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橋本総理の中南米訪問


橋本総理とフジモリ大統領の共同記者会見



 27日11時25分より約40分にわたり、橋本総理とフジモリ大統領の共同記者会見が大統領官邸において行われたところ、概要次のとおり。(内外記者約100名出席)

1.フジモリ大統領冒頭発言

 記者の皆様、我々は非常に実りある首脳会談を45分間にわたり開催しました。その会談では、日本とペル-の様々な形での協力関係について話をしました。現在の展望としてはこれまでよりもはるかに約束されたものであると思います。橋本総理より、「日本側は世界レベルでの福祉を継続的に推進したい」旨のご発言がありましたが、ペル-はそうした世界福祉のための協力を受入れ可能であり、右の受入国となって本件を前進させていく用意があります。
 本日はジャ-ナリストの皆様に心からの歓迎の意を表します。また、ペル-の国民、政府を代表して橋本総理に歓迎の意を表したいと思います。私は橋本総理を、日本の総理大臣であられるのみでなく、ペル-の友人であり、また私個人の友人でもあると考えております。

2.橋本総理冒頭発言

 今回は私にとって3年振りのペル-訪問になりますが、そのペル-がフジモリ大統領の大変傑出した指導の下に、この3年間で国民が一致団結して、年々大きく活力を持って発展している姿を自分の目で確かめることができうれしく思っています。昨夜遅く到着したわけですが、街にこうこうとネオンがついて、若い人達が安心して街にくり出す姿を目の当たりにして、本当に治安が良くなったんだなあということを実感しました。大蔵大臣時代にペル-の支援グル-プ結成などに関わり、個人的にもペル-の政治的安定と経済発展に関心を持ち続けてきた私にとって、ペル-がこんなに安定した、そして発展の軌道に乗っておられることを、心から喜んでおります。
 先程のフジモリ大統領との会談について、一つ大統領のお話で訂正したいのは、大統領は45分で釈放して下さるほど優しい方ではございませんで、会談は実際は1時間5分でした。私の方からは大統領が2年ちょっとでテロを撲滅された、あるいは経済安定化を始めとする国家再建のための努力に本当に敬意を表しました。そして、日本は従来から中南米政策の基本として民主化と経済開発への支援ということを進めてきたわけですが、こうした考え方も含めて今後ともペル-のために支援を惜しまないということをお約束申し上げました。こうした観点から、OECDが先般採択しました新たな「開発戦略」を、もし大統領が同意して下さるなら、我々としてはその第一号をペル-でスタ-トさせたいと考え、これにつき大統領に気持ち良く了解していただきましたし、この関連で、より長期的な援助方針を策定するため、今年度中にハイレベルの経済協力総合調査団を派遣することを提案し、大統領にも気持ち良くご賛成を頂きました。
 明日コスタ・リカを訪問し中米諸国首脳と会談することとなっていますが、私の旅も終りに近付きましたので、ちょっと長くなって恐縮ですが、大統領の許しを頂いて、今回の中南米訪問を振り返り、少し所感を述べることをお許し頂きたいと思います。これまでに、メキシコ、チリ、ブラジルそしてペル-を今訪れているわけですが、そのいずれの国においても民主主義が定着し、市場経済改革が大きく進展している姿を拝見して、まさに「中南米が蘇った」という印象を強く受けました。それぞれの首脳と二国間関係のみならず国際情勢についても幅広い意見交換をさせていただきましたが、いろいろな分野で我々は今後更に協力しあっていくことを確認することができました。
 まず、中南米が21世紀の地球を考えた場合その鍵を握る地域であるということは、どなたもご異存がないと思いますが、その中でも地球規模問題の解決に向けて協力を拡大していくということです。具体的には、環境については、今回の訪問中にメキシコ、ブラジル、ペル-において円借款6件、合計1130億円についての交換公文の署名をしました。食糧の面では、食糧増産に大きな成果をあげているブラジルのセラ-ド農業開発に対する協力の拡充のために、今年度中に我々は調査団を派遣します。さらに、大統領も触れていた課題ですが先進国も途上国も共通して取り組まなければならない社会福祉の問題があります。私がリヨン・サミットで提唱した「世界福祉イニシャティブ」を紹介したところ、各国首脳より積極的な賛同をいただきました。
 2番目には、国際的な役割を強めつつある中南米諸国との政治経済分野での協力の強化です。その一環として、我が国と中南米諸国が協力し、他の途上国の発展を支援する「南南協力」を今後更に推進していくことについて各国首脳と合意しました。また、国連改革やWTOなど、主要な問題につきましても一層政策対話を深めていきたいと考えております。
 3番目に、「中南米シンポジウム-アジアと中南米の関係の強化を求めて-」を開催しようと考えております。太平洋を挟みダイナミックな発展をとげているアジアと中南米、その双方の交流・協力関係を一層強化していくために、明年日本において、米州開発銀行及び輸出入銀行の協力を得ながら、両地域の官民代表の出席の下で、このシンポジウムを開催する、そうした考え方を披露したところ、各国首脳より強い関心が表明されました。
 4番目に、相互理解を深めるための努力が必要です。このペル-とは99年に移住100周年を迎えるわけですが、今我々は各地で移住100周年などの歴史の節目にさしかかっています。我が国と中南米諸国が友好関係を深めるために、政府のみならず、国民レベルの交流による相互理解の深化の努力が不可欠です。こうした考え方の下に、中南米諸国の青年を、今後5年間で250名我が国に招待する「日本・中南米友情計画」を発足させると同時に、明年度、中南米から若手の行政官50名を日本に招待するつもりです。
 さらに、中南米地域には我が国にとりましても、それぞれの中南米諸国にとりましても非常に貴重な財産である日系社会が存在していることもあって、私は昔から潜在力に富む中南米は極めて重要な地域であると言い続けていました。今回の訪問を通じ、私はその確信を一層強くしました。そして各地でお目にかかった在留邦人、そして大統領閣下もそうですが日系人の方々が、各国の良き市民として活躍され、そして日本との懸け橋として重要な貢献をされている姿に励まされる思いがしました。
 今回の中南米訪問の中で、我が国と、世界の成長センタ-として躍進の著しい中南米諸国との間の、新しい時代に相応しいパ-トナ-シップの構築に向けて、重要な第一歩を踏み出すことができた、そう固く信じています。どうもありがとう。

