外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 報道・広報 演説
演説
山口外務大臣政務官演説

山口外務大臣政務官の
「エル・サルヴァドルにおける我が国の対中米政策に関する政策スピーチ」

平成13年8月1日

 本年5月の小泉政権成立とともに、外務大臣政務官を拝命いたしました山口泰明でございます。3人おります外務大臣政務官のうち、私は米州、アフリカ、南西アジア及び日本のODA政策を担当しています。一見意外に思われるかも知れませんが、日本と中米諸国との間には活発な要人往来があり、私の大臣政務官就任後だけでも、エル・サルヴァドル副大統領やグァテマラ大統領が訪日され、こうして私が中米各国を歴訪させていただいたりしております。日本には、「百聞は一見にしかず」という諺がありますが、私は自分の担当する地域について直に見聞を得るため、この機会に中米・カリブ諸国を訪問し、各国において政府関係者等の方々と意見交換を行いに参りました。今回の歴訪の最初の訪問国に、中米の要である貴国エル・サルヴァドルを訪問させていただき、我が国の対中米政策について講演させていただく機会を得ましたことは、私の光栄といたすところであります。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 本論に入ります前に、本年はじめに貴国を襲った地震により甚大なる被害を受けられた犠牲者のご家族、被災者の方々に対し、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。先般我が国を訪問されたキンタニージャ副大統領からは、貴国国民の皆様が善意と希望を失わずに震災復興と国家の再建に尽力されていると伺っております。我が国も被災者への支援を行いましたが、少しでも皆様のお役に立ったものと期待します。

 我が国の対中米政策についてお話しするにあたって、まず、我が国と中米地域との関係について述べてみたいと思います。80年代は中米各地で紛争が勃発し、経済発展が大幅に遅れたため、「失われた80年代」と呼ばれました。貴国におきましても、70年代までは多くの日本企業が進出し、紡績産業を中心に在留邦人が400名近くもいましたが、内戦を境にこれら企業の殆どが撤退を余儀なくされたことは、皆様も御高承のことと思います。
 90年代に入ると、貴国をはじめとした中米諸国は、相次いで内戦の終結を達成されました。そして、内戦による破壊からの復興と共に、安定と平和の達成に向けての努力を払って来られました。特にエル・サルヴァドルは、国際社会の支援を得つつ98年に和平合意の完全履行を宣言し、和平構築のモデルを世界に示しました。
 このような貴国や中米諸国の和平推進努力に対し、我が国を含む国際社会は、できる限りの支援を行ってきました。例えば、我が国は、中米各国が内戦からの復興を探求する中で、民主化努力及び市場経済改革に基づく経済改革努力の支援という我が国ODAの原則を踏まえ、二つのD、すなわち民主化と経済開発を車の両輪と位置づけ、両分野に重点を置いた支援をして参りました。この基本政策に基づき、我が国は90年代を通じ中米地域に対する経済援助を拡充してきました。

 中米地域において内戦が終結に向かいつつあった88年からその後の10年間で、すなわち97年までに、我が国による対中米及びドミニカ共和国への経済援助の額は8,400万ドルから2億1,800万ドルへと、実に2.6倍に増えました。エル・サルヴァドルについては、貴国において内戦が終結した92年に798万ドルであった援助額は、97年には6,800万ドル、つまり8.6倍に増大しています。こうして我が国は中米における主要援助国の地位を占めるに到っています。
 このような中米諸国による自助努力と我が国を含む国際社会の支援により、中米地域においては概ね民主化が定着しつつあり、また、各国のマクロ経済指標はおおむね順調に推移していると言えましょう。こうした実績を基盤にして、中米諸国は21世紀において更なる発展を遂げるものと確信しております。しかしながら、発展をより恒久的かつ強固なものとするためには、解決しなければならない幾つかの課題もあると考えます。

 第一の課題は、中米諸国において経済・社会的格差が、国内において存在するのみならず、域内諸国間においても厳然と存在することです。各国間格差の面でみると、現在中米各国の99年の一人当たりの国民所得はニカラグアの432ドルから、パナマの3,341ドルと相当の格差があります。同時に、所得分配の指数であるジニ係数により各国内の社会的公平の度合いを測ると、我が国が五位であるのに対し、中米で最も公平な社会が実現されていると言われるコスタ・リカでも、ジニ係数が計測されている世界112カ国の中で86位、最も高いグァテマラで109位となっています。つまりコスタ・リカでも所得分配について言えば、かなりの格差があることがわかります。
 こうした地域格差、或いは富の偏在という大きな問題を前に、エル・サルヴァドル、ひいては中米諸国が将来、国家の発展を更に達成していく上で、どのような改革が必要かということで我が国におけるこれまでの経験等を踏まえ、私個人としてあえて率直な提言をさせていただきたいと思います。端的に申し上げれば、それは財政改革、特に税制面における抜本的な改革ではないかと思います。即ち、遺産相続、資産税の他、所得税等の累進課税制度の導入や見直しを改めて検討されてはと思います。同時に所得税を強化するとの観点から厳格な監察制度の確立も不可欠な要素です。いずれにしましても国民一般の生活向上に資するべく関係者の尽力を期待します。

