業投資が増大しています。

スーダン共和国青ナイルと白ナイルが合流する首都ハルツーム

(写真提供:在日スーダン大使館)
 
 

石油で広がる経済発展の可能性

農業に加えてアフリカ有数の産油国でもあるスーダンでは,1990年代から石油の開発が本格化し,1999年に南部の産油地と紅海を結ぶパイプラインの完成によって,原油の輸出が始まりました。生産量は日産約50万バレルに達し,現在では輸出の大部分を占める重要な産業となっています。未調査の地も多く,今後も原油生産が大きく伸びることが期待されるうえに,金や鉄などの鉱物資源も採れるため,スーダンは経済発展の可能性を秘めた国として注目されています。実際,2006年と2007年のGDP(国内総生産)の成長率が10%を超えるなど,今も順調な経済成長を続けており,ハルツーム周辺では近代的な高層の建築物が急増しています。

 

多様性に満ちたスーダン

南部スーダンの民族衣装

(写真提供:UNMIS)スーダンは,ナイル川流域で長い歴史を積み重ねてきました。少なくとも紀元前2000年代には,スーダン帝国が隆盛し,世界遺産「ジャバル・バルカルとナパタ地域の遺跡群」に見られるような高い文明を持っていたとされています。現存するピラミッドの数は,実はエジプトよりも多く,1000近くにも上っています。地理的に,古くから地中海世界とアフリカ,中東世界とアフリカの結節点としての役割を担ってきたスーダンは,歴史的にも他民族の侵入や王朝の興亡,キリスト教やイスラム教の伝播など,幾多の変遷を重ねてきました。そこに暮らす人々も実に多様で,肥よくなナイル川沿いは農耕民,草原が広がる中西部は遊牧民,アラビア半島に近い北部はアラブ系(イスラム教徒),サブサハラ・アフリカにより近い南部はアフリカ系(キリスト教,土着信仰など)など,いろいろな表情を持ち合わせています。2008年時点の人口は3,915万人ですが,その中には数百もの異なる民族が共存しているとされています。

多様性に満ちたスーダン

(写真提供:※1在日スーダン大使館 ※2UNMIS)
 
 

スーダン情勢は国際社会の関心事

現在のスーダン情勢一方で,その多様性ゆえに生じた複雑な社会構造によって,スーダンは国内に多くの課題を抱えています。ひとつは「アフリカ最長の内戦」と呼ばれた「南北スーダンの内戦」,もう一つは「世界最大の人道危機」と呼ばれた「ダルフール紛争」です。どちらも対立の根は深く,これらの紛争によって,これまでにとてもたくさんの犠牲者が出ました。前述のように,スーダンは地理的に中東とサブサハラ・アフリカを結ぶ地域に位置している上,9か国と国境を接していることから,南北スーダンやダルフールの情勢不安定化が周辺地域に与える影響は少なくありません。このため,スーダン情勢は国際社会の主要な関心事の1つとなっており,国連・国際機関やNGOなどを含めて大規模な人道・復興支援活動が続いています。南北スーダンの内戦とダルフール紛争がどのようなものだったのか,それぞれ整理してみます。

 

南北スーダン内戦と和平プロセス

1899年から英国とエジプトの共同統治下に置かれていたスーダンでは,北部と南部を分断する植民地政策(南北間の交流禁止)がとられていた経緯などから,南北の住民は1つの国として統治されることに大きな違和感を感じていました。このため,1956年にスーダンが国家として独立を果たす一歩手前の段階で,北部(政府)と分離・独立を求める南部の間で内戦が勃発しました。1972年に南部に自治権を認める「アジスアベバ合意」によって一度は停戦に至ったものの,10年余りのうちに内戦は再燃し,最終的には2005年の南北包括和平合意(CPA)の締結まで,「アフリカ最長の内戦」を経験することになりました。南北内戦による死者は約200万人,難民・避難民は約400万人とも言われ,内戦の激しさを物語っています。現在は,CPAに基づき,南部自治政府が発足しているほか,南部の宗教的自由(イスラム法の不適用),南部スーダンで産出される石油収入を南北間で原則均等配分することなどが定められています。

スーダン南北和平に向けての動きアビエ地域をパトロールするPKO隊員

(写真提供:UNMIS)
 
 