3.質疑応答

(問)
 日本政府は環境投資プロジェクトと対外債務とのスワップをしないということだが、ペル-の対外債務削減のために日本はどのような協力をしていくのか。


(総理)
 かつてペル-が国際金融市場からボイコットされていたとき、私は名古屋のIDB総会を開いてペル-の支援国会合を作ったその責任者です。そして、その債務削減に努力してきた一人だと信じております。その当時供与されたお金が今度は経済が発展していくペル-にとって債務として大変重くなりました。そして我々はパリクラブでペル-が返済できる形に将来の返済計画を改めることができた。それを私は大変幸いなことだと思っていますし、日本がその中で役割を果たしたことを誇りに思っております。そして、直接のお答えにならないかもしれませんが、ペル-との貿易関係というのは今ペル-側からの日本への輸出が増加しているおかげで、拡大傾向が続いていますし、我々はその中でペル-の経済運営というものを高く評価しています。本年4月からペル-向け貿易保険の保険料率を最大27%引き下げてきました。そして今日、新たな債務繰延協定に基づいて確実な返済が行われることを前提にして3年間に3億ドルのクレジット・ラインを設定することにしました。そして投資関係についても9月1日より開催される第4回の日本とペル-の経済協議会を始めとする民間団体の交流を通じながら、日本の企業進出を行いやすくするために、我々は政府としてこういう措置をとっています。その上で、聞いていただきたいことですが、私は、日本との貿易を拡大しようと考えて下さるなら、日本市場のマ-ケッティングをしていただく、そしてやはり日本市場のニ-ズに対応できる産品を出して頂きたい。投資については、やはり御国が魅力のある投資先として日本企業の目に写るように、インフラ整備などの促進、あるいは投資環境を整備していく、そういう中で私はペル-が市場としてのイメ-ジアップの展開をしていただくこと、情報提供の積極的な行動が必要だと思っています。

(問)
 橋本総理に対しては、今回の中南米訪問を通じて、アジアとこの中南米地域の関係強化の必要性を改めてどう感じられたか。そしてAPECでの対話を含めてアジアと中南米との関係強化をどう進めていくおつもりか。
 フジモリ大統領に対しては、この点で日本にどういう役割を期待しているか。


(総理)
 私はもともと中南米重視論者でしたが、21世紀に向けてますます中南米が重要な地域になっていくということを改めて今実感しつつあります。頭の中では前から理解していたことですが。21世紀の地球の制約要因というものが成長について考えられるとすれば、それは人口の急増とそれに対応する食糧の供給ができるかどうか、あるいはエネルギ-の需給が間に合うかどうか、そして環境はその結果どうなるのかといったことでしょう。しかし、中南米はすでにそれぞれの立場で環境についても努力し、食糧についてもむしろ供給サイドにつく。そして資源もあります。私は21世紀の地球社会の発展の鍵は中南米が握っていると前から言っていましたが、その感じを本当に強く持ちました。それだけに私はアジアと中南米というものが、お互いにダイナミックな発展を遂げていますが、もう少し関係を強化した方がよいと思っています。ですから先程申し上げたように、日本と中南米の間を、例えば「日本・中南米友情計画」や中南米の若い行政官を招待するといった人的交流の促進もそうですし、政策対話の一層の推進が必要で、各国の首脳にもそうしたお願いをしてきました。今APECの話も出ましたが、APECもあれば、中南米の中には他の地域経済の枠組みを持っておられるところもあります。それぞれが開かれた市場として交流ができるように、アジアと中南米との関係強化のためのシンポジウムの開催という新たな試みを提案したのも、私のそのような思いからです。

