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Vol.150 2017年1月25日
パリ協定 - 歴史的合意に至るまでの道のり

2016年11月4日,2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み「パリ協定」が発効しました。パリ協定は,歴史上初めて,全ての国が地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に取り組むことを約束した枠組みとして,世界の注目を集めました。今回はパリ協定の概要と,採択までの道のりを振り返るとともに,日本の取組,そしてパリ協定の実施に向けた今後の展望について紹介します。

気候変動問題とその対策-「緩和」と「適応」

気候変動の影響は,地球規模での平均気温の上昇(地球温暖化)や海面上昇,降水パターンの変化による洪水や森林火災や干ばつの増加,大気中の二酸化炭素濃度増加による海洋酸性化など,世界中様々なところに現れています。例えば,海面上昇により小さな島国が近い将来海に沈んで消えてしまう恐れがある,地球温暖化が原因の一つとなってホッキョクグマが絶滅の危機に瀕している,などのニュースを耳にする機会があると思います。気候変動は,先進国,開発途上国を問わず,国境を越えて社会,経済,人々の生活に影響を及ぼす問題であり,国際社会の一致団結した取組の強化が不可欠です。

では具体的に,どのような取組が行われているのでしょうか。気候変動対策は,大きくは「緩和」と「適応」の2つに分類されます。「緩和」とは,温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出削減と吸収の対策を行うことであり,省エネルギーへの取組や再生可能エネルギーの普及拡大(削減策),森林整備(吸収策)などを指します。一方の「適応」は,既に起こりつつある気候変動の悪影響の防止・軽減のための備えと,新しい気候条件の利用を行うことを指し,サイクロン被害に備えた防災・減災といった対策や灌漑システムの改善,生態系の保全,護岸工事などが例として挙げられます。緩和策と適応策は,両者が補完しあうことで気候変動のリスクを低減できるとされています。

 

パリ協定までの歩み

ここで,気候変動問題に関する国際社会の歩みを見てみましょう。1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」に基づき,国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995年から毎年開催され,世界での温室効果ガス排出削減に向けて,精力的な議論を行ってきました。「京都議定書」は,その名前をご存じの方も多いのではないでしょうか。これは,1997年に京都で開催されたCOP3にて採択された,2020年までの温室効果ガス排出削減の目標を定める枠組みです。しかし,この枠組みが果たして気候変動問題に有効に対処できるのか疑問を投げかける声が聞かれるようになりました。そもそも,国連気候変動枠組条約では,世界の国々を主として先進国と開発途上国の二つに分け,条約上の義務等に差異を設けています。そのため,同条約を具体化した京都議定書では,日本を含む先進国のみに削減目標に基づく削減義務が課せられることとなりました。一方で,中国・インドといった新興国を中心とした開発途上国の温室効果ガス排出量が急増し,現在では先進国よりも開発途上国の方が温室効果ガスを多く排出するようになっています。米国は,この点を理由の一つとして,京都議定書には参加しませんでした。この結果,主要排出国である米国やその他の新興国が削減義務を負っていない京都議定書の枠組みでは有効な対策を取ることが難しくなってきました。さらに,気候変動による影響に脆弱な国を中心に,それまで気候変動対策の中心であった「緩和」だけでなく,「適応」についても焦点を当てるべきとの声も強まってきました。

 

COP21におけるパリ協定採択

こうした状況を打開するため,国際社会は,京都議定書に代わる新たな枠組みの構築に取り組みます。2011年に南アフリカで開催されたCOP17において「全ての国が参加する新たな枠組み」の構築に向けた作業部会の設置に合意すると,翌年からその作業部会において精力的な交渉がスタートしました。その後,約4年をかけて行われた一進一退の長きにわたる交渉の結果,2015年11月30日から12月13日まで,フランス・パリで開催されたCOP21において採択されたのが「パリ協定」です。COP21においては,閣僚級による詰めの交渉が連日夜通しで行われることとなりました。12月12日夜,議長を務めたフランスのファビウス外相(当時)が採択の合図である木槌を振り下ろした瞬間,議場は大きな拍手と歓声に包まれました。こうして採択されたパリ協定は,歴史上初めて先進国・開発途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた歴史的な合意として,公平かつ実効的な気候変動対策のための協定となりました。

気候変動枠組交渉の経緯
1992年 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)採択(1994年発効)(締約国数:197カ国・機関)
1997年 京都議定書 採択(COP3)(2005年発効)(締約国数:192カ国・機関)
2009年 「コペンハーゲン合意」(COP15)
→先進国・途上国の2020年までの削減目標・行動をリスト化すること等に留意
2010年 「カンクン合意」(COP16)
→各国が提出した削減目標等が国連文書に整理されることに
2011年 「ダーバン合意」(COP17)
→全ての国が参加する新たな枠組み構築に向けた作業部会(ADP)が設置
2013年 ワルシャワ決定(COP19)
→2020年以降の削減目標(自国が決定する貢献案)の提出時期等が定められる
2014年 「気候行動のためのリマ声明」(COP20)
→自国が決定する貢献案を提出する際に示す情報(事前情報),新たな枠組の交渉テキストの要素案等が定められる
2015年 →2020年以降の枠組みとして,史上初めて全ての国が参加する制度の構築に合意

