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土屋外務大臣政務官演説
国連経済社会理事会
ハイレベル・セグメントにおける 土屋外務大臣政務官ステートメント 平成15年7月1日 議長、大臣閣下、御列席の各国代表の皆様、 本日ここに、日本政府を代表して、国連経済社会理事会に参加することは、私の大いなる喜びです。今回の会合が、貴議長の卓越したリーダーシップの下、実りある形で進められていることを高く評価致します。 (「成長」と「コミュニティ・エンパワーメント」) 議長、 貧困削減を実現するためには、「成長」が不可欠な要素です。世界の貧困層の四分の三が村落部に居住していますが、この村落地域の貧困と戦うためには、勢いがあり、広範で衡平な経済成長が不可欠です。 「成長」を実現し、農村地域開発を達成する手段としては、個々の地域における、農業生産性の向上や、保健衛生の向上、女性の社会的地位の向上、教育水準の向上等をバランスのとれた形で実現することが必要です。また、地域同士の連携の強化、地域の産品の都市部への販路の創出なども重要です。その際、国レベルの視点だけではなく、「良い統治」を前提としつつ「コミュニティ」に視線を合わせたアプローチ、コミュニティに着目し、強化すること、即ち「コミュニティ・エンパワーメント」を実現することが必要です。 (我が国及びアジアの経験) 議長、 今述べたことの証左として、我が国の経験に触れたいと思います。我が国では農村地域の発展過程において、国レベルの取り組みだけではなく、地域に根ざした多くの取り組みを行ってきました。例えば、農業開発の分野においては、「農業共同組合」を整備し、発展させたことが大きな役割を果たしてきています。右を通じて、各農家は、機材の共同購入、共同利用、技術指導のほか、共済制度など、事業活動から日常生活まで、包括的な協力関係のもとに活動しており、農村の生活水準向上や発展に大きく寄与しました。 また、保健衛生分野においては、「保健婦制度」があります。全国の地域、学校、工場等での疾病予防、医療水準の向上のために、「保健婦」を配し、これを保健所等と有機的に連携させたことが、我が国の草の根レベルでの保健衛生水準の向上に大きく寄与してきました。 更に、1945年の終戦直後に行ったインフラ整備としての「簡易水道」の普及は、我が国女性が、用水供給という業務から解放されることにつながり、台所革命をもたらし、女性の社会進出に貢献しました。 教育分野については、我が国では中世から教育へ信奉があり、19世紀の江戸(現在の東京)は、その分量では世界一の印刷物が発行される都市でした。さらに19世紀半ばの国の体制の変革後、初等教育の義務化を徹底した結果、農村地域開発の基礎となる人造りに大きく寄与しました。 以上のような地域に根ざした取り組みは、それぞれが農村地域を含め我が国全体の発展に大きく寄与してきたのです。 また、これらの地域活動は、その全てが我が国の経験と一致するとは言えないものの、我が国のみならず、近年経済成長を遂げた東南アジアにおいても、一部共通してみられる要素です。 このようなアプローチの成功は、近年広く注目されている「人間の安全保障」という理念の有効性を証明するものです。「人間の安全保障」とは、様々な脅威に直面している個人一人一人やコミュニティに着目し、一人一人を保護・能力強化することによる人づくり、社会づくりを通じて国づくりを目指すという考え方です。この考え方は、緒方貞子・前国連難民高等弁務官、及びケンブリッジ大学のアマルティア・セン教授を両共同議長とする「人間の安全保障委員会」が、本年5月にアナン国連事務総長に対して提出した最終報告書においても指摘されております。 (途上国の農村地域開発についての我が国の対応) 議長、 我が国はこれまで、途上国の農村地域開発に資する多くの支援を行ってきております。 例えば、旱魃地域の栽培に強い品種、ネリカ米を研究する西アフリカ稲作協会に対しては、資金面における支援に加え、研究者の派遣といった人的貢献を行っております。また、教育分野においては、昨年6月に低所得国に対して五年間で20億ドル以上の支援を実施することを決定するとともに、「成長のための基礎教育イニシアティブ」を発表しました。更に農村地域での保健衛生にも重要な意味を持つ感染症対策の分野については、我が国は、九州・沖縄サミット以来、取り組みの重要性を強調し続けてきており、世界からのポリオ根絶に向け、2005年までに約8,000万ドルを目標に支援を実施していく考えです。また、2002年1月に「世界エイズ・マラリア・結核対策基金」が創設されましたが、我が国はその理事会において積極的な役割を果たしております。 加えて農業共同組合の組織運営や、保健衛生分野での看護士の育成では、途上国からの研修員の受け入れや、専門家の派遣、農村地域において地域住民に直接技術指導を行う青年海外協力隊等の技術協力を以前から実施しております。また農村部のジェンダー強化等のプロジェクトを推進してきました。 因みに、私の故郷である埼玉県では、途上国からの留学生を農業大学校に受け入れており、農業教育の分野で途上国支援に寄与しております。農村地域の開発のためには人口の都市部への流出を押え、農村が有為な人材を吸収できるようにすることが重要です。埼玉県の試みは、そのための技術協力として意義のあるものと考えております。 農村地域開発を実現する上では、貿易が果たす役割も大きなものがあります。我が国は後発開発途上国からの市場アクセスの改善に積極的に取り組んでおります。また、その一方で、我が国は、WTOにおける途上国問題が適正な形で期限内に解決され、ドーハ開発アジェンダが成功裡に妥結することを重視しており、そのために最大限の交渉努力を傾注していく所存です。 (良い統治、オーナーシップとパートナーシップ) 議長、 日本は、途上国の市井の人々のポテンシャリティを信じ、企業家精神を信じています。なればこそ「コミュニティ・エンパワーメント」を通じた農村地域開発を実効的なものとするためには、途上国自身の各国事情に沿った取り組みが何より重要です。また、ODA、海外直接投資を誘致するだけではなく、自国や地域の資金及び自国で得られた収入を、汚職や腐敗の無い形で自国の投資に還流させ、堅固な経済基盤を構築するという視点も重要です。右をもたらすものが、「良い統治」です。従来から我が国が主張してきているとおり、「良い統治」を前提として、途上国自身のオーナーシップの観点から自らの手で開発を進め、各国、国際機関、NGOなどがパートナーとしてそれに呼応するとき、真にその国のニーズにあった国づくりが可能となるのです。 アフリカ諸国は2001年に「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(New Partnership for Africa's Development)、所謂NEPAD(ネパッド)を策定し、「オーナーシップ」、特に「良い統治」に基づく国づくりを進行させています。私達の途上国の人々に対する信頼が正しかったことの証左だと思います。このため我が国は右の考え方と理念を共有する「アフリカ開発会議」(Tokyo International Conference on African Development)、所謂TICADプロセスを通じ、NEPAD支援を行っております。今回の経済社会理事会ハイレベル・セグメントで行われる議論が本年9月末に、我が国において開催されるTICAD III にとっても有益な貢献となることを期待したいと思います。 ご清聴ありがとうございました。 |
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