G7/G8

国連大学公開会議「地球規模の課題に取り組むためのG7・国連パートナーシップ」における川村泰久外務報道官の講演
「伊勢志摩サミットの進捗,計画及び展望 日本の計画と展望」

5月19日(木曜日) 於:国連大学

平成28年6月29日

英語版 (English)

1 起語

 デイビッド・マローン学長,ご紹介ありがとうございました。
 3月,ここ国連大学において,外務省は,国連大学と,国連創設70周年を記念してシンポジウムを共催し,安倍総理より,記念すべき70周年にあたる2015年と,日本の国連加盟60周年にあたる2016年の2年間を,「具体的な行動の年」に位置づけるという決意を述べました。

 G7サミットは,国際社会が直面する様々な課題について,民主主義,法の支配,人権といった基本的価値観を共有するG7の首脳が,一つのテーブルを囲み,率直に意見交換を行い,首脳宣言という形で具体的解決策を世界に提案するフォーラムですが,この取組の多くは,まさに,国連70年の歩みと軌を一にするものでもあります。

 本日は,「具体的な行動」の一つとして,議長国である日本が,G7伊勢志摩サミットにおいて,G7各国を牽引しつつ,国際社会の抱える諸課題に対してどのようなメッセージを発出したいと考えているか,その抱負をご紹介したいと思います。

2 世界経済

 サミットは,1975年,ニクソン・ショックや第1次石油危機などの諸問題に直面した先進国の間で,世界経済問題に対する政策協調について首脳レベルで総合的に議論する場が必要であるとの認識に基づき開催されました。
 年明け以降,中国の景気減速への懸念,原油価格の低下などを背景に,世界的に市場が大きく変動し,世界経済の不透明さが増す中,現下の経済情勢は,再び今回のサミットの最大のテーマの1つとなるでしょう。

 世界経済の持続的,かつ力強い成長を実現するために,今こそG7が協調してリーダーシップを発揮し,世界経済の成長のビジョンと方策を明らかにすべき時です。G7議長国として,各国首脳と突っ込んだ議論を行い,金融に加え,構造改革の加速化,機動的な財政出動を,バランスよく,かつ協力しながら組み合わせて,世界経済を再活性化させるための明確なメッセージを発出していきたいというのが日本の考えです。加えて租税回避,腐敗対策,不公正なダンピングとこれと密接に結びついた過剰生産問題も公正な経済運営との観点から議論されることが予想されます。

 安倍総理は,3月末の核セキュリティ・サミットの際には,オバマ米大統領やトルドー・カナダ首相と,そして今月初頭には,欧州を訪問し,キャメロン・イギリス首相,オランド・フランス大統領,レンツィ・イタリア首相,そしてメルケル・ドイツ首相と,その使命感と責任感を共有できたとしています。

3 政治・安全保障

 また,我々が享受している国際社会の安定と繁栄は,G7各国や国連が依って立つ,民主主義,法の支配,基本的人権の尊重といった普遍的価値を土台とする秩序の産物と言えますが,このような国際秩序が,今,一方的な現状変更の挑戦に直面しています。

 テロ・暴力的過激主義はその最たる例です。
 国連,そしてG7は,累次の安保理決議や首脳宣言の採択と具体的フォローアップを通じ,様々なテロ対策のイニシアティブを取ってきました。
 シリアなどに端を発するテロあるいは難民問題に対処していくためには,水際対策や緊急人道支援のような短期的な取組に加え,その背景にある根本原因に中長期的に取り組み,中東地域のみならず,世界全体で,暴力的過激主義を生み出さない寛容で安定した社会の構築に向けた支援を積極的に進めていく必要があります。そのような考えの下,今回の伊勢志摩サミットにおいても,G7広島外相会合の結果を踏まえ,中東問題を十分議論し,G7として特に努力を傾注することが有益と考えられる具体的な施策を「G7テロ対策行動計画」としてまとめる考えです。

 さらに,海洋においては,緊張を高める一方的な現状変更の試みのエスカレートなど,法の支配に基づく国際秩序を揺るがすような行動が見られています。伊勢志摩サミットでは,外相会合で採択した海洋安全保障に関するG7外相声明を基礎として,開かれた自由で平和な海を守るため,G7が国際社会と緊密に連携していくとの決意を確認することを目指しています。

 また,気候変動やエネルギー,そして,8年ぶりにアジアで開催されるサミットですので,アジア太平洋の情勢等についても,G7首脳と率直に議論していきます。

4 日本が推進する課題

 さらに,伊勢志摩サミットでは,日本がリードしてきた「女性が輝く社会」,質の高いインフラ,保健などにも光を当て,国際社会の取組を主導していくことを目指します。
 これらの課題は,まさに,国連創立70周年と期を同じくして2015年に採択された,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなすこととなった要素でもあります。
 この機会に,各課題についての日本の考え方につき少し説明を加えたいと思います。

5 質の高いインフラ

 まず,質の高い成長です。
 現在,世界のインフラ投資の需要には供給が追いついておらず,そのギャップは,年1兆ドルに上るとされていますが,この対策には,短期的かつ量的な視点のみならず,中長期的かつ質的な観点も不可欠です。日本は,この観点から,長年,アジアを始め世界において「質の高いインフラ投資」を推進してきました。

