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外務大臣演説
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中曽根外務大臣演説
中曽根外務大臣と語る in 金沢「これからの日本外交」(要旨)
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平成21年3月15日
於:北國新聞赤羽ホール

第I部 重要な国々との外交関係をどう発展させていくのか。 (はじめに)

 皆様こんにちは。外務大臣の中曽根弘文です。
 今日は、このように多くの方々にお集まり頂き、大変有難うございました。金沢市をはじめ石川県の方々の外交に対するご関心の高さを目の当たりにする思いです。そのような皆さんの関心の高さに応えるためにも、できるだけ外交を身近に考えて頂けるようにお話ししたいと思います。

 私は石川県へは、久し振りにまいりました。2006年8月に珠洲市で皇太子殿下ご臨席のもと開かれた「ボーイスカウト日本ジャンボリー大会」に、ボーイスカウト振興国会議員連盟の副会長としてまいりました。また2007年11月には、綱引き競技の全国大会がここ金沢で開かれましたが、私は日本綱引連盟会長としてこちらに来ています。綱引きでは金沢レスキュー隊が、世界チャンピオンにもなっておられます。

 さて東京からこちらに飛んで参りますと、日本海をはさんでロシア、韓国、北朝鮮そして中国がまさに対岸にあるということを改めて実感いたします。
 金沢は世界で活躍する多くの人材を輩出してきました。アメリカの首都ワシントンの春は桜で始まりますが、この日米友情の花、桜を根付かせたのは「日米国民外交大使」として尊敬を集める高峰譲吉博士です。高峰博士は日米両国の親善を心から願い、力を尽くされました。
 最近では石川県全域の皆様が随分昔から、外交的センスをもって「ジャパン・テント」という形で22年間も世界の留学生との市民交流を続けていると聞き感銘を受けました。私は人々の交流こそ平和の基礎になると確信して外交を展開しております。「ジャパン・テント」は正に市民外交そのものであり、開催にご尽力頂いている多くの県民の皆様に敬意を表します。

 さて、本日は、外交が果たすべき役割や今後どのように展開していくべきかについてお話ししたいと思います。

 まず、「日本外交」の目的は、我が国が安全で繁栄すること、そして、国民の生命・財産を守ることにあります。日本は、一国のみで生きていくことはできません。日本国内の政治、内政と外交は、密接不可分のものであり相互に作用するものです。私はそういうものだと思って日々外交を行っています。
 日本外交の相手となる国は世界の約190カ国、案件はギョーザ事件のようなものから核や海賊の問題など、大変幅広い分野に亘りますが、今日は時間の関係もありますので、まず第I部として、日本と関係の深い国アメリカ、韓国、中国、ロシアといった国々との関係や大変緊迫している北朝鮮の問題についてお話しします。休憩を挟んで、第II部で、日本が率先して他国と共に取り組まなければならない、国際社会が直面している課題である、世界的な経済危機への対応、テロ撲滅や海賊対策、地球温暖化などについてお話しします。そして、最後に、外交についての私の考えに少し触れたいと思います。

 さて、御存じの方も多いかと思いますが、我が国外交の三本柱は、1)日米同盟、2)中国、韓国、ロシアなど近隣諸国との関係、そして、3)国連を含む国際社会との協調です。

 まず最初に、日本外交の基軸である日米関係についてお話しします。

 アメリカでは、今年1月にオバマ政権が誕生しました。このオバマ新大統領が選出される過程及び誕生に、私は、アメリカの力強いダイナミズムというものを感じました。44年前であれば投票することすらできなかったアフリカ系アメリカ人の大統領が誕生したのです。人種や宗教を越えて国にとって最善の指導者であると考える人を選ぶ成熟した民主主義、そして変革を求める大きなエネルギーといったものが印象づけられた大統領選挙だったと思います。
 私たちは、今、新しいオバマ政権とどのような関係を築いていくか。日米が緊密な関係にあるということは、双方にとって重要なばかりでなく、世界の平和と安定にとっても重要なことであります。

