寄稿・インタビュー

オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙(豪州)による安倍総理大臣インタビュー

(2018年1月20日)

平成30年1月22日

(オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(AFR)紙)総理,本日はお時間をいただき感謝。日豪は,特に1年前に米国がTPPを離脱して以降,地域の自由貿易協定に向けてリーダーシップを共に発揮してきた。ターンブル首相は本日の東京での昼食会で,たとえ米国やカナダが曖昧な態度をとろうとも,豪州としては3月までにTPPをまとめていきたいと述べていた。日本も同様のお考えか。

(安倍総理大臣)昨年1月に私が豪州を訪問した際,その段階でトランプ大統領はまだ正式にはTPP離脱を決定していなかったが,基本的な考え方については示していた。その時点で,米国はTPPに多かれ少なかれ否定的であると既に知られていた。そこで私は,ターンブル首相に対し,TPP11の方向でTPPが発効するよう努力しようと述べた。首相も基本的に私の考え方に同調してくれた。そして二人で各国に働きかけていこうということになった。
 そして昨年,ダナンにおけるTPP閣僚会合において,大筋合意に至った。マルコムと共に私はTPPを進めていく。チリのバチェレ大統領が3月に退任する。そのことを多くのメンバーが頭に入れていよう。従って我々は交渉が進展することを期待している。いずれにせよ,我々はTPPの最終合意と協定への署名に向けて努めていく。

(AFR紙)日豪関係はこれまでになく緊密な関係にある。本日,安倍総理とターンブル首相は自衛隊の駐屯地を訪問されたと聞いた。これは,地域の安全保障のために日豪がさらに協力しなければならないという点で合意したということの表れか。

(安倍総理大臣)本日,ターンブル首相と共に習志野駐屯地,習志野空挺団を訪問した。そこで日本の特殊部隊である特殊作戦群の演習を二人で共に見学した。その際,豪州製のブッシュマスターという車両も二人で視察した。このように防衛装備品や,現在,防衛分野の円滑化協定に向けて最終的な議論を行っているが,こうした日豪の安全保障面,さらには経済や人的交流面においても,日豪関係はこれまでの歴史の中で最も深い関係になっている。
 また,日豪共同訓練も実施しており,両国とも,東南アジア諸国に対する法執行能力強化に関し,共に支援している。2015年の1月に日豪EPAが発効して以来,経済面においても今までになく緊密な関係が構築されている。姉妹都市についても,108の都市が姉妹都市を結んでいる。政府のみならず地方レベルにおいても絆は広く,厚く強化されている。

(AFR紙)総理は,アジア太平洋地域の安全保障枠組みに関し,どのような懸念をお持ちか。地域の平和と繁栄を何十年もの間支えてきたこの枠組みは,より自己主張する中国の台頭,そして米国が枠組を支えてきたコストの低減を追求していることにより,混乱している。

(安倍総理大臣)日豪の安全保障面でのつながりについては,私の第一次政権時代,私とハワード首相との間で,両国の安全保障協力の強化に合意した。その後,現在,ターンブル首相との間では,自衛隊と豪州軍の共同訓練等,二国間の緊密な関係の結果として見える具体的な成果を上げている。
 地域の安全保障環境については,北朝鮮の脅威や南シナ海,東シナ海及び南シナ海における現状変更の動き等,昨今より厳しくなっている。豪州が昨年11月に発表した外交白書においてもこのような問題点が指摘されている。
 また,日米同盟,米豪同盟を通じた米国のプレゼンスが,地域の平和と安定のために死活的に重要であることは,今後も不変である。昨年11月に公表された米国国家安全保障戦略においても,米国が同盟国等の国際社会と協力しつつ,リーダーシップを発揮していくという意思を示していると承知している。この立場は,豪州政府の政策においても明らかに述べられている。
 昨年11月,トランプ大統領とターンブル首相と日米豪首脳会談を行い,我々は地域の平和と安全に向けて貢献していく上で三か国の協力関係が重要であることで一致した。
 一昨年の11月,大統領選での勝利直後にトランプ大統領と会談した際にも地域における米国のプレゼンスの重要性について説明した。
 昨年2月,私がトランプ大統領を訪問した際,改めて米国のプレゼンスの重要性について説明するとともに,米国と豪州を含む協力と同盟の重要性について説明した。トランプ大統領はこの認識を共有した。

(AFR紙)総理が提唱するインド太平洋地域に関するコンセプト,及び日米豪印4か国の安全保障対話の最終的な目標は何か。4か国協力はより緊密な軍事協力,例えば日豪が軍事的に助け合うことを意味するのか。

(安倍総理大臣)日本も豪州もインド洋と太平洋に面する海洋国家である。そのことが自由で開かれたインド太平洋戦略の基礎である。我々は海洋国家であるが故に,インド太平洋を行き交うことにより,国として成り立っていると言える。インド太平洋をヒト,船舶が自由に行き交い,航空機が飛び交っている。自由な交流と往来があるが故に自由な国が成り立っている。つまり,インド太平洋が自由な公共財として存在することが大切である。
 豪州は「開かれた包摂的で繁栄した地域」,「自由貿易の推進」,「ルールに基づく秩序の重要性」を強調していると認識しているが,これらは「自由で開かれたインド太平洋戦略」の考え方と軌を一にするものである。
 この考え方の一端として,2007年に私が当時首相だった時,国会(ママ)で「二つの海の交わり」という題,コンセプトで演説をした。自由で開かれた公共財であるインド太平洋を確保するには,日豪,インド,米国が協力することが求められる。我々は戦略的価値を共有している。
 協力を維持しながら,我々が地域の繁栄の土台である平和と安定に貢献を行っていきたい。これは必ずしも我々が軍事的な行動に関与するということではない。法の支配や協力の重要性について共に声を上げ具体的な行動で示すことを申し上げたい。我々は航行の自由についても確保しなければならない。我々は声を上げて具体的な活動に関与することで,求めているものを達成したい。更に,港湾等のインフラ運営に係る「国際スタンダード」を普及,定着させることも重要である。インフラ投資はオープンかつ透明でなければならない。対象国の財政健全化等も必要である。そのため,インフラプロジェクトは,国際スタンダードに従わなければならない。
 また,東南アジア諸国や太平洋島嶼国などの沿岸国を支持することも重要であり,これらの国々の海上法執行能力は支援され,拡充されうる。この地域の安定のため,日本の自衛隊,豪海軍,米海軍及びインド海軍が安定に貢献することは非常に重要である。しかし,こうした側面だけではなく,より包括的な観点も重要である。

(AFR紙)いかにしたら,四か国協力が中国封じ込めを形成しているものでないと中国政府に理解せしめることができるのか。

(安倍総理大臣)この考えは,興隆する中国を封じ込めるため,あるいは中国に対抗するためではない。中国も我々の考え方に賛同してもらえるのであれば,中国がグループに入ることに協力したい。


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