 第二の課題は自然災害に対する脆弱性の問題です。
 中米地域では過去10年間、2,3年おきに強いハリケーンが襲来しており、その度多くの犠牲者と被害をもたらしております。また地震も不定期ながら発生しています。近年では98年のハリケーン・ミッチや本年初頭の貴国における大地震がその例です。エル・サルヴァドルにおいては、幸いにして短期間の間に効率的に復興が達成されつつあると伺っておりますが、発展に対する大きな阻害要因となっていることは確かです。同様に台風や地震による被害を幾度となく受けている我が国としては、引き続き復興を支援するとともに、災害の経験を生かした防災対策等に関する技術協力も行っていく所存です。

 第三の課題はインフラの整備・統合です。
 中米地域の発展には、過去40年に及ぶ中米経済統合の努力が大きな役割を果たしてきました。地域統合の発展には、ヒト、モノ、資源、情報などの自由な移動が重要ですが、中米地域においては、このためのインフラ整備が不足しています。ここでいうインフラとは、単に道路や電力網などのハード・ウェアだけでなく、例えば各国間の税関制度の整合性の向上など、いわばソフト・ウェアの側面も含めた、複合的なものを指します。中米地域には地域協力による規模の経済が働き得る余地が大きく残されており、中米統合機構は、こうしたハード、ソフト両面におけるインフラ統合の調整役として、大きな機能を果たしうると考えています。そのために、中米統合機構の制度強化を今後更に図るべきであると考えています。

 ここまで、今までの我が国の対中米政策について、そして、中米地域が更なる発展を遂げるための諸課題について、私なりの考え方を話してきました。ここで、我が国として今後中米地域の発展に向けての自助努力を支援するために、この地域との間にどのような関わり方をしていくか、という将来ビジョンについてご説明します。
 まずは、既に行われている「日・中米対話と協力フォーラム」という政策協議について、そして、最近のフォーラムで双方が合意した両地域間の新しい関係構築についてご説明します。
 先般申し上げた通り、我が国は、90年代を通じて中米諸国の平和と民主主義の定着、経済復興と発展のための重要なパートナーとなりました。そして、内戦終結から復興・民主化という情勢変化を受け、日・中米双方において、外交政策について相互理解の促進を図り協力関係を更に強化する必要性が認識され、95年9月、第50回国連総会の際に開催された日・中米外相会談の際、日・中米フォーラムの設置が合意されました。その後、日・中米フォーラムは基本的に外務次官レベルで毎年行われ、過去5回の会合が開催されました。
 第5回会合は大震災直後の本年2月、当地サン・サルヴァドルで開催され、震災にも拘わらず、貴国政府が立派に議長を務めました。この会合においては、日本と中米を巡る国際環境の急速な変化に伴い、両者の間に共通の利害と、協調して対処すべき問題が拡大しつつあることにつき、双方が認識を新たにしました。また、このフォーラムは、両者の関係がより成熟したパートナーシップを構築していく新たな段階に入るための契機となりました。そして、最も重要なこととしては、この会合における議論を通じ、我が国と中米地域が今後パートナーとして更に関係を緊密化させていく上での二つの課題が浮かび上がってきました。

 ひとつは、中米地域における地域協力への支援です。我が国は、中米諸国への経済援助を、基本的に二国間援助という形で行っています。そして、この形態の援助は、各国の経済・社会開発において一定の成果を上げておりますし、今後も我が国の経済援助の主流であり続けることは間違いありません。他方、中米地域が90年代になって統合を深めて行くにつれ、二国間援助の形態だけでは対応できない要請が発生してきました。例えば、ハリケーン・ミッチを契機に、地域レベルで防災対策を講じることの必要性が認識され、我が国を含めた対中米支援国に対して広域的な支援が要請されました。また、メキシコのフォックス大統領が提唱し、中米各国も支持している「プエブラ・パナマ計画」につきましては、メキシコ南部を含む中米の地域的発展を目指すという趣旨を評価し、我が国として可能な支援を検討する所存です。
 我が国としては、第5回日・中米フォーラムにおいて、こうした広域的な協力要請についても対応を検討することを約束し、現在はそのフォローアップとして、広域案件への協力の方策を模索しているところであります。例えば、我が国は中米統合機構事務局に対してJICA専門家を派遣しておりますが、この専門家を通じ、具体的な広域案件の形成に向けた仕組み作りを試みているところです。
 第5回会合において浮かび上がったもう一つの課題とは、両地域間の関係をより多角化するということです。70年代までの間我が国民間企業は繊維部門を中心に中米地域に進出していましたが、80年代以降、中米紛争の勃発と共に企業の撤退が相次ぎ、紛争が終結した90年代以降も我が国企業による投資は依然として低調なものとなっています。他方、既にご説明したとおり、90年代以降、我が国の対中米経済援助が急激に拡大した結果、我が国と中米地域の関係は、主に経済援助を中心に展開することとなりました。