(大統領)
 アジアと中南米の関係強化については、まずラ米の活力そのものが重要な役割を果たすこと、また橋本総理の今次ペル-訪問が、その関係強化に更にはずみをつけたことが指摘できると思います。総理の中南米訪問により、両地域間の関係が一層強化されていくと考えます。日本をはじめとするアジア市場は非常に大きなポテンシャリティ-を有し、また中南米も大きな発展を続けている地域であるので、中南米はアジア市場の需要を満たすことができるのではないかと考えております。その意味で日本の協力はペル-の輸出促進にも向けられており、例えばペル-からの対日輸出や中小企業振興などが日本の協力の一環をなしています。またペル-が福祉の確立を追求していることは日本政府から高く評価されており、これはアジアと中南米、特に日本とペル-の関係強化につながるものです。福祉が促進されることにより双方の需要がさらに高まるからであります。橋本総理は貧困との闘いや、都市環境の整備ということを挙げておられましたがそれはこうした点に基づいているのではないかと思います。多分、今のご質問は、日本政府が中南米の状況改善のためにどうすべきかということかと思いますが、すでになすべくことはして頂いていると思うし、更に様々な協力によりそれが強化されていると思います。総理から述べられた数字をみても、こうした協力が大変具体的な形で供与されていることや、ペル-の場合、その協力を大変合理的に活用していると言えますし、またペル-はこれらの協力から傑出した成果をあげています。
 もちろんペル-側としても日本の対ペル-投資を促進したいと考えています。投資の流れで見るとまだこれはまだ十分に進展していない初期段階にあるといえましょうが、橋本総理の今次訪問により、右投資が更に促進されるものと思います。

(問)
 総理に質問だが、これまで我々の教育インフラの整備にいろいろ協力頂いていると考えているが、日本における教育の経験が、ペルーにとり、どれだけ役に立っているか貴重な、分かち合う経験となると考えるか。


(総理)
 私は、3年前ペルーを訪れた時、フジモリ大統領と共に、市内に造られた小学校の開所式にお供しながら、教育というものに賭ける大統領の情熱というものに、本当にうたれました。そしてその地域の人々が、小学校が出来たことにいかに感激していたか自分の目で確かめました。そしてそういう考え方の中で、今後とも我々は官民挙げて支援を継続していきたいと思っています。今まで日本がおこなってきたもの、ハード面での無償資金協力や、草の根無償資金協力による学校建設・修復を積極的に行ってきましたし、民間の寄付でも既に数十の学校が建設されたと報告を受けています。そうして、ソフトの面が実は遅れていました。
今日、大統領閣下に申し上げたことですが、青年海外協力隊の派遣を再開したいと考えています。あるいはJICAの研修事業など技術協力によって支援を広げていきたい、そして、OECDで採択された開発戦略を重視する我々として開発戦略を実施する第1号をこのペルーでさせていただきたいと言いました。そのペルーがかがげておられる目標には、非識字率の改善などが含まれています。これはまさに開発戦略の方向にぴたりとあったものだと見ています。ですから、我々はこれからもそういう考え方で取り組んでいきたいと思います。なお、少し余談になりますが、私は、今度 9月1日にペルーに参ります経済ミッションの代表者に、将来日本の企業がペルーに進出する際、かって数十年前に日本の企業が、生産工場を開くときにやっていたのと同じような工夫をペルーでもできないか考えて欲しい、という提案をしました。私は、綿紡績の労働者の出身です。日本の紡績産業というのは、中学を卒業したばかりの若いお嬢さん達の力によって支えられていたことが多かったのですが、その人達は高校に行きたいとの希望を強く持っていました。そして、企業が工場毎に学校を作って教室を持ってそして、高校の教育と同じ様な教育を一般の定時制高校と同じ様な形で実施しました。私は、ペルーで同じことを考える場合、中等教育がよいのか、後期の中等教育にすべきなのか、どちらが望ましい姿かは分かりません。しかし、企業内にあって、企業の仕事とは関わりなく、一般の学校教育を学べるというのは、誇りとした制度でした。今度、こちらに参ります前に春名丸紅会長に私は、そうしたことを検討できないかという要請をしたばかりで、一度我々の考える課題の中に入れていければと願っています。

