官房長臨時記者会見記録(平成14年8月30日(金)15:15~於:会見室)
職員の人事処分
(官房長)本日は在外公館における不正事案3件に関する処分等について報告させていただきます。対象公館は在アトランタ総領事館、在ソロモン大使館、及び在デンバー総領事館です。アトランタとソロモンにつきましては、監察査察室を中心に調査を行った結果、判明した事実に基づき、会計担当者等を処分することとしたもので、デンバーは昨年7月に懲戒免職とした水谷前総領事に対する新たな措置に関するものです。各事案の詳細はお手元の配付資料を参照いただければと思いますが、以下、順を追って各事案の概要、及び関係者の処分等につき簡単にご説明させていただきます。
まず、在アトランタ総領事館については平成10年7月から同総領事館で会計を担当していた福田正裕領事が本年3月に在メキシコ大使館に転勤するに際して在アトランタ総領事館事務所の賃貸人から共益費等の過払い分の返金を受け、その内約24,000ドル、約315万円を着服横領したものです。福田領事についてはメキシコから帰国させた上で8月19日付で官房付としていましたが本日付で懲戒免職とすると共に、東京地検に業務上横領で告発状を提出しました。また、福田領事のアトランタ在任中、総領事として同人を指導、監督すべき立場にあった卜部在韓国大使館公使、及び斎藤欧州局長については本日付で厳重訓戒処分としました。
次に、在ソロモン大使館については平成7年1月から同大使館で会計を担当していた白濱清次郎一等書記官が平成9年12月頃から平成10年12月頃までの間、公費で購入したテレビ、ビデオ、冷蔵庫等の備品を自宅で使用し、これらを後任者に売却する等により処分するとともに、空の請求書を使って公費を私的に流用していたものです。白濱書記官が不正に処理した金額は合計約81万円に上りますが、同書記官がソロモンを離任した直後に当時の上司から指摘を受けこれらの備品の一部について代替品を購入するなどして原状回復が図られていました。白濱書記官はその後、在シドニー総領事館を経て、在ネパール大使館に在勤していますが、本日付で帰朝を命じ、帰国次第、懲戒停職処分4カ月とすることとしました。
最後に水谷前在デンバー総領事については昨年7月、総領事公邸の賃料を水増しした賃貸借契約を締結する等の不正経理を行っていたことを理由として懲戒免職としましたが、その後同人を刑事告発する可能性について慎重に検討を行ってきました。その結果、今般、水谷総領事の行為は背任罪に該当するとの結論に達し、本日、東京地検に告発状を提出しました。
外務省としましては、昨年来の外務省改革の一環として監察査察官を設置して、検事をこれに充て、不正の疑いのある事案の調査を強化してきており、今回発表しましたアトランタ、及びソロモンの不祥事はこうした内部調査の結果を受けて、厳正に対処したものです。他方、先般発表しました行動計画を初め、現在、全省をあげて外務省改革に取り組んでいるさなかにこのような不祥事と関係者の処分について発表することとなったのは極めて遺憾であり、国民の皆様に対して深くお詫び申し上げます。
外務省としましては、引き続き省員の綱紀粛正に取り組む考えであり、査察を中心として在外公館へのチェック体制の強化に努めてまいります。
(問)確認ですけれども、刑事告訴ではなく告発が2件ですね。
(官房長)そうです。
(問)今日、3件人事処分があったわけですけれども、ソロモンとかデンバーのものについては既に一部報道が出ていたり、週刊誌で報道が出ていたり、あるいは国会で質問が出ていたりというようなものでしたけれども、官房長御自身は、今後更に監察、査察を続行する上で更にこういうことがあり得べしとお考えでしょうか、あるいはこれでもう出尽くしたということでしょうか。
(官房長)もう出て欲しくないという気持ちはもちろん、非常に強いわけですけれども、出て来得るというふうに思ってます。監察査察室を外務省改革の一環として設置して、今日、同席していらっしゃいます北田検事に来ていただいているわけですけれども、監察、査察の業務というのが非常な重要性を増してきているわけですけれども、私どもとしては今後、同様の事案が出てくる場合には今回同様、可能な限り迅速に処理すると、それから厳正に対処するということでやっていきたいと思います。
(問)福田さんの件は何がきっかけで分かったわけですか。