COP21にてオランド仏大統領の出迎えを受ける安倍総理大臣(左)と,スピーチする安倍総理大臣(右)(写真提供:内閣広報室)
 

「パリ協定」の早期発効と実施に向けての課題

2016年4月22日,ニューヨークの国連本部においてパリ協定署名式が盛大に行われ,日本を含めた175の国・地域が署名をしました。これは国際協定の署名開始日に署名した国の数としては過去最多となりました。その後も,同年9月に,世界の温室効果ガス排出量シェア第1位と第2位である,中国と米国が同時に締結するなど,パリ協定の発効に向けた国際社会の機運が高まります。その結果,世界の温室効果ガス総排出量の55%を占める55か国による締結という発効要件を満たし,採択から1年にも満たない11月4日にパリ協定は正式に発効しました。日本も11月8日に締結しています。

こうして国際社会の当初の予想よりも早く発効したパリ協定ですが,同協定に長期的な目標として規定された「世界の平均気温上昇を工業化以前から2度以内に抑える」という「2度目標」を達成するためには,まだ多くの課題が残されています。例えば,パリ協定では,先進国・開発途上国の区別なく全ての国が削減目標を5年ごとに提出し,国内での実施状況を報告すると共にレビューを受け,さらには5年ごとに世界全体での実施状況を検討することになっています。このようなサイクルを通じて,「2度目標」を達成できるように各国が徐々に取組を強化していこうという仕組みです。しかし,パリ協定は大枠を定めたのみであり,このような仕組みを実現するための具体的な実施指針(ルールブック)を策定する必要があります。また,初めて削減目標の策定やそのための国内措置の実施等を義務付けられた途上国に,これからどのような支援を行っていく必要があるのか,そのための資金をどうやって動員するのか,そして,パリ協定で具体的に言及されることとなった「適応」への取組をどのように進めて行くのか,といった点についても引き続き議論していくことで,パリ協定の実効性をさらに高めていく必要があります。

 

気候変動に関する日本の取組

国際社会における気候変動問題への関心が高まる中で,日本もパリ協定の妥結,そしてその後の実施のために,様々な取組を行ってきています。

まず,パリ協定が採択される以前の2015年7月,2020年以降の温室効果ガス削減の目標である「日本の約束草案」として,国内の排出削減・吸収量の確保により,「2030年度に2013年度比▲26.0%(2005年度比▲25.4%)の水準(約10億4,200万t-CO2)」にすることを決定しました。2016年5月には,この削減目標の達成に向けた具体的な対策を位置づけた「地球温暖化対策計画」を策定しています。

また,COP21においては,安倍総理が首脳会合でのスピーチにおいて,日本の途上国支援について「2020年に現在の1.3倍,官民あわせて年間約1.3兆円の気候変動対策支援を実施」することを表明しました。これは,COP15で合意された「先進国全体で2020年までに官民あわせて年間1000億ドル」という途上国支援のための資金動員目標の達成に大きく貢献するものです。このように先進国として途上国を着実に支援していく姿勢を示すことで,日本はパリ協定の合意に向けた交渉を後押ししました。

加えて,日本は緩和・適応それぞれの気候変動対策について途上国支援を行っています。例えば,再生可能エネルギーによる電力供給の増強による緩和をはかり,コスタリカにて地熱発電所を建設したり,フィジーにて風水害を防ぐために,適応対策として気象分野での人材育成プロジェクトを実施したりしています。

さらに,日本は,日本の優れた技術を活用し,途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み,削減の成果を両国で分け合う「二国間クレジット制度(JCM)」を推進してきており,これまで17か国と協力関係を築いています。このほか,開発途上国の緩和と適応を支援する「緑の気候基金(GCF)」についても,日本として15億ドルを拠出することとし,GCFが効果的に支援を行えるよう理事会の一員として参画しています。

二国間クレジット制度(JCM)概念図
 
JCMの概念図,GCF主要国の拠出表明額
 

今後の実施指針の策定に向けて

2020年以降の枠組みであるパリ協定の実施に向けて,その実施指針の策定及びそのための交渉が今後の大きな課題です。これに関して,パリ協定の採択・発効後,最初のCOPとなったCOP22(2016年11月7日から18日まで,モロッコ・マラケシュで開催)では,パリ協定第1回締約国会合(CMA1)もあわせて開催されました。このCOP22,CMA1では,パリ協定発効後の焦点となっていた今後の交渉の進め方について議論され,パリ協定を締結しているかいないかにかかわらず全ての国が参加する形で実施指針の策定交渉を行うこと,さらに実施指針を2018年までに策定することが合意されました。これで,今後の交渉の枠組み及び期限が明確に定められたことになります。

日本は今後も,パリ協定の実効的な実施のための指針の策定に向け,引き続き交渉に貢献するとともに,国内でも温室効果ガスの着実な削減に向け取り組んでいきます。

COP22の様子
 
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