矢野外務副大臣演説
アフリカ投資に関する東京会合での矢野外務副大臣挨拶
平成15年2月26日
- 本日は、投資問題に知見を有する多くの専門家、また経済界の皆様にお集まり頂き、誠にありがとうございます。また、アフリカをはじめ海外よりこの会合に出席するために来日いただいた方々には、訪日を心から歓迎申し上げます。アフリカ投資に関する東京会合の開催にあたりまして、御挨拶させて頂きます。
- 本年は、第1回TICAD(ティカッド)(アフリカ開発会議)が開催されてから、10年目に当たります。TICAD(ティカッド)は、アフリカ開発に対する世界の関心を喚起し、この10年間で、国際社会のアフリカに向ける目は大きく変化しました。近年では、日本がG8の議長を務めた2000年の九州・沖縄サミットに際して、アフリカを含む途上国首脳との意見交換が行われました。2年前には、当時の森総理が、日本の現職総理としては初めて、アフリカ諸国を訪問しています。昨年は、小泉総理も参加された持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)を初めとする多くの国際会議において、アフリカ開発が最重要テーマの一つとして取り上げられました。本年9月末には、第3回TICAD(ティカッド)会合を東京で開催する予定です。
こうした中で、アフリカ開発に貢献する重要な取り組みとして投資促進について議論することは誠に時宜を得ていると考え、本会合を開催することとした次第です。本日はアフリカ諸国より投資関係者にご出席いただいており、それぞれの国での投資誘致の取り組みについてもご紹介頂けると思います。
- アフリカの経済発展のためには、貿易・投資を通じて、ダイナミックな世界経済との関係を強化することが今や必須です。そのために、我が国は、貿易・投資関係を促進するとともに、アフリカ自身の活力を育てるべく効果的な援助に努めてきました。
(1)まず援助については、貧困削減のために経済成長が重要であるとの考え方の下、インフラ整備、人材育成、政策支援等を積極的に行ってきました。日本の2000年の対アフリカODAはアメリカ、フランスに次いで第3位の割合を占めています。特に人材育成は、日本が重視している分野であり、また、経済活動を行うための前提である教育・保健・水供給分野では1998年からの5年間で900億円程度の無償資金協力を表明、2003年度中にこの目標を達成できる見通しです。重債務貧困国に対しては、日本は計48億ドルもの債務救済を実施する旨決定していますが、これはG8諸国中でも最大の額となっており、重要な貢献を行っています。
こうした援助に加え、グローバリゼーションの進む中でアフリカを孤立化させることなく、貿易と投資を通じて、アフリカ経済を真に世界経済に統合する努力が求められています。
(2)貿易については、日本政府は、後発開発途上国(LDC)からの輸入に関する無税・無枠措置の拡大と、LDC以外の開発途上国に対する一般特恵制度(GSP)に関する品目の拡大を、本年4月より実施する考えです。ご注目いただきたいのは、従来より、日本のLDC産品に対する無税・無枠の割合は、鉱工業品については金額ベースで約99%、農産品については約97%であり、今回の拡大の結果、全ての品目のうちLDC産品に対し無税・無枠となるものが約93%にも上るという点です。また、日本の原産地規則は明快なものであり、現実に特恵措置を活用し易い制度となっています。このように、今後も、アフリカを含む途上国との貿易関係を重視していきたいと考えています。
ただ、これらの貿易水際措置だけでは十分ではなく、今後は、特定の一次産品に過度に依存した貿易構造を改め、アフリカの生産力を増強するための努力を強化する必要があると考えます。
(3)投資については、日本は、投資促進に資する開発援助、投資金融の供与、投資ミッションの派遣等の取り組みを行っています。私自身、既に何度もアフリカを訪れていますが、本年3月にもアフリカ諸国を訪問し、改めて現地の事情を視察したいと思います。本日は、日本経団連サブ・サハラ地域委員会の安崎委員長を始め、アフリカ投資事業に直接携わってこられた日本企業の方々にも御参加頂いております。こうして投資の促進のために、着実に、地に足のついた努力を続けていくことが重要と考えます。
- 更に、今後に向けては、アジア全体としてアフリカとの経済関係を如何に強化していくかという視点が益々重要になってきています。
(1)第2回TICAD(ティカッド)で採択された「東京行動計画」では、アジア・アフリカ間協力が一つの焦点でした。「アジア・アフリカ・フォーラム」や「アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム」等の努力も行われています。過去2回開催された「ビジネス・フォーラム」では、約130件、約1億ドルの投資取引が仲介されています。
(2)JICAでは、平成13年度にアフリカから日本に約1,100名の技術研修員を受け入れていますが、それに加え、第三国研修制度を利用して、約500名のアフリカ諸国からの研修員をアジア諸国に受け入れています。
(3)1999年に、クアラルンプールに、「アジア・アフリカ投資・技術移転促進センター」(通称ヒッパロス・センター)が開設されましたが、日本は国連工業開発機関(UNIDO(ユニド))を通じて、その設立を支援してきました。本日、ヒッパロスセンター顧問も御出席頂いていますので、過去4年間の活動についての興味深いお話しを頂けると期待しています。
- これまでに述べた他にも、過去10年間には、様々な展開がありました。
(1)良い展開は、アフリカ諸国における民主化、安定の進展と、地域的協力の発展です。アフリカ諸国がガバナンスの向上を重視していることを高く評価しています。また、アフリカ諸国相互間の経済関係の障壁を下げることが、地域経済の発展に大きな重要性を持ちます。例えば、南部アフリカ開発共同体(SADC(サダック))には、日本は資金協力、専門家派遣などの協力を行っています。また、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD(ネパッド))の発展がアフリカ経済の発展に良い影響をもたらすことを期待しています。この観点から、日本は、OECDによるアフリカン・ピア・レビュー(相互審査)への協力を含め、NEPAD(ネパッド)支援のために10万ユーロを拠出することとしました。また、平和定着・人材養成等の「国造り」に加え、「地域協力造り」のための協力を日本政府として強化していく考えです。
(2)バブル経済がはじけた後の日本においては、構造改革をはじめとする、経済の再生に向けた取り組みが進められています。日本企業も、海外展開の再構築をしています。グローバリゼーションが進み、世界市場を舞台とする競争が激化する中で、日本企業にとって、アフリカの比較優位をどう捉え、その海外展開の中でどうアフリカを位置付けるのかについても、本日御議論があるものと期待しております。
(3)また、多くの国際機関で、直接投資と開発に関する分析を行い政策 提言をとりまとめていると伺っております。本日は国連貿易開発会議 (UNCTAD(アンクタッド))、OECD、世界銀行、アフリカ経済委員会の専門家に各機関 での取り組みをご紹介いただき、参考にさせていただきたいと思ってお ります。
以上述べましたような幅広い視点を踏まえながら、アフリカ投資の現状、問題点、改善策等について自由で率直な議論の場としてこの会合を役立てて頂きたいと思います。日本政府の中での援助、貿易、投資などの様々な政策プログラムの整合性を強化する上で、この会合の結果を活用させて頂く所存です。更に、この会議で得た知見は、本年6月にフランス・エヴィアンで開催されるG8首脳会議、本年9月末に東京で開催される第3回TICAD(ティカッド)などの場で活かし、アフリカの経済発展への支援に役立てていきたいと考えています。
御静聴ありがとうございました。
|