(問)
 今回の総理の中南米五カ国歴訪で、各国で国連改革なかんずく安保理常任理事国入りが話題になられたようですが総理として今後次の国連総会でどのようにアクションするつもりなのか。フジモリ大統領は日本の常任理事国入りにどのような支援をして行くつもりか。


(総理)
 まず私はペルーが我が国の常任理事国入りを支持して下さっていることにお礼を言いたいと思います。そして今この安保理改革を含む国連改革について不安を持ち始めています。と言いますのは国連の場での議論を聞いていると日本とドイツの常任理事国入りについては多数の国の支持があるが、途上国の常任理事国入りについては十分に議論が収斂していません。そういう状況の中で取りあえず非常任理事国だけを増加させるべしといったような意見が出てきているなど、この現状に懸念を持っている。そして財政改革、経済改革の分野について進んでいるかといえば、その方も必ずしも十分進んでいるとは言えないのではないでしょうか。国連の改革というのが進展しなければ国連の役割に対する信頼も失われることになりかねないし、私は次期総会において日本としてなんとか改革のモメンタムを維持していく、そして常任、非常任双方の増大によって、安保理改革が成し遂げられるように、ペルーをはじめとする各国の一層の協力を進めていきたいと思います。しかし問題は安保理の問題だけではありません。むしろ財政改革等国連改革はすべてが車の両輪のように動いていかなければワークしないものだということだけは分かっていただきたい。

(問)
 橋本総理に対して、1990年以来日本のペルーに対する民間投資はかなり凍結されており、82年には6位だったのが今は13位というように、滞っている。橋本総理は投資環境の改善について語られたが、具体的にどのようなことを指すのか。ペルー政府として公的な面でどのような点を整備すれば日本の投資は増大するのか。


(総理)
 先程お答えしたことと内容的にはそれほど変わらないと思うが、まずあなたにわかっていただきたいことは企業がどこに投資をするかを政府が押しつけることはできないということです。企業はそれぞれの企業戦略の中で、自分のそれからの事業展開に一番ふさわしい場所を選びます。そしてここしばらくペルーの経済は非常に暗雲が垂れ込めており、国際金融筋からも厳しい状況に置かれていました。私は、91年に名古屋で支援国会合を開かせていただいた時にフジモリ大統領と議長をやらせていただいたが、フジモリ大統領がその時の返済がもうすぐにできる体制までにペルー経済を持ってこられたことに本当に敬意を表します。そしてだからこそ公的債務の削減あるいはブレディー・プランによる民間債務の削減計画というものがペルーにとって大事であります。ペルーのお金自身が投資に回るようになり、そしてペルー自身のお金でペルー自身の産業が延びていくことは他の国の投資家からも魅力を感じさせる元になります。そして先程もそうした条件が少しでも良くなるように、貿易保険の利率を引き下げたこと、あるいはクレジットラインを新たに創設したことを申し上げました。そして今回もし必要なら今後円借款を原則として毎年供与しようという約束をしました。それをどうお使いになるかはペルー政府がお考えになることですが、そうした努力をしていることを付け加えても結構です。そして我々は今、国際金融の世界におけるペルーのポイントが大きく変化したこと、そして公的債務・民間債務ともにその削減計画がきちんと担保されたことによってペルーへの投資の魅力が本当に増したと思います。その上で、必要なことは例えば優秀な技術を持っている労働者が得やすいとか、あるいは水の資源、電力の供給は大丈夫かだとか、工場から人口の密集している地域へのインフラは整備されているだろうかとか、企業がそれぞれの投資先を選ぶ段階になるでしょう。

(問)
 橋本総理とフジモリ大統領に対して、ペルーはAPECへの加盟を望んでいるがそれについて今日の首脳会談で取り上げられたか、日本はペルーの加盟を支持されるのか。


(総理)
 その話は本日の会合で当然のことながら提起され、そして私はペルーの加盟申請を支持すると正式に申し上げました。その上で補足して申し上げたことは、いまAPECの中では新規加盟を凍結しているから、その作業が今できる状態ではない。同時にAPECのメンバー18の国と地域の中には新たなメンバーを加えることに賛成ではない方たちがいる、お互いの関係を深くしていくことが先だという方々がいることは事実ですからそういう状況も御説明しながら、私としてはフジモリさんの前からの希望であることは知っていますし、ペルーのみなさんの希望であることも知っていますので、日本としてはペルーの加盟申請が出ればそれを支持するのは当たり前だと思っています。だいたいこの二人は誕生日が一日違うだけですから、7月28日生まれと7月29日生まれで、考えることは余り違いません。

(大統領)
 ですから時々通訳も必要ありません。お互いに良く分かり合ってしまうので。

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