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Vol.165 2018年1月11日
日本のエネルギー外交 -グローバル・ビジョンと低炭素化への取り組み

近年,技術革新や新興国の台頭などにより,世界のエネルギー需給構造には大きな地殻変動が起きています。また,気候変動対策の新たな国際枠組みであるパリ協定の発効を契機に,温室効果ガスの排出量を大幅に削減しようとする動きが世界的に加速する中,再生可能エネルギーをめぐる状況はますます高い関心を集めています。ここでは,世界のエネルギー情勢を読み解きながら,日本のエネルギー外交戦略と,再生可能エネルギーをめぐる取り組みについて解説します。

世界のエネルギー情勢の変化

近年のエネルギーをめぐる国際情勢は大きく変化しており,これらの変化は次の「3つのシフト」としてまとめることができます。1つ目は「供給国のシフト」です。シェール革命を始めとする技術革新が契機となり,米国等が新たなエネルギー輸出国として台頭してきたことを指します。2つ目は「需要国のシフト」です。インド,中国,ASEANなど,アジア等の新興国がエネルギー消費大国として台頭し,今後の世界のエネルギー需要の増加を牽引していくことを示しています。3つ目は「低炭素化へのシフト」です。気候変動は世界共通の課題であり,全温室効果ガス排出量の3分の2以上を占めるエネルギー部門の低炭素化は必須になっています。特に,再生可能エネルギーの導入や,より高いエネルギー効率の追求などの具体的な取り組みを,国際社会全体で加速させる必要があります。

世界のエネルギー情勢の地殻変動:「3つのシフト」
 

日本におけるエネルギー選択の大きな流れ

日本国内の状況に目を転じると,これまで私たちは,エネルギーに関して幾つかの大きな選択を行ってきました。1960年代には,それまで燃料の主役であった石炭から石油に移行し,日本のエネルギー自給率は劇的に低下しました。1970年代には2度の石油危機を経験し,石油価格が高騰。それに伴い,電気代も大きく上昇していきます。1990年代には,新たに地球温暖化の進行という懸念が広がり,1997年に採択された「京都議定書」を契機に,国際社会では「CO2削減」という共通の課題に取り組んでいこうとする機運が高まってきました。そして2011年の東日本大震災に際し,日本は未曽有のエネルギー供給危機に直面します。エネルギー選択に関して「安全」という価値が重要視され,改めて再生可能エネルギーに注目が集まりました。そして2015年には,2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み「パリ協定」が採択され,国際社会において低炭素化に向けた「エネルギー転換」の流れが強化されています。

エネルギー選択の大きな流れ
 

日本のエネルギー・外交戦略

国際シンポジウム「アジアにおけるエネルギー安全保障及び投資」(2017年7月))このような変化に対応していくためには,日本のエネルギー・資源外交にも,新たなビジョンと戦略が必要です。2017年7月には,外務省主催による国際シンポジウム「アジアにおけるエネルギー安全保障及び投資」が開催され,我が国のエネルギー・資源外交に関する外務大臣政策スピーチ「日本のエネルギー・資源外交-未来のためのグローバル・ビジョン」が発表されました。これは,「世界のエネルギー市場が一体化する中で,日本一国でのエネルギー安全保障はもはや成立せず,世界のエネルギー安全保障が達成されてこそ日本のエネルギー安全保障につながる」すなわち,「エネルギー・資源分野のグローバルな課題の解決への貢献が,日本のエネルギー安全保障にもつながる」という考え方に基づくものです。具体的には,(1)エネルギー・資源の自由貿易や投資促進と市場の高度化の推進,(2)万人のためのエネルギー・アクセスの向上,(3)環境負荷の低減とエネルギー効率の向上,(4)新エネルギー・再生可能エネルギーの開発と普及の促進,(5)石油・ガスの国際的な緊急時対応能力の強化と世界のエネルギー・ガバナンスの強化,という5点を日本のエネルギー資源外交のビジョンとすることを明言。その実現に向け,以下の「3つの柱」を中心に取り組んでいくことを示しました。

  1. エネルギー・資源問題への戦略的取組を外交の中でより強化する
  2. 多様なニーズに応える重層的なエネルギー・資源外交を展開する
  3. 「日本らしさ」のある支援・協力を進め,情報発信・広報を強化することでその定着・浸透を目指す
 