 21世紀を迎え、中米地域がより自立的な経済を確立していくにつれ、我が国と中米地域の関係も、単なる経済援助だけでなく、より多角的な関係に変革していかなければならないと考えています。我が国も、そして中米地域も、パートナーシップの構築を求めているのです。
 まず、経済関係についていえば、両地域の関係は、過去数年間の間に着実に質的な変化を遂げつつあります。
 我が国からの対中米輸出は、94年から99年までの五年間で、中米側の経済自由化に伴い、平均年4.5%の割合で急速に拡大しました。同期間に、中米の対日輸出は平均年3.7%の割合で拡大しました。この結果、中米諸国の努力にも拘わらず対日貿易赤字が拡大しています。しかしながら、中米からの対日輸出に大きな質的な変化が起こりつつあることを見逃してはなりません。
 94年にはコーヒー等の食料品が中米からの対日輸出の81%を占め、原料品が9%、工業製品が9%となっていましたが、99年には食料品が68%に減少し、代わって工業製品が23%に急拡大し、原料品は横這いとなっています。明らかに過去5年間の間に中米からの対日工業製品輸出が増加しているのです。こうした産業構造の変化と、輸出増加の流れを生かし、中米諸国は戦略的な貿易振興政策を推進していくことが重要と考えます。ただ、残念ながらエル・サルヴァドルの対日輸出について言えば、ここ5年間増加基調にあるとはいえず、エル・サルヴァドル官民の一層の輸出努力が期待されます。我が国は、様々な方策で対日市場参入を積極的に支援いたします。
 また、中米地域に進出している日本企業の活動分野をみると、大きく繊維産業、コーヒーを中心とした一次産品の対日輸出、そして車両や機械類の日本からの輸入という三つの分野があります。このうち、CBI拡大法施行やメキシコとの自由貿易協定によってマキラ企業による対北米輸出が拡大するという見込みから、繊維関連産業においては明るい見通しを有している企業がある一方で、CBI拡大法やメキシコとの自由貿易協定については、中米諸国の対外貿易政策についてのビジョンが明確に見えないことから不安を有しているという日本企業の声もあります。ただ、日本の景気後退のために企業進出が世界の各地域で伸び悩んでいるなかで、ここ8カ月間で対エル・サルヴァドルには新たに3社の日系企業が進出しつつあることは特筆されます。さらに様々な場と方法で日本の実業界にエル・サルヴァドルの投資環境を紹介し、投資誘致の努力を重ねてゆく必要がありましょう。
 中米企業の市場進出に関する我が国の支援の一環として、ジェトロを通じた各種物産展の定期開催があり、昨年はエル・サルヴァドルのブースも設置されたと報告を受けています。またこうした機会を生かし、高いレベルからなる経済ミッション派遣による投資セミナー等を開催し、双方向の交流を増やすことが不可欠であると思います。

 両地域間の関係多角化は、単に企業活動だけではなく、観光、文化、政治、学術など、様々な分野においてフロンティアが開けています。中米諸国の美しい自然環境や、マヤ文明の遺跡などの存在を考えれば、観光の分野は、日・中米間の関係において有望な分野です。この分野において現在行われている試みをご紹介すると、我が国の民間旅行代理店が中米諸国政府に対してオフィスを無償で提供し、中米諸国共同の観光事務所を開設するという計画があります。既にこの計画は部分的に開始されたと承知しています。
 政治の分野では、日・中米フォーラムの場において政治協力のセッションが設けられ、国連安全保障理事会の改革や、WTOの新ラウンドの問題などが協議されてきました。この他、グローバリゼーションの進展に伴って発生した地球規模の諸問題について、今後日・中米フォーラムの場において協議することが重要であると考えます。

 最後に、エル・サルヴァドルへのメッセージとして、ひとこと申し上げます。日本を含めた国際社会は、震災からの復興と今後の発展に向けた貴国の取組みを注意深く観察しています。我が国は、貴国が内戦からの復興の世界的なモデル・ケースとなったように、今後は中米における経済及び社会的発展のモデルケースとなることを期待しています。また、貴国が発展の配当をただ自らだけのものにすることなく、中米統合のリーダーシップを発揮し、中米地域全域の発展のために貢献されることを期待しています。その意味で両国の交換公文によって確認された我が国からの借款によるクトゥコ港の開発事業がエル・サルヴァドルのみならず、近隣諸国の経済発展にも大きく寄与するために、エル・サルヴァドルが積極的な役割を果たされるよう期待しています。

 ご静聴ありがとうございました。



政務官 / 平成13年 / 目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省