(官房長)今、ご説明申し上げます。本件の発覚、及び調査経緯等をご説明します。福田元領事の後任として、本年3月にアトランタ総領事館で会計事務を引き継いだ会計担当者が総領事館名義の銀行口座の取引明細書を点検したところ、額面約4万ドルの小切手が3月12日に入金され、同日中に全額引き出されているということを4月の上旬に発見しました。その上で、在アトランタ総領事館は総領事館において本銀行取引の関係書類の確認に努める等した後、4月下旬に本省に報告を行ったと。これを受けて本省において監察査察室と在外公館課が協力して、福田元領事本人、及び関係者よりの事情聴衆、並びにその他の調査を現地、及び本邦において実施し、本件告発事実を特定するに至ったということでございます。
(問)もうちょっと詳しく教えてください。その4万ドルの小切手が入金された口座と、その振込先とか、総領事館事務所自体にかかるお金という趣旨ですか。金銭の出入りの具体的なところをもうちょっと具体的に説明していただけませんか。
(官房長)今、かなり詳しくご説明したつもりなんですが、ある総領事館名義の銀行口座があって、その取引明細を点検したと。額面でいうと、正確に言いますと4万43.55ドルの小切手が3月12日に入金されていたけれども・・・。
(問)どこから入金されたことになるんですか。
(官房長)これは共益費の、お手元にお配りした資料にあります、トライザックハーン社から共益費等の過払い分ということで、総領事館を受取人とするこの額面4万ドル強の小切手です。
(問)そこがよくわからないです。まず、トライザックハーン社なるその業種と、共益費というのは何を指すのか。
(官房長)トライザックハーン社というのは総領事館事務所の賃貸人です。
(問)不動産管理人とかそういうものですか。
(官房長)そうです。オーナーという、賃貸人です。まさにトライザックハーン社から事務所を借りていたわけです。それから共益費についての説明ですが、事務所の借りる場合に家賃を払うわけですが、家賃については1年分まとめて払っていると。それで家賃とは別に共益費というのがあって、これは共同ビル内に事務所を設けている場合に共用部分の運営にかかる経費、具体的には空調設備、エレベーター、監視機器等の維持、管理等に要する費用を各賃借人がそれぞれの専有面積に応じて支払う、それが共益費ですが、その共益費を払いすぎていたということで、過払いですよということで戻ってきた金額がお手元にある資料にある数字で、ということです。
(問)過払いはどういう原因で発生したのですか。
(官房長)共益費の支払方法としては過去一定期間に実際に要した金額が家主側より事後に請求され、その確定した請求額に対して実費を支払う方法や、家主側より向こう一定期間分として事前に請求される概算額を家主側に支払い、実際に要した金額との差益分を事後に清算する方法とがあると。過払いとは後者の場合で、見積に基づく概算額が実際の支出額より多かったケースに生じるものであり、右過払い分は家主から還付されることになるということです。
(問)要するに事前に払っておいて、1年間なら1年間・・・。
(官房長)清算払いです。ところが結果としては払い過ぎていたので、それが返ってきたということです。
(問)恐縮ですが、この年の共益費の全額というのは、総額はいくらぐらいになるのですか。その内の4万ドルなんでしょうか。
(官房長)平成13年の春に直金の共益費ということで、4万7389.44ドルを払ったのですが、実際には7,345.89ドルで足りたということで、その結果の過払いとして4万43.55ドルが生じたということのようです。
(問)全額引き出していて、その内の着服額が2万4,000ドルになっていますが、これは使っていない部分があったということでしょうか。
(官房長)間違っていたら同席の関係者に訂正して欲しいのですが、私の理解では現金化して公的な目的のために使って、一部を着服したということのようです。
(問)着服した額は具体的には何に使ったのでしょうか。
(官房長)調べた結果、そこは必ずしもよくわかってないだろうと思います。何に使ったかですね。着服したのははっきりしているのですが、それが現金のままで残っていたのか、何かに一部使ったのか、そこら辺は知りません。
(問)基本的に使ったものの引き算として2万4,000ドルが着服したということですか。
(官房長)そういうことだと思います。
(問)先程、ソロモンの場合は弁済というか代替品に使ったということですが、アトランタとデンバーのお2人は被害は弁済されたのですか。
(官房長)デンバーについてはもちろん弁済済みですし、アトランタの場合は弁済のプロセスにあるということだと思います。
(問)弁済の意思は表明されていますか。
(官房長)弁済の意思は表明されています。
(問)先程、卜部さんと斎藤さん、厳重訓戒処分、当時の肩書きは正確に確認していただきますか。
(官房長)ですから、この福田元領事がアトランタ総領事館の会計担当の館員のときの総領事です。ですから、当時の肩書きというかアトランタ総領事です。
(問)お2人とも。
