平成13年10月8日
8日、訪中した小泉内閣総理大臣は、日本時間16時00分から17時00分までの約1時間、江沢民主席との間で会談を行った。(先方:唐家セン(とう・かせん)外交部長、王毅(おう・き)外交部副部長、武大偉(ぶ・だいい)駐日大使他、当方:安倍官房副長官、高野外務審議官、阿南駐中国大使、田中アジア大洋州局長他同席)。
本件会談の概要は以下のとおり。
1.日中関係全般(歴史認識を含む。)
(1) |
小泉総理より、自分(小泉総理)は今回が3回目の訪中であると前置きした上で、本日は、テロや上海APEC前で多忙にもかかわらず、江沢民主席とお会いできて嬉しい、自分(小泉総理)は歴史に興味があり、盧溝橋に行きたいと思っていた、戦争の悲惨さ、中国の人の悲痛さが見てとれた、お詫びと哀悼の気持ちをもって(抗日戦争記念館の)展示を見た、過去の反省に立って、教訓を生かさなければいけない、二度と戦争をしてはならないと思った、日本が戦争を起こしたのは、日本が国際社会から孤立したからだと思う旨述べた。
さらに、小泉総理より、抗日戦争記念館で「忠恕」と揮毫したが、この語は、論語の一節からとったもので、「忠」はまごころ、「恕」は思いやりの意味である、このような考えで、日中関係を発展させていきたいと思う、日中関係の発展は世界の平和にプラスとなる旨述べた。
|
(2) |
これに対し、江沢民主席より、靖国神社参拝、教科書問題は中国人民にとり極めて敏感な問題である旨指摘しつつ、二国間関係の発展のために、小泉総理が訪中されたことを歓迎する旨述べ、その後、唐代に始まる日中交流の歴史についての発言があった。
さらに、江沢民主席より、本日の会談で日中間の緊張局面が緩和された旨の発言があるとともに、来年は日中国交正常化30周年であるが、日中関係はいい局面と悪い局面があった、悪い時には、靖国神社参拝や教科書問題が起こった旨の発言があった。 |
2.米国連続テロ事件への対応
(1) |
小泉総理より、9月11日以来、新たなテロとの戦いで、全世界は苦悩を深めている、日本は武力行使せず、戦闘行動に参加しない形で、日本の国力に応じた貢献をする考えである、例えば、難民支援、医療活動等で汗を流したい旨述べた。また、小泉総理より8日朝のブッシュ米大統領と電話会談に言及の上、同大統領からの江沢民主席に対する伝言として、(イ)APECでお会いすることを楽しみにしていること、(ロ)中国との間で前向きの関係を作りたいということの二点を伝達した。さらに、小泉総理より、テロ対策は、国によって国情・国力が違うので、対応が異なる、いずれにせよ、意見交換をして協力していきたい旨発言した。
|
(2) |
江沢民主席より、今次テロ事件に注目している、昨日武力攻撃が開始されたが、これまでブッシュ米大統領には電報を打ったし、何度か電話で会談もした、テロに反対するということでは国際社会に共通認識がある、しかし、目標を明確にすべきであり、その方がマクロ的に効果が高い、また、無辜の人を傷つけてはいけないということを伝えてきている、昨日のブッシュ大統領の発言には、この中国の立場が反映されていたので、嬉しく思っている旨述べた。また、江主席より、総理から御説明のあった日本の協力の分野は理解しやすいものである、しかし、アジアには警戒感があることを覚えておいてほしい旨の発言があった。 |
3.その他
江沢民主席より、来年の2002年は日中国交正常化30周年なので盛り上げていきたい、また、これからは楽観的に世界を見るべきだと思っている、21世紀は平和で美しい世界を創るべきであると考えている旨述べた。
小泉総理よりは、厚生大臣として、日本人孤児を迎える立場にあったが、中国人、中国人社会の優しさに感激した、2002年を盛り上げていきたいと思う旨述べた。
|