世界最大の人道危機「ダルフール紛争」

ダルフール紛争の経緯スーダン西部のダルフールでは,アラブ系遊牧民族とアフリカ系農耕民族(ともにイスラム教徒)の間で昔からあった水や牧草地などを巡る抗争を背景に,2003年に政府・アラブ系民兵と,反政府勢力の本格的な武力衝突が勃発しました。2006年にダルフール和平合意(DPA)が成立したものの争いは収まらず,死者約30万人,難民・避難民約200万人という人道危機へと発展しました。改善しない治安情勢に国際社会の懸念は高まり,国連安全保障理事会はダルフール地域における武器禁輸措置などを決議したほか,2009年には国際刑事裁判所(ICC)が,人道に対する犯罪及び戦争犯罪の容疑で,バシール大統領に対する逮捕状を発付しました。これに対して,スーダン政府は,ダルフールで人道支援活動を行っていた国際NGO(13団体)を国外に追放したことから,更なる国際社会との緊張が高まりましたが,2010年2月にはドーハでスーダン政府と反政府勢力の一部が停戦合意に調印するなどしており,和平実現に向けた努力が続けられています。

 

国際社会による平和構築支援

スーダンで活動する日本のPKO要員

(写真提供:内閣府)こうした度重なる紛争を経験したスーダンに対して,国際社会は様々な形で平和構築支援を行ってきていますが,その中で大きな役割を担っているのが,国連がスーダン国内に展開している2つのPKOミッションです。南北スーダンの和平については,南北包括和平合意(CPA)が成立した2005年から,国連スーダン・ミッション(UNMIS)が,停戦合意の遵守や元兵士の武装解除,選挙や住民投票の実施といったCPAの合意内容の履行の支援,難民・国内避難民の帰還の促進,地雷除去分野での支援などを実施しています。ダルフール地域では,アフリカ連合(AU)と共同で停戦監視などを行うダルフール国連AU合同ミッション(UNAMID)が展開しています。

 

24年ぶりのスーダン総選挙

列になって総選挙の投票の順番を待つ投票者このような状況下で,南北和平プロセスの重要な試金石として行われたのが,冒頭で触れた2010年4月のスーダン総選挙です。大統領選挙,南部大統領選挙,国民議会選挙,南部議会選挙,州知事選挙,州議会選挙の6種類の選挙が同時に行われ,複数政党による24年ぶりの選挙という意味でもとても重要な総選挙でした。日本は民間有識者を含む16人から成る選挙監視団をスーダンへ派遣し,関係者へのヒアリングや投開票の監視活動などを行いました。投票期間中,投票用紙の印刷ミスなど技術的な問題はあったものの,心配された治安上の混乱は発生せず,総選挙はおおむね平和裏に実施されました。また,スーダンの選挙制度には小選挙区制(全議席の60%)のほか,女性議員枠(同25%)や政党比例代表制(同15%)が取り入れられており,先進的な制度を進んで取り入れようとする意欲が見られます。このことは,スーダンの民主化と南北和平プロセスが着実に進んでいることを示すものと言えるでしょう。

 
 

日本の対スーダン支援

村落助産師の指導に当たる日本人専門家

(写真提供:JICA)日本は,対アフリカ外交の基軸としてTICAD(アフリカ開発会議)を主導しており,なかでも「平和の定着」を1つの大きな柱として掲げています。そのため,日本はダルフールを含むスーダンの平和構築に向けて,人道支援のほか,難民・国内避難民の帰還支援,南北18万人の元兵士のDDR(武装解除,動員解除,社会復帰),保健,水・衛生,教育,インフラ整備などを重点分野に,CPAが成立した2005年以来これまでに,約4億4000万ドルの支援を実施しています。また,UNMISに自衛隊員2人を派遣するなどし,国際機関やNGOとも積極的に連携して支援を行っています。ジャパンプラットフォームなどを通じた日本のNGOの活動も活発で,現在北部2団体,南部8団体の全10団体が井戸掘削,公衆衛生などの分野で草の根の人々を支援しています。現在(5月末時点),スーダンにおいて活動するNGOや国連機関の邦人職員は70名を超えるに至っています。

 

南部独立の是非を問う住民投票

スーダンは2011年1月,和平プロセスの次なる重要なステップとして,南部スーダン独立の是非を問う住民投票やアビエ地域の南北帰属を問う住民投票を実施することになっています。CPA履行とダルフール和平実現のために,スーダンと国際社会の一層の努力が求められています。

 
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