(官房長)はい。そういうことです。
(問)ソロモンの件はどうしてわかったのでしょうか。
(官房長)ソロモンの事案の発覚の端緒、及び経緯についてご説明します。平成11年1月に白濱書記官がソロモン大使館を離任した後、白濱書記官在任中に大使館で購入した備品の調査を後任者が行いました。その結果、テレビ、ビデオ、冷蔵庫等の備品が所在不明になっていることを発見したということです。その後平成11年2月、白濱書記官は当時のソロモン大使館の臨時代理大使に対してこれら備品の一部を自宅で使用し、後任者に売却したということを認めました。白濱書記官は平成11年3月頃、臨時代理大使の指示に従い、テレビ3台、ビデオ2台、電子レンジ1台、掃除機1台を購入して、大使館に送付すると共に、後任者から受領した売却代金1,000ドルを返却したということです。その後、今年の6月頃、一部マスコミからの取材が我々に対してありまして、これを契機に北田監察査察官の監察査察室において本件調査を開始し、本件を特定したということです。
(問)福田さんの件なんですが、着服したお金を何に使ったかわからないというのは、福田さんが話してくださらないということですか。
(北田監察査察官)アトランタからメキシコに着任するに際して、持っていった、携えて持っていってメキシコに赴任したということです。
(問)それで、何に使ったかは分からないわけですね。
(北田監察査察官)その点は今後の告発に伴う捜査で明らかになると。
(問)福田さんについては、この1件だけで、他には類似の事案はないということでよろしいですか。
(官房長)お手元にお配りした資料の2、その他のところに被告発人は在アトランタ総領事館在勤中、告発事実の他にも総領事館の資金を私的に流用していた疑いがあるという経緯が書いてございますが、これはあります。
(問)詳細は明らかには・・・。
(官房長)はい、具体的にはわかりません。
(問)それを含めて2人の総領事経験者に対する処分なんですか。
(官房長)そういうことです。
(問)デンバーの方は被害総額は日本円で換算が書いていないのですが、総額いくらなのですか。
(在外公館課長)ご説明いたします。デンバーの場合は若干複雑なんですが、昨年7月に懲戒免職処分を発表したとき不正経理の対象となった金額は約8万1,000ドルですということでご説明いたしております。この8万1,000ドルというのは公邸の借り上げにかかわる部分が7万3,000ドル、その他諸々は食材の私的食費への流用等、不正経理の疑いがある額を積み重ねた額が8万1,000ドルということでございます。他方、水谷前総領事が国庫に負担をかけた、国に損害をかけたという国損額、国庫に返納すべき国損額の算定というのは、会計検査当局の算定で、額がこれとは異なります。これは具体的にどういうことかと申し上げますと・・・現時点までに確定した国損額は4万3,000ドルであり、これは既に国庫に返納されています。更に今後7年間の間に発生しうる国損額は7万7,000ドルです。両方合計いたしますと11万6,000ドルという計算になります。
(官房長)でも、国損額ということで私が国会で答弁してきている数字は4万3,000ドル。
(問)日本円換算は。
(官房長)今のレートで・・・。
(問)今の、今後7年間というのは、家賃を賃貸するに当たってむこうが必要以上に高く契約しているという分の積み上げ分だと考えてよろしいですか。
(官房長)その契約が続いているので、今後何年間かに渡って復損が生じうるという状態があって、他方その本人、水谷前総領事はその部分についても自分は手当てする必要があると、つまり先方が、家主の方が契約を変えて、適正水準に家賃の水準を下げるということであれば、将来生じうる復損部分、1万1,000ドル掛ける7年間の部分は別途弁済する用意があるという意思は示しているということですよね。
(在外公館課長)意思は示しておりますし、既にそれだけの金額を当方に預け越しています。
(問)なぜ、処分から刑事告発までこれだけの時間がかかったのですか。
(官房長)国会で私自身何度も答弁してきているのですが、この事案というのは関係者の間の権利義務関係が非常に複雑で、実際に告発するに耐えるような構成要件とか、そういう事実が特定できるかどうか検討に時間が掛かるということを申し上げてきている。その上で国会では大臣もそうですし、私も告発云々については慎重な検討を進めてきておりますということを申し上げてきたわけです。それでその慎重な検討を続けたことの結果、監察査察官の御協力を頂戴したわけですが、ここに至って告発するに耐えるという判断をしたと、そういうことです。
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