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8月4日(日本時間5日)ワシントンで、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき初めて開かれた仲裁裁判所*1は、昨年7月にオーストラリアおよびニュージーランドによって強制的に付託されたみなみまぐろ事件*2に関し、わが方の主張を受け入れ、同裁判所には管轄権はないこと、および昨年8月に国際海洋法裁判所(ITLOS)が発出した暫定措置命令*3は無効とする旨の判決を下した。この判決は日本側の主張を認めるものであり、喜ばしいことである。
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2. |
今次判決は、原告が訴えを提起するべき裁判所がみなみまぐろ保存条約に基づくものでなくてはならないことを判示したにすぎず、わが国が独自に実施した調査漁獲(EFP)の適否等に関する本案(訴えの中身)に係る事項ついては、何ら判断が下されていないことを認識しなければならない。
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3. |
更に、今次判決は、両当事者の自制や交渉の促進、そのための独立した第3者の活用なども指摘していることを認識したい。
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わが国としては今次判決を踏まえて、みなみまぐろの資源の保存・管理という長期的な目標の達成を目指し、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の機能を回復させ、韓国や台湾といった第三者も取り入れた包括的なみなみまぐろ保存条約体制を確立するため、引き続き努力して参りたい。
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(参考)
*1 仲裁裁判所
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シュウェーベル前国際司法裁判所所長(裁判長:米)、山田中正早稲田大学法学部教授(日)、キース・ニュージーランド控訴院裁判官(NZ)、トレッセルトEFTA裁判官(ノルウェー)、フェリシアーノWTO上級委員会委員の5名が当事国である日本、オーストラリアおよびニュージーランドにより仲裁人に任命された。
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*2 みなみまぐろ事件
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みなみまぐろの資源状況に関するデータを収集するため、日本が1998年および1999年に実施した調査漁獲について、オーストラリアおよびニュージーランドが国連公海漁業条約等に違反するとして、同条約に基づく仲裁手続きを開始した事件
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*3 暫定措置命令の主要な内容
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(イ)3国は、合意のない限り、最後に合意された97年の国別割当量の範囲内で漁獲を行う。
(ロ)3国は、合意のない限り、97年の国別割当量を超える調査漁獲を行わない。
(ハ)日本は、1999年及び2000年の日本の漁獲枠から1999年に日本側が調査漁獲した量を差し引く。
この結果、我が国は99年には711トンの漁獲削減を行い、2000年には1,487トンの漁獲削減を行う予定であった。
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*4 判決理由の中で示された裁判所からの要請/示唆
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(1)両当事者が、暫定措置命令の内容や同命令に基づいて行った自らの決定を無視するべきではない。
(2)紛争を悪化させかねない一切の一方的行為を両当事者が控えることが紛争解決の促進につながる。
(3)双方の多大な努力の結果溝は狭まっており、残る意見の相違について新たな交渉が行われる可能性も現実的である。
(4)交渉が行き詰まった際には独立3者を活用すること等が必要である。
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