 米国の外交の担当はヒラリー・クリントン国務長官になりましたが、私は将来のアメリカを担う有望な政治家に会いたいと考え、今から18年前になりますが、将来、アメリカを担って立つような政治家として、友人の勧めもありアーカンソー州知事であったビル・クリントン氏に手紙を書きました。そして、ビル・クリントン氏とその夫人のヒラリーさんと三人で食事を致しました。ビル・クリントン氏はその2年後、大統領になりました。また、ヒラリー夫人は洗練されて、今や米国の外交を司る国務長官、そして私は日本外交の責任者である外務大臣になりましたが、何とも言えない縁というようなものを感じています。

 さて、日本がアメリカと現在の日米安全保障条約を結んで約半世紀が経ちますが、その間、日本は米国と様々な安全保障・防衛協力を進めてきました。日本は戦後平和な日々を送ることができたわけです。しかし、日本が位置するアジア太平洋地域を見渡すと、北朝鮮は、3年前にミサイル発射や核実験を実施したことを発表し、今現在も非常に緊迫した状況にあります。中国も21年連続で軍事費を2ケタ伸ばしているなど、北東アジア地域は依然不安定な状況にあります。したがって、現在も、日米同盟の重要性は決して変わるものではありません。むしろ益々その重要性は高まっています。

 その意味で、先月来日したヒラリー・クリントン長官は私との外相会談で「日米同盟はアメリカのアジア・太平洋外交の礎(cornerstone)」であると言い、更に、「米国は核抑止を含めた日本の防衛を約束する」と表明しました。
 オバマ政権がスタートしたその最初の段階で、「日米同盟が重要である」という考えを世界に向かってきちんと表明したことは非常に意味のあることと思っています。

 最近、ある日本の政治家が、「米国の極東における存在は、第七艦隊だけで十分だ。あとは日本が自らの安全保障と極東での役割をしっかり担っていくことで話がつく」と述べたと聞いています。勿論私も、「我が国の防衛は我が国自らがしっかりと体制を作るべき」と考えていますが、しかし、こういう発言は余りにも無責任なものではないかと思っています。現在日本に駐留するアメリカの陸・海・空軍と海兵隊は、日本及びその周辺の安定を維持することに不可欠の存在として日本に駐留しております。この地域の守りは、第七艦隊を中心とする海軍だけでなく、空軍・陸軍・海兵隊などの総合力で担っています。先程述べましたとおり、極東に於ける安全保障の環境は甘くありません。「第七艦隊だけで十分だ」と言うことは、日本の国民の生命・財産を守るべき立場にある人の発言だとは、到底思えません。

 日米関係の話に戻りますが、我が国は、米国の「日本は重要だ」という言葉だけで安心している訳にはいきません。本当に大事なことは、日本として何が出来るか、「日米同盟」を基軸として国益をどう守り、そして更に世界が直面する課題にどう取り組むかであり、ややもすると受身の姿勢と見られがちであった外交を、主体的な外交へ進めることが大事です。

 さて、日本の経済状況は非常に厳しく100年に1度の危機と言われていますが、それでも、日本は世界の中では米国に次ぐ経済大国であって、世界の平和と安定に力を発揮できる国なのです。米国が重視しているのはこの力です。ここで言う「力」とは、日本が戦後経済大国になる過程で蓄えてきた総合力です。
 世界の最先端の科学技術、省エネ技術を中心とする環境関連の技術、モノづくりの技術、医療技術、教育、更にはマネージメント能力などもあります。アメリカが日本に期待するのは、日本がアメリカとともにこのような力を十分に活用して、国際社会の諸問題の解決に一緒に取り組んでいくことであります。

 私は、アメリカとは、経済の安定、アフガニスタン、イスラエル、ソマリア沖など平和の実現、子々孫々のことまでを考えた温暖化対策など世界のいろいろな課題に、対等なパートナーとして取り組んでいきたいし、そのようにやってきたと思っています。
 日米両国が共に取り組むべき課題については、第II部でお話ししたいと思います。

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