再生可能エネルギーをめぐる世界の状況- 競争力が向上し導入拡大傾向

今後の世界のエネルギー情勢や日本のエネルギー資源外交にとって,重要なポイントになるのが「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーとは,太陽光や風力,地熱,水力,バイオマス,空気熱,地中熱など,自然界に常に存在するエネルギーのことです。自然の営みを活用するエネルギーであり,燃焼を伴わないため,二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーです。再生可能エネルギーは,海外では発電コストの大幅な低減が進み,石炭や天然ガスなどの化石燃料由来の電源と比較しても競争力のある電源となってきています。国際エネルギー機関(IEA)が発表した「世界エネルギー展望」(2017年度版)では,「世界の総電力供給に占める再生可能エネルギーの割合は,現在の24%から,2040年までに40%に上昇する」と予測されており,今後,石炭をしのぐ電源に成長していく見込みです。先進国のみならず,途上国においても再生可能エネルギーの導入拡大に舵を切る動きが見られており,国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のアミン事務局長は,「再生可能エネルギーの時代」が到来していると述べています。

世界のエネルギー情勢:発電別の発電量の見通し
 

再生可能エネルギーをめぐる日本の状況- 導入拡大には高コストなどの課題が

現在,日本のエネルギー自給率は7.0%(2015年。原子力エネルギーを含む)であり,これは先進国の中でも最も低い水準にあると言えます。電力についても,発電のためのエネルギー源を,天然ガス,石炭及び石油などの化石燃料に頼っており,そのほとんどを海外に依存しています。このような状況の中,エネルギーを安定的かつ適切に供給していくために,日本国内でも近年,再生可能エネルギーの導入が推進されています。しかし,日本の場合,導入コストが高い,日照時間や風の吹きぐあい等の自然状況に左右される,送電線への連結が容易でない等の理由から,世界的には導入レベルは低い状態です。そのためには世界の先行事例に倣い,入札等の競争要素を入れる,送電線の増強,蓄電池の活用等の再生可能エネルギーを念頭においた市場設計が必要です。国際エネルギー機関(IEA)は「多くの国で風力と太陽光が離陸しているのに,その信頼性について誤った認識がまだある」と述べ,「風力と太陽光は,電力システムの不安定化やコスト超過なしで大丈夫なもの」と言っています(「風と太陽をグリッドに乗せる/Getting Wind and Sun onto the Grid」IEA2017)。

世界のエネルギー情勢:各国の太陽光・風力発電利用状況

一方で,日本では再生可能エネルギーを含むエネルギー分野で,世界最先端の研究・開発や先進的な取組が進められています。その中のひとつに「福島新エネ社会構想」があります。これは,安倍総理大臣のイニシアティブによって2016年3月に発表されたもので,未来の新エネルギー社会実現に向けたモデルを福島で創出するとともに,そのモデルを世界に発信し,福島を再生可能エネルギーや未来の水素社会を切り拓く先駆けの地とする構想です。また,水素社会の実現に向け,関係各府省庁が連携して強力に取り組みを進めるべく,「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」が2017年4月に発足しました。外務省は,「福島新エネ社会構想」を国際社会に発信するための取組の一環として,2016年年8月には,在京外交団を対象とした産総研福島再生可能エネルギー研究所等を視察する福島スタディーツアーを,2017年6月には常磐共同火力株式会社勿来発電所等を視察する福島県いわき市スタディーツアーを実施し,日本の再生可能エネルギー等にかかる関連施設や最先端の技術を紹介しました。

福島スタディーツアー・福島再生可能エネルギー研究所の視察(左)と,福島県いわき市スタディーツアー・勿来発電所の視察(右)
 

日本のエネルギー外交は新たなステージに

最近では,米国がパリ協定を離脱する意向を表明したことが大きな話題となりましたが,世界全体では脱炭素の流れは一層強まっています。2018年1月には,再生可能エネルギーの普及と利用促進を目的とする国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の第8回総会及びワールド・フューチャー・エネルギー・サミット(WFES)がアラブ首長国連邦の首都アブダビで開催されます。日本はこの国際会議の機会に,「福島新エネ社会構想」をはじめとする日本の再生可能エネルギーへの取組について国際発信するとともに,先進的な技術力とイノベーションの力を活用することで世界に貢献する姿勢を表明する予定です。日本は今後も,エネルギー・資源外交を強化し,多様なニーズに応えながら,様々な場面で「日本らしい」外交を展開していく方針です。

 
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