 特に,アジアは,21世紀の世界の成長センターであり,その膨大なインフラ需要にいかにして応えていくかは非常に重要な課題です。
 「質の高いインフラ」とは,一見,値段が高く見えるものの,使いやすく,長持ちし,そして,環境に優しく災害の備えにもなるため,長期的に見れば安上がりなインフラを指します。こうした点を踏まえインフラ投資を行うことにより,日本は,相手国のニーズを十分に踏まえつつ,現地の人々の雇用を生み出し,スキルを高め,暮らしを改善することに貢献してきました。

 伊勢志摩サミットでは,日本がリードしてきた「質の高いインフラ」等に焦点を当て,国際社会の取組を主導していく所存です。具体的には,国際社会に対して,持続可能な成長に資する形で「質の高いインフラ投資」を実践することの重要性を発信し,G7としてどのような貢献が可能か議論したいと考えています。

6 保健

 保健もまた,日本が注力してきた分野です。
 日本は,2000年の九州・沖縄サミットでは「感染症対策」を主要議題として取り上げ,2年後に「エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)」が設立されました。また,前回日本が議長国を務めた2008年の洞爺湖サミットでは,感染症対策や母子保健を含む「保健システム強化」の包括的取組に合意しました。

 伊勢志摩サミットでは,こうした実績も踏まえ,(1)エボラ出血熱などの教訓を踏まえた公衆衛生危機への対応,(2)途上国の保健システム支援等を通じ,母子保健から高齢化までを視野に入れた生涯を通じた基本的保健サービスの確保を図るユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進,(3)エルマウ・サミットからの継続課題でもある薬剤耐性(AMR)の問題などについて議論を行う予定です。

7 女性

 ジェンダーに関しては,日本は,「女性が輝く世界」作りに向けた様々な取組を行っています。
 その一環として,2014年から国際女性会議「WAW! (World Assembly for Women)」を開催し,海外から多数のリーダーを招き,女性をめぐる様々な課題について包括的に議論しています。この会議の開催は今年が三年目となりますが,女性活躍についての世界の議論をリードする場となるよう,充実させていく考えです。

 伊勢志摩サミットでは,女性活躍推進に向けた課題を議論し,あらゆる分野でこの問題に取り組む国際的機運を高めていきます。具体的には,エルマウ・サミットの成果も踏まえ,(1)女性のエンパワーメント,(2)自然科学・技術分野における女性の活躍推進などのテーマを取り上げて議論を行う予定です。

8 結語

 今回のG7伊勢志摩サミットは,2030アジェンダの採択後,初に開催されるサミットです。G7各国とともにこれらの議論を推進することで,2030アジェンダの実践を含む国連の取組に貢献したいとの日本の決意を伝えつつ,私のスピーチを終わります。

9 オバマ大統領の広島訪問

 ここで今般オバマ大統領が伊勢志摩サミット終了後,広島を訪問することになったことについて一言申し上げます。この訪問は犠牲となったすべての市民を追悼するとともに,先般のG7外相による広島訪問や,「広島宣言」の発出とも相まって,「核兵器のない世界」を目指す国際的機運を再び盛り上げる上で,極めて重要な歴史的機会になるものと考えており,日本政府として心より歓迎したいと思います。

(注)講演後,我が国はG7に向けて我が国の主要な貢献策を発表しました。

中東地域の安定化のための協力

 難民を始めとする中東地域の諸課題の根本原因に対処するため,短期的な視点からの人道支援のみならず中長期的な視点から,日本の強みをいかした「人づくり」など,社会安定化と包摂的成長のための開発支援を行う。今後3年間(2016~18年)で約2万人の人材育成を含む,総額約60億ドルの支援を実施。さらにJICA専門家等の人道支援チームの難民キャンプ等への派遣やシリア人留学生の受入れ拡大を行う。

質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ

 世界全体の膨大なインフラ需要等に対応し,資源価格低迷による世界経済の減速及び将来の資源価格高騰リスクを低減させ,日本企業の受注・参入を一層後押しするため,今後5年間の目標として,インフラ分野に対して約2,000億ドルの資金等を供給する。  具体的には,(1)アジア地域から世界全体に拡大,(2)狭義のインフラから資源エネルギー等も含む広義のインフラへ対象を拡大,(3)JICA,JBICに加えNEXI,JOIN,JICT,JOGMECを追加する。

国際保健

 感染症対策,保健システム強化を通じたUHCの推進への貢献,予防接種の推進,日本企業による創薬等を推進するため,国際保健機関(グローバルファンド,Gavi,GHIT等)に対し,総額約11億ドルの支援を実施(特にグローバルファンドについては当面8億ドルの拠出を目指す)する。

女性の活躍推進

 女性の力は成長の源泉であるという認識のもと,女性の権利の尊重,能力の発揮,リーダーシップの向上を重点分野とする「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するとともに,今後3年間(2016~18年度)で,約5,000人の女性行政官等の人材育成,約5万人の女子の学習環境の改